2016年1月5日5時20分に読売新聞から、『日本の街から電柱がなくなる日は来るか?』というタイトルで、立命館大学客員教授の高田昇氏(NPO法人「電線のない街づくり支援ネットワーク」理事長)の解説記事が下記趣旨で掲載されていた。
長文につき、安全に関する部分だけを転載する。
「電柱大国・日本の常識、世界の非常識」
(転載省略)
「災害に弱く、危険な存在」
気がついてみると、日本だけが“電柱大国”として取り残されてきたのには訳がありそうだ。
明治以降、富国強兵に走り、第2次大戦後の復興のために安価で早い電力供給に走り、高度経済成長期には景観に目もくれずに走る、という歴史に起因しているのかもしれない。
そして今、多くの人たちは見慣れた風景に特に疑問も感じていない。
時には、「親しみやすい」、「日本の風物詩だ」という人もいるし、外国人が珍しがって電柱の前で「記念写真」を撮る光景に納得している人もいる。
ある意味、“市民意識”に支えられて電柱は守られてきたのだろうか。
無電柱化を阻む最大の問題は、地上に電柱を立てるよりはるかにコストが高いことだ。
無電柱化の費用は、従来方式だと1km当たり5~6億円かかるが、電柱を使う場合は1000~2000万円で済むとされる。
しかし、電柱、電線類は人を危める凶器にもなるし、街の価値を下げ、商業活動や住み心地にも大きくマイナスになる“邪魔物”なのである。
無電柱化の主な目的は、「防災」、「交通安全」、「景観・観光の増進」である。
第1の「防災」については、誤解が多い。
地中化は地震、水害に弱いと思われることもあるが、全くその逆である。
阪神・淡路大震災では8000本ほどの電柱が倒壊し、建物を壊し、道路をふさいで避難や緊急車の通行を妨害した。
被災率を比べると、地中化されたところは電力で2分の1、電信で80分の1という大差が生じている。
東日本大震災の津波では、電力・電信とも2万8000本の電柱が倒壊。
台風、竜巻にもきわめて弱い。
電柱は災害に弱く、危険で、無電柱化は災害に強いことがはっきりしている。
災害大国・日本にこそ、電柱はあってならないものなのである。
第2の「交通安全」についても、案外気づかないところで問題が生じている。
電柱との衝突事故は、2014年に1498件発生しているが、他の事故と比べて、死亡に至る確率が約10倍と、電柱はきわめて危険な存在となっているのだ。
幅員の狭い生活道路が多い私たちの街では、5~6mの道幅が普通であるが、電柱のせいで有効幅員が3分の1ほど減少している。
おそらく、表面化しない自動車と電柱との衝突、接触は無数にあるだろう。
現に、私の家族が家の近くで自動車を電柱に当てて破損したことがある。
車いすの人や登下校の子どもたちが電柱と自動車の間をすり抜けるように通る姿を、私は日々冷や汗をかきながら見ている。
電柱のない、安全で快適な道を取り戻さねばならない。
第3の「景観・観光の増進」については、多くの人々にとって電柱・電線類は「空気みたいな存在」で、意識されることが少ないかもしれない。
しかし、電線類が複雑に視界を妨げ、見苦しい景観は、暮らしの場として不快であり、情操を育むのにふさわしくない。
乱れた景観に慣れた感性は、わが街への愛着を失わせ、街を汚すことをためらわない風潮を生む。
そんなところを散策し、買物を楽しみたい、観光に訪れたいと思えるだろうか。
電柱をなくし、街並みを整えた埼玉県・川越では、1992年に350万人だった観光客が、今では660万人に増えた。
同じく無電柱化を進めた三重県・伊勢でも、十数年で観光客が倍増する成果を見せている。
東京大学での研究報告では、景観の良しあしで土地の価値に10%の差が生じるとしている。
私たちのチームが実施した大阪・交野市の住宅団地での比較研究でも、ほぼ同様の結果が出た。
電柱のない美しい景観は地域の価値を高め、人を引きつける力を持つ。
国の成長戦略の重要なテーマとなっている観光立国を実現させるためにも、無電柱化は待ったなしの課題となっている。
「地中化へ、官民の取り組み本格化」
(転載省略)
「求められる三つの改革」
(転載省略)
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151225-OYT8T50118.html?page_no=1
(ブログ者コメント)
電柱地中化については、過去にも情報を掲載スミ。
2015年11月26日掲載
2015年12月26日報道 国交省は大震災時の教訓を踏まえ、緊急輸送道路での電柱新設を禁止する通達を出した、ただし既設電柱架け替え時は設置を認める (修正1)
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5409/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。