2019年7月15日12時0分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
エアコン清掃時に洗浄剤が十分に洗い流されなかったために「化学物質過敏症」を発症したとして、東京都内の女性が清掃業者に約1600万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁が女性の主張を認め、約1300万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
エアコンの清掃ミスと化学物質過敏症との因果関係が認められるのは珍しいという。
提訴から約4年。
女性はめまいや食欲不振などに苦しみながら裁判を闘い、業者側の控訴はなく、勝訴が確定した。
「原因が分からず、泣き寝入りせざるを得なかった人たちもいる。判決が参考になれば」と語る。
【猫もくしゃみを繰り返す】
「薬くさい臭いが充満して、むせて気持ち悪くなったんです」。
女性が自宅1階にあるエアコンから漂う刺激臭に気がついたのは2012年夏。
業者に清掃を頼んだ直後だった。
女性によると、業者はエアコンの前面カバーと送風機などを業務用のアルカリ洗浄剤などで洗浄した。
清掃後にエアコンを稼働させると、目のかすみなどを感じるようになった。
飼い猫もせきやくしゃみを繰り返し、自身の体をなめた後に嘔吐するようにもなったという。
エアコンを使う際、窓を開けて換気するなどの対策を取っても、臭いや体調不良は改善しない。
畳や壁からもエアコンと同じような臭いを感じるようになり、頭痛や吐き気、動悸は治まらず、エアコンのない2階で暮らさざるを得なくなった。
症状はさらに悪化して自宅で暮らすことが難しくなり、一時的に転居して壁や畳を入れ替えた。
体調に異変を感じてから、女性は近所の病院に通ったものの、原因が特定できなかった。
その後、相談していた弁護士のアドバイスで専門医を受診したところ、化学物質過敏症との診断を受けた。
別の2つの病院でも同じ診断だった。
「体調が悪くなったのは、エアコン洗浄の影響に間違いない」。
女性は何が起きていたのかを調べようと、民間の調査機関に自費で鑑定を依頼した。
エアコン近くの空気や壁などを調べてもらったところ、厚労省が定めた総揮発性有機化合物の暫定目標値の約9倍にあたる数値が検出された。
獣医に依頼して飼い猫から採取した唾液でも、pH10弱のアルカリ性が確認された。
「アルカリ性の洗浄液を使ったエアコン洗浄の影響だ」と確信した。
【洗浄剤 十分に洗い流さなかった過失認める】
女性は15年、清掃業者らに慰謝料などの支払いを求めて、東京地裁に提訴した。
①業者に過失があるか
②女性の症状との因果関係があるか
が争われたが、地裁はほぼ、女性の主張を認めた。
判決は、まず、
▽使用した洗浄液が人体に有害な化学物質を含むことは、一般的に知られていた
▽十分に洗浄しないと空気中に拡散することは、認識していた
▽化学物質過敏症は、空気中の有害な物質に解毒能力を超えて暴露されることで発症すると考えられていた
ことを前提に、「洗浄剤を十分に洗い流さなければ残留物が空気中に拡散し、化学物質過敏症を発症することを予見できた」として、洗浄部分が中性に戻るまで十分に洗い流す注意義務があったと認定した。
その上で、
①女性が清掃後から化学物質過敏症の症状を発症した
②エアコンの排水がpH10弱のアルカリ性を記録した
③アルカリ性物質は木部の変色をうながす特性があり、エアコンがあった場所に近い柱や鴨居ほど色が濃くなっていた
④エアコン近くで稼働していた空気洗浄機のフィルターから洗浄剤に由来する物質が検出された
と認め、業者が「十分に洗い流さなかった過失がある」と認定した。
業者側は、「女性は喫煙習慣などでエアコン清掃前から既に体調を崩していた」などと主張したものの、判決は、「清掃前に花粉症と腰痛以外の持病はなく、清掃後に症状が出て悪化した」と認定。
「洗浄剤を十分に洗い流さなかった過失が原因で同病を発症した」と結論づけた。
【勝訴を勝ち取り「ほっとした」 】
判決を聞いた女性は、「ほっとした。感無量です」と胸をなで下ろす。
現在、症状は一時期よりは改善したが、外出時には常にマスクを着ける。
柔軟剤など、化学物質を含んだ香りをかぐとめまいがして倒れることもあるため、人混みは極力避け、タクシーに乗る際は冬でも窓を全開にしてもらう。
呼吸が苦しくなることもあるため、長時間の移動時は携帯用酸素が欠かせない。
完治は望めず、治療法もない。
新幹線や飛行機に乗れないため、長距離の移動は難しい。
「猫と一緒に死んでしまおうか」と考えたこともある。
訴訟に踏み切ったのは、同じ病気で苦しむ人たちの役に立ちたいという思いがあったからだ。
女性は、「ハウスクリーニングなどで体調が悪くなり、化学物質過敏症を発症しても、症状や原因が特定されず、泣き寝入りしている人は少なくないはず。そうした人たちのためにも、裁判所がエアコン洗浄と病気との因果関係を認めてくれて、本当に良かった」と語った。
【専門家「香り強いものは避けるべきだ」 】
化学物質過敏症は、どのような病気なのか。
これまでに3000人の患者を診察してきた「ふくずみアレルギー科」の吹角院長によると、短期間に大量の化学物質に暴露するか、低濃度で持続的に暴露することによって発症する。
発症後は、微量の化学物質でも症状が出るようになる。
主な症状は頭痛、筋肉痛、疲労や倦怠感、関節痛。
このほか、集中力や思考力低下、不眠や感覚異常なども起こる。
女性の発症者は男性の3倍に上り、30~50代が多い。
どの化学物質に症状が出るかは人によるものの、最初は一つの化学物質に反応し、徐々に反応する物質が増えていくケースが多いという。
予防策として、吹角院長は、
①においの強い物質
②虫を殺す物質
③草を枯らす物質
④有機溶剤
⑤排ガスなど燃焼後の物質
といったものを、できる限り吸わないようにすることを提言している。
また、「五感は寝ている時に休めることが必要。においの強い洗剤や柔軟剤を使った衣類や寝具で寝ないなど、香りの強いものはできる限り避けるべきだ」と呼び掛けている。
出典
『エアコン清掃で化学物質過敏症 勝訴した女性の思いは』
https://mainichi.jp/articles/20190712/k00/00m/040/407000c アカスミ
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。