2017年6月23日18時19分にNHK関西から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
4年前の平成25年8月、東大阪市内のプールで開かれた障害者向けの水泳教室で、Kさん(男性、当時24歳)が意識を失って死亡した。
Kさんの両親は、「死亡したのは熱中症のためで、指導者が適切な配慮を怠った」として、水泳教室を運営していた大阪・生野区のNPO法人などに、およそ5500万円の賠償を求め、法人側は、「原因はてんかんの発作で、指導者に責任はない」と主張していた。
23日の判決で、大阪地裁の山地裁判長は、Kさんは熱中症で亡くなったとしたうえで、「水泳教室の指導者は、水泳でも熱中症になることがあり、水分補給が重要だという知識があったのに、練習生をプールから上がらせ水を飲ませるなどの対策を怠った」と指摘した。
そのうえで、「Kさんに知的障害があったことを考えると、指導者が適切な措置をとらなかった責任は重い」として、法人側に770万円の賠償を命じた。
判決の後、Kさんの59歳の父親は記者会見で、「熱中症は、指導者の無知や怠慢で起きることを裁判所が認めてくれた。スポーツの指導者は深く自覚してほしい」と述べた。
また、58歳の母親は、「プールに入っていても熱中症になることがある。そのことを多くの人に知ってほしい」と述べた。
両親の代理人の平川弁護士は、「相当深く踏み込んだ判決で、勝訴だと思う」と述べた。
一方、NPO法人の弁護士は、「判決文を読んでいないので、コメントを控える」としている。
熱中症に詳しい医師は、プールなどでも運動を続けると熱中症になる場合があるとして、注意を呼びかけている。
「神戸市立医療センター中央市民病院」の水副医長によると、プールでは、運動して汗をかいていても気付きにくく、水分の補給を怠りがちになるという。
また、湿度の高い屋内や、水温が高いプールの中で運動を続けると、汗が蒸発しにくくなって体に熱がこもりやすく、脱水症状を起こして熱中症になりやすいという。
水副医長によると、プールの水温と気温の合計が65℃以上になると熱中症のリスクが高まるとされ、水泳には適さないという。
水副医長は、「水の中でも熱中症のリスクがあることを認識してもらい、こまめに休憩をとったり水分補給をしたりして、予防に努めてほしい。異変を感じたら涼しい場所で体を冷やし、医療機関を受診してほしい」と話している。
出典
『プールで熱中症死亡 賠償命令』
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20170623/4462051.html
6月23日17時50分に時事通信からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
裁判長は、てんかんの発作とする被告側の主張を退け、熱中症と推認。
一定時間ごとにプールから上げ、水分補給させる義務を怠ったと認めた。
一方で、救急搬送の依頼など、相応の対処をしたと指摘した。
判決後の記者会見でKさんの父親は、「熱中症と認められて意義はあるが、練習メニューが過酷とは認められず、満足がいかない」と語り、控訴する考えを示した。
出典
『水泳教室主催者に賠償命令=男性死亡「熱中症予防怠る」-大阪地裁』
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062300999&g=soc
2017年4月28日22時2分に朝日新聞からは、事故時の詳しい状況などが、下記趣旨でネット配信されていた。
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知的障害・発達障害のあるKさんは、給食会社で働く傍ら、障害者専門の水泳教室に通い、ジャパンパラリンピックに7回出場していた。
両親が見守る中、東大阪市の室内プールでの練習は、午後6時に始まった。
空調はなく、サウナのようだった。
母親は何げなく水に触り、「ぬるい!」と言ったのを覚えている。
クロール100mを10本、バタフライ100mを7、8本泳いだところで、コーチからフォーム修正の指示が出た。
Kさんはプールから上がり、鏡を見ながら約5分間、シャドーストロークをした。
ここで初めて水分補給をし、水中に。
指示されていたバタフライではなく、クロールで泳ぎ出した。
100m泳いでもやめない。異常行動だ。
仲間が足をつかんで止めたが、手はかき続けていた。
引き上げられると、けいれんが始まった。
午後6時55分に救急搬送。病院で亡くなった。
体温は41.9℃あった。
死体検案書には、熱中症にかかり、重いてんかんの発作を引き起こしたことが死因と書かれた。
一見、意外かもしれないが、プールでも熱中症は起こる。
14年7月には、京都市の中学の水泳部員13人が救急搬送された。
同年8月にも、東京都の中高の水泳部の合同練習で15人が病院に運ばれた。
日本水泳連盟の指導教本では、水温と室温を足して60℃前後が水泳に最適で、65℃以上は「不適」とされる。
Kさんの事故当日の午後6時の水温は32.7℃、室温は36.0℃で、計68.7℃だった。
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出典
『プールでも熱中症の危険 水温と室温に注意が必要』
http://www.asahi.com/articles/ASK4W72GBK4WUTQP02F.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。