2019年6月8日5時37分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田市への配備をめぐり、防衛省の報告書に誤りがあった問題。
報告書作成時に初歩的な間違いを犯した可能性が浮かんできた。
データの誤りは、5月に防衛省が県と秋田市に提出した報告書に複数あった。
陸上自衛隊新屋演習場の代替地として検討された青森、秋田、山形3県の国有地19カ所で、9カ所について、国有地から周囲の山を見上げた角度である「仰角」を過大に記載していた。
実際より大きな仰角を理由に、配備地として不適の評価を下していた。
5日に来県した防衛省幹部は、県議や市議を前に、「初歩的なミス」、「地図の縮尺が不整合だった」などと説明したものの、具体的な原因については、「詳細は確認していない」と言及をさけた。
報告書には、国有地から周囲の山までの断面図が掲載されている。
この断面図に分度器をあてると、報告書で表示された「角度」に合致する。
ただ、断面図は縦と横の縮尺が同じではなく、縦方向を強調するように作られていた。
朝日新聞が調べたところ、この断面図は、グーグルが提供する無料の「グーグルアースプロ」(デジタル地球儀)で作成した断面図と酷似していた。
一般財団法人日本地図センター相談役の田代さん(男性、69歳)は、「グーグルアースプロの断面図作成機能を用いて作成したと判断できる」と述べる。
別の専門家も、「フォントや断面図の色使いから、グーグルアースプロを使って描いたと考えられる」と話した。
報告書の断面図は垂直方向に約4倍拡大され、垂直方向と水平方向の縮尺は一致していない。
田代さんは、「一般的に、断面図は地形の起伏をわかりやすく表示するため、垂直方向を数倍拡大して作成する」と説明する。
そのうえで、「実際の地形とは違うので、その断面図上で仰角を測る作業は絶対に行ってはならない」と指摘した。
断面図を作成するソフトの中には、仰角を自動的に算出する機能がついているものもあるが、グーグルアースプロには、そうした機能はないという。
今回の防衛省のデータミスについて田代さんは、「断面図が垂直方向に拡大されていることに気づかなかった、極めて初歩的なミスだと考えられる」と批判した。
地図アプリを運用している別の専門家は、「グーグルアースプロでは縦軸、横軸に目盛りがついているので、縦軸が強調されていることに気づけたはずだが、思い込みが強かったのかもしれない」と推測した。
岩屋防衛相は7日の閣議後会見で、「計算式というほど複雑な工程ではなかった」と説明し、「改めて深くおわびを申し上げたい」と陳謝した。
防衛省報道室によると、報告書の作成者は、断面図が縦方向が拡大されていることに気づかないまま、断面図の縦横の長さを定規ではかり、三角関数を使って角度を割り出した。
そのうえで、分度器で間違いがないか再確認したが、元の断面図の縮尺が間違っていたため、仰角の間違いに気づかなかったという。
防衛省幹部が5日の県議会などで説明した内容によると、仰角の計算は、外部の専門機関に委託せず省内で実施。
「地図データで机上計算した」といい、実地測量をしないまま報告書を作成した可能性もうかがわせた。
田代さんは、「防衛省内部には地図を専門に扱う部署があるはずで、チェックを依頼すればすぐにわかったはずだ。内部のチェック体制の改善を望む」と指摘した。
出典
『防衛省報告書、グーグルアースプロと酷似 初歩的ミスか』
https://www.asahi.com/articles/ASM67533KM67UBUB00Q.html
6月8日付で秋田魁新報からも同趣旨の記事が、記者がグーグルアースを使って断面図を作成した動画付きでネット配信されていた。
防衛省戦略企画課の説明によると、配備候補地である新屋演習場の代わりになり得る国有地を検討する際、担当職員は次のような作業を行ったという。
まず、パソコン上で作成した国有地から近くの山までの断面図をプリンターで印刷。
国有地から山頂までの間にレーダー電波を遮る障害がないかを紙の上で確認した。
続いて、遮蔽となる尾根などがあった場合は、そこの標高、ない場合は山頂の標高、さらに国有地までの水平距離を紙の上で定規を使って計測。
高さと水平距離の縮尺の違いに気付かないまま三角関数を用いて計算し、誤った仰角を算出した。
一般財団法人「日本地図センター」(東京)の田代相談役は、「縮尺の違う数字で計算してはいけないなんて、基本中の基本。インターネットの地図情報などで簡単に求めることができる標高や水平距離を使わずに、断面図を定規で測って長さを出す理由が分からない」と批判する。
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出典
『「定規で測って計算した」 イージスずさん調査【動画】』
https://www.sakigake.jp/news/article/20190608AK0001/
6月8日21時11分に朝日新聞からは、防衛省はグーグルア-スを使っていたことを認めたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
防衛省幹部は8日、実地調査をせずにデジタル地球儀「グーグルアース」を使用していたことを明らかにした。
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8日に住民説明会のため秋田市を訪れた防衛省幹部が、会議終了後の報道陣の取材に対し、こうした作成の経緯を認めた。
出典
『防衛省、実地調査せずグーグルアース使う 幹部が認める』
https://www.asahi.com/articles/ASM6864RMM68UBUB004.html
6月11日13時29分にTBS NEWSからは、グーグルアースを使ったことは問題なしという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
岩屋大臣は“グーグルアースを用いたことは問題ではない”とした上で、実際の地図を用いて再計算を行ったと明らかにしている。
出典
『イージス・アショア調査ミス問題、防衛相「信頼回復に全力」』
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3696751.html
(ブログ者コメント)
地形の把握は軍事行動上の最重要事項の一つ。
当然、国土地理院の最新データに基づき計算していると思っていたのだが・・・。
お手軽手段としてグーグルアースを使うにせよ、バックチェックは公的機関に承認された地図で行うべきだったのではないだろうか?
今回の事態は超レアケースだと思いたい。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。