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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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2012年3月8日3時0分に朝日新聞から、図解付きで下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配した4号機の使用済み核燃料の過熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった。

4号機は一昨年11月から定期点検に入り、シュラウドと呼ばれる炉内の大型構造物の取り換え工事をしていた。1978年の営業運転開始以来初めての大工事だった。

工事は、原子炉真上の原子炉ウェルと呼ばれる部分と、放射能をおびた機器を水中に仮置きするDSピットに計1440m3の水を張り、進められた。ふだんは水がない部分だ。
無用の被曝を避けるため、シュラウドは水の中で切断し、DSピットまで水中を移動。その後、次の作業のため、3月7日までにDSピット側に仕切りを立て、原子炉ウェルの水を抜く計画だった。


ところが、シュラウドを切断する工具を炉内に入れようとしたところ、工具を炉内に導く補助器具の寸法違いが判明。
この器具の改造で工事が遅れ、震災のあった3月11日時点で水を張ったままにしていた。


4号機の使用済み核燃料プールは津波で電源が失われ、冷やせない事態に陥った。プールの水は燃料の崩壊熱で蒸発していた。
水が減って核燃料が露出し過熱すると、大量の放射線と放射性物質を放出。人は近づけなくなり、福島第一原発だけでなく、福島第二など近くの原発も次々と放棄。首都圏の住民も避難対象となる最悪の事態につながると恐れられていた。


しかし、実際には、燃料プールと隣の原子炉ウェルとの仕切り壁がずれて隙間ができ、ウェル側からプールに約1千トンの水が流れ込んだとみられることが後に分かった。
さらに、3月20日からは外部からの放水でプールに水が入り、燃料はほぼ無事だった。

東電は、この水の流れ込みがなく、放水もなかった場合、3月下旬に燃料の外気露出が始まると計算していた。


http://digital.asahi.com/articles/TKY201203070856.html?id1=2&id2=cabcadai
 
 
 
(ブログ者コメント)
 
4号機の核燃料プールについては、当時、原子炉本体よりも深刻な状態だとメディアで報じられていた。
それが、こんなことがあって間一髪、大破局を免れていたとは・・・。絶句である。
 
歴史に「if」は禁物だが、もし、シュラウド切断工具が所定の寸法で出来あがっていたらどうなっていたか?
震災がれき受入れ反対運動など、したくてもできないような惨状を呈していたかもしれない。
 
一般に、大事故というもの、小さなミスの積み重ねで起きるといわれているが、この事例に限り、逆だった。その点で珍しい事例だ。

  


※キーワード;福島第1原発




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2012年2月17日20時38分に時事通信から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
福島第1原発事故の際、5・6号機に外部電源を供給する電線の鉄塔が倒れたのは、隣接地の沢を1960年代後半に埋めた時に排水管を設置しなかったため、盛り土が巨大地震の強く長い揺れで崩れたことが原因と分かった。
東電が17日、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。

5・6号機は鉄塔倒壊で電線が切れて外部電源が失われたが、非常用発電機の一部が機能し原子炉を冷却できた。
1~4号機は別ルートの鉄塔や電線が無事だったが、配電設備や非常用発電機が津波被害を受け、冷却電源を完全に失った。

報告書によると、鉄塔付近では昨年3月11日午後2時48分すぎに最も強く揺れ、同49分すぎに鉄塔が倒れ電線が切れた。
66年当時の工事図面などによると、鉄塔建設地に向かって沢が流れており、盛り土をした後は地下水の流れとなった。
この流れの位置は旧表土層から約2m上になり、盛り土の中を通る形になっていた。

東電は記者会見で、「沢を埋めた際、地下水は旧表土層に沿って流れるとみていた」と説明した。

 
出典URL
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012021700952
 


また、2月18日付の朝日新聞(聞蔵)から、同じ流れであろう下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
東電と関電、四電の3原発で、電気を供給する送電線の鉄塔の耐震性を向上させる対策に取り組むことが、17日、明らかになった。
 
東電福島原発の事故を受けて、鉄塔についての耐震性評価を経産省原子力安全・保安院が各電力会社に要請。
3社が近くの盛り土などが崩れないよう、耐震対策を実施すると報告したという。
東日本大震災では、福島原発に電気を供給する送電線の鉄塔1基が倒壊した。
 
保安院によると、今回、対策が必要な3社の送電線の鉄塔は、東電柏崎刈羽、関電大飯、四電伊方につながる計9基。
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2011年12月28日付の朝日新聞紙面に、下記趣旨の記事が掲載されていた。

福島第一原発事故の際に実施された原子炉格納容器のベント配管が、排気した水素が原子炉建屋内に流入する構造になっていたことがわかった。
水素爆発の一因になったことは否定できないとして、経産省原子力安全・保安院は、対策の検討を始めた。
専門家は、「この構造では自爆ベントになりかねない」と指摘する。

3号機の水素爆発の原因について、東電はこれまで、原子炉内の水素ガスが格納容器の蓋などの隙間から原子炉建屋に漏れたからと説明してきた。

東電が22日、3号機ベント配管から枝分かれして原子炉建屋内に通じる「非常用ガス処理系」の配管を調べたところ、気体が流入した跡が見つかった。

3号機は、3月13日から複数回、原子炉建屋からのベントを行った。この際、水素がこの配管に流入した可能性が高い。
配管には弁と逆流防止装置がついているが、弁は事故で電源が失われると自動的に開く仕組みで、逆流防止装置も気密性が低く、水素がすり抜けて建屋内に洩れた可能性がわかった。

3号機のベント配管は4号機の原子炉建屋にもつながっており、4号機側に逆流防止装置はない。

東電は8月、4号機の爆発は3号機のベントで水素ガスが流れ込んだとの調査結果を明らかにしている。




(ブログ者コメント)

□添付図によれば、3号機からのベント配管と4号機からのベント配管は、各建屋の外に出たところで合流し、1箇所(おそらくはベントスタック)から大気に放出されるようになっていた。
そして各建屋内では、それぞれのベント配管に違う配管がつながっていた。それが、非常用ガス処理系の配管なのだろう。

ただ、図では、当該配管の先から漏れたという記載があるのみで、その先は書かれていない、
しかし、ベント配管につながる配管が建屋内で開放状態ということは考えられないので、おそらく、当該配管の先には「非常用ガス処理系」という設備があり、そこから排出されるガスがベント配管経由で大気に放出される設計になっていたのだろう。

一方、当該配管には、3号機側に逆流防止弁(本文では「装置」だが、図では「弁」となっていた)があるものの、4号機側にはないと書かれていた。統一性がない。おかしな話である。

□装置産業の現場では、様々な設備がいろんな配管で有機的につながっている。
もし、その中の一部が普通と違う動きをした場合、装置全体としての安全は確保されるのか?
そういったことを評価する手法として、オペラビリティスタディやFMECAがある。

3号機の非常用ガス処理系排ガス配管について、前者の手法で安全性を評価した場合、「逆流」モードに対して、おそらくは、逆流防止弁があるので安全、と評価するだろう。
しかし、その逆流防止弁がチェッキ弁だった場合、差圧が小さいと十分に機能を発揮できない可能性がある。
安全性を評価する場合は、そういった機器部品の特性まで把握した上で評価することが大切だ。

 



※キーワード;福島第1原発





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2011年12月29日20時6分に、朝日新聞(時事通信)から下記趣旨の記事がネット配信されていた。

東京電力は29日、福島第1原発1号機のタービン建屋地下で、1991年10月30日に冷却用海水が配管から大量に漏れ、非常用ディーゼル発電機2台のうち1台の基礎部が冠水した事故があったことを明らかにした。

同日中に原子炉を停止し、事故を国に報告。
外部電源は正常で、非常用発電機も起動可能な状態を維持していたという。

建屋地下の床下に埋設していた海水配管が腐食して穴が開いたのが原因だったため、東電は配管を建屋内部に移設して点検しやすくする措置を取った。

当時、非常用発電機は耐震性を重視して岩盤上の地下階に設置する考え方だったため、津波などの浸水を想定して高い場所に移す方法は検討されなかったという。
 

出典URL■■■


ちなみに本件に関しては、2011年10月29日付の高知新聞紙面に、関連記事が掲載されていた。
それは、元東電社員の木村氏が6年前に福島の季刊紙に「もし原発に津波が来たら」というタイトルで、以下のような寄稿文を寄せていたというものだった。

今年4月、福島第1原発そばの自宅から知人のいる土佐清水市に移住した木村さん(47)によると、1991年10月30日、1号機のタービン建屋の配管から冷却用の海水が漏れ、地下にある非常用ディーゼル発電機が動作不能となった。

原子炉は手動停止。海水を掃きだす下請け作業員が総動員され、現場は大混乱になった。
「こんな海水漏洩で電源が喪失するなら、津波が来たら運転中の原子炉はメルトダウンに至る可能性がかなり高いのでは?」 木村さんが疑問をぶつけた上司は、「津波と原発のシビアアクシデントを関連づけるのはタブーだ」と答えたという。

木村さんは福島第1原発の炉心設計技術者として長年勤務し、2001年に離職。
スマトラ島に大津波が襲った後の2005年、福島の季刊紙に「もし原発に津波が来たら」と題して投稿し、「冷却用海水ポンプや非常用電源の機能の喪失により、福島県内の原子炉が一斉に炉心溶融を起こす」と警告、注目を集めた。

木村さんは、「91年の事故は、電源喪失こそ重大なのに配管漏れを問題にし、津波と切り離す。マスコミには『海水が漏れ、放射能漏れはなし』と短く発表。そうしたトリックを続けてきた中に起きた今回の事故であり、いわば人災」と東電と国を批判している。




(ブログ者コメント)

□非常用発電機が運転可能な状態だったかどうか、東電と木村氏の言い分が180°違っているが、どちらが正かは不明。

□それにしても、東電はなぜ今ごろになって、この事故を明らかにしたのだろう?
タイミングから考えると、政府事故調の中間報告書に、何か記載されていたのかもしれない。
「耐震性を重視して岩盤上の地下階に設置する考え方だったため」という東電側の説明にも、なにかそういったニオイが感じられる。

□それはともかく、今になって思うから、なんであの時・・・となるのだが、当時は、そんな大津波が来よう筈もなく、仮定の話に何十億、何百億円も投資することはできない、といった考えが主流だったのだろう。

□1991年といえば、今から20年前。ブログ者は、すでに東京湾岸の化学工場で安全業務に従事していた。
そして仕事柄、津波の危険性についても認識してはいたが、当時は、そんな大規模な津波対策をやっている会社は同業他社のどこにもなく、わが社だけが対策をとるなど、問題提起しても全く通らない雰囲気だった。

□最近、1000年スパンで考えると大地震時の津波で鎌倉市のほとんどが水没する、という研究結果が発表された。
マスコミでも大きく取り上げられていたが、急ぎ鎌倉から引っ越そうという動きは、まだないようだ。
当分、そんなことは起きないだろうと、皆が思っているからだろう。

□福島原発も、やはり今の鎌倉と同じような感覚だったのだろう。
違うことといえば、万に一つ、実際に大津波に遭遇した場合、及ぼす影響が話しにならないぐらいに大きい、ということだった。
「リスク」=「災害の発生頻度」×「災害が実際に起きた場合の影響度」
原発は、この「影響度」という点で、一般住宅あるいは東京湾岸の工場とは、比べ物にならないぐらいの大きさを持っていた。

□惜しむらくは、1991年のこのトラブル、あるいはその後に何回かあったと報道されている、津波想定見直しの機会に、経営者がこの点に注目していたら・・・。
死んだ子の歳を数えても仕方がないことは分かっているが、それでも、ついつい、そう思ってしまう。
まこと、断腸の思いをしている人が、何人もいることだろう。



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表記の中間報告書に関し、毎日新聞から要約版がネット配信されていた。
当該記事ならびに他紙でブログ者の目に止まった記事を、以下、見出しだけ紹介する。


毎日新聞 2011年12月27日 東京版  
◇複合災害、備え欠如批判
◇二度と起こさぬ--野田首相
◇安全文化を軽視
◇保安院、情報集めず遅い指導
◇東電、津波対策に着手せず
◇SPEEDI分析公表遅れ 住民守る意識希薄
    
 ■■■
◇復水器対応ミスが連鎖
◇「複合災害」対応、検証を
    
 ■■■

毎日新聞 2011年12月27日 2時31分
社説:原発事故調 最終に向け踏み込め
     ■■■

msn産経ニュース 2011年12月27日3時4分
主張:「首相の人災」検証を急げ
    
 ■■■

読売新聞 2011年12月27日15時19分
保安院・菅前首相の対応が混乱助長…事故調
    
 ■■■

msn産経ニュース 2011年12月27日0時3分
海水注入で吉田氏が独断
     ■■■


一方、中間報告書の内容が一部事実と異なると東電から反論があった旨、2011年12月28日付の毎日新聞東京版からネット配信されていた。
     ■■■



(ブログ者コメント)

□事故発生時は、現場を熟知し、情報をリアルタイムで把握できる現地に対応を任せ、本社などは後方支援に徹する、それが原則だ。
その点、11日午後3時42分に東電本店が対応の最終判断を吉田所長に委ねたことは正しかったとブログ者は考える。

□それが、いつの間にか、官邸が絡んだために指揮命令系統が混乱した。
これまでの断片的な報道でうすうす感じてはいたが、やはり八甲田山死の彷徨的パターンに陥っていたようだ。

□報告書中、「12日未明まで免震重要棟にいた保安院の検査官はデータをオフサイトセンターに報告するのみで、指導、助言をした形跡はまったく見当らない」と記されているが、そんなものだろう。
ブログ者の知見でも、いざという時、国の機関は当てにならない。
官民合わせて対策を考えるべき時であっても、考えるのは民に任せ、官は報告を受け承認する立場に徹する。それが常態だ。
知恵がないのなら仕方がないが、知恵がある分野でもその態度は変わらない。
行政が責任をとらされないようにするためかもしれないが、その時に可能な範囲での人智を集め、それでダメなら仕方がないではないか。
そのような思い切りも、非常時には必要だとブログ者は考える。

□官邸では、毎年、9月1日の防災の日に、総合防災訓練を実施している。
菅内閣発足は2010年6月8日。その年の想定は、東海・東南海・南海地震の同時発生。東日本大震災と同じ規模だ。
しかし、その訓練概要を見る限り、原発災害には目が向いていなかったようだ。
訓練の1項目に入れていたとして、今回の事故が防げたかどうかは分からないが、関係者にとっては痛恨の極みであろう。
    
 ■■■

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201177186分に、朝日新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
日本原子力学会は、7日、福島第1原発事故の「事故調査・検証委員会」の調査について、「個人に対する責任追及を目的としない立場を明確にすることが必要」とする声明を発表した。

同学会は事故について、「原因の徹底解明は不可欠。政府、東電関係者の正確で詳細な証言が必須」と指摘した上で、「これまで、国内の重大事故調査において、個人の責任に帰せられることを恐れて、正確な証言が得られないことがあった」と懸念を表した。

免責対象には現場の関係者のほか、同原発の設計や審査に関与した人も含まれるとし、「組織要因、背景要因が明らかにされ、再発防止に生かされることが重要」と訴えた。  [時事通信社]
 
 
 
(ブログ者コメント)
 
ブログ者は、この声明に100%賛同する。
大きな文字では書けないが、実際、そのような思いをしたことがあるからだ。
 
 
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2011年6月18日0時45分に、msn産経ニュースから下記記事がネット配信されていた。分かりやすくまとめられているので、紹介する。
 
 
炉心溶融次々、1~3号機で何が起きたのか

 想像を超す速度で進む炉心溶融(メルトダウン)、手間取る作業…。政府が国際原子力機関(IAEA)へ提出した報告書などから次第に鮮明になってきた事故直後の過酷な状況は、収束にむけた新工程表の実現性にも暗い影を落とす。早期の冷温停止を目指す1~3号機で、いったい何が起きていたのか。

 ■1号機
 最も早く炉心溶融が進み、地震から約5時間で原子炉圧力容器の損傷に至った。津波で原子炉の冷却機能をすべて失ったためだ。対応は後手に回り、水素爆発は最も早い3月12日に起きた。
 11日の地震直後に原子炉は自動停止し、5分後に緊急時に炉心を冷却する非常用復水器が起動した。だが、原子炉の温度が急低下したため、11分後には手動で止められた。その後何度か起動が試みられたが、津波の後も機能したかは不明のままだ。
 津波に襲われた午後3時37分、すべての交流電源が失われた。原子炉の水位は下がり続け、炉心溶融が始まった。午後8時ごろ、溶け落ちた燃料が圧力容器底部を損傷、一部は格納容器に漏れた可能性がある。地震からわずか5時間で原子炉は致命的なダメージを負ってしまった。
 格納容器の圧力は12日未明に上限の約2倍に達したが、蒸気を外部に逃す「ベント」に手間取り、なすすべがないまま水素爆発に至った。

■2号機
 原子炉の注水機能が最も長く継続したが、ベントに失敗。3月15日の水素爆発などで最も多くの放射性物質(放射能)が外部に出たとみられている。
 地震による原子炉自動停止の3分後、原子炉に水を注入する原子炉隔離時冷却系(RCIC)が手動で起動し、原子炉の水位は維持され、津波後も炉心への注水は続いた。
 弁の開閉にバッテリーを使うRCICは、8時間とされたバッテリー寿命を大幅に超えて作動を続けたが、ついに14日午後1時25分に停止。
 注水が止まって原子炉の水位は急低下し、14日午後8時ごろ炉心溶融が始まった。地震から約80時間後に当たる午後11時ごろ、溶融燃料が圧力容器を損傷させ始めた。
 格納容器につながる圧力抑制室付近で水素爆発が起きたのは、翌15日午前6時ごろ。爆発までに2度ベントを試みたが、いずれも失敗に終わり、格納容器内の蒸気に含まれる大量の放射能が大気中に放出された。

■3号機
 複数の冷却装置が唯一機能した一方で、最高クラスの耐震性が求められる装置の配管が地震で損傷した可能性がある。
 原子炉の自動停止後、2号機と同様にRCICを手動で起動し、原子炉への注水は続けられたが、バッテリーがもたず、12日午前11時36分に停止した。
その約1時間後、原子炉の水位低下を感知した「高圧注水系」と呼ばれる緊急炉心冷却装置が自動で起動したものの、原子炉の圧力は下がり始めた。地震で高圧注水系の配管が損傷し、蒸気が漏れたためとみられ、圧力低下によって高圧注水系も13日午前2時42分には停止した。
 すべての注水が止まったことで、午前8時ごろに燃料が水面から露出、その約3時間後には炉心溶融が始まった。消防ポンプによる注水が午前9時25分、開始されたが、すでに「焼け石に水」だった。
 14日午前11時ごろに水素爆発が発生、地震から約79時間後となる午後10時ごろ、溶け落ちた燃料で圧力容器が損傷してしまった。
 
 
 
 
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2011年6月8日付で、毎日新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
原発に限らず産業現場全般に対する教訓も含まれていると感じたので紹介する。
 
東電福島原発の事故は、原子力安全に対する国民の信頼を揺るがし、原子力に携わるものの過信を戒めるものとなった。
今回の事故から徹底的に教訓をくみ取り、この教訓を踏まえて、我が国の原子力安全対策の根本的な見直しが不可避である。
(1)地震・津波への対策の強化
 今回の地震は複数震源の連動による極めて大規模なものだった。地震で外部電源に被害がもたらされた。原子炉施設の安全上重要な設備や機器は現在まで地震による大きな損壊は確認されていないが、詳細はまだ不明で、さらなる調査が必要だ。津波は設計または評価の想定を大幅に超える規模だった。津波で海水ポンプなどの損傷がもたらされ、非常用電源の確保や原子炉冷却機能の確保ができなくなる要因となった。手順書では、津波の浸入は想定されていなかった。津波の発生頻度や規模の想定が不十分で、対応が十分でなかった。地震の想定は複数震源の連動を考慮し、外部電源の耐震性を強化する。津波のリスクを認識し、安全機能を維持できる対策を講じる。
(2)電源の確保
 事故の大きな要因は必要な電源が確保されなかったこと。多様な非常用電源の整備、電源車の配備など電源の多様化を図り、緊急時の厳しい状況でも長時間にわたって現場で電源を確保できるようにする。
(3)原子炉及び格納容器の冷却機能の確保
 海水ポンプの機能喪失によって最終の熱の逃がし場を失い、注水や原子炉の減圧に手間取った。代替注水機能や水源の多様化などにより、確実な代替冷却機能を確保する。
(4)使用済み核燃料プールの冷却機能の確保
 核燃料プールの大事故のリスクは小さいと考えられていた。電源喪失時も冷却を維持できる代替冷却機能を導入し、確実な冷却を確保する。
(5)アクシデントマネジメント(過酷事故へ拡大させない対策)の徹底
 アクシデントマネジメントは事業者の自主的取り組みとされ、整備内容に厳格性を欠いていた。国の指針も92年の策定以来、見直されていない。事業者による自主保安の取り組みを改め、法規制上の要求にする。
(6)複数炉立地における課題への対応
 複数炉に同時に事故が起き、事故対応に必要な資源が分散したり、炉の間隔が小さかったため、隣接炉の緊急時対応に影響を及ぼした。一つの発電所に炉が複数ある場合、各炉の操作を独立してできるようにし、影響が隣接炉に及ばないようにする。
(7)原発施設の配置の基本設計上の考慮
 使用済み核燃料プールが原子炉建屋の高い位置にあったため事故対応が困難になり、汚染水がタービン建屋に及ぶなど汚染水が拡大した。今後は冷却を確実に実施でき、事故の影響の拡大を防ぐ配置を進める。
(8)重要機器施設の水密性(水の浸入防止)の確保
 海水ポンプ施設、非常用発電機など多くの重要機器施設が津波で冠水した。設計の想定を超える津波や洪水に襲われた場合も、水密扉の設置などで水密性を確保する。
(9)水素爆発防止対策の強化
 1号機の最初の爆発から有効な手だてをとれないまま、連続爆発が発生した。原子炉建屋に水素が漏えいして爆発する事態を想定していなかった。発生した水素を的確に逃がすか減らすため、格納容器の健全性を維持する対策に加え、水素を外に逃がす設備を整備する。
(10)格納容器ベントシステムの強化
 格納容器の圧力を下げるために弁を開くベントの操作性に問題があった。放射性物質除去機能も十分ではなく、効果的にベントを活用できなかった。今後、操作性の向上などを図る。
(11)事故対応環境の強化
 中央制御室や原発緊急時対策所の放射線量が高くなり、運転員が入れなくなるなどして事故対応に支障が出た。放射線遮蔽(しゃへい)の強化など、活動が継続できる環境を強化する。
(12)事故時の放射線被ばくの管理体制の強化
 多くの個人線量計などが海水につかって使用できず、適切な放射線管理が困難になった。空気中の放射性物質の濃度測定も遅れ、内部被ばくのリスクを拡大させた。事故時の防護用資材を十分に備え、被ばく測定を迅速にできるようにする。
(13)シビアアクシデント(過酷事故)対応の訓練の強化
 過酷事故の実効的な訓練が十分されていなかった。発電所と政府の原子力災害対策本部、自衛隊、警察などとの連携確立に時間を要した。事故収束の対応、住民の安全確保に必要な人材参集などを円滑に進めるため訓練を強化する。
(14)原子炉及び格納容器などの計装系(測定計器類)の強化
 原子炉と格納容器の計装系が過酷事故の下で十分働かず、炉の水位や圧力、放射性物質の放出量など重要情報が確保できなかった。過酷事故発生時も十分機能する計装系を強化する。
(15)緊急対応用資機材の集中管理とレスキュー部隊の整備
 事故当初は原発周辺でも地震・津波の被害が発生し、レスキュー部隊が現場で十分機能しなかった。過酷な環境下でも円滑に支援できるよう資機材の集中管理や部隊の整備を進める。
(16)大規模な自然災害と原子力事故との複合事態への対応
 事故が長期化する事態を想定、事故や被災対応に関する各種分野の人員の実効的な動員計画を策定する。
(17)環境モニタリングの強化
 緊急時の環境モニタリングは地方自治体の役割としているが、事故当初は機器や設備が地震と津波の損害を受け、適切にできなかった。緊急時は国が責任をもって実施する。
(18)中央と現地の関係機関の役割の明確化
 当初は政府と東電、東電本店と原子力発電所、政府内部の役割分担の責任と権限が不明確だった。責任関係や役割分担を見直し、明確化する。
(19)事故に関するコミュニケーションの強化
 事故当初の情報提供はリスクを十分示さず、不安を与えた。周辺住民への事故の状況や対応、放射線影響の説明を強化する。事故の進行中は今後のリスクも含めて示す。
(20)各国からの支援への対応や国際社会への情報提供の強化
 各国の支援申し出を国内のニーズに結びつける政府の体制が整っておらず情報提供も不十分だった。情報共有体制を強化する。
(21)放射性物質放出の影響の的確な把握・予測
 緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の計算結果は当初段階から公開すべきだった。今後は、事故時の放出源情報が確実に得られる計測設備を強化し、効果的な活用計画を立て、当初から公開する。
(22)原子力災害時の広域避難や放射線防護基準の明確化
 避難や屋内退避は迅速に行われたが、退避期間は長期化した。事故で設定した防護区域の範囲も防護対策を充実すべき範囲を上回った。このため、原子力災害時の避難の範囲や防護基準の指針を明確化する。
(23)安全規制行政体制の強化
 原子力安全確保に関係する行政組織が分かれていることで責任の所在が不明確で俊敏性にも問題があった。原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、原子力安全委員会や各省も含め規制行政や環境モニタリングの体制を見直す。
(24)法体系や基準・指針類の整備・強化
 既存施設の高経年化対策のあり方を再評価し、法体系や基準の見直しを進める。IAEAの基準・指針の強化にも最大限貢献する。
(25)原子力安全や原子力防災に関わる人材の確保
 今回のような事故では、過酷事故への対応や放射線医療などの専門家が結集し取り組むことが必要。教育機関や事業者、規制機関で人材育成活動を強化する。
(26)安全系の独立性と多様性の確保
 これまで(安全確保のシステムである)安全系の多重性は追求されてきたが、独立性や多様性を強化する。
(27)リスク管理における確率論的安全評価手法(PSA)の効果的利用
 原発のリスク低減の取り組みを体系的に検討するうえで、(リスク発生の確率を評価する)PSAは効果的に活用されてこなかった。PSAを積極的に活用し、効果的な安全向上策を構築する。
(28)安全文化の徹底
 原子力安全に携わる者が専門的知識の学習を怠らず、安全確保上の弱点はな いか、安全性向上の余地はないかの吟味を重ねる姿勢を持つことで、安全文化を徹底する。
 
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4月30日に紹介した「福島原発事故に関する、あるジャーナリストの意見」記事で、東電叩きを批判する、おそらくは最初の記事を紹介したが、最近、ブログ者が知る範囲では2人目の、同趣旨での意見が発表されていたので紹介する。(長文につき骨子のみ紹介)
 
出典;201153034分 msn産経ニュース
 
 
埼玉大学名誉教授・長谷川三千子 三次災害引き起こす「東電叩き」
≪渡河中の馬をしめ殺すのか≫
この2カ月半ほど日本中に広まつてゐる「東電叩(たた)き」の現象はきはめて危険なのではないかといふ気がする。これはほとんど、渡河の中途で自分の乗つてゐる馬をしめ殺さうとするに等しいのである。
 
 ≪地震恨めぬ鬱憤原発へ向かう≫
地震そのものについては、人は誰を恨むこともできない。しかし二次災害については(当否はともかく)恨むことのできる相手が目の前にゐる。「東電叩き」はほとんど必然的に起こつたものと言へよう。
しかし、現にこの二次災害を抑へるといふ課題にとつて、「東電叩き」は少しも役に立たない。まさにその災害を抑へる作業にたづさはつてゐるのが、東電自体であり(危険な現場で頑張つてゐる)東電職員なのだからである。
或(あ)る老エンジニアは、このさまを見てかう語つてゐる-「リスクのある作業に従事するには、それを皆が応援しているという心の支えが非常に重要だと思う。現在、作業に当たっている人にそうした支えがないことが問題だ」。
つまり、福島第1原発に不安をもつ人であればあるほど、「ガンバレ東電」と叫ばなければならないのに、実情は逆になつてしまつてゐるのである。
 ≪つぶれていいとの路線は危険≫
そればかりではない。もつとはるかに実質的なところでも「東電叩き」の風潮は、われわれが国難を切り抜ける上での重大な障害をもたらす危険をはらんでゐる。
「原子力損害の賠償に関する法律」といふものがあつて、、千年に一度の大震災によつて生じた「原子力災害」については当然、賠償は免責されるだらうと思はれる。ところが政府は、今回の事故はこのただし書きにはあたらないといふ判断を示し、他方で、賠償には限度を設けないと宣言した。
どういふことかと言へば、一民間企業に、いはば無限の出費を負はせるといふことである。つまり政府は東電がつぶれてもよいといふ路線を走り始めてゐるのである。
しかし、電力の安定した供給を断たれたら復興は不可能となり、国民生活全体がもう一度危機を体験することになる。いはば甚大な三次災害がひき起こされるのである。政府も国民も目を見開いて、渡河中の馬を殺さぬやうに気をつけよう。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110530/dst11053003060003-n1.htm


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4月30日に「福島原発事故に関する、あるジャーナリストの意見」を紹介したが、今度は東電社員のお子さん(小6)の意見が、5月19日の毎日新聞夕刊に掲載されていた。
骨子は下記。
○毎日小学生新聞の東電に関する記事を読んで無責任だと思った。
 ○原発を作ったのは日本人が夜遅くまでスーパーを開けたり、ゲームをしたり、無駄に電気を使ったからだ。
 ○火力では二酸化炭素が出るし、水力では村が沈んだりする。その点、原子力なら燃料も安定して手に入る。原発を作ったのはみんなであると言える。
 
ブログ者は、読後、「無責任発言を続ける大人たちに読ませてやりたい」とか「文章が上手すぎる。大人の手が入っているのでは?」などと思ったものだが、その後、この投書が反響を呼んでいる。

当の毎日新聞には、5月30日、「未来はエネルギー論戦の中にある 国会は小6児童が問うた本質を争え」という記事が掲載された。

また、今週、6月11日号の週刊現代の新聞広告には、以下の見出しが大きく踊っていた。
「悪いのは東電ですか、政府ですか、それとも国民ですか - 東電少年の投書で大激論 - 『東電だけを悪者にするのは無責任。日本人全体に責任がある』という小学校6年生ゆうだい君に大人は何と答える」
 
はてさて、当の政治家が、この小6の問いかけに、どこまで答えられるものだろうか?
総理が、この小6に会うなどと言い出したら、それはパフォーマンス以外の何物でもない。なにとぞ、実質本位で考えていただきたいものだ。



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2011517日付で、毎日新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
福島第1原発1号機で、非常用復水器が津波の到達前に停止していたことが分かった。従来、同復水器は津波到達までは動いていたと考えられていた。
地震発生直後、原子炉圧力容器に制御棒がすべて挿入され、原子炉が緊急停止。非常用復水器も自動で起動したが、約10分後、炉内の圧力が急激に低下したため、地震から約15分後に手動で停止されたとみられる。
その後、津波到達までの間に、何度か起動、停止を繰り返していた可能性があるという。東電は「運転手順書に基づき、炉内が冷えすぎないよう調整したのではないか」と説明している。
非常用復水器は、全電源喪失の際に唯一、原子炉を冷却できる装置だ。東電は「地震の16時間後に炉心の大部分が溶融した」とする解析結果を15日に公表したが、これほど速く炉心溶融が進むという結果は「非常用復水器が停止した」という想定に基づいていたからだ。
非常用復水器が働いていれば、それだけ炉心溶融を遅らせられ、ベントや外部からの注水などの対策がより効果を発揮できたはずだ。
非常用復水器は古いタイプの原発特有で、同原発では1号機にしかない。2~6号機と違い、駆動用のポンプを必要とせずに冷却できるが、弁の開閉でしか制御できない難点もある。
非常用復水器を作動すると原子炉の温度や圧力が急激に下がり、炉を傷める危険性がある。炉を健全に冷やすには難しい操作が避けられず、こうした特有の作業が深刻な事態を招いた可能性も否めない。
 
 
(ブログ者コメント)
 
想像を絶する大事故に至った、ここが一つの大きなポイントのような気がする。


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20115152035分に朝日新聞から、同日2327分にmsn産経ニュースから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
東京電力は、15日、3月15日に発生した4号機建屋の爆発について、3号機から排気された水素ガスが、排気管を逆流して流れ込んだことが原因の可能性があると発表した。
4号機は、事故当時、定期検査で停止中だったため、貯蔵プールで保管されていた使用済み燃料が露出して空だき状態になり、化学反応で水素ガスが発生したと疑われていた。しかし、プールの水などを分析した結果、東電は燃料に大きな異常はないと判断した。
3号機も水素爆発したが、爆発前に、格納容器の損傷を防ぐためベント(排気)が行われた。
その際、4号機の排気管は、排気筒の手前で3号機の排気管と合流しているが、逆流防止弁はなく、また通常は稼働している4号機の排風機が停電で作動していなかったため、4号機側に逆流した可能性があるという。 
 
 
(ブログ者コメント)
 
原子炉であれば、当然、この排気ラインについてもHAZOP解析(オペスタ)を行っていたと思うが、「逆流」モードの解析結果について、どのような評価を下したのだろうか?
結果の重大性から考えると、逆流防止弁設置という対策が出ていて当然のような気がするが・・・。
 
  



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201142934分にmsn産経ニュースから配信された記事に関し、
 
ブログ者は、福島原発事故がらみで3月16日、「リスク管理は本当に難しい」という記事を書いたが、同じ趣旨で、より的確かつ広範囲に問題点などを指摘した意見だと感じたので、転載します。
 
ジャーナリスト・東谷暁 東電叩きによる「人災」

もういいかげんに「東電叩(たた)き」をやめてはどうか。たしかに、今回の福島第1原発事故については東京電力にも責任があるだろう。しかし、そのことといま蔓延(まんえん)している陰湿な東電叩きとはほとんど関係がない。
まず、東電の「想定外」発言を批判して何から何まで「人災」だと言うのは、恐怖に煽(あお)られた短絡にすぎない。この世の危険には確率計算できるリスクと、計算できない不確実性があって、リスクについて東電はかなりの程度まで想定していた。
最終的に今回の事故の原因となった非常用ディーゼル発電機不起動の確率は1000分の1だったが、東電はこれを2台並列に設置して100万分の1の確率にまで低下させていた。しかも、非常用ディーゼル発電機は頑丈で津波にも拘(かか)わらず一旦は起動したが、この非常用ディーゼル発電機のサブ冷却系が津波にやられていたためオーバーヒートして途中で停(と)まったとの説は有力である。
なかには、巨大な津波が来ることは分かっていたのに、低い防潮堤しかなかったため事故が起こったのだから、東電が対策を怠ったことになるという人もいる。しかし、これまで14メートルを超えるような津波は三陸海岸のものであって、福島浜通りに来たという記録はない。また、最近おずおずと発言を始めた地震予知学者たちも、口を揃(そろ)えてマグニチュード9は想定していなかったという。それでどうして東電がマグニチュード9によって起こる巨大津波を想定できるのだろうか。
そもそも、たとえ東電が巨大津波を想定していたとしても、できる対策とできない対策がある。もし想定できることはすべて予防策の対象とすべきなら、岩手、宮城、福島3県の海岸に、巨大防潮堤を建設しなかった県および政府は、あれほど多くの被災者を、最初から見捨てていたことになるのではないのか。
私が東電叩きをやめろというのは、それが私たちにとって損だからでもある。東電叩きには、東電に責任があるから政府は援助をするなとか、東電を解体しろという主張すらある。しかし、これこそ、私たちに新たなリスクを負わせることになるだろう。
これまでも高度な技術をもった事業体を解体したさいには、巨大なリスクが生まれた。国鉄解体では組織内の技術が守られたかに見えたが、JR西日本では制御技術と技術者集団の継承性が損なわれて、福知山線事故という悲劇を生み出した。
また、JALについてはいま給与体系や親方日の丸体質ばかりが論じられるが、最終的に利用者の信用を失ったのは多発した事故だった。この場合も、半官半民から完全な民間企業への変身が強調されるあまり、整備という航空業のコアを外注してしまうことで、組織内に蓄積された安全技術が流出したからである。
原発という技術は、現代における最先端の技術の塊のようなものであり、ことに安全を確保するための制御技術は、設計者と使用者との間の連携が失われれば機能が低下してしまう。しかも、制御技術は組織そのものによって維持されている。これを東電叩きに乗じた怪しげな扇動によって解体してしまえば、新たな事故を招来しないともかぎらない。そうなってしまえば、今度こそ、東電叩きによる「人災」ということになるだろう。
 
 
 
(ブログ者コメント)
 
東谷氏とはいかなるジャーナリストか気になって、29日午後にネットで調べたところ、トップにウイキペディアが出てきた。そこで記載内容を見たところ、一番上の行の右端に「東電擁護派」と書かれていた。
これは一番上の行に書くようなことではない。ちょっとおかしいな?と感じたので同記事の改訂履歴を見たところ、28日20:31に書き込まれたものだった。なんと、上記記事が配信される6時間半前のことだ。これは偶然ではあるまい。配信前に記事を読むことができた人間が書き込んだものとしか思えない。
東谷氏が、過去にどのような論陣を張ってきたか詳しくは知らないが、ネットでざっと調べた範囲では、東電について書かれた記事は他にはなかった。よって、上記記事一本で「東電擁護派」とレッテルを貼られた可能性が高い。どんな輩が何のために?それを考えると心寒い思いだ。
ウイキペディアはどこの誰が書いているか分からないので信用してはダメだとは聞いていたが、それが実感できた書き込みだった。
ちなみに、30日朝に確認すると、再度、「東電の御用ジャーナリスト」と書換えられていた。


※以下は書き替え経緯。ウイキペディアの作られ方が垣間見えて、なかなか興味深いので参考までに紹介します。
 28日20:31 A(218.217.255.36)
   「東電擁護派」と追記
29日 4:50 B(115.37.190.81)
    上記の書き込みを太字に変更
29日 4:56 C(210.170.217.56) 
   カテゴリーに「東京電力」と追記
29日8:43 D(Kzr)
   「東電擁護派」と「東京電力」の両方とも削除
29日12:21 A(218.217.255.36) 
   今度は「日本のジャーナリスト」を「東電の御用ジャーナリスト」と書換え
 
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20114172238分に、msn産経ニュースから下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
東電は17日、福島第1原発にある共用の使用済み燃料プールの水を冷却する装置への電源が一時止まり、プール水の冷却機能が約3時間にわたり停止したと発表した。
原因は、作業員の誤操作で冷却装置付近の電気系統がショートしたためだった。復旧後の水温は停止前と変わりなく、影響はないとしている。
東電によると、共用プールは第1原発の1~6号機で燃やした後の燃料を冷やしており、冷却が停止したのは17日午後2時35分ごろ。
作業員が機器類への電源供給をスイッチで切り替える「配電盤」を操作していた際、誤って別のスイッチを入れた。東日本大震災の被害を受け、通常は使用していない配電盤を使っていたため習熟訓練をしていた。
 
 

(ブログ者コメント)
 
ミスはミスとして、現場では非定常作業の連続であろうことが伝わってくる事例だ。
 
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(2011年2月15日 旧ブログ掲載記事)
 
2011年2月14日20時6分に、時事通信から下記趣旨の記事がネット配信されていた。 
 
東京電力は14日、定期検査中の福島第1原発の原子炉建屋内で、微量の放射能を含む1次冷却水が漏れたと発表した。
漏れたのは約2ℓ。
放射能量は約44万ベクレルで、外部への影響はないという。

東電によると、10日午後3時50分ごろ、パトロール中の社員が原子炉建屋地下1階の床の排水溝から水があふれているのを発見。
非常時に原子炉に水を注入するポンプの水抜き作業中だったが、配管内部がさびなどで詰まり、冷却水が別の配管を逆流してあふれ出したという。
作業を停止したところ、水漏れは止まった。

同社は今後、水抜き作業時には事前に配管に詰まりがないか確認する。  
 
 
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(2011年3月16日 旧ブログ掲載記事)

東日本大震災で、東京電力に対するマスコミの論調が非常に厳しい。福島原発と計画停電で国民に多大なる不安を与え、不便をかけてしまったので致し方ないことだが、同じような装置産業で働いていた身としては、胸が痛むこと甚だしい。
なんとか早期に収束に向かうよう、祈るばかりだ。
 
さて、今回の地震でブログ者が一番知りたかったのは、三陸、田老地区の被害状況だった。というのは、数十年前、かの地に旅していた際、巨大な堤防が小さな集落に設置されているのを見て不思議に思い、なぜかと尋ねると、チリ地震津波の教訓で、二度と同じ被害を出さないため・・・といった説明をされた記憶があったからだ。それが、14日になってやっとテレビで報道されたが、なんと他の地区と同様な被害を被っている模様だ。
 
あの巨大堤防でさえも防ぐことができなかった今回の大津波。それは全くの想定外であり、その強大な力によって福島原発の非常用冷却設備をも破壊してしまったのだろう。大津波さえなければ、非常用冷却設備は、あそこまでの壊滅状態にはなっていなかっただろうと思われてならない。
すでに中電浜岡原発では高さ10mを超える堤防建設の検討を始めたと報道されているが、おそらくは、他の原発でも同様の検討が進められるだろう。
 
従来、原発のような最重要設備は、100年に一度の地震にでも耐えられるというキーワードで造られてきた。
最近100年で日本周辺で起きた地震のマグニチュードは、最大で8.2が2回、次が8.1で、これも2回だ。目を転じると、今回の地震は869年に起きた「貞観地震」とよく似ているとの記事もある。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110312/dst11031206120078-n1.htm
 
しかし、それでもマグニチュードは8.3。いかに今回の地震がケタ外れだったかがわかる。世界的にみても、1900年以降、今回を上回る地震は、チリの9.5とアラスカの9.2しかない。
こう見てくると、今回は1000年に一度、起きるか起きないかといった規模の大地震。国内外の学者、専門家が、まさか起きることはないだろうと思っていた地震が起きてしまったのだ。
 
リスク管理は本当に難しい。想定を厳しくすればするほどコストが嵩んでしまうからだ。隕石が落ちてくることも想定すべきリスクの一つだが、そこまで想定に入れているところは世界中、どこを探してもないだろう。どこで折り合いをつければいいのか?その答えの一つが、地震については100年に一度の大地震に耐えられるということだったが、その想定では甘かった。
今後は、原発に限らず重要な建築物に対しては、1000年に1度の地震にも耐えられるものが求められるだろう。
 
人間が想像できる範囲のことは起こり得る、といった趣旨の言葉があるが、まさにその通りだ。しかし、想像できること全てに対応をとっておくことは不可能。起きる確率が高いと思われるものなど、優先順位をつけて対応するしかないが、事故というものは、えてして想定しなかったところで起きるものだ。いや、想定しなかったからこそ起きるのが事故なのだ。
 
対応したつもりでいても、起きる可能性がある事故。どこまで対策をとっておけばいいのか?その答えを出せる人は誰もいないが、強いて言えば、責任もって安全を管理する立場の人だろう。安全に関する専門知識を持ち、また現場にも精通している人が、剣道の見切りのように、ここまで対応すると決定する・・これが正解だとは思わないが、その程度しかブログ者には思い浮かばない。
 
 
 
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HN:
魚田慎二
性別:
男性
自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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