2017年5月10日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
稼働中、羽根に野鳥が衝突して死んでしまう風力発電所での「バードストライク」。
犠牲になる鳥が絶滅危惧種の場合も珍しくなく、環境省は、野鳥への影響の大小を示す地図を今年度末にもまとめ、計画段階での予防を狙う。
そのためには、鳥の飛行の傾向など、実態把握が不可欠だ。
【絶滅危惧種も】
日本野鳥の会は、風力発電所でのバードストライクで死んだ野鳥を見つける講習会を開くなど、被害把握に努めてきた。
米国の専門家を招き、「一歩進んでは振り返って、草の根元をよく見て」などとコツを会員らに伝授し、練習も実施した。
参加者は、「ニワトリより小さいウズラは、2m先にあっても見逃してしまう。特に草の根元にあれば、目を凝らしても分かりにくかった」と振り返った。
風力発電所でのバードストライクで死ぬ野鳥について、同会は、会員らの報告などから、2001年~14年3月に計341羽が被害に遭い、うち絶滅危惧種は、オジロワシなど6種計50羽が犠牲になったと見ている。
しかし、「見つけるのが難しい上、肉食の野生動物が食べてしまうケースも多く、氷山の一角に過ぎない」(同会)という。
実際、風力発電所の事業者が「バードストライクは起きていない」としていた北海道沿岸地域で、大学生が07~08年にかけて計50羽の野鳥の死骸を見つけた例もあるほどだ。
【データ蓄積必要】
地球温暖化対策として、風力発電所の設置が相次ぐことが予想される中、環境省はバードストライクを防ぐための手引を昨年6月にまとめた。
鳥に風車の存在を知らせるため、羽根やタワー下部を彩色したり、警戒音を出したりする対策を公表。
鳥が比較的多く飛ぶ時間帯や時期に運転を抑制するなどの対策を盛り込んだ。
また、今年度中に、鳥類が多く生息している地域や移動のルート、希少種の営巣状況などを図示する「センシティビティーマップ」を公表することを目指している。
被害が予測される場所を事前に把握し、設置を避ける手法で、英国やドイツでは導入されている。
ただ、こうした対策の効果を把握し、地図の精度を高めるためには、鳥の飛行ルートの分析などデータの蓄積が欠かせない。
日本気象協会では、気象データ観測の技術などを応用し、測量に用いる「セオドライト」と呼ばれる機器を使った鳥の飛行経路の分析や、船舶レーダーを使って鳥の存在位置を24時間監視できるシステムなどを構築している。
気象協会の島田泰夫主任技師は、「対策はいまだ手探りの部分があり、正確に鳥の飛行状況や衝突のメカニズムを解明し、対策に生かすことが必要だ」と指摘する。
出典
『バードストライクを防ぐ 風力発電所設置に手引 飛行経路調査』
https://mainichi.jp/articles/20170510/ddm/013/040/035000c
以下は専門家の意見。
絶滅危惧種の被害で現在目立つのは、国の天然記念物でもあるオジロワシです。
北海道に150~200ペアが繁殖しているとされていますが、バードストライクによって将来的に数を減らすという分析結果もあります。
環境影響評価(アセスメント)法に基づく手続きが求められているため、衝突頻度を計算することになっています。
およそ年1羽以下なら影響軽微となりますが、衝突だけでなく、風車を建てることによって鳥が警戒し、営巣をやめてしまうなどの影響も考慮すべきです。
環境省のマップには期待しますが、計画自体は事業者の判断です。
そこで、マップに従った事業者に対しては、アセス法に基づく手続きを緩和したり、事業者が自主的に第三者の客観的な詳細調査をした場合には、電気を高く買い取ったりするという動機付けも必要ではないでしょうか。
出典
『バードストライクを防ぐ 日本野鳥の会主任研究員・浦達也さん』
https://mainichi.jp/articles/20170510/ddm/013/040/041000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。