2023年6月14日20時3分にYAHOOニュース(新潟テレビ)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
化学製品メーカー「デンカ」の糸魚川市にある工場で配管の切断作業中に爆発事故があり、 50代の男性作業員が死亡しました。
デンカの工場では、これまでボヤ騒ぎなども頻発していて、不安の声が上がっています。
事故があったのは糸魚川市の化学メーカー「デンカ」の田海工場。
14日午前9時半前、工場の関係者から「プラント内で小爆発があって、けが人が出ている」と消防に通報がありました。
近所の人 :
「バーンという音が聞こえたので、山の発破音かと思った」
屋外のプラントで配管の切断作業中に爆発が起きたとみられ、作業をしていた関連会社の社員・渡辺さん(56歳)が心肺停止の状態で病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。
また、一緒に作業していた30代の男性と近くにいた40代男性の2人も巻き込まれ、耳の不調などの軽傷です。
糸魚川市内に2つの工場を持つデンカ。
今回事故があった田海工場とは別の青海工場では、4月に建物や工場内の製造プラントで相次いで小規模な火災が発生しました。
糸魚川市消防本部の緊急立ち入り検査では、全体で28カ所の軽微な改善を指導され、デンカは「再発防止策を徹底する」としていました。
こうした中、別の工場で起きた爆発事故。
近所の人 :
「火災が続いていることもあるし、地元の大企業ですからデンカは、これはよくないですよね」
警察は、爆発の原因を調べるとともに、業務上過失致死の疑いも視野に捜査を進めています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/90ad3abb58121a98c2e529bb8238be6d6d1b7352
6月14日19時4分にYAHOOニュース(新潟放送)からは、青海工場で起きた小規模火災などに関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・
事故があった現場では、当時、複数の作業員が配管を切断する作業をしていたということです。
デンカをめぐっては4月、糸魚川市内の別の工場で製造プラントの設備の一部が焼ける火事があったほか、敷地内の排水溝にたまったガスが燃える火事もあり、糸魚川市消防本部が緊急の立ち入り検査を実施。
施設の維持管理について軽微な28か所の改善を指導していました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0e45235e83616a205ea9ca9e93ef041c6ada002
6月16日17時18分に産経新聞からは、配管が破裂したとみられるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
新潟県警は16日、糸魚川市の化学メーカー「デンカ」の工場で会社員渡辺さん(56)が死亡した爆発事故で、渡辺さんの死因は胸部大動脈損傷だったと明らかにした。
県警によると、渡辺さんの体からは金属の破片が複数見つかった。
メンテナンス作業中だった配管が破裂したとみられる。
事故は14日、渡辺さんら協力会社の作業員がデンカの田海地区工場の屋外で、配管のメンテナンス作業に従事していた際に発生。
40代と30代の男性2人も負傷した。
https://www.sankei.com/article/20230616-JQD4IO5ZINNYPI26U6RHPAXDJU/
(2023年11月24日 修正1 ;追記)
2023年11月23日11時30分にYAHOOニュース(新潟テレビ21)からは、乾燥すると発火する物質(当該性質は事故後の調査で判明)が乾燥状態で配管内にあり、電動ノコ切断時の熱で着火したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
デンカは専門家らによる事故調査委員会を設置し、原因の調査を進め、22日にその中間報告として、原因を特定したことを明らかにしました。
報告によると、原因となったのは合成ゴムの原料となるクロロプレンモノマー(CP)と窒素酸化物(NOx)が結合した「CP-NOxダイマー」と呼ばれる化学物質で、湿った状態では発火の危険はありませんが、乾燥すると危険が増すといいます。
作業当時、配管内に付着した「CP-NOxダイマー」が乾燥した状態になっていて、配管を電動のこぎりで切断した際に、その熱で着火し爆発につながったと推定されるとしています。
また、「CP-NOxダイマー」が乾燥すると発火の危険があることは今回の調査で判明したということです。
デンカは再発防止対策として、CP-NOx ダイマーの管理を徹底し、協力会社の安全管理や、全社的な安全管理の強化を図るとしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8bafad657c9451d5a0b100c4a77a598b0974b0c4
2024年1月12日付で上越タイムスからは、最終報告書が公表された、着火源から3m離れた場所で爆発した、当該部分には原因物質が多く付着していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
デンカ(本社・東京都)は11日、糸魚川市の青海工場クロロプレンモノマー製造設備で昨年6月、メンテナンス中の配管が破裂し協力会社の従業員1人が死亡、2人が負傷した事故について、事故調査委員会による最終報告書を公表した。
事故原因は、昨年11月の中間報告書でも示した、配管を通る「クロロプレンモノマー(CP)」と窒素酸化物(NOx)が結合した「CP―NOxダイマー(原因物質)」と特定した。
事故調は、原因物質が100度前後で発火することを突き止め、配管切断時に使った電動のこぎりの熱で原因物質が発火、爆発したと結論づけた。
事故で死亡したのは、電動のこぎりの作業者から約3メートル離れた場所で配管を支えていた協力会社の従業員。
作業場所と爆発箇所が離れている点については、配管内壁の上流側に付着していた原因物質に徐々に燃え広がったこと、爆発部分に原因物質が多く付着していたことを挙げた。
また、工事前に行われたドライ窒素を配管内に流入させる作業で原因物質が乾燥、摩擦感度などが高まり、危険が増したと指摘した。
最終報告書は、同社の安全に関する意識の低さを間接要因として指摘。
「長年事故がなかったことから、この設備は安全であるという『思い込み』があった」として、事故発生日の6月14日を「安全の日」として記憶するよう求めている。
事故調査委は昨年7月発足。
委員長を務める京葉人材育成会の中村昌允代表理事・会長をはじめ学識者ら外部委員4人、デンカの高橋専務ら社内委員4人の計8人で構成。
現地視察を含め計9回の会議を開き、調査を進めてきた。
https://j-times.jp/archives/47833
1月12日16時16分にYAHOOニュース(新潟テレビ)からは、水洗いによる液だれを防ぐためドライ窒素で配管内を乾かしていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「CP-NOxダイマー」は乾燥すると発火の危険があり、作業当時、配管内に付着して乾燥した状態になっていました。
関係者は「CP-NOxダイマー」を湿った状態に保てば安全に工事が実施できるという認識があり、工事の前にあらかじめ配管の液抜きや水洗いをしていたものの、水洗いによる液だれを防ぐために、ドライ窒素で配管を乾かした結果、乾燥してしまい危険性が増したということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4771cc199cadc0fd8317ea685195d782ba1c53f4
※以下は、最終報告書の主要ポイント抜粋。
窒素で配管内を乾かしたのは液だれによる薬傷防止のためなどと記されている。
P6/66
<事故発生の経緯>
04:00頃 配管解体前準備の為、水洗を停止し、ドライ窒素にて水切置換開始
06:30頃 配管水切り終了し、窒素置換を停止
08:40頃 デンカから工事元請会社へ配管交換作業許可証を発行
09:00頃 工事元請会社・工事施工会社が現地の作業前ミーティング実施
その後、工事施工会社従業員が5C工程内タンクヤード内にて更新する配管の取り外し作業を開始。
配管の両端のフランジを開放。
配管をラックから取り出すために、配管の中央付近で切断に着手。
工事施工会社従業員のうち、1名が脚立上で配管を支え、1名がラック上でセーバーソー(電動のこぎり)を使用、1名が歩廊上で監督
09:05頃 配管破裂(爆発)が発生(事故の発生)
ブログ者注)p9/66に被災者3名の位置関係写真あり)
P13/66
4-1.調査結果のポイント
② 配管のセーバーソーによる切断箇所は爆発しておらず、爆発箇所は、当該切断箇所から約 2.9m離れたエルボ部付近で起きた(このエルボ部を支えていたと推察される工事施工会社従業員 A が被災)。
③ 当該爆発の着火源は、セーバーソーによる配管の切断時に発生した熱と推定する。
・切断時にその刃先は 150℃以上に発熱した。
・スケール(付着物)は、約 100℃になれば発火する。
④ 当該切断箇所から爆発箇所にかけての配管内にスケールが付着しており、爆発箇所において多く付着していたと推定されることから、約 2.9m離れたエルボ部で配管破裂事故が発生した。
P18/66
<過去の事故情報>
① 1994 年 DuPont 社事故
デンカは、1995 年頃、DuPont 社研究者から送付された書簡によりその事故の概要を知った。
その書簡は、保安技術に関して同業関係者への参考情報として送付されたもので、そこでは、DuPont 社において配管破裂事故があり、その原因物質が CP-NOx ダイマーであることが記載されていた。
今回の事故発生後、DuPont 社事故の詳細を調べたところ、1995 年8 月発行の Chemical and Engineering News において、DuPont社の研究者からの速報として、CP-NOx ダイマーの危険性を警告する記事が掲載されていた。
しかし、当時のデンカに送付された書簡や Chemical and Engineering News の記事からは、当該物質の構造や生成メカニズム等の詳細までは確認できず、今回のデンカでのプラントにおける配管内壁付着スケールの危険性を想定することは難しかった。
・・・
②2001 年デンカのインシデント
デンカ青海工場では、2001 年にクロロプレンモノマーと NOx の付加物と推察されるスケールが付着した配管が破裂したことがあった。
この事象は気相部でクロロプレンモノマー、NO ガス及び酸素が存在したことが発生原因であったことから、再発防止策としてクロロプレンモノマー蒸留塔のコンデンサ―冷却、及び真空装置の気密管理を強化した。
この結果、スケール類の生成・堆積を抑え込むことができ、この問題は解決したものと判断されていた。
加えて、過去より、今回の事故が生じたクロロプレンモノマー移送配管のような液相部において、クロロプレンモノマーと NOx の付加物が析出するといった事象がなかったこともあり、この情報を活用するには至らなかった。
P20/66
4.事故の直接原因
4-5.窒素流入による爆発物質の乾燥化
配管において、当日未明までに、配管水洗によりスケール(CP-NOxダイマー)を湿潤状態にした上、湿潤下における有機物の液だれによる薬傷(皮膚の炎症)を防止するため、ドライ 窒素を流入させていた。
事故以前は、スケール類は、一旦湿潤状態にすれば、湿潤状態が維持できていると考えられていた。
P22/66
4-7.着火源の特定と爆発のメカニズム
(1)セーバーソー切断時の刃先の温度(実証実験結果) 実証実験の結果、セーバーソー切断時に刃先が発熱し、刃先が中古品でも新品でも CPNOx ダイマーの発火温度である 100℃以上の温度に達することが判明した。
P24/66
(2)-2.配管のスケール付着状況とシミュレーションの結果の対比
配管の切断部より下流側は、事故後も内壁はきれいなステンレスであった。
セーバーソーによる配管切断部で着火し、爆発に至らなかったのは、その付近でのスケールの付着量が少量であったためと推定される。
図 18 では、配管におけるスケールの厚みの実測値と実測値を基に算出した推定値の対比を示す。
配管の切断箇所のスケールの厚みは薄く、爆轟には至らなかったと推定される。
一方、切断箇所から上流の配管ほどスケールの厚みが増し、破裂箇所(図 18中4m付近、スケール厚み約 1.2~1.6 ㎜)では破裂の可能性が十分あったと推定される。
P25/66
<結論>
① セーバーソーによる配管の切断時に発生した熱によって切断部付近の付着スケールが発火して、火炎が生じ、切断部付近に付着していたスケールが燃えて爆燃現象が生じた。
② 爆燃現象によって発生した火炎・圧力が、配管内の上流側に付着していたスケールに次々と伝播して、スケール量が増えるに伴って、火炎は大きくなり、エルボ部まで達した。
③ 配管の上流側(図 9、図 10)はスケールが多く堆積していたので、配管のエルボ部付近において爆発・配管破裂が起きた。
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1193/20240111_denka_omi_finalreport.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。