2019年8月22日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事が大外刈りの技の図解付きでネット配信されていた。
柔道の部活動中に大外刈りで投げられ、死亡した中学1年の女子生徒(当時13歳)の父親が、過去に重大な事故も起きている大外刈りを小中学生には禁止すべきだったとして、全日本柔道連盟(全柔連)に3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、福岡地裁であった。
徳地淳(とくちあつし)裁判長は、大外刈りの危険性を認めつつ、「初心者への指導の徹底などで重大事故の抑止は可能。一律に禁止すべきだとはいえない」として、請求を棄却した。
訴えていたのは福岡市博多区の大場さん(男性、53歳)。
判決によると、娘のAさんは2015年4月に福岡市立席田(むしろだ)中に入学し、柔道部に入部。
それまで柔道経験はなく、同5月、かける技を事前に相手に伝えてから投げる「約束練習」の際、大外刈りを受けて頭を強打し意識不明となり、5日後に死亡した。
大場さんは、Aさんの事故が全柔連の公認A級指導員が監督し、練習方法にも問題がないのに起きたことから、大外刈りという技自体に危険性があると主張。
実際に大外刈りによる死亡事故が多く起きていることを踏まえ、全柔連は小中学生には禁止する義務があったと訴えていた。
徳地裁判長も判決で、全柔連が障害補償・見舞金制度を開始した03年からの8年間で報告があった死亡事故や障害が残る重大事故86件のうち、技が判明した59件の中で大外刈りが11件と最多だった点を引き合いに、大外刈りは「他の技と比べ受傷の危険性が高い」と述べた。
その上で、「指導現場で初心者への受け身の指導を徹底したり、受け身の習熟度に応じて大外刈りを禁止したり制限したりすることで重大事故を抑止することは可能」と結論づけた。
判決後、大場さんは控訴しない方針を示し、「最大の目的は柔道事故を起こさないためにどうすべきか関係者に考えてほしい、ということだった。全柔連関係者や指導者の方々には、気を引き締めて指導していただきたい」と訴えた。
【死亡や障害、見舞金36件 13~17年度】
初心者に対する大外刈りの危険性は、全日本柔道連盟も認識している。
今年3月には、「初心者の重大事故の多くは(入学から間もない)5~8月に大外刈りなどの投げ技により発生している」として、改めて注意を促す文書を各都道府県連盟などに通知した。
もっとも、重大事故の原因は大外刈りだけではない。
判決が言及した2003年から8年間の死亡・重大事故のうち、技が判明している59件の内訳には、9件の内股と8件の背負い投げもあった。
全柔連も、指導者への研修会に力を入れるなど対策を取っている。
それでも日本スポーツ振興センターによると、13~17年度に柔道の部活動や授業の事故で死亡したり障害が残ったりして見舞金が支払われたケースは36件あった。
https://mainichi.jp/articles/20190822/ddm/012/040/054000c
(ブログ者コメント)
この事故は今年5月、部活中の事故について紹介した本ブログの記事中、1つの事例として記されている。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。