2022年5月11日20時35分に毎日新聞から、『「もうライオンは飼いません」変わる動物福祉の現場』というタイトルで、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
京都市動物園を歩くと、こんな掲示が目に入る。
「ライオンの飼育を行いません」。
あの百獣の王は、もう見られない。
飼育員の好き嫌いで決めたのでも、人気投票で決めたのでもない。
大学と連携した研究機関でもある動物園が、最新の知見から出した結論だという。
京都市動物園はライオンに限らず、飼育している動物についてユーチューブやブログ、インスタグラムなどで詳しく解説している。
「なんだか説明の多い動物園だな」。
そう感じた記者は、園のからくりを探った。
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動物園は、まだまだ多くの「工夫」であふれている。
それは、動物の心身の健康の状態をより良くしていく「動物福祉」が実践されているからだ。
「ライオンは飼いません」宣言も、その試みの一つ。
園が野生の生態を考慮して議論した結論だ。
ライオンはネコ科では珍しく群れで暮らし、狩りも協力して行う。
動物園としては、小規模な敷地を考えれば、群れの飼育は難しい。
とはいえ、以前はライオンを飼っていた。
最後の1頭、雄の「ナイル」は20年に死んだが、ナイルを巡っては、老いた姿がある議論を呼んだ。
17年ごろ、海外からの来園者らから指摘された。
「悪い環境での飼育は残酷だ」
「安楽死させるべきだ」
高齢だったナイルは痩せていた。
さらに、長年連れ添った雌「クリス」が17年1月に死んで以来、1頭きりだった。
園によると、クリスといた時の方がしゃんとしていたように見えたという。
指摘に対し、園は獣医師らのサポート態勢があることを説明。
来園者に向けても、解説文を掲げた。
「いちじるしく生活の質が低下しない限り、安楽死はしない」。
高齢のナイルが落ち着いて暮らせるよう、単独飼育を続けることも示した。
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動物福祉を進める主席研究員・山梨さんは、「園として、最期までサポートすると決めましたが、ナイルにはそれなりの苦痛があったと思います。園の決断が正しかったのかは分かりませんが、安楽死を選ばなかった判断が間違いだったとも思いません。動物福祉に正解、不正解という考え方はそぐわないように思います」と話す。
飼育員でも獣医師でもない研究者を抱える動物園は珍しい。
京都大学と連携して研究を続けてきた京都市動物園は13年、園に研究拠点「生き物・学び・研究センター」を設けた。
センターは18年、国の「科学研究費(科研費)」を申請可能な研究機関に指定されている。
現在、動物の認知能力を分析する「比較認知科学」や動物園の教育機能、ゲノム科学など5人の研究者がいる。
研究テーマの一つ「動物福祉」とはなんなのか。
山梨さんは「動物の心身の健康状態のことです。科学的な手法でその状態を評価し、向上のための実践にいかします。理想はいくらでも描けますが、限られた敷地や資金、人材でどう実践していくのか。そのバランスが難しいです」と話す。
もともと、動物福祉の考え方は欧州で生まれた。
畜産から動物園の飼育動物へ広がり、世界の潮流になっている。
国内でいち早く取り入れた京都市動物園で、山梨さんが17年から始めている試みに、動物の飼育状況をチェックする評価シートの導入がある。
飼育担当者が、「採食環境」や「人との関係」などの項目を5段階や3段階で評価して記録する。
個人の感情ではなく、動物の視点から飼育環境の課題に気付けるようにするためだ。
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園は戦前から昭和中期にかけ、チンパンジーにエンターテインメントショーをさせていた。
服を着せ、二本足での歩行や竹馬乗りなど、人間のような振る舞いを学ばせた。
来園者に人気だったようだが、そうしたチンパンジーはチンパンジーらしさを失い、交尾も子育てもできなくなるケースがあることが分かった。
園は1969年に「演芸場」を廃止した。
反省を生かす。
これも動物福祉の大事な視点だ。
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https://mainichi.jp/articles/20220510/k00/00m/040/272000c
(ブログ者コメント)
「動物福祉」関連の情報は、本ブログでも最近になって紹介し始めている。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。