2021年6月19日9時0分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が動画や県別棒グラフ付きでネット配信されていた。
踏切が設けられていない線路を住民が通り道として使う。
こうした「勝手踏切」と呼ばれる場所が、全国の約1万7000カ所に存在する。
踏切がない場所を渡るのは違法だが、なかなかなくならないのが現状だ。
専門家は「鉄道会社は黙認している」とみる。
どういうことなのか。
背景を探った。
JR岡山駅(岡山市北区)の2駅隣にある大安寺(だいあんじ)駅(同)から西へ約120メートル。
JR吉備(きび)線の線路脇に「きけん」と赤字で書かれた看板がある。
続けて「線路に立ちいらないで下さい」と記されている。
看板の先には線路へ続く小道がある。
緩い上り坂になっているが、途中までアスファルトで舗装されており、お年寄りでも線路を渡れてしまいそうだ。
「散歩や買い物の際に渡ることがある。近くの踏切までは少し距離があるから」。
近所に住むアルバイトの男性(74)は、そう語った。
辺りは田畑や住宅が点在する郊外。
看板を過ぎて線路を渡れば、コンビニエンスストアやスーパーといった店もある。
ここから東西に直線距離で各100メートルほどの場所には正式な踏切があるものの、男性によると、物心ついた頃には近所の住民がこの場所を踏切として使っていたという。
「近くの踏切の音が聞こえるので、列車が近づいていれば分かる。高齢の人には危険かもしれないが……」
【愛媛が最多、東京と大阪にも存在】
踏切がない場所で線路を渡ることは、鉄道営業法で禁止されている。
運行に支障が生じた場合は、刑法の往来危険罪に問われる場合もある。
それでも、住民たちが日常的に横断する勝手踏切が各地に存在する。
正確な数は不明だが、国の調査がある。
国土交通省が2021年1月、全国の鉄道事業者に「明らかに線路内を横断した形跡があるもの、または横断を認識しているもの」について報告を求めた。
すると、モノレールのみが走る沖縄を除く46都道府県の約1万7000カ所に存在することが明らかになった。
都道府県別では愛媛県の1031カ所が最多で、次いで長野県の872カ所、新潟県の825カ所と続く。
岡山県は10番目に多い580カ所。
都市部でも東京都に34カ所、大阪府に103カ所ある。
国交省は16年にも同様に調査した。
その際は約1万9000カ所にあり、5年間で1割ほどしか減っていない。
その理由について、関西大の安部誠治教授(交通政策論)は、「勝手踏切は元々、村道や里道で、後から鉄道が道を寸断したケースも多い。鉄道事業者は表だって封鎖しにくく、黙認しているのが現実だ」と解説する。
柵などを設けることはできるが、簡単に迂回(うかい)できてしまうため現実的ではない。
一方、鉄道事故の多くが踏切で発生していることもあり、国は現在、踏切の新設を原則禁止しているため、正式な踏切にするのも難しい。
安部教授は、「列車本数が少ない地方では、勝手踏切での事故のリスクも低い。言わば『自己責任』で渡る住民に対し、鉄道会社は『大人の対応』を取っている」と語る。
国交省幹部も「地域住民が反発する」と、全面的な封鎖は難しいとの見方を示す。
【封鎖に住民不満「不便を強いている」】
実際、住民の反対の声は根強い。
京都府宇治市では16年7月、JR奈良線の六地蔵―黄檗(おうばく)駅間にあった勝手踏切5カ所が封鎖された。
奈良線の高速化・複線化事業に向けてJR西と沿線自治体が13年に結んだ基本協定に、安全対策の一つとして勝手踏切の封鎖が明記されたからだ。
5カ所には、古くからの里道が元になったり、墓参りに使われたりする道があったが、高齢男性がはねられて死亡する事故も起きていた。
市は15年度に住民説明会を開いたところ、線路の反対側にある病院や商業施設への往復などに必要だとして、住民が封鎖に反発。
正規の踏切に移行するよう求める要望書を市に提出した。
だがJR西は住民の要望に応じず、市は線路へつながる道をフェンスで塞ぐなどした。
住民は迂回路を通らざるを得なくなった。
地元住民らでつくる団体は、封鎖後も、踏切を設置するよう市に働き掛け続けている。
市が地下道の新設という代替策を提案したこともあったが、用地の問題などで計画は暗礁に乗り上げている。
住民団体代表の辻さん(男性、84歳)は、「高齢者の多い地区なのに、迂回路は通院や買い物に不便。市は複線化を要望した相手であるJRの都合に合わせ、住民に不便を強いている。住民の立場に立ち、安全で便利な通行手段を確保してほしい」と訴える。
【過去に人身事故も、専門家「リスク警告を」】
勝手踏切では全く事故が起きていないわけではなく、宇治市のように列車にはねられて命を落とすケースもある。
JR西は勝手踏切について「無謀な横断の可能性がある場所では、声掛けや注意喚起の看板を設けている」としている。
安部教授はこう提言する。
「カーブとなっていたり、草木で見通しが悪かったりする勝手踏切では事故のリスクが高まる。たとえば、過去に死傷事故があった勝手踏切では、道路管理者である自治体や鉄道事業者は『横断は危険』との強いメッセージの看板を設置するなど、リスクがあることを警告する必要がある」
https://mainichi.jp/articles/20210618/k00/00m/040/197000c
(ブログ者コメント)
ブログ者の住んでいる市原市でも、地方鉄道路線に勝手踏切が数多くある。
以下は、車が渡っているのをたまに見かける勝手踏切。
以下は、近道ルートにつき、ブログ者もたまに渡っている勝手踏切。
以下は、誰が渡るんだろう?的な勝手踏切。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。