2020年1月27日2時0分に日本経済新聞(電子版)から、下記趣旨の記事が写真付きでネット配信されていた。
病院では、命を救うためのがん治療や様々な検査などに放射性物質(放射性同位体、RI)が使われる。
使用に伴い、放射性の廃棄物が生まれるが、廃棄物の処分場がなく、貯蔵庫にたまり続けている。
原子力発電所とは別の、もう一つの放射性廃棄物問題が起きている。
岩手県滝沢市にある日本アイソトープ協会(有馬朗人会長)の茅記念滝沢研究所では、全国の医療機関などで発生する医療RI廃棄物を一括処理している。
制御盤の画面には、セ氏約800度のオレンジ色の炎が見える。
廃棄物を燃やす焼却炉の内部を従業員がじっと監視する。
治療や検査でRIが付着したタオルやろ紙、ゴム手袋など燃えるごみは焼却炉で燃やし、焼却灰をドラム缶に収納する。
ガラス製のバイアル(容器)や注射器など燃えないごみは、プレス機のような装置でつぶしてからドラム缶に収める。
滝沢研の貯蔵庫にある処理済みのRI廃棄物は、200リットルサイズのドラム缶にして約8300本。
4つある貯蔵室のうち、3つはすでに満杯だ。
4つ目の貯蔵庫も残りは500本分ほど。
たまり続けるのは「最終処分場がまだないからだ」と古川修・滝沢研究所所長は話す。
医療や研究に用いるRIについて、日本は欧米とは異なる独特の供給システムを持っている。
ほとんどのRIはメーカーがアイソトープ協会に納入、協会が全国の病院や大学などに頒布する。
医療機関がそれぞれ個別にメーカーから調達する欧米諸国とは異なる。
原子核研究で知られる故仁科芳雄博士が第2次世界大戦後に米国からRIを輸入し、国内の大学などに配った歴史的な経緯から、このような体制が生まれ、今も続く。
協会は供給だけでなく、廃棄にも責任を負う。
全国の約2300の医療・研究施設からRI使用に伴って出た廃棄物をトラックで集めて回り、保管している。
集荷量は200リットルのドラム缶換算で年約7000本に達する。
大学の医学・生命科学の研究室では、近年RIを使わない実験手法が普及したことなどから使用量が減ったが、病院の医療RI廃棄物は増加傾向にある。
協会は千葉県内にも貯蔵施設を持っており、滝沢研に順次運んできて焼却・圧縮処理をしているのだ。
大学などの研究で生じたRI廃棄物は、処理後に日本原子力研究開発機構(JAEA)に引き渡す。
JAEAが最終処分を担う方針が決まっている。
しかし、その最終処分場が決まっていないのだ。
また病院などで発生する医療RI廃棄物は研究用とは法律の枠組みが異なり、最終処分への制度上の道筋が未整備だ。
研究RIは原子炉等規制法、医療RIは医療法などで規制を受け、担当する役所も違う。
JAEAは日本最大の原子力の研究機関で、自らの研究施設から出る放射性廃棄物の処理・処分にも責任を負う。
古くなった研究施設の廃止で、これから大量の廃棄物が発生する見込みで、医療RI廃棄物も合わせて埋設などの処分をする方向で検討がなされているが、法制度が伴わない。
滝沢研の地元からは、早期の制度整備を求める声もある。
医療RIは半減期が短い。
放射性診断薬などに使われるテクネチウム99mは約6時間、タリウム201は約73時間。
長いものでもヨウ素125の約60日。
数千年から数万年の長寿命の物質が含まれる原発の廃棄物とは異なる。
それだけ、安全な処分がしやすい。
厚生労働省の医療放射線の適正管理に関する検討会などでは、貯蔵期間中の放射能の減衰を待って産業廃棄物として処分するクリアランス基準などについて議論されてきた。
ただ現実には、医療関連法令と放射性廃棄物に関する法律の2つの法制度のはざまにあって、仕組みづくりが遅れてきた。
JAEAが早期に処分場を設けるのと並行して、厚労省と原子力規制庁との間で調整し、埋設処分やクリアランス基準、リサイクル利用などの制度整備を急ぐ必要がある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54595820Q0A120C2000000/?n_cid=NMAIL007_20200127_H
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
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