2017年1月29日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6713/
(2017年6月22日 修正2;追記)
2017年6月14日20時25分にNHK関西から、事故報告書が公表されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、第1報ともどもタイトルも修正した)
石油元売り大手の「JXTGエネルギー」は、ことし1月に和歌山県有田市の工場で起きた大規模な火災について、「配管に開いた穴から可燃性のガスが漏れ、静電気などで火がついた」とする最終報告を公表した。
それによると、火災が起きたプラントでは配管に18か所の穴が見つかり、このうち、いずれかの穴から配管を流れる可燃性のガスが漏れ、静電気などで火がついたとみられるという。
また最終報告では、穴ができた原因について、潤滑油を精製する際に発生する硫化水素を含んだ廃液が配管を腐食させたとしていて、会社は来年2月までに、廃液の濃度を薄める設備をプラントに設置するという。
JXTGエネルギーは、「再発防止策を確実に実行し、全社を挙げて安全の確保に努めます」とコメントしている。
出典
『和歌山の製油所火災で最終報告』
http://www.nhk.or.jp/kansai-news/20170614/4263101.html
6月17日付で朝日新聞和歌山全県版(聞蔵)からは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
報告書では、同装置の内部にある配管が急激に腐食したことから水素ガスなどが漏れ、静電気によって着火したと結論づけた。
急激な腐食は、製造過程で生成される、アンモニア水に硫化水素が溶解した「アルカリサワーウォーター」によるもので、「(急激な腐食は)予見できなかった」とした。
再発防止策として、製造装置内への洗浄水注入設備などの設置などを挙げた。
(ブログ者コメント)
〇該社HPに事故報告書(全63ページ)が掲載されていた。
以下は抜粋。
(9ページ)
出火のシナリオとして以下を推定した。
①.運転データから15:37に 第二潤滑油抽出水添精製装置水添精製部門(PT-2 HD )の高圧パージガスライン系統において、大量に可燃性ガスが漏えいする開口が発生したと推定される。
②.漏えいしたガスは臨界速度で噴出し、漏えい後速やかに着火したと推定される。
ガス漏えい開始推定場所近傍には着火源がないため、着火源としてはガス漏えい時の静電気や衝突した微粉の火花が推定される。
③.白煙を伴うガス火災が最初に発生したと推定される。
(17ページ)
当該系の通常運転温度は約30℃であり、運転中に開口に至る可能性のある現象は以下の通りである。
①.腐食による減肉
②.割れ
③.フランジからの漏えい
(23ページ)
① アンモニウムバイサルファイドによるアルカリサワーウォーター腐食
潤滑油系脱硫装置においても反応塔下流の高圧高温分離槽の頂部流体中には、一般的な燃料油系脱硫装置と同様に、NH3に比べてH2Sが過剰に存在する。
上記環境下では、冷却されて生成した凝縮水中に溶解度の高いNH3が優先して溶解し、NH4+イオンが形成される。
その結果凝縮水がアルカリ性を帯び、H2SはHS-イオンとして凝縮水に溶解しやすくなる。
PT-2 HD装置の運転は、処理量に大きな変化はないものの、製品需要の変化に伴い原料油組成の重質原料油の処理比率が年々増加している。
これに伴い、PT-2 HD装置で生成されるNH3の総量が年々増加し、1994年に比べると2007年以降は約2倍となっている(資料-IV-22 運転状況の詳細)。
このため、NH3生成量増加に伴い、凝縮水中のアンモニウムバイサルファイド濃度が上昇し、サワーウォーターの腐食性が増加したと考えられる。
http://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease_jxtg/2017/20170614_01_1150234.html
〇報告書中、「着火源としてはガス漏えい時の静電気や衝突した微粉の火花が推定される」と記されている。
ただ、「衝突した微粉の火花」は噴出帯電現象の一つと考えることもできるので、本ブログのタイトルでは、着火源は静電気ということで一本化した。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。