2021年4月25日7時0分に朝日新聞から、『「まさか」に備える住まい 激震に耐えるポイントは?』というタイトルで、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
日本列島は大きな地震に繰り返し見舞われてきた。
276人が亡くなった5年前の熊本地震では、激しい揺れで家屋が倒壊し、たくさんの人が下敷きになった。
命を守り、災害後も暮らし続けることができる住まいにするためには、どのようなことに気をつければいいのだろう。
住宅の耐震性は、どう判断すればいいのか。
目安となるのが、建てられた年代だ。
建築基準法の耐震基準は、大地震を経て改訂されてきた。
震度6程度の大地震で倒壊しないことが明確に定められたのが、1981年5月。
これ以前の基準を「旧耐震」、以降を「新耐震」と呼ぶ。
6434人が亡くなった95年の阪神大震災では、倒壊した建物のほとんどが旧耐震だった。
ただ、新耐震の基準を満たしていても、壁の配置が偏るなどしていると、被害が出た。
そこで2000年6月の改正で、壁の配置のバランスや、金物を使った接合部の固定も求められるようになった。
16年の熊本地震では、建てられた年代によって、被害に違いが出た。
激震に見舞われた益城町で木造の建物を調べた国土交通省の報告書によると、旧耐震の建物は、28%が倒壊していた。
一方、新耐震で倒壊したのは、00年5月までに建てられたもので9%、00年6月以降に建てられたもので2%だった。
旧耐震の建物は耐震診断を受け、耐震性が不足していれば耐震改修が必要だ。
京都大生存圏研究所の五十田(いそだ)博教授は、「新耐震でも、00年5月以前に建てられた住宅は、まず所有者が安全性をチェックして」と話す。
天井裏の接合部の金物、壁のひび、屋根の割れなどを調べて確認する方法が日本建築防災協会の「新耐震木造住宅検証法」にまとめられている。
協会のウェブサイトに一般向けの情報もある。
倒壊の恐れがあるなら専門家に相談することが大切だ。
建物の構造だけでなく、建材の劣化も耐震性を左右する。
高温多湿の日本では木材が傷みやすく、「水が入らないようにして、風通しをよくすることに注意する」と五十田さん。
換気口は塞がない。
水が染み込む外壁のひびや屋根瓦の割れは早めに補修することが重要だ。
耐震性に問題があれば、改修も一手だ。
バリアフリー化を進める工事や断熱性を高めるリフォームの際に、壁に筋かいを入れたり、接合部を補強したりといった工事をすれば費用を抑えられる。
ただ、耐震基準はあくまで大地震でも建物が倒壊しないという最低限の基準だ。
命は守れても、地震後も住み続けることまでは想定されていない。
被害をより小さくするために考えられたのが、住宅品質確保促進法に基づく新築住宅の「耐震等級」だ。
00年の基準に相当する耐震性が「等級1」、その1・25倍を「等級2」、1・5倍は「等級3」と定める。
耐震等級が上がれば、地震保険料が割り引かれるといったメリットがある。
壁を増やさなくても壁を強くする工事で、耐震性を2倍にすることも可能だ。
五十田さんは、「耐震補強をしていれば、激震地でも命は助かる。耐震性を2倍にしていたら、自宅にそのまま住み続けられる」と話す。
新型コロナウイルス感染症の流行で、人が集まる避難所を避け、安全な場合は自宅にとどまる「在宅避難」が注目されている。
住宅の耐震性を高めるほかにも、家具の固定や備蓄が重要だ。
【揺れの周期と建物被害】
地震ではガタガタという小刻みな揺れや、ユラユラとした大きな揺れなど、さまざまな揺れが起きる。
揺れが1往復する時間を「周期」と呼び、その長さによって被害を受けやすい建物が変わってくる。
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【全国に活断層】
日本列島では、どこでも大きな地震への備えが必要になる。
プレートが沈み込む海溝付近では、巨大地震が繰り返されている。
内陸でも、活断層がずれ動いて起こるタイプの地震がたびたび起きている。
活断層は全国に約2千あるとされる。
国の地震調査研究推進本部は、このうち114の主要活断層帯について地震の発生確率などを公表してきた。
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https://digital.asahi.com/articles/ASP4R449QP4KULZU00B.html?pn=11
同紙からは同日12時0分に『新耐震でも倒壊相次いだ熊本地震 住宅再建どう進んだ』というタイトルの関連記事もネット配信されていた。
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「2階建ては地震が怖いから」。
町の中心部で平屋建ての家を再建した猿渡さん(72)は、こう話す。
震災前に住んでいたのは、1980年代後半に建てられた木造2階建ての住宅だ。
震度6強や7の揺れでも倒壊しない新耐震基準に沿って建てられたはずだった。
中古住宅を購入したため、建築時の様子やその過程はわからない。
「元々は田んぼだったと聞いている。瓦ぶきで台風には強いはずの家だったんだけど、大地震のことまでは考えていなかった」
2016年4月14日夜、震度7の揺れが襲った。
自宅は無事だったが、その約28時間後、再び震度7の地震が発生。
2階部分が1階を押しつぶすようにして全壊した。
最初の地震で何らかのダメージを受けていたのか、そもそも地盤に問題があったのか、倒壊の原因はわからないままだ。
近くに住む野口さん(69)も、震災前は2階建て住宅に住んでいた。
1990年に地元の工務店が建てたが、当時は「耐震基準」という言葉も知らず、気にすることもなかった。
「大地震に襲われるなんてさらさら思っていなかった。地震への備えというのはまったく頭になかった」と振り返る。
その自宅は5年前、2度目の震度7の揺れで全壊した。
家を支える柱同士をつなぐ「筋交い」をとめていた太い釘がいくつも抜けているのが見え、複数の柱も基礎から抜けていた。
同じ敷地内にあった母が住む平屋も全壊した。
工務店の社長から「わしの家もつぶれた」と聞き、問い詰めることもできなかった。
「年もとって、夫婦2人ならこれで十分」と、同じ場所に平屋を建ててから約3年が経つ。
再建時にまず考えたのは、「地震に強い家」。
大手ハウスメーカーに依頼し、盛り土だった土地の地盤工事もした。
野口さんは地震保険に加入していた。
東日本大震災の被害を報道で目にしたからだ。
自分が住む地域が被災地となり、「退職金も足したけど、保険に入っていなかったら家は建てられなかった」と振り返る。
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工務店やリフォーム会社などでつくる「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合」(木耐協、東京)は、「地震対策は家の耐震性を調べることから始まる」とし、専門家による「耐震診断」の必要性を強調する。
組合は先月、06年以降に手がけた耐震診断約2万8千件の詳細を分析。
1950~00年5月に着工された在来工法の木造2階、平屋建てが対象だ。
それによると、新耐震基準の81年6月~00年5月築のうち85・9%で現行基準を満たしておらず、「倒壊する可能性がある・高い」とされた。
00年に建築された住宅でも、今は築20年を超え、経年劣化による耐震性の低下の恐れもあるという。
組合は「この年代の住宅こそ、耐震リフォームが必要」とするが、耐震診断で補強工事の必要性がわかっても、自己負担額が予算を超え、補強工事をあきらめてしまうケースがあると指摘。
「行政には柔軟な補助制度を、事業者には年齢や予算に合わせた資金計画の提案力が求められる」と話している。
https://digital.asahi.com/articles/ASP4S7HCQP47UTIL036.html?pn=8
(ブログ者コメント)
熊本地震時に新耐震基準で建てられた住宅が倒壊した状況は、本ブログでも過去に何件か情報提供している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。