2018年11月11日1時30分に日本経済新聞電子版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
日本企業の品質検査不正が止まらない。
鉄鋼、自動車に続き、油圧機器メーカーのKYBが免震装置で検査不正を公表した。
なぜ、品質の根幹である検査データを偽るのか。
SUBARU(スバル)や日産自動車などの調査報告書を読み解くと、一つの共通点が浮かび上がる。
設備の老朽化と人手不足で「衰える工場」という現実だ。
「建屋や空調機の老朽化で、燃費・排ガス検査の際に湿度の基準を
満たせず、検査員がドアに目張りし、電気ポットの蒸気で湿度調整
していた」
(スバル)
「アルミの検査不適合品を合格と偽って出荷したのは、再検査のため
の保管スペースが1日で埋まってしまうため」
(三菱マテリアルグループ)。
弁護士らが調査した各社の報告書だ。
「品質」を最大の強みにしてきた日本のものづくりのイメージとは、かけ離れた実像が表面化した。
各社は、老朽化した設備で検査を続けていた。
約10万台のリコールに発展したスバルの群馬製作所(群馬県太田市)の検査建屋は、1960年代に建てられた。
日産の栃木工場(栃木県上三川町)の排ガス試験室の空調機も、77年に設置されていた。
【改修に改修重ね】
日産は連結売上高のうち6割、スバルは7割を海外で稼ぐ。
稼ぎ頭の海外を中心に新規投資を振り向ける一方、国内工場は改修に改修を重ねて運用してきた。
経産省によれば、新設からの経過年数である「設備年齢」は、大企業で90年度と比べて1.5倍に増えた。
人への投資もおろそかになっていた。
日産は経営危機に陥った99年以降、カルロス・ゴーン現会長の指揮下でリストラを断行し、「国内技術員が人手不足に陥った」(報告書)。
人手が足りず、納期に間に合わせるために不正を繰り返す。
KYBの検査員は延べ8人、一時は1人で作業にあたっていた。
「基準に満たない製品を分解して正しくするのに5時間かかる」(カヤバシステムマシナリーの広門社長)が、人的な余裕がなく、改ざんに走った。
日本の製造業は国内工場を「マザー工場」と位置づけ、現場の“カイゼン"で生産効率を徹底的に高めて、海外工場にノウハウを移転してきた。
だが、労働コストが安い新興国に最新鋭工場ができると、国内の競争力が低下。
ベンチマークの海外工場と比べられ、国内生産が消える危機感が現場に芽生え始めた。
【納期守るために】
日産は、各国の工場の生産能力や労務コストなどを比較し、生産拠点を決める。
「マーチ」の製造を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイ工場に移した際は、余剰となった技術者の多くが海外に派遣された。
17年10月にアルミ製部材のデータ改ざんが発覚した神戸製鋼所も同様だ。
ある従業員は、「売り上げが低下すると、工場が操業停止に追い込まれる恐れがあった」と証言している。
海外でも15年に、独フォルクスワーゲン(VW)で排ガスデータの大規模改ざんが発覚した。
だが、「欧米では経営層が不正を指示するケースが多いが、日本企業は現場が忖度した結果、不正に発展することが多い」(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーのプリボスト真由美氏)。
カイゼンの名の下、問題の解決を現場に任せてきた日本企業。
各社の報告書でも、コストや納期を守るために、現場の判断で不正に手を染めたケースが目立つ。
もちろん、それが経営陣の言い訳にはならない。
コスト削減を掲げるだけで、現場のひずみに目をつぶり、不正に追い込んだ経営の責任は重い。
日産は6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する。
スバルも5年間で1500億円を設備更新に充てる。
しかし、局地的な対応策で「ものづくり力」が回復するかは、未知数だ。
製造業のデジタル化を目指す「インダストリー4.0」を掲げるドイツでは、生産から検査までロボット技術を使った最先端工場で本国に生産回帰する動きが始まった。
独アディダスは17年にロボットが靴を自動生産するラインを導入し、24年ぶりに生産を自国に戻した。
膨大な情報を自動で分析する技術は、検査工程や品質向上にも活用できる。
生産年齢人口が減少するなか、現場の感覚や頑張りだけに頼ったものづくりは限界を迎える。
日本のものづくりの復権のためには、抜本的な生産の革新が必要になる。
出典
『衰えるニッポンの工場 品質不正を招く』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37628350Q8A111C1MM8000/?n_cid=NMAIL007
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。