2022年1月25日19時44分に毎日新聞から下記趣旨の記事が、図解や被害写真付きでネット配信されていた。
トンガ沖の海底火山噴火によって日本にも到達した「津波」との類似性が指摘される、ある現象に注目が集まっている。
一般に「気象津波」と呼ばれ、発生頻度の多い九州西岸で「あびき」と呼んでいる急激な潮位変化のことだ。
これから春先にかけて発生しやすくなるが、大きな気象変化がなくても突然起こるため、予報は難しい。
そのメカニズムとは・・・。
特に長崎県や鹿児島県で大きなあびきが発生しやすく、これまでも漁船沈没や転覆、道路の冠水、床上・床下浸水などの被害が繰り返しもたらされてきた。
最近では2019年3月21日に長崎駅周辺の市街地が広範囲に冠水し、JR長崎線が一時列車の運行を見合わせる事態になった。
1979年3月に長崎で観測されたあびきは、海面昇降の谷から山までの高さが約2・8メートルと観測史上最大で、玉之浦町(現五島市)では波にさらわれた女性が亡くなる悲劇も起きた。
あびきは、正確には、数分から数十分程度で潮位が変動する「副振動」という現象のことを指す。
月や太陽の引力で海面が昇降する潮の満ち引きを「主振動」と呼ぶのに対し、副振動は気象現象などに伴う気圧の急変で発生する。
条件がそろえばどこでも起こりうる現象だが、とりわけ九州西岸の頻度が多く規模も大きいのは、その発生メカニズムと地理的・地形的な要因がある。
あびきの第1段階は、気圧の急変で海面がわずかに上がったり下がったりすることによってできる小さな波だ。
過去のあびきを研究した東京大の日比谷紀之教授(海洋力学)によると、九州西岸に到達するあびきは
①大陸近くで発生した低気圧などにより、気圧の波が起きる
②気圧の波が海洋の波と共鳴し、押し続けるようにして東進
③長崎湾などの細い湾に入り込むことにより、海面が上昇
④湾からはね返った波が岬や沖合の島などではね返って、さらに大きくなる
といった経緯をたどる。
その上で日比谷教授は、「水深が浅い東シナ海では、大気の波と海の波が共鳴しあって大きくなりやすい」と指摘。
九州の西海岸には東北のリアス式海岸に似た、入り組んだ湾が多いことも、大きなあびきになりやすい要因だ。
こうして、わずか2、3ヘクトパスカルほどの気圧の変動でできたさざ波が徐々に増幅されていくことで、湾の突き当たりの地域に被害をもたらす。
また、春先にかけて集中するのは、この時期に上海沖で低気圧が発生しやすいからだ。
気象庁によると、海面昇降の谷から山までの高さが1メートル以上のあびきが、1997年から2021年の間に長崎港で計33回観測されているが、そのうち21回は2月から4月にかけてだった。
トンガ沖の海底火山噴火による「津波」について、日比谷教授は、噴火による衝撃波で起きた気圧変動がきっかけとなって生じたと推察する。
気圧変動が低気圧によるのか噴火なのかの違いで、その後の原理はあびきも今回の津波も同じというわけだ。
あびきが発生しやすい時期を迎え、福岡管区気象台は今月24日、ホームページで注意喚起を促した。
ただ、今回の津波が気象庁にとって「想定外」だったのと同様、わずかな気圧変動で生じるあびきは、低気圧が近くになく天気がいい時でも突然発生することがあり、予報するのが難しいのが現状だ。
気象庁は、発生を確認した際には「副振動に関する潮位情報」を発表しており、福岡管区気象台の担当者は、「情報に留意し、あびきの発生時は海岸や河口などに近づかないよう意識してほしい」と話している。
https://mainichi.jp/articles/20220125/k00/00m/040/148000c
(ブログ者コメント)
「あびき」現象については、本ブログでも過去に何回か掲載スミ。
その関連情報として紹介する。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。