2020年3月17日9時0分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
9年前の東日本大震災は津波の脅威を見せつけました。
ただ、大津波の前に必ず大地震が起きるとは限りません。
火山の噴火や崩落、海底の地滑りでも津波が起きます。
こうした津波は警報が出ない恐れもあり、独自に訓練を始めた地域もあります。
2018年12月22日、インドネシア・ジャワ島の人気バンドのライブ会場に突然、巨大な津波が押し寄せました。
火山噴火と山体崩壊に伴う津波で、前触れとなる大地震や津波警報はなく、演奏者や観客が次々にのみ込まれる映像に世界が衝撃を受けました。
鹿児島県姶良市に住む石堂さん(男性、68歳)もその一人。
「避難訓練をしておいてよかった。やっぱり他人事じゃない」
石堂さんの住む地区では、この2週間前、鹿児島湾を挟んだ対岸にそびえる桜島の噴火に伴う津波を想定して、避難訓練を初めて実施しました。
桜島の活動が激しかった江戸時代の「安永噴火」では、海底噴火で津波が繰り返し発生。
最大で高さ十数メートルに及び、約20人が犠牲になった歴史が残ります。
鹿児島県は、今後も同じような津波が起きうるとして、14年に津波想定を公表。
石堂さんの地区には7メートルの津波が海底噴火から最短4分で到達する想定です。
しかし、訓練参加者の半数近くが、小学校までの避難に5分以上かかりました。
「桜島の噴火に慣れきって、津波は十分に意識できていません。何度も訓練をしなければ」と不安を明かします。
火山津波に詳しい山梨県富士山科学研究所の石峯康浩・主任研究員によると、詳しい記録が残る16世紀以降の国内の火山災害の犠牲者2万3千人のうち、8割は津波が原因といいます。
最大は1792年の「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる災害です。
長崎県の雲仙火山の一部が崩壊し、有明海に土砂が流れ込んで津波が発生。
対岸の熊本も合わせて、約1万5千人が亡くなりました。
1741年の北海道沖・渡島大島の山体崩壊でも、津波で約1500人が亡くなっています。
石峯さんは、「海に近い火山や海底火山の多い日本は火山津波のリスクが高く、陸上でも火口湖は津波の危険があります。噴火や山体崩壊は大きな地震を伴うとは限らず、火山で何か起きれば『津波が来るかも』と想定するしかありません。近くの火山で津波が起きた歴史がないか、調べておいたほうがよいでしょう」と話します。
海底の地滑りでも大きな津波が発生します。
沖縄県の石垣島などでは1771年、八重山津波(明和の大津波)によって、約1万2千人の犠牲者が出ました。
石垣島では住民の約半数が亡くなる惨事でした。
直前に起きたマグニチュード7級の地震は、直接の被害は出ない程度の揺れだったにもかかわらず、巨大な津波が起きたのはなぜか。
産業技術総合研究所などは2018年、太平洋の海底で東京都の面積に匹敵する巨大な地滑りが起きたと考えられると発表しました。
産総研の岡村行信・特命上席研究員によると、この海底には地滑りを起こす地形が今も残り、今後も同様の大津波が起きうるといいます。
「もし津波が来ればどう逃げるか、事前に考えておく必要がある」と話します。
こうした津波について、気象庁の津波警報は出るのでしょうか。
福岡管区気象台によると、現在の津波警報は、地震で海底の地盤が上下に動くことを想定し、事前に作成した津波予報データベースをもとに、実際に発生した地震と照合して、津波の高さや沿岸への到達時間を発表しています。
一方、海底噴火や山体崩壊、海底地滑りによる津波の予測は研究途上のため、事前の予測に基づいてすぐに警報を出すのは難しいと言います。
その代わり、火山の監視映像や、潮位の変動などで津波の発生を確認でき次第、警報を出すことを想定しているそうです。
担当者は、「沿岸部で揺れなど異常を感じたら津波を想定し、高い所に逃げてください」と話しています。
【これから】
山体崩壊や海底地滑りによる津波が起きる頻度は高くなく、事例も多くないため、予測は簡単でないようです。
とはいえ、いつ起きるかわかりません。
避難訓練を手がける石堂さんは、「夜間なら、誰も気づかないまま、大津波にのみ込まれるかもしれない。なんとか警報システムを作ってほしい」と訴えています。
https://digital.asahi.com/articles/ASN3C3VTSN2PTIPE014.html?pn=5
(ブログ者コメント)
インドネシアで起きた山体崩壊津波事例については、本ブログでも紹介スミ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。