『熊本地震 「新耐震基準」導入後の住宅に明暗』
(2016年4月22日6時30分 日本経済新聞 ;趣旨・要約)
本震の発生後、木造住宅の耐震診断と補強に詳しい耐震研究会(東京都)の建築実務者数人と、益城町に向かった。
取材目的の第一は、新耐震基準導入以降に建築された木造住宅の被害状況を知ることだ。
木造住宅の耐震性能は、1981年より前の旧耐震基準と、81年の新耐震基準導入以降で、大きく異なる。
今回ほどの大地震に、旧耐震基準で建てられた住宅が持ちこたえるのは難しいと予想されたため、新耐震基準導入以降の住宅に絞ろうと考えた。
益城町の被災住宅は、本震を受けて、前震のときより急増していた。
全てを見て回り、該当する被害を探し出すには、時間がかかる。
そこで、本震の発生前に放送されたテレビ番組を見直したところ、益城町の西側にある安永地区周辺の映像に、倒壊している比較的新しい住宅が2棟映っていた。
その情報から住所の見当を付けて、現地に向かった。
現地に到着すると、土ぶき瓦の、いかにも古い住宅が数棟並んで倒壊し、道を塞いでいた。旧耐震基準の住宅だ。
一方、その向かい側の住宅数棟には、目視では、大きな建物被害は確認できなかった。使われている外装材などから、新耐震基準導入以降ではないかと推定される。
先に進むと、探していたうちの1棟を発見した。木造2階建てのアパートで、1階が完全につぶれていた。
土台と基礎はアンカーボルトで固定されているが、土台と隅柱にホールダウン金物がない。このことから、新耐震基準導入以降の住宅だと判断した。
新耐震基準導入以降の住宅が、本震の前に倒壊していたと考えられる。
アパートから離れると、家の外に避難している住民に出会った。家が倒壊したので、前夜は車中で過ごしたという。
「自分の家は古いので前震で倒壊したが、周りは前震では自立していたものの、本震で倒壊した住宅が多い」と話す。
探していたもう1棟について尋ねると、場所を教えてくれた。前震で倒壊したという。この住宅は、1階が崩壊して元の場所から2m以上移動していた。
使用されていた建材から、新耐震基準導入以降の住宅だと推定される。
この住宅の外壁には、以前は接続していたと思われる母屋の跡があった。隣には旧耐震基準の古い母屋が、この住宅に倒れ掛かるように倒壊していた。
調査を共にした耐震研究会代表理事の保坂氏は、「古い母屋に新しい住宅を増築していて、地震で古い母屋が倒れた影響で増築部も被災したと思われる」と話す。
この住宅の向かい側には、使われている外装材から、新耐震基準導入以降と推定される住宅が建つ。
隣の家が全壊した影響で外壁の一部が傷付いているが、そのほかの被害は、目視では確認できなかった。
今回取材した限られた地域内でも、新耐震基準導入以降と思われる住宅で、前震で倒壊したものと、前震と本震を受けても被災が目視で確認できないものが存在していた。
日経ホームビルダーでは引き続き、新耐震基準導入以降の住宅の被災状況の取材を進めていく。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99873060Q6A420C1000000/
『倒壊免れた建物に注目 「強い揺れに耐える建物のヒントになるのでは」 土木学会が益城町視察』
(2016年4月23日17時15分 産経新聞west ;趣旨・要約)
土木学会の調査班は、23日、熊本県益城町の住宅街や役場の被害状況を視察した。
政策研究大学院大学の家田仁教授(土木工学)は、記者団に、同じ鉄骨造りでも、倒れた建物と倒壊を免れた場合があると指摘。
「残った建物の建築方法は、強い揺れに耐える建物のヒントになるのではないか」と話した。
調査班は、家田教授ら5人で構成。国土交通省九州地方整備局の職員らから説明を受けながら、益城町内を回った。
土木学会は、今後、防災対策の助言をまとめる予定。
http://www.sankei.com/west/news/160423/wst1604230069-n1.html
『家屋被害、建築時期で大差 専門家「旧家は耐震補強を」』
(2016年5月1日0時47分 朝日新聞 ;趣旨・要約)
一連の地震で犠牲になった人たちは、どんな場所に立つ、どんな家にいて巻き込まれたのか。
建物の古さ、緩い土壌、2度の激震……。専門家は、様々な要因を指摘する。
家屋が軒並み倒壊している。震度7の激震に2度見舞われた益城町内では、そんな光景をあちこちで目にする。
地図に重ねてみると、倒壊が多かった地区は、町内を流れる木山川や秋津川に沿うように並び、ほぼ並行して活断層が走っている。亡くなった人がいた建物も、その地域に目立つ。
平田地区も、そんな場所の一つだ。
内村さん(83)は、自宅1階で寝ていて、本震で家屋の下敷きになって亡くなった。1階が押しつぶされ、2階の瓦屋根が崩れ落ちていた。102歳になる母親が幼少の頃からあったという、古い建物だ。
他方、その隣に立つ家は、損壊も傾きもない。住人の内村さんの娘(55)は、「築13年の木造住宅。傷みはなく、地震後も変わりなく住んでいる。この辺りは、旧家が軒並み倒れている」と話す。
一帯では、内村さんを含め、6人が死亡した。いずれも、古い木造家屋だった。
現地で倒壊家屋や地盤の調査をした古賀一八・福岡大教授(建築防災)によると、調べた範囲では、倒壊家屋のほとんどが、建築基準法が改正された1981年以前の建物だった。
81年以後の建物で倒れたのは数軒で、より基準が厳しくなった2000年以後の建築では、建材が折れる損壊が1軒で確認されただけで、いずれも死者はいないという。
古賀教授は、「旧基準の建物は大きな地震で倒れる可能性が高く、耐震補強の必要があると改めて感じた」と話す。2階部分の重さがかかる1階は、特に崩れやすいという。
さらに古賀教授は、土壌についても指摘する。
「川に近く、砂質で液状化しやすい。『盛り土』も目立つ軟弱な地盤。活断層も近い。建物の倒壊が起きやすい条件が重なってしまった」
そんな町を、2度の震度7が襲った。
http://digital.asahi.com/articles/ASJ4Y7568J4YTIPE043.html?rm=225
(2/2へ続く)
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。