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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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20221017431分にYAHOOニュース(Merkmal)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

【広島市でおきた痛ましい事故】

キックボードに乗っていた被害者の男児(7歳)は悪くない。

それでも残念ながら、ごく一部とはいえ、「キックボード」という単語だけで被害者の非をあげつらう人がいる。

 【画像】電動キックボードは免許必要! 30%以上の人が「知らなかった」って本当?  

加害者は赤信号で横断歩道を通過した63歳の男性ドライバーだった。

ドライブレコーダーには赤信号で交差点に進入する光景が映し出されていたとのことで、男性ドライバーも信号の見落としを認めている。

警察は過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕した。

1013日に広島市で起きたこの事故。
キックボードの男児は亡くなった。
まずはご冥福をお祈りする。

事故は不幸な結果となってしまったが、この「キックボード」という一語は一部、特にインターネット上で独り歩きしている。

本来、キックボードという名称はアメリカのK2社の製品を指すが、いわゆる賛否両論の「電動キックボード」を連想させるからだろうか、報道でも多用されたようだ。

日本キックスケーター協会もあるように、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)は、こうした従来型の人力のものは「キックスケーター」と、個人的に言葉を分けている。

しかし、ここでは便宜上、「キックボード」とする。

法曹界、保険業界では、人力のキックボードに関しての有名な民事裁判の判例(東京地裁)がある。

2014年、同じく当時7歳の児童がキックボードで「歩行中」(判決に使われているこの言葉は後述)、自動車にはねられた事故である。

裁判ではキックボード、特に子どもが使うものは「歩行者」と同等か、それに限りなく近い判断が下されている。

加害者側はキックボードを「車両」であり、「自転車と同等」だとして過失割合を求めたが、裁判所は「歩行中」であり、児童のキックボードは「車両」とはみなさないとの判断を下した。

結果として後遺障害1級、保険会社から総額4億円(自賠責4000万円含む)近くの賠償金が支払われた。

当媒体でも以前、「自動車「任意保険」未加入はなんと10%! 自賠責の代わりに「義務化するべき」は暴論か、それとも真実か」(2022626日配信)を書いたが、任意保険は本当に入っておくべきである。

 

【「交通のひんぱんな道路」を巡る解釈】

ちなみにキックボードは、 「三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること」 という、道路交通法の第七十六条四の三にあてはまるとされている。

意見はさまざまだろうが、おそらく類推解釈として、この「ローラー・スケート」が人力のキックボードに当てはまるのだろう。

また先の判例によれば、「遊具」になり「車両」ではない、ということにもなるようだ。

ただ、この場合の遊具はあくまで「児童」を前提としたものとされ、大人が使う場合は先の判例も含め、 「道交法上の歩行者かどうか」 に関して、これがそのまま当てはまらないかもしれない。

あくまで解釈の問題、刑事と民事の違いもある。

特殊な事例とはいえ、注意が必要だ。

それにしても、この「交通のひんぱんな道路」はやっかいだ。

司法による「法解釈の余地」を残すためであり、恣意(しい)的な罪刑専断主義を避ける目的もある。

しかし、「交通のひんぱんな道路」の個々人の印象はさまざまである。

先の判例では「キックボードは車両か、否か」が焦点となったが、7歳の児童ということもあり、限りなく「歩行者」と同等とみなした。

警察によってもまちまちで、例えば今回の事故の所轄である広島県警では、「自転車交通ルールQ&A」の中で、

Q.「交通ひんぱんな道路とは、どういうところですか?」

A.「交通の状態がどの程度になれば「交通ひんぱん」と言えるかは、道路の広狭、通行する歩行者や車両の量等との関係で違ってきます。
例えば、昼間の広島駅前通りなど交通の往来が激しい道路は、一般的に交通ひんぱんと言えますが、深夜や早朝のように交通が閑散になると、交通ひんぱんな道路とは言えない場合もあります」

と回答している。

筆者も実際、担当警察に話を聞いたことがあるが、スケートボードを深夜の繁華街、公道上で使用しする若者がいても、警察官がほぼスルーする件は、これも一因にある(条例は別)。

繁華街の路上であっても、閑散としていれば、「交通のひんぱんな道路」にはあたらないのだ。

1959(昭和34)年と古いが、実際にその「ひんぱん」の数字を挙げた判例もある。

また、これにより起訴された例もない。

 

【道路利用に関する誤解】

しかし警察側にも、こうした誤解を招く問題がある。

例えば20208月の警視庁交通部の「子供交通安全情報」なるリーフレットである。

「道路でやってはいけません!
ローラースケート、スケートボード、キックスケーターなど 乗り物ではなく、遊ぶ道具です
道路で乗ってはいけません!
道路は車や自転車、歩く人が通るところです。
使ってもよい場所で、安全に乗りましょう。
道路で遊んではいけません!
道路ではボール遊びや落書きなどもしてはいけません」  

児童の安全第一を考えてのリーフレットであり、児童に向けたがために単純化したのはわかるが、今回の事件や先の判例、道交法の条文を照らし合わせても、 「少々乱暴な書き方」 のように思う。

「ローラースケート、スケートボード、キックスケーターなど」は道路でやっていけないことではない。
ただ、「交通のひんぱんな道路」で禁止なのだ。

今回の事件では、児童側の非として「公道でキックボードは違法」と語る向きもあるが、「交通のひんぱんな道路」とある限り、あくまで司法判断によるものでなければならない。

「交通のひんぱんな道路」でない限り、道交法上は即違反とならない。

また先の判例でも、児童の遊具は「車両」ではなく「歩行者」に近いとされている。

公正世界仮説(正しいものが正しい結果を得る、という誤った思い込み、認知バイアス)ではないが、ごく一部とはいえ、勝手な決めつけや被害者の非を邪推するような行為は慎むべきだ。

法の未整備はまた別の問題である。

男児は青信号を渡っていただけである。
キックボードもまた、悪くない。
・キックボードを使っていたこと
・青信号を渡って赤信号を無視した車にひかれたこと
は別問題である。

そもそも、赤信号は止まらなければいけない(緊急車両や災害等の緊急避難は除く)。

最後に重ねて、男児に対して心からお悔やみを申し上げる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/be77125cfa7898cc85ab10e4f262a184308c9025?page=1

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
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