2020年3月13日21時11分に神奈川新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2016年に葉山町立葉山保育園(同町堀内)に通う男児=当時(6)=が同園で死亡した事故を巡り、同町議会は13日の本会議で、町が遺族に計約5900万円の損害賠償を支払う和解議案を、全会一致で可決した。
町によると、3月中に和解が正式に成立する。
男児は16年12月、園庭に面した木製デッキに置かれていたサッカーゴールのネットに足をとられ、転倒。
帰宅後に病院へ搬送されたが、翌日に亡くなった。
園長が業務上過失致死の容疑で書類送検されたが、横浜地検横須賀支部は17年12月に不起訴処分とした。
町と同園は、遺族の意向や、検証委員会が18年3月にまとめた報告書の提言を踏まえ、緊急時の対応マニュアル改訂や職員研修、防犯カメラ設置などを実施。
町と遺族は面談を重ね、2月末に和解することで合意したという。
山梨崇仁町長は本会議後、取材に対し、「和解は成立するが、亡くなった園児が帰ってくるわけではない。改めてご冥福をお祈りするとともに、二度と同じ事故が起きないよう、保育園の安全な運営に努めたい」と話した。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-298708.html
※園長が書類送検された当時の報道は下記。
(2017年12月28日11時36分 産経新聞)
神奈川県葉山町立葉山保育園で昨年12月に男児=当時(6)=が転倒し死亡した事故で、県警葉山署は、業務上過失致死容疑で女性園長(60)を書類送検した。
捜査関係者や町への取材で分かった。
書類送検容疑は、昨年12月13日、園庭に面した木製デッキに子供用のサッカーゴールを置いたままにして安全確保を怠り、ネットに足を引っ掛けて転んだ男児を死亡させたとしている。
町によると、男児はすぐに立ち上がり「大丈夫」と話していたが、帰宅後に体調が悪化し、搬送先の病院で同14日朝に死亡した。
男児の救急搬送要請はなかった。
https://www.sankei.com/affairs/news/171228/afr1712280017-n1.html
(ブログ者コメント)
以下は、事故検証委員会報告書から抜粋した事故の経緯など。
ただ、保育園の見取り図は掲載されているものの、肝心のネットの写真は掲載されていない。
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(2)経緯
〇平成28年12月13日(火)16時頃、園庭で追いかけっこをしていた6歳男児が園庭と保育室の間にあるデッキの通路上を走り、デッキに置いてあるサッカーゴールの網に足をとられ転倒した。
転倒後、保育士が駆け寄り、怪我がないか全身の状態を確認した。
本児は意識、受け答えもハッキリしていたが、転倒直後のため、室内で安静にして いた。
〇児童の様子を伝えるために保育士が保護者に連絡したが、繋がらなかったため、 留守番電話に折り返しの連絡を伝言し、保護者の迎えを待つ間、検温や水分補給を行い、見守りを続けた。
18時過ぎ、保護者(祖母)に引渡しを行った。
〇19時過ぎ、容態が悪くなり自宅より救急搬送されたが、翌14日(水)5時12分に搬送先の病院で死亡が確認された。
(3)死因
〇後日、遺族からのヒアリングで、死因が腹部打撲による「臓器損傷による出血性 ショック」ということを知った。
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https://www.town.hayama.lg.jp/material/files/group/9/houkoku.pdf
この報告書については、これまで本ブログで紹介したいくつかの記事にも名前が見られる小児科医の山中氏が、以下のような意見を述べていた。
その中で、ブログ者が違和感を覚えた写真掲載ゼロについても言及されている。
(2018年8月30日18時0分 YAHOOニュース)
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・・・ 保育現場等で死亡事故が起こった場合には検証委員会を設置して検討し、その報告書を国に提出するよう求めている。
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これまでに公表された検証報告書を読んで、「予防につなげる」という観点から問題点を指摘したい。
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◆事故の概要
2016年12月13日午後4時ころ、神奈川県葉山町の公立保育園の園庭で追いかけっこをしていて、園庭と保育室のあいだにあるデッキの通路上を走っていたところ、デッキに置いてあったサッカーゴールの網に足を取られ転倒した。
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◆事故の発生状況を推測すると
報告書の4ページには、死因として「腹部打撲による臓器損傷による出血性ショック」と記されている。
推測ではあるが、この事例の場合、おなかを打ってから比較的短時間で死亡しているので、肝臓か脾臓からの大量出血によって死亡したと思われる。
尖ったものが腹部に当たれば何らかの傷が皮膚についているはずであるが、子どものおなかの皮膚には傷は認められていない。
そこで、おなかにぶつかったものは、直径が3cmくらいの棒(クッキー作りやパン作りなどに使う麺棒)状のものの先端部分ではないかと推測される。
走って転んだとき、その麺棒の先端部がおなかにぶつかり、皮膚直下の肝臓か脾臓に当たった。
麺棒の先と背骨のあいだに臓器が挟まれ、臓器が裂けたのではないかと推測される。
すなわち、子どもが転倒した現場の写真、とりわけ、おなかがぶつかったと思われる場所の写真や、麺棒のようなものの写真やその計測値(直径や長さ)を知ることが死因を考える上で不可欠である。
この報告書には、写真は何も収載されていない。
現場の見取り図、たとえばサッカーゴールの絵と、転んだと思われる場所の見取り図、おなかがぶつかったと思われるものの絵があれば理解しやすい。
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◆この報告書の問題点
1 死因の情報がない
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2 検証委員メンバーの問題
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3 医療体制の問題
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◆今後の課題
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国からの通知には具体的な検証の進め方が細かく記載され、どのような情報を収集したらよいかの項目については下記のように挙げられている。
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これらの項目をすべて網羅するにはたいへんな作業量が必要となる。
報告書を読むと、ほぼ全ての項目について記載されているが、何が予防につながるポイントなのかがわかりにくい。
今回のケースでは、「健康な子どもが転んでおなかを打ち、約半日後に死亡した」ので、2と5と9について詳しく調査して、そこを中心にした記録とすべきである。
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https://news.yahoo.co.jp/byline/yamanakatatsuhiro/20180830-00095009/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。