2017年5月9日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京都文京区で、今年2月、マンションに住む20代の女優方に侵入したとして、管理人の男(50)が逮捕される事件があった。
警視庁の捜査や裁判で浮かび上がったのは、仮に倫理観に欠ける管理人が立場を悪用すれば、セキュリティーの高いマンションでも住民のプライバシーが簡単に侵害されてしまうという弱点だった。
業界関係者は、「高い意識を持った管理人を育てるための研修などを充実すべきだ」と指摘する。
男が管理していたのは、文京区の閑静な住宅街にある学生向けのワンルームマンション。
充実した防犯設備が売りで、管理人が24時間常駐し、玄関でカードキーをかざさなければ入れない。
防犯カメラもいくつも設置されている。
家賃は月7万円程度だが、管理費は5万円弱。
地元の不動産業者は、「セキュリティーに力を入れている分、周辺の物件より管理費が高い」と話す。
裁判での検察側の冒頭陳述などによると、男は2015年9月から妻と住み込みで勤務し、次第に女優に好意を持つようになった。
非常時に備えて管理していたマスターキーを使い、2月6~7日に部屋に侵入して小型カメラを仕掛けた。
女優がカメラに気づき、男は住居侵入容疑で逮捕された。
男は1月にも侵入し、室内をスマートフォンで撮影していた。
このマンションでは、カードキーで住人が建物に出入りした時刻を管理人が把握できるシステムを導入しており、男は女優が外出したタイミングを狙って侵入した。
管理人が食事を提供するサービスもあり、キャンセル状況で長期の不在も確認できたという。
男は警視庁の調べに、「業務目的だった」と容疑を否認したが、4月17日に東京地裁であった初公判で起訴内容を認め、「どんな生活をしているかという興味で歯止めが利かなくなった」と語った。
裁判官から職業倫理について問われると、「管理人として高い意識を持つべきだった。今後は権限を持つ仕事にはつかないようにしようと思う」とうなだれた。
同地裁は4月25日、男に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
女優は事件後、マンションを退去した。
このマンションに住む女子学生(18)は、「管理会社から一切説明がない。管理人がそんなことをするとは、とても怖い」と話した。
管理会社は、毎日新聞の取材に応じていない。
マンションの住宅に管理人が侵入した事件では、昨年5月に歌手の福山雅治さん方にコンシェルジュの女(48)=住居侵入罪で有罪判決=が入り込んだ例もある。
女は立場を悪用して福山さんの不在を確認し、マスターキーで侵入していた。
マンションは外部からの侵入者対策に力を入れているが、管理人の犯罪はほとんど想定していない。
NPO法人「全国マンション管理組合連合会」(東京都)の川上会長は、「高い防犯設備を備えたマンションは、中に入ってしまうと逆に密室となり、犯罪がばれにくい」と指摘する。
福山さんの事件を受けて、再発防止に向けた動きも出ている。
管理会社でつくる一般社団法人「マンション管理業協会」(同)は、加盟企業の社員を対象にした法令順守の研修を増やし、各社に社員教育を徹底するよう呼びかけている。
同協会の鈴木事務局長は、「管理人は住民の機微なプライバシーに接する仕事。決して越えてはならない線があることを意識しなければならない」と話している。
出典
『マンション セキュリティー高くても 管理人の立場、悪用が弱点』
https://mainichi.jp/articles/20170509/dde/041/040/053000c
(ブログ者コメント)
いかに鉄壁な安全設備やシステムを構築しても、それを運用するのは人間。
産業安全にも通じる話だと感じたので紹介する。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。