2021年2月17日21時18分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三重大学病院(津市)は17日、麻酔科医が2017年夏、同時並行で複数の患者の麻酔管理をし、患者1人が死亡する事故があったことを明らかにした。
こうした麻酔管理は「並列麻酔」と呼ばれ、日本麻酔科学会は原則禁止としている。
病院は「並列麻酔が直接の事故原因ではない」と説明。
その後も並列麻酔を続けていたという。
この事故について、院内外の委員による調査委が18年4月に報告書を作ったが、病院は公表してこなかった。
朝日新聞による開示請求を受け、病院が17日夜、報道各社に説明した。
病院によると、事故が起きたのは、夏休みで麻酔科医が減っていた時期で、1人の麻酔科医が最大4人の麻酔管理を同時に実施したという。
日本麻酔科学会は、急変時の対応が困難になる恐れがあるなどとして、1人の麻酔科医が同時に複数の患者の麻酔管理をすることを原則的に禁止している。
病院は事故時について「麻酔科医がいる前で心停止した」と説明し、並列麻酔との直接の関連を否定した。
病院によると、緊急手術などもあり、事故後も並列麻酔を続けたといい、18~20年の全身麻酔のうち1~2割程度を占めたとみられる。
「今年に入ってやっていない」としているが、「相当数、手術を制限できたらやめられるが、安全を確保できる限り続けてきたというのが実態」という。
手術を受ける患者に対し、並列麻酔の説明はほぼしていないという。
朝日新聞に一部開示された報告…
https://www.asahi.com/articles/ASP2K6SMHP2KONFB00W.html
2月18日10時6分にNHK三重からは、4年前にも並列麻酔中に死亡した事例があった、去年から麻酔科医の退職が相次いでいるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この並列麻酔について、三重大学病院は、全身麻酔の手術のうち、2018年には19%、2019年には12%、2020年には20%以上で行っていたことを17日夜明らかにしました。
理由について、患者からの手術の要望に応えるため、手術件数を減らすことが難しく、並列麻酔で対応せざるをえなかったとしています。
また、4年前、県内在住の患者の手術で、一時、4人同時に並列麻酔を行い手術中に1人が死亡した例があり、調査委員会は死亡の原因は特定できないとしつつも、並列麻酔が遠因となった可能性もあると結論づけたということです。
病院では、ことしに入ってからは並列麻酔は一切行っていないとしていますが、去年から麻酔科医の退職が相次いでいて、人員の確保が依然として課題となっています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20210218/3070005001.html
2月19日14時57分にNHK三重からは、以前に勤務していた医師がNHKの取材に対し並列麻酔は日常的に行われていたと証言したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三重大学病院の元医師がNHKの取材に応じ、並列麻酔の実態を証言しました。
「三重大学の臨床麻酔部で一般的に行われていた並列麻酔は同時に4人で、多いときには6人程度と、並列麻酔が日常的に行われていました」
男性医師によりますと、並列麻酔をやめるよう主張する医師もいましたが、手術件数を増やすよう求められる中で、対応せざるをえなかったということです。
「三重大病院に来たときから違和感を覚えていましたが、声を上げることができませんでした。三重県は麻酔科医の数が全国でも最低レベルなので並列麻酔を行ってなんとか手術を行うのは必要悪だった可能性がある」
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20210219/3070005010.html
(ブログ者コメント)
病院側は「夏休みで麻酔科医が減っていた時期・・・」と説明しているが、昨年12月の記事を読むと、カルテ改竄問題で麻酔科医自体が減っているという背景があるのかもしれない。
『麻酔科医が大量退職 カルテ改ざんで揺れる三重大病院』
(2020年12月9日 18:30 日本経済新聞)
三重大学病院の准教授だった麻酔科医師によるカルテ改ざん事件を受け、地域医療の中核を担う同病院が揺れている。
専門医育成のための研修の指導役が不在となり、18人いた医師の大半が退職。
同県では、かねて麻酔科医不足が課題だっただけに、不急な手術を見合わせるなど影響も出始めている。
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3日、実際は使っていない薬剤を患者に投与したかのようにカルテを改ざんしたとして、津地検は公電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、同大病院臨床麻酔部の元准教授=懲戒解雇=を逮捕した。
同部には18人が所属していたが、改ざん発覚後の9月に6人が退職し、10月には元准教授の上司の男性教授も「一身上の都合」を理由に退職した。
同部では10月中旬以降、麻酔科医を育成する研修プログラムを停止。
日本専門医機構などによると、責任者の元教授と指導役の元准教授がいなくなり指導体制が維持できなくなったためで、11月末には十分な研修を受けられないことなどを理由に、さらに4人が辞めた。
医師は3年以上の研修を受け、認定試験を経て専門医になる。
現在は育休中の2人を含む6人体制だ。
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2019年度の同院の手術件数は約7700件と、過去10年で1.5倍に増えたが、現在は県内の他病院から応援を派遣してもらい、緊急度が高い手術などに限って対応している。
関係者によると、現在の手術件数は19年度の半数以下になっているとみられる。
医療機関へ麻酔科医を紹介する一般社団法人「東日本麻酔科医ネットワーク」(盛岡市)代表理事の竹森医師によると、医療の進歩に伴う高難度手術の増加で、全国的に麻酔科医に余裕はなく、特に人材は大都市に集中しているという。
三重県の麻酔科医の充足率はもともと約5割と全国最下位クラスだったこともあり、竹森氏は「地方では経験と技術を備えた医師を新たに確保することは容易ではない」と指摘。
「技術向上につながる手術ができない状況では、外科など他の診療科の医師も退職を考える可能性がある。現状が続けば医師全体の不足が加速しかねず、地域医療に与える影響は大きい」と危惧する。
▼カルテ改ざん事件
三重大病院は9月、実際は使っていない薬剤を患者に投与したかのようにカルテを改ざんし、診療報酬を不正請求したと疑われる事案が発覚したと発表。
第三者委員会は元教授が製薬会社から多額の寄付金を得ようと、手術の際に心拍を安定させる薬剤を積極的に使用するよう元准教授に指示したと結論付けた。
元准教授も第三者委に「薬の使用実績を上げたかった」と動機を説明した。
大学は元准教授を刑事告発。
津地検は病院や薬剤の販売元であるO薬品工業(大阪)を家宅捜索し、元准教授を公電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD079F30X01C20A2000000/?unlock=1
一方、この改竄問題については2021年2月17日20時3分にNHK三重から、カルテを改竄した元教授が再逮捕された、製薬会社からの寄付金は大学の寄付金口座に振り込まれAI開発費用に使われていた、業界でも波紋が広がっているという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
不整脈を抑える効果などがある薬剤を大学病院で積極的に使う見返りに、製薬会社から大学側に多額の寄付をさせたとして逮捕された臨床麻酔部長だった元教授について、津地方検察庁は、患者に投与していない薬剤を投与したように装って病院に診療報酬を不正に請求させたとして、詐欺の疑いで再逮捕しました。
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今回、元教授が起訴された事件で、製薬会社からの金は、元教授がみずから設立した団体の口座ではなく、大学の口座に寄付金として入金されていました。
大学によると、振り込まれた金は、病気のデータを解析するAI=人工知能の開発に関する委託費用に使われていたといいます。
多くの大学では、企業から寄付金を受け取って研究に当たっているため、事件については、業界の中でも波紋が広がったといいます。
研究をめぐる寄付金の問題に詳しい臨床研究適正評価教育機構の桑島巌理事長は、「企業が大学に寄付金を入れること自体は法的に問題はないので、立件されたと聞いて驚いた。また、寄付を受けた後に、その企業の薬剤の使用量が増えたとしても、必要な薬であればどのように使うかは医師が自由に決められることで裁量権の問題に絡むので、事件になったことは意外に感じた」と話しています。
その一方で、国からの補助金が少なくなっている中、研究者や医師が、研究資金の獲得のために企業に頼らざるを得なくなっていることが問題の背景にあるとしたうえで、「企業から寄付金をもらうのであれば、公開性や透明性が不可欠になる。大学ではいつでも情報を公開して問題が無いと言える体制作りが必要だ」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20210217/3070004999.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。