2021年8月10日21時51分にYAHOOニュース(神奈川新聞)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
9日午後11時15分ごろ、神奈川県横須賀市平成町3丁目のうみかぜ公園前の護岸で「女の子が海に転落し、見失っている」と近くにいた女性から119番通報があった。
県警横須賀署によると、海に転落したのは東京都板橋区の女児(2)で、県警、消防、海保が捜索しているが、行方不明となっている。
県警などは10日午後6時半ごろに捜索をいったん打ち切り、11日朝に再開する。
署によると、女児は父(23)、母(21)と一緒に9日午前1時ごろから護岸を訪れていた。
3人は車で休憩しながら、同日夜まで釣りを続けていたという。
女児は護岸に設置された鉄柵でつかまり立ちなどをした際、柵の格子の間から転落したとみられる。
転落音に母が気付き、父が助けようと海に飛び込んだが女児は流されたという。
身長約90センチで黒いシャツ、紺色のジーパン、白のサンダルを身に付けていた。
横須賀海上保安部によると、事故当時は風はやや強かったが、波はそれほど高くなかったとみられる。
護岸を管理する市によると、柵は高さ1・2メートルで、格子の間隔は16センチ。
子どもが間をすり抜ける事故が起きたことはなかった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/de96370129266f264cb07593b1fec790074efaad
8月10日11時6分に読売新聞からは、通報した女性も釣り人だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
9日午後11時15分頃、神奈川県横須賀市平成町のうみかぜ公園で、釣りをしていた50歳代の女性から「女の子が海に落ちた」と119番があった。
転落したのは東京都板橋区の女児(2)で、気付いた20歳代の父親が飛び込んだが見つけられなかった。
横須賀署と消防、海上保安庁が捜索している。
横須賀署の発表では、女児は公園に夜釣りに来ていた両親と一緒にいたが、両親が目を離した隙に釣り場から約2メートル下の海面に落ちたという。
釣り場には金属製の柵(高さ約1・3メートル)が設置されていたが、女児は約20センチ間隔の柵の隙間をすり抜けたとみられる。
公園は京急線横須賀中央駅から東に約1キロ。
当時はほかにも釣り人がいたという。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210810-OYT1T50063/
8月12日21時53分にNHK神奈川からは、女児が遺体で発見されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
警察や海上保安部などが捜索を続けていたところ、12日午前、公園から北西に4キロ余り離れたアメリカ軍の施設の護岸で、職員が女の子の遺体を見つけた。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20210812/1050014751.html
※8月11日10時24分にYAHOOニュースからは、『子供連れの釣りなら親子で救命胴衣の着用を徹底しましょう』というタイトルの水難学会会長寄稿文が複数枚の写真付きでネット配信されていた。
神奈川県横須賀市で家族と夜釣りに来ていた2歳の女の子が海に転落し、行方不明となっています。
釣り場には柵が設けられていて、思いもよらぬ転落でした。
まさかの水難事故から命を守るのが救命胴衣です。
【釣りをしている最中の転落】
同じような水難事故は、過去にもたびたび発生しています。
2020年7月には静岡県の御前崎港の西埠頭で、釣りに来ていた女児が海に転落し、女児の父が助けに飛び込んだ事故がありました。
2人は約40分後に消防に救助され、2人とも命に別条はありませんでした。
この事故では、午前4時頃、岸壁の上で居眠りをした女児が約2 m下の海面に誤って落ちたとされています。
(2020年7月26日 静岡新聞を参考)
また同年5月には金沢市の金石港右岸岸壁で、釣りをしていた小学生の男児が1.5 m下の海に転落しています。
近くにいた父親が海に飛び込んで男児を支え、駆け付けた金沢西署員や市消防局の救助隊員が2人を海から救助しました。
朝9時ごろの事故でしたが、こちらも2人の命に別条はありませんでした。
(2020年5月30日 北國新聞を参考)
いずれも救命胴衣(ライフジャケット、注1)を着装していたかどうかまで記事では言及されていませんが、親子で浮いていたからこそ救助を待つことができたという、不幸中の幸いの事故例と言えます。
【親子で救命胴衣の着用を徹底】
新潟県内の管理釣り場として開放されている防波堤の上では、救命胴衣を着用しなければ入場できませんので、カバー写真のように親子で救命胴衣を着用している姿を普通に見ることができます。
一方、波止のように管理されていない場所では、だいぶ着用率は落ちて、例えば柏崎マリーナから大学のヨットで出航する時に見ていると、着用していない親子連れが目立ちます。
救命胴衣は、親子で着用しなければ意味がありません。
自分の子供にだけ着用させて、もし子供が転落したら、親は浮き具なしで水に飛び込んでしまいます。
子供の救命胴衣の浮力は子供だけのもの。
親の浮力までは面倒を見切れません。
条件が悪ければ、子供は助かり親が沈んでしまうことになりかねません。
【適切なサイズの救命胴衣を選ぶ】
子供には子供用の救命胴衣を、しかもサイズのあった救命胴衣を着せます。
図1をご覧ください。
左のモデルには大人用の救命胴衣を着せています。
右のモデルには子供用の救命胴衣を着せています。
襟元で引っ張り上げると、その差は一目瞭然。
左の大人用では股下ベルトがないことも相まって、顔が隠れてしまうくらい救命胴衣がずり上がってしまっています。
その一方で、右の子供用では股下ベルトや救命胴衣そのもののフィット感で、救命胴衣がずり上がらないことがわかります。
この差は、現場ではたいへん重要な意味を持ちます。
左のような救命胴衣を着たまま水に落ちれば、水面で救命胴衣がずり上がって顔が覆われて、呼吸しずらくなってしまいます。
突然視界が失われて、つけている本人はパニックに陥ります。
さらに子供の場合だと、水面までの距離があまりなければ、救命胴衣をつかんで陸の上に引っ張り上げることも可能です。
左の状態であれば、子供の重さによってはバンザイした瞬間にすっぽ抜けて、再度、落水することになりかねません。
水面を背浮き状態で溺者を引っ張る時にも襟元などをつかみますが、サイズがあっていないと左のようになって、陸に向かって引っ張っている途中で窒息しかねません。
【適切なつくりの救命胴衣を選ぶ】
救命胴衣を購入する時には、布地がしっかりしている製品、縫製がしっかりしている製品を選びます。
子供を水面から引き上げる時には、救命胴衣の肩の部分をつかんで引き上げることがあります。
腕をつかんであげると、水面から身体が離れた瞬間に重みが腕に集中し脱臼する恐れがあるからです。
救命胴衣の肩の部分をつかんで引き上げた時に、布地が弱かったらどうなりますか?
縫製が弱かったらどうなりますか?
場合によっては子供の体重で破けることになります。
もしお手元に救命胴衣があったら、肩の部分の縫製がどうなっているか確認してみてください。
安物の中には、たった一本の細い糸で肩のあたりで2枚の布を縫い付けてあるだけの製品があります。
図2をご覧ください。
筆者の手元にある救命胴衣2種類の比較です。
左の図の楕円で囲った部分が肩の縫い付け部です。
細い糸で弱い布地に縫製してあるため、すでに布が裂け始めています。
右の図はいわゆる桜マーク(国土交通省型式承認品、注2)のついた救命胴衣です。
これだと布地が強化されて、そこに肩ベルトがしっかりと縫製されています。
【しっかりした製品を見分けるには】
例えば小学6年生の体重ですと、少なくとも満タンの灯油ポリタンク2本分以上の重さがあります。
陸から手が届くくらいの高さなら、腕一本で救命胴衣の肩口をつかんで引き揚げて、次に両手で両肩口をつかんで陸にあげることになります。
ライフジャケットの布地や縫い目に思いっきり体重がかかりますが、桜マークつきのライフジャケットなら、体重に負けずに、破れず壊れません。
メーカーでは、肩口をもって引き揚げることを想定して図3のような試験を行って、検定に合格した製品を販売しています。
この試験では肩口をつるして、ライフジャケット全体におもりによる重さがかかるようになっています。
おもりの重さは大人用のライフジャケットで約75 kg、子供用のそれで約49 kgです。
そのほか、海水で濡れても滑りにくい素材を使っているとか、布地が油を吸っても強度が落ちないとか、小さなことにこだわり、ありとあらゆる海の事故から命を守るように考えられています。
そもそも、救命胴衣は複数回使うことを想定して作られていませんので、何回か水に浸けて利用すれば、程度の差があるにせよ、図2の左のようになるのが当然です。
これが材料の宿命です。
【特に夜釣りは危険を伴う】
夜釣りをする筆者自身がこう言うのもどうかと思われますが、夜釣りには危険がいっぱいです。
それでも夜釣りに出かけるのは、特に夏の場合は日中の直射日光を避けるためという理由が最も大きいのではないでしょうか。
日中、気温が30度を超えても、夜の海風は涼しくてゆっくりと魚を待つことができます。
当然、足元が暗い中を歩いたりするわけですから、危ないのは誰でもわかります。
子供が一緒だと、子供の行動が見えづらく、上述したような「まさか」という出来事で転落するまで気が付かなかったりするわけです。
波の様子は昼夜問わず、突然変わります。
昼間なら、その様子が視界全体で捉えられるのですが、夜間だと限られた視界の中でしか捉えることができません。
磯釣りだと、ほんの少しの波の高さや向きの変化で、逃げる間もなく波をかぶることになります。
動画1をご覧ください。
闇夜を想定した水面浮遊実験の様子です。
転落すれば、夜の闇の中では転落者の姿をすぐに見失います。
10 m先くらいの距離であれば、懐中電灯の光で白い雨合羽などは浮き上がって見えます。
救命胴衣には肩に反射板が取り付けられていますが、これは比較的弱い光でも反射します。
そして25 mも離れると、懐中電灯の光でも人の姿が確認しづらくなります。
手掛かりは救命胴衣の反射板からの光のみになることがわかります。
【さいごに】
柵があって安全だと思っても、海中転落するのが現実です。
どうか、釣りに出掛ける時には、親子そろって救命胴衣、ライフジャケットを着けてお楽しみください。
注1:一般的にライフジャケットと呼ばれ普及していますが、万が一の水難事故からの救命という意味を前面に出すため、本稿では救命胴衣で用語を統一します。
注2:国土交通省型式承認(桜マーク)品と日本小型船舶検査機構 性能鑑定適合(CS JCI マーク)品とがあります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20210811-00211929
(2021年9月3日 修正1 ;追記)
2021年9月2日20時51分にYAHOOニュース(神奈川新聞)からは、市は6施設に金網を張ったなど、下記趣旨の記事が金網の写真付きでネット配信されていた。
事故を受けて、国土交通省と水産庁が全国の港湾・海岸保全施設に、転落防止柵の緊急点検と間隔が15センチ以上ある柵に緊急措置を行うよう通知。
市は点検を行い、柵の間隔が15センチ以上あった6施設でネットや金網を張ったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d48ca46668856ca882d454e57bf9cd652a289742
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。