2021年1月26日11時30分に朝日新聞から下記趣旨の記事が、現場写真や埋設場所一覧表付きでネット配信されていた。
猛毒のダイオキシンをふくむ除草剤約26トンが、15道県42市町村の山中に半世紀前から埋められたままになっていることが、林野庁への取材でわかった。
うち12道県20市町村の約18トンは、林野庁の通達と異なる方法で出先機関が埋めたままという。
林野庁は地域の安全に問題はないとしているが、近年は豪雨などで土砂崩れが相次いでおり、岩手県や福岡市などは除草剤の流出などを懸念して、撤去を求めている。
除草剤は「2・4・5T系」という種類。
林野庁は、かつて国有林の植林時に、この除草剤を使っていた。
ネズミの研究で胎児の奇形が指摘されたことなどから、1971年に使用を中止。
6割余りはメーカーに返還したが、残った分は処分法がないとして、17道県50市町村の国有林に埋めたと説明している。
【林野庁「掘りだす際に飛散も…」】
埋設方法について林野庁は、当時の営林局に対し、除草剤と土、セメントを混ぜてコンクリート塊にし、厚さ1メートル以上の土をかぶせることや、できる限り水源から離すよう通達していた。
その後、コンクリで固めず埋めるなど、通達と異なる方法が愛媛県内で取られていたことが愛媛大学の調査などで判明。
各地で類似ケースが判明し、一部は撤去された。
林野庁の通達前に各地の営林局が独自に埋めたケースが多かったという。
国会でも取り上げられ、問題になった。
林野庁は「安全な無害化方法が確立されず、掘りだす際に飛散も懸念される」と説明。
林野庁の専門家委員会は、「地域住民の生活に及ぼす影響はない」としている。
現在、年2回の目視による点検のほか、大雨や地震の後に異常がないと確認しているという。
だが、一部の自治体は「記録的な豪雨が全国で多発している」(福岡市)として、撤去を求めている。
林野庁の当時の埋設担当者は、のちに林野庁長官を務めた塚本氏(男性、85歳)。
塚本氏は取材に「誤って使用される恐れもあり、埋めて処分することにした。当時の厚生省などにも相談し、安全面で万全を期したつもりだったが、豪雨や地震の危険性は十分に考慮していなかった」と話した。
林野庁が通達した除草剤を固める方法は、土とセメントによるコンクリ化。
だが、阪田憲次・岡山大学名誉教授(コンクリート工学)は、「砂利ではなく、土を使っている時点でコンクリとすら呼べない。土の中は環境も劣悪だ。すでに塊をなしていない恐れもある。極めてずさんな方法だ」と指摘している。
【埋設の1キロ先で土砂崩れ、豪雨の被災地】
熊本県芦北町の山中には、林道から十数メートル入った草木が生い茂る一角に、除草剤「2・4・5T系」が埋められている。
埋設量は約180キロ。
立ち入り禁止の看板とともに、高さ2メートルの金網で囲われている。
町は昨年7月、熊本豪雨に見舞われた。
林野庁によると、埋設場所に異常はなかったが、約1キロ離れた林道では土砂崩れが発生。
国土交通省の集計では、町内で38件の土砂崩れが起きた。
林野庁と町の担当者は昨年11月、合同で現場を定期点検。
町の担当者は口頭で除草剤の撤去を打診したが、林野庁担当者は「掘り返すことでの拡散を懸念している。今後も安全に管理したい」と話した。
町の担当者は取材に、「今の段階では適正に管理されているとは思うが、いつ何が起きるかわからない」と話した。
直線距離で約2キロの集落に住む農業の田中さん(男性、69歳)も、「7月は経験したことのないような大雨だった。土砂崩れで漏れ出して水源にでも入ったら大変だ。できれば撤去してもらいたい」と話す。
熊本県には、芦北町を含む3市町に埋設されている。
地震や豪雨が相次ぐことをうけて、県は18年、撤去を林野庁に求めた。
福岡市は1992年以降、ほぼ毎年、佐賀県吉野ケ里(よしのがり)町の埋設分について、周辺の自治体や水道企業団などと連名で移設を要望。
埋設地が福岡市の上水道の取水ダム上流にあるためだ。
18年の要望書では、「記録的な豪雨が全国で多発し、想定外の事象が予想される」と記した。
18年の西日本豪雨時には、埋設地から数キロの峠4カ所が崩れた。
林野庁によると、撤去や移設の書面での要望は過去5年間で、他にも岩手県や鹿児島県伊佐市など4県市町から出ている。
455キロが埋まっている福島県会津坂下町は、撤去は要望していないが、18年、適正に管理されているか質問書を林野庁に出した。
町の担当者は、「災害時などに流出する懸念はある」と話す。
土砂災害に詳しい京都大学防災研究所の釜井俊孝教授は、ダイオキシンは長期にわたり毒性を保ち続けることを踏まえ、埋設地の山について「地形変化を1千年単位で監視する必要がある」としている。
【ダイオキシンとは】
少量でも発がん性などの強い毒性を持つ有機塩素化合物。
環境や生体中では分解されにくく、長期間存在する。
「2・4・5T(トリクロロフェノキシ酢酸)」は、ベトナム戦争で米軍が散布した枯れ葉剤に使われ、不純物のダイオキシンが含まれていた。
下半身がつながったベトナムの結合双生児の「ベトちゃん・ドクちゃん」は枯れ葉剤との関係が指摘され、胎児への先天異常など健康影響への懸念が高まった。
日本ではごみ焼却炉からの発生などが問題となり、土壌や大気の環境基準などを定めた対策特別措置法が1999年に制定された。
https://www.asahi.com/articles/ASP1S73F9P1STIPE00B.html
※同じ朝日新聞から、1年ちょっと前、2019年10月28日付で、夕張市での
埋設事例など、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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北海道夕張市南部の山中に、大量の除草剤が埋設されている――。
こんな情報を北九州市立大国際環境工学部の職員、原田さん(男性、60歳)から受け取った。
記者は9月27日午後、原田さんの調査に同行し、国有林に入った。
林野庁北海道森林管理局の許可を得て、ふだんは立ち入り禁止の未舗装道路を車で進んでいった。
10分もたたないうちに、雑草が生い茂ったくぼ地に出た。
もともとは石炭の露天掘りをしていた場所で、鉄杭が刺さっているのが見えた。
杭は有刺鉄線で囲まれ、立ち入り禁止の看板が2本。
空知森林管理署の名で「この区域に2・4・5T剤が埋めてありますので立入を禁止します」とある。
林野庁などの資料では、夕張の国有林に埋められた245T剤の量は600キログラムに上る。
245T剤とは、除草剤の一種だ。
国は1960年代後半、木材として使う針葉樹の成長を阻む下草を枯らすため、全国の国有林に245T剤を散布した。
だが、その後、この除草剤には猛毒のダイオキシンが含まれていることがわかった。
海外で人体への有害性が報告されると、国は71年に使用を中止した。
大量の有毒な除草剤を、当時考えられる最も安全な管理方法として国有林に埋めた――。
これが政府の公式な説明だ。
当時は無害化する技術がなく、林野庁長官は71年11月、大量の土と混ぜたうえセメントで固めて地中に埋めるよう、全国の営林署に通達を出した。
北海道森林管理局によると、夕張のケースでは、71年12月、埋められた。
84年に調査のため掘り起こして、漏れないように、より強固に固めたうえで埋め直した。
その後は、春夏の年2回、職員らがパトロールして、土砂崩れや漏れなどがないか、目視で確認している。
以来35年間、地元自治体の要請を受け、たびたび水質調査などもしているが、異常は一度も検出されていない。
調査に同行した森林管理局の職員は、「この先もずっとこのまま保管しておくことになります」と言った。
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【なぜ保有?かつて国会で追及も ベトナム戦争と関係?】
日本政府が大量の245T剤を保有していた理由について、別の見方もある。
除草剤は、英語だと「Herbicide」。
Herbは草、cideは殺すという意味で、「枯れ葉剤」とも訳される。
日本政府は、国有林に埋めた物質はあくまで「除草剤」と説明するが、除草剤も枯れ葉剤も、主成分として245T剤が使われている。
ベトナム戦争が泥沼化していた69年7月、衆院外務委員会で、枯れ葉剤の原料である245T剤が取り上げられた。
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http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20191028010500001.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。