







イタリアは、科学者にとって、今も居心地の悪い国だ。ガリレオの時代だけではない。
およそ400年前、地動説を唱えたガリレオは、1616年と1633年の2度にわたりローマの異端審問所に呼び出され、地動説を唱えないことを宣誓させられた。
そのガリレオ裁判と似たような判決が2012年10月22日、イタリアの裁判所で下された。
同裁判所は、2009年4月6日にイタリア中部ラクイラで300人以上が死亡した地震を適切に予測できなかったとして、科学者ら7人に求刑を上回る禁錮6年の判決を言い渡した。地震予知をめぐる実刑判決は異例のものだ。
禁錮刑とは自由刑の一種で、受刑者を監獄に拘置するが定役を科さないものである。無期と有期に分かれ、主に政治犯や過失犯について科せられる。
今回の件に対して、各国の専門家などから、「地震学者が客観的な予知がしづらくなるのではないか」、「科学者が政府に進言しにくくなる」、といった懸念や批判の声が上がっており、波紋が広がっている。
2009年4月6日午前3時32分(現地時間)、マグニチュード6.3の地震がイタリアのラクイラの町を襲った。
死者308人、負傷者は1600人に上り、レンガ造りの家屋の倒壊は2万戸以上、避難を余儀なくされた人は6万5000人という被害になった。
3年がたった今も、街には崩れた建物が残り、数1000人が避難生活を余儀なくされている。
ラクイラを襲った大地震の前に、約1年半にわたり、小規模な群発地震が続いていた。
群発地震の回数は2009年1月に69回、2月に78回、3月には100回と次第に増加し、本震の約1週間前の3月29日にはマグニチュード3.9の地震があった。
3月29日のマグニチュード3.9の地震の後、24時間以内に大地震が来ると予測し、今回の裁判の被告が所属する国立地球物理学火山学研究所(INGV)に伝えた市井の研究者がいた。ジャンポーロ・ギリアニ氏だ。
ギリアニ氏は、巨大地震の発生前に岩盤のひずみからラドンガスが漏れ出て、地中のラドンガス濃度が上がると6~24時間後に地震が発生するという事実を突き止め、ラドンガス濃度計測器を地中数か所に埋めて地震発生の場所と時間を独自に予想し、マスコミにも発表していた。
ギリアニ氏の巨大地震予知をテレビで知った多くの人々が、3月29日の夜、野外にテントを張り、一夜を過ごした。
しかし、3月30日午後に発生した地震はマグニチュード4.1で「巨大地震」とは言えず、INGVは、彼を住民に不要な恐怖を与える偽地震預言者と決めつけ、以後、彼が地震予想をマスコミに発表することを禁じた。
そうこうしているうちに4月4日、マグニチュード5.9の大きな地震が発生した。
今回の裁判の被告の1人であるボッシィ博士(ボローニャ大学教授)らは、3月30日の専門家会合で、「これ以上の地震を心配する必要はない。地震は収束に向かっている」と発表した。
INGVは緊急の会合を招集し、怯えている人々を落ち着かせるため、この地震でほとんどのエネルギーが放出され、これ以上大きな地震が発生する危険がなくなったと、安全宣言を出した。
しかし4月5日、ギリアニ氏のラドンガス濃度測定器が再度急上昇した。
その夜(6日午前3時32分)、マグニチュード6.3の本震が発生した。
全体を見ると、正確な地震予知ではないかもしれないが、ギリアニ氏が予知できた大地震の危険性を市民に知らせる機会を奪い、逆に安全宣言を出して多数の住民の大惨事を招いた被告のボッシィ博士ら著名科学者の行為は、間違った情報を流布した過失により多数の死傷者を発生させた「過失致死罪」にあたるとして、検察側は7人全員に禁錮4年を求刑していた。
検察側は、専門家会合の見解について「不完全で、不正確で矛盾したものだった」と主張していた。
アラン・レシュナー サイエンス誌出版社最高経営責任者(CEO)兼エグゼクティブは、6月にイタリア大統領に宛てた書簡の中で、この事件について深い懸念を表明した。
「自国の著名な地震学者は長年にわたり研究を行ってきた。差し迫った災害発生を市民に警告することができる地震予知の科学的な方法は、まだ実証されていない。現時点で科学に多くの期待を寄せるのは不合理である」とレシュナー氏は書いている。
地球物理学分野での世界最大の学会であるアメリカ地球物理学連合(AGU)は、裁判所の判決を非難した。
AGUは、「自然災害を理解し、関連するリスクを軽減するための国際的な努力を害するものだ。訴訟のリスクにより科学者は政府に進言しにくくなる懸念がある。また地震学及び地震リスク評価の分野に携わる人材が少なくなる可能性がある」と述べた。
さらに、責任を問われた地震のリスクを評価する国の専門家委員会を今年1月から率いるルチアーノ・マイアニ委員長は23日、判決に抗議の意思を示すため辞表を提出した。
マイアニ委員長は、辞任理由について、「このような複雑な状況では、委員会として冷静に仕事ができず、科学的な助言を国に与えることは不可能だ」と述べた。
「科学者は知っていることを共有して、知らないことを認める必要がある。刑事上の責任を負わされるかもしれないという恐れなしに地震予知を行うべきだ」とマイケル・ハルパーン氏はブログ記事に書いている。
彼は、10万人以上の市民と科学者から成る国際的な非営利団体「憂慮する科学者同盟」に所属している。
判決は、イタリアで過失致死罪の定義を拡大するのだろうか。
気象学者は、天気予報をはずしたら起訴されるのだろうか?
免疫学者は、新しいインフルエンザウイルスの流行を抑止できなければ殺人容疑をかけられるのだろうか?
イタリアの刑事裁判では判決理由は後日開示されるため、裁判所の判断の詳細は不明だ。
有罪判決を受けた科学者ら7人は「科学的な観点から可能性を示しただけで過失はなく、極めて不当な判決だ」として控訴する方針だ。
地震予知の今後に影響を与えかねない裁判の行方が注目される。
出典URL
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1025&f=it_1025_001.shtml
(ブログ者コメント)
□この記事を読むまでは、なんとも浮世離れした判決を出した裁判官よ・・・と思っていたが、そう単純な話しでもなさそうだ。
判決文は後日ということだが、予知が外れたからではなく、ギリアニ氏の予想をマスコミに発表することを禁じた措置が、国民の知る権利を阻害したと判断された可能性もある。
□今回の騒動で思い浮かんだのが、今年8月に本ブログに掲載した電気通信大学の研究だ。
従来の伝統的研究から外れた異端の研究には、どの国でも冷たい風しか吹かないということかもしれない。
仕事中にけがしたのに、健康保険も労災保険も適用されずに制度の「谷間」に陥り、医療費が全額自己負担になる人について、厚労省は、健康保険を適用する方向で調整に入った。
今月中に結論を出す。健康保険法の改正も視野に入れる。
焦点は、働いている時以外の病気やけがについて給付する、という健康保険法の規定。
法改正か解釈を変えることで、インターンシップ中の学生などが仕事中にけがをした場合も対象にする。
これまでも、2003年に、労災の対象外になる零細企業の社長が仕事中にけがをした時の医療費を支払うよう通知を出したことがある。
ただ、その場合には、関係団体の同意が得られるかが懸念材料だ。
この問題は、シルバー人材センターから庭木の手入れを委託された奈良県の男性が作業中にけがしたことで明らかになった。
個人事業主には、労災保険は適用されない。
男性は、娘が入る協会けんぽの被扶養者だったため、協会けんぽを使って治療した。ところが、後に「業務上のけがは対象外」として、医療費約60万円を請求された。
通常、個人事業主は市町村国保に加入しており、仕事中のけがでも医療費の7~9割の給付を受ける。
一方、勤めている人が入る組合健康保険や協会けんぽは、仕事中のけがは労災で対応するよう、健康保険法が定めている。
現在の制度で医療費が全額自己負担になる可能性があるのは請負などで働いている人で、家族が加入する企業の組合健保や中小企業の協会けんぽの被扶養者だったり、退職後もかつての勤め先の健康保険に任意で継続加入したりしている場合。
インターンシップ中の学生がけがをすると、同じ問題が起きる可能性がある。
厚労省によると、組合健保などの被扶養者と任意継続者は約3千万人。
全国シルバー人材センター事業協会は、会員約15万人が市町村国保に入っていないと推計している。
健康保険を適用する以外に、労災の適用を拡大する選択肢もある。
そのためには労災が対象とする「労働者」(=勤めている人)の定義を変える必要がある。
大きな法改正になり、「制度の根本をゆるがす」(厚労省幹部)と反対意見が多い。
個人事業主が労災に特別加入できる制度はあるが、任意だ。
〈シルバー人材センター〉
高年齢者雇用安定法が定める公益法人。全国に約1300ある。
会員制で、原則として定年退職後の人が対象。臨時で短期間の簡単な仕事を会員に提供する。
ほとんどの会員は請負で働き、配分金をもらう。センターと会員に雇用関係はない。
出典URL
http://www.asahi.com/politics/update/1020/TKY201210200007.html
ブログ者にとっては初耳の概念につき、紹介する。
パイロットが学習する概念に「権威勾配」と呼ばれるものがある。機長と副操縦士が適切な力関係を保つためのマネジメントだ。
機長の権威が強すぎると(勾配が急)、機長の判断が誤っていても副操縦士が指摘しにくい。
機長の権威が弱すぎると(勾配が浅い)、運航を管理できない。
ミスを防ぐには、適度な勾配が必要なのだ。
実際に1977年に起きたジャンボ機同士の衝突は、機長の間違いに航空機関士が気付きながら、強く主張できなかったのが一因。
あるベテラン機長は「昔はパイロットも徒弟制。副操縦士が適切な指摘をしても、機長から一蹴されると、それ以上は言いにくい雰囲気だった」と話す。
機長には、周囲から有用なアドバイスを引き出す能力や人格が求められるのだ。
(ブログ者コメント)
3日前、葛丸ダム死亡事故の原因と背景について、過去記事修正連絡したが、その中に「防災航空隊という特殊な業務で、後輩隊員が先輩隊員に意見を言えない雰囲気があり、有意な意見が訓練の改善につながらなかった」という記述があった。
それこそが「権威勾配」というものなのだろう。
部品どうしを関節のように結びつける「ベアリング」について、県工業技術総合センターは民間企業と共同で、潤滑油を使わずに動かすことができる技術を開発した。
軽量化や耐久性が求められる次世代の航空機などでの実用が期待されている。
この技術は、長野市にある県工業技術総合センターと御代田町のベアリング製造会社、「ミネベア」が、共同で開発した。
機械部品の関節部分にあたるベアリングは、一般的に耐久性が高い鉄鋼素材が用いられ、接続部分に潤滑油を使うことで、摩擦によるすり減りを防いでいる。
今回、開発された技術は、工業技術総合センターが開発した炭素の結晶である「カーボンナノチューブ」を加えた特殊なチタン合金と、ミネベアが開発したテフロン樹脂の繊維を、ベアリングの軸部分と接触面に使うことで、従来のベアリングに比べて摩擦が5分の1以下に抑えられるという。
これによって、潤滑油を使わずに長時間にわたって機械を動かすことができるうえ、従来のものに比べて重さも半分程度になり、今後は、軽量化や耐久性が求められる次世代の航空機などでの実用が期待されている。
県工業技術総合センター金属材料部長は「軽量化だけでなく潤滑油を使わずメンテナンスする手間も省けるので、今後、次世代航空機をはじめとして様々な機械部品として使われることが期待できる」と話していた。
出典URL
http://www.nhk.or.jp/lnews/nagano/1015999091.html
また、同趣旨の記事が2012年2月21日付の読売新聞長野御版からもネット配信されていた。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news/20120220-OYT8T01220.htm
(ブログ者コメント)
間接的に安全の確保にもつながる技術だと感じたので、紹介する。
オホーツク地方で唯一の風力発電施設の北海道興部町風力発電所が修繕費調達難のため、完成から約10年で廃止となった。
福島第一原発の事故後、風力発電が注目されているが、小規模風力発電施設が直面するコスト高の課題を露呈した格好だ。
同町の風力発電所は2001年3月に完成。
風車1基で、建設費約1億9000万円のうち、独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」がほぼ半額を、町が約5000万円をそれぞれ負担した。
町の農業研究施設に電力を供給、余剰分は北海道電力に売電し、売電収入は約9年半で計6170万円。6430万円の維持管理費とほぼ均衡していた。
しかし10年10月に欧州製の部品が破損。交換には高所作業も必要で、修理に約4000万円かかることが判明した。
修理費は全額町負担で、町は「コスト面で運転再開は困難」として、昨年11月に発電所廃止を決めた。
風車を固定し、モニュメントにする予定だ。
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120124-OYT1T00227.htm
(ブログ者コメント)
設備の故障も広義の安全。うすうす感じていたことが現実化した事例でもあるので、紹介する。
2011年12月19日3時3分に、読売新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
長年にわたって深刻な労働災害や環境汚染を引き起こしてきたアスベスト(石綿)の使用や製造が来年3月、国内では完全に禁止されることになった。
例外とされていた製品の代替品への移行が完了したためだ。
アスベストは繊維状の鉱物で耐熱、耐火、防音に優れ、建材などとして一時は「奇跡の鉱物」ともてはやされたが、吸引で中皮腫や肺がんを引き起こす致命的な欠点が発覚。
1970年代から徐々に規制が強化された。
2006年には代替品への置き換えが難しい一部を除き、原則、使用や製造、輸入が禁止となった。
配管の接合部などに使われる「ガスケット」という部品が最後の例外だったが、今年6月に代替品が開発された。
これを受け、厚生労働省は26日の労働政策審議会に、アスベストを全面使用禁止とする政令の改正を諮問し、来年3月の施行を予定している。
出典URL■■■
2011年10月5日23時18分に、msn産経ニュース神奈川から以下の記事がネット配信されていた。
横浜市保土ケ谷区と旭区にまたがる市内15番目の総合公園「たちばなの丘公園」が5日、一部開園した。
かつて火薬工場だった跡地で、火薬庫につながるレンガ造りのトンネルや土塁、トロッコのレールなどの遺構が点在し、稼働当時をしのばせる。
この日開園した部分は、日本カーリット(東京)の火薬工場跡地。
大正8年、日本カーリットの母体「浅野同族」が、日本で2番目の民間火薬工場として、当時の橘郡保土ケ谷町に建設し、火薬の製造を始めたという。
園内には火薬製造の歴史や自然を説明する案内を設置。市によると、火薬工場跡地が公園となった例としてはこれまでに群馬県の「群馬の森」があるが、歴史の案内表示を付けたのは横浜が初めてという。
爆発事故の影響が周囲に及ぶのを防ぐ土塁が現存しているのは、全国でも珍しく、火薬工場の緩衝林だった雑木林なども残り、緑豊かな環境の中で歴史を感じることができる。
公園に行くには、相鉄線和田町駅から相鉄バス19系統「新桜ケ丘団地」行きに乗り、「県公社住宅前」で下車し徒歩5分。駐車場はない。
出典URL■■■
(ブログ者コメント)
大事故が契機となって移転した?と思い調べてみたが、1955年に異物混入による火薬爆発が原因で3名が死亡、19名が重軽傷を負う事故があった以降は、1995年の工場閉鎖まで、大きな事故は報じられていない。
場所を確認すると新保土ヶ谷ICのすぐそばで、近くには住宅街や大きなマンションなどがある。
思うに、工場建設当時は人っ子一人いない山の中だったものが、周辺の開発が進んだ結果、移転を余儀なくされたものであろう。
時代の変遷を告げる記事としてブログ者の目に止まったので、ここに紹介する。
継続にかかる費用負担については調整がつかず、引き続き協議予定。
発電所を運営する県企業庁の試算では、事業を4年間継続した場合、維持管理費や施設改修費などで、24億円の負担増になるとのこと。
(ブログ者コメント)
RDF設備の火災、爆発事故については、以下の資料にうまく纏められている。
(2019年8月20日 修正1 ;追記)
2019年8月20日10時0分に伊勢新聞から、今年9月に事業が終了するという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三重ごみ固形燃料(RDF)発電所の爆発事故から19日で16年が経った。
RDF事業は9月に終わるが、懸念されるのは事故の風化。
あらゆる危機管理で事故の反省を生かせるかが問われる。
RDF事業に参画する5団体12市町のうち、2団体の4市町は既にRDF搬入を停止しており、残る市町も9月中旬には搬入を終える予定。
9月中には、RDFによる発電所の稼働も終わる見通しだ。
事業の参画市町は、処理方法の移行を進めている。
桑名市などで構成する桑名広域清掃事業組合は、RDF発電所の隣で可燃ごみ焼却施設を建設中。
9月中に試験運転を始め、来年早々の本格稼働を目指す。
多気、大台、大紀の3町でつくる香肌奥伊勢資源化広域連合と伊賀市は、可燃ごみの処理を民間委託する。
熊野市など3市町でつくる南牟婁清掃事業組合と紀北町は、RDFの製造を続けて民間処理する。
一方、懸念されるのは事故の風化。
県は事故を語り継ぐ事業を何らかの形で継続させる予定だが、事故を直接に知る人らも退職などで段階的に現場を去りつつあり、風化を食い止める手だての必要性も高まる。
企業庁は、事業終了後に土壌調査を実施するため、発電所の敷地にある「安全記念碑」を移転させる予定。
企業庁の担当者は、「遺族の声を踏まえ、現場から近く、訪れやすい場所に設置したい」と話す。
また、県と企業庁はRDF事業の終了後に、最終的な総括をまとめる予定。
平成27年度にまとめた総括との違いが注目されるとともに、県が今後の事業にどのような形で総括を生かすかが問われる。
鈴木知事は式典後の取材で、事業の教訓について「勇気ある撤退も時には必要だということや、一回決めたので前に進むことだけが行政の仕事ではないということを念頭に置くべきだと思う」と語った。
https://this.kiji.is/536349539302802529?c=39546741839462401


















その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。