2017年11月29日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
廃炉が決まっている高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、原子炉容器内を満たしている液体ナトリウムの抜き取りを想定していない設計になっていると、日本原子力研究開発機構が明らかにした。
放射能を帯びたナトリウムの抜き取りは廃炉初期段階の重要課題だが、同機構が近く原子力規制委員会に申請する廃炉計画には、具体的な抜き取り方法を記載できない見通しだ。
通常の原発は核燃料の冷却に水を使うが、もんじゅは核燃料中のプルトニウムを増殖させるため、液体ナトリウムで冷やす。
ナトリウムは空気に触れれば発火し、水に触れると爆発的に化学反応を起こす。
もんじゅでは1995年にナトリウムが漏れる事故が起き、長期停止の一因になった。
原子力機構によると、直接、核燃料に触れる1次冷却系の設備は合金製の隔壁に覆われ、原子炉容器に近づけない。
また、原子炉容器内は、燃料の露出を防ぐため、ナトリウムが一定量以下にならないような構造になっている。
このため、1次冷却系のナトリウム約760トンのうち、原子炉容器内にある数100トンは抜き取れない構造だという。
運転を開始した94年以来、原子炉容器内のナトリウムを抜き取ったことは一度もない。
原子力機構幹部は取材に対し、「設計当時は完成を急ぐのが最優先で、廃炉のことは念頭になかった」と、原子炉容器内の液体ナトリウム抜き取りを想定していないことを認めた。
炉内のナトリウムは放射能を帯びているため、人が近づいて作業をすることは難しい。
原子力機構は、来年度にも設置する廃炉専門の部署で抜き取り方法を検討するとしているが、規制委側は、「原子炉からナトリウムを抜き取る穴がなく、安全に抜き取る技術も確立していない」と懸念する。
もんじゅに詳しい小林圭二・元京都大原子炉実験所講師は、「設計レベルで欠陥があると言わざるを得ない。炉の構造を理解している職員も少なくなっていると思われ、取り扱いの難しいナトリウムの抜き取りでミスがあれば大事故に直結しかねない」と指摘する。
【ことば】
高速増殖原型炉「もんじゅ」
プルトニウムとウランの混合酸化物を燃料に、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出す原子炉。
出力28万KW。
原型炉は、実用化までの4段階のうちの2段階目。
1994年に運転開始したが、95年に2次冷却系のナトリウムが漏れる事故が発生し、長期運転停止。
その後も点検漏れなど不祥事が相次ぎ、約250日しか稼働しないまま、昨年12月に政府が廃炉を決めた。
出典
『もんじゅ 設計、廃炉想定せず ナトリウム搬出困難』
https://mainichi.jp/articles/20171129/ddm/001/040/162000c
11月29日付で毎日新聞東京版からは、下記趣旨の補足的記事がネット配信されていた。
高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉で問題となる液体ナトリウムは、先行するフランスの高速増殖実証炉「スーパーフェニックス」の廃炉でも難題となった。
スーパーフェニックスは1998年に廃炉が決まり、約20年経た現在、ようやくナトリウム処理の最終段階に入ったところだ。
廃炉完了の目標は2030年代初めという。
フランスでは94年、廃炉中の実験炉でナトリウムの処理中に火災が発生し、1人が死亡、4人がけがをする事故があった。
仏電力公社などによると、スーパーフェニックスではナトリウムをポンプで吸引し、爆発しないように少しずつ水と反応させて水酸化ナトリウムに変化させ、セメントと混ぜてブロックにしている。
特に苦心したのは、ポンプが届きにくい原子炉内の機器類の隙間に残ったナトリウムだった。
遠隔操作のロボットにレーザー装置を取り付けて周囲を慎重に切断し、吸引したという。
出典
『もんじゅ 廃炉作業、仏でも難題 ナトリウム、処理に長期間』
https://mainichi.jp/articles/20171129/ddm/008/040/043000c
(ブログ者コメント)
設備というもの、いつかは寿命を迎える。
廃炉のことは念頭になかったとのことだが、もしそうだったとすれば、いかにもお粗末な話しだ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。