2024年6月23日5時0分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京・羽田空港での日本航空と海上保安庁の航空機衝突事故を受け、国土交通省が取り組む再発防止策の全容が判明した。
離着陸を許可する管制官への支援役を管制塔内に新設し、主要空港の管制機能を強める。
滑走路への誤進入を検知するシステムは、注意喚起、警報の2段階に拡充する。
24日に公表する新たな対策では、管制塔内の体制を強化し、離着陸する航空機に許可・指示を出す「滑走路担当」を支える役割として、「離着陸調整担当」を置く。
離着陸調整担当は、滑走路担当が併せて担っていた近隣管制機関や別の管制官との連絡調整を行うことで、滑走路担当の負担を減らし、離着陸時の安全性を高める。
設備面では、誤進入を検知して管制官に知らせる「滑走路占有監視支援機能」のアラート(警告)を強化する。
着陸機が接近する滑走路に別の航空機が進入した場合、現状はモニター画面で滑走路が黄色く点灯し、機体は赤く表示される。
これに注意喚起音が鳴るようにした上で、事態がさらに切迫すれば強い警告音・表示に切り替え、着陸を直前でやり直す「ゴー・アラウンド」の指示を管制官に促す。
国交省は、8月にまとめる2025年度予算の概算要求などに関連する費用を盛り込む方針。
【ヒューマンエラー防止や注意喚起システム強化など5分野で対策】
東京・羽田空港での日本航空と海上保安庁の航空機衝突事故で、国土交通省は週明けの24日、外部有識者と航空関係団体による事故対策検討委員会の第7回会合を開催し、再発防止策を正式に決定する。
国交省関係者によると、1月以降、検討委で議論してきた新たな対策案は、
〈1〉管制交信でのヒューマンエラー防止
〈2〉滑走路誤進入の注意喚起システムの強化
〈3〉管制業務の実施体制の強化
〈4〉滑走路の安全の推進体制の強化
〈5〉技術革新の推進
で構成する。
事故後も福岡空港で関連するトラブルがあった〈1〉では、コックピット内のパイロット間の相互確認などを徹底する「クルー・リソース・マネジメント(CRM)」を初期・定期訓練で繰り返し学ぶよう、自家用免許にも対象を広げて全パイロットに義務付ける。
交信を巡る行き違いを防ぐための教材も充実させ、管制官やパイロットの教育・訓練に生かす。
事故時に海保機に伝えられた「ナンバーワン」など、1月から伝達をやめている離陸順の情報提供は、現場のパイロットから「必要だ」との声もあり、近く再開する。
設備面の対策にあたる〈2〉では、「滑走路占有監視支援機能」のアラート(警告)強化に加え、点検・保守作業などで滑走路に立ち入る車両に「位置情報送信機」の搭載を義務付ける。
管制塔による車両の走行状況の監視を強化することで、誤進入による事故を防ぐ。
〈3〉では業務の分担を見直して「離着陸調整担当」を置いて管制機能を強化するほか、管制官のストレスケアや疲労管理の体制・運用を高度化させる。
【日本の先行く海外の取り組みを導入】
正月の羽田空港での事故からまもなく半年。
国土交通省は再発防止策の取りまとめにあたり、滑走路の安全に関わるハードとソフト、すなわち「人、運用、技術」のバランスを念頭に、一体的なリスク低減を図った。
新たな取り組みが、別のリスクを生まないことにも配慮したという。
対策の大半は、欧米やアジアの航空当局や国際機関の状況を丹念に調査し、日本の先を行く取り組みを導入した形だ。
ただ、裏を返せば「悲惨な事故を機に、諸外国への遅れをやっと取り戻そうとしている」との厳しい見方と反省の声は、国交省内にもある。
政府は2030年の訪日客数を6000万人と、23年の2倍超を目指している。
航空需要はさらなる増大が見込まれる一方で、それに見合った「空の安全・安心」を確保できているか。
不断の努力と点検がいっそう求められる。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240622-OYT1T50222/
6月27日7時0分に毎日新聞からは、アラーム音が頻繁に鳴る可能性ありなど、今回明らかになった対策案をとった場合に考えられる問題点などが下記趣旨でネット配信されていた。
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中部国際空港の元主任航空管制官、田中さん(41)は「中間まとめ」の内容に疑問を投げかける。
「羽田特有のリスクに触れられていない」
「前進にはなるが、これで十分なのか」。
その疑問の理由は、いったいどこにあるのだろうか。
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Q.航空関係者から、羽田など一部の空港では黄色の表示が頻繁に出ると聞きました。
「1日に何十回も表示される」という声もあります。
離着陸の間隔が短いため、実際は安全なのに黄色表示が出てしまうケースがあるようです。
A.どういう場合に黄色の表示を出すかというシステムの設定によりますし、離着陸の間隔が短ければ短いほど表示は出やすくなります。
もし、その証言のように安全な間隔が設定されているのに黄色の表示が頻繁に出る空港があれば、管制官は不要な警告に嫌気が差して、警告表示が「オオカミ少年」化している可能性があります。
そこに警報音まで出るようになると、状況は悪化します。
(実際は安全な場合に)表示だけなら無視することもできますが、管制官が手動で音を消す作業まで必要になるかもしれません。
中間まとめにも記載がありますが、機能の精度の確保と適切な設定は最低限の要件です。
そもそも国交省は、羽田の事故の際に、(海保機が誤進入したことによる)黄色表示に管制官が気付いていたのかどうか明らかにしていません。
もし表示に気付いていたのに手を打たなかったのなら、警報音を出す意味は薄れます。
羽田空港は離着陸数が日本一多い上、4本の滑走路が井桁のように重なる複雑な構造なので、警報の機能が羽田空港に合っているのかという点は検証の価値があります。
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Q.滑走路の監視を担当する管制官とは別に、「離着陸調整担当」という管制官のポストも新設されます。
A.この管制官が何をするのか、現時点では分かりません。
今後、役割の定義づけから始めると思いますが、(事故防止に)どう作用するかは、実際に運用してみなければ分かりません。
また、1人分のポストを新設するには、24時間空港では交代制勤務の関係で管制官を6人増やす必要があるのです。
国交省は、羽田の事故で批判を受けたので、とりあえず管制官を増員するようにしか見えません。
検討委も、提言通り実効性のある配置となっているか、しっかり見守ってもらわなければなりません。
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Q.本当は検討すべきだったのに、中間まとめに入っていない要素はありますか。
A.議事概要を見るかぎり、今回の検討委は、過密ではないかと指摘される羽田空港の発着枠数、井桁状の滑走路運用など、羽田特有のリスクが許容範囲内かどうかについて、一切検討していません。
羽田空港には他の空港にないリスクが存在しているかもしれないのに、そこに触れようとしないのであれば問題ですが、最初から検討項目から外れています。
ある意味で大人の事情というか、(政府に迎合する)「御用会議」ではないかという批判も免れないでしょう。
今回の中間まとめは全体としては日本の航空の安全に寄与するものですが、細かい部分ではまだ疑問符がつくものや不十分なものがあるので、今後も検討委と国交省の動きは注視していく必要があるでしょう。
https://mainichi.jp/articles/20240626/k00/00m/040/165000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。