2018年1月9日17時42分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
大会を通じて、環境や人権などを大切にする社会を体現できるか。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて課題も見える。
問題になっているのが、競技施設の土台のコンクリートを固める型枠に使う木材だ。
新国立競技場の工事をする大成建設などは、「軒庇(のきひさし)」と「屋根集成材」は森林認証を得た国産材を使う方針だが、型枠には、マレーシア・サラワク州の熱帯林乱伐で地域の先住民と紛争が多発している企業「シンヤン」グループの合板が使われていた。
事業主体の日本スポーツ振興センターは、「指摘の型枠合板は国際的な認証を取ったもの」と説明する。
だが、国内外の環境NGOは、木材がどこで伐採されたかを特定したり、熱帯林の木材の使用をやめたりするよう、調達基準の改定を求めている。
昨年9月には、連名で大会組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)などに書簡を送った。
昨年12月、NGOの代表らがIOCと組織委の担当者と会い、調達基準の改定などを申し入れた。
インターネット電話で参加したIOCの担当者は、「指摘は重要で、組織委と議論している。対話を続け対応していきたい」と答えたという。
熱帯材を使った型枠合板は、コンクリートの表面が滑らかになったり、繰り返し使う回数を多くできたりするため、業者に好まれる。
ただ、熱帯林の破壊を懸念する国内の木材業者は、国産などの針葉樹を使った合板の開発を進めている。
ある木材業者の幹部は、「新国立の建設にサラワク州産をわざわざ使う必要はない。リスクのある木材を避ける努力が足りない」と話す。
NGO「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」(本部・米国)のハナ・ハイネケンさんは、「東京大会は、熱帯材から別の木材に切り替える機会だ」と訴える。
選手村の食堂や競技場のフードコートなどの食材に使う水産物の基準にも、「不十分」という指摘がある。
基準では、魚などの水産資源を守るための管理ができていると第三者機関の認証を受けたものを使うとしている。
国際的な水産物の認証制度「海洋管理協議会(MSC)」と「水産養殖管理協議会(ASC)」のほか、日本独自の認証制度があてはまる。
一方で、認証を受けていなくても、国や都道府県の指針に沿って漁業者が作る資源管理計画などがあれば、使用を認める。
背景には、国内では認証を受けた漁業者が少ないという実情がある。
高いレベルの認証のMSCは3件、ASCは2件しかない。
水産資源の保護を進めるコンサルタント会社「シーフードレガシー」の花岡社長によると、国内では資源管理計画が約1900もあるが、多くは目標年度や目標数値が定められていないという。
花岡氏は「五輪は水産資源の管理を見直す機会だが、いまの資源管理計画を調達基準で認めるのでは生かせない。目標年度や目標数値を計画に定めることが求められる」と話す。
12年ロンドン大会では、MSCの認証水産物が多く使われた。
大会後、ロンドンを中心に認証水産物が消費者に浸透し、五輪が広めた代表的なレガシー(遺産)となった。
【「脱炭素」へ進まぬ計画】
五輪では、地球や人間が「持続可能」な大会運営は義務だ。
IOCは、開催都市との契約で、その戦略や計画をつくるよう求めている。
資材や食材などの調達基準だけではない。
大会の準備中や開催中に出る二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを減らす方策、ゴミの処分方法や廃棄場所などを示し、報告することも求めている。
これを受け、組織委は「持続可能性に配慮した運営計画」の第2版をつくっており、今月16日までパブリックコメントで幅広く意見を募っている。
計画では、自然エネルギーを増やしたり排出量取引制度を使ったりして、(CO2)を実質ゼロにする「脱炭素五輪」をめざす。
東京都も、五輪とパラリンピックの開閉会式(計4日間)の都内の(CO2)排出量(約72万トン)を、都の排出量取引制度を使って、実質ゼロにすると表明している。
小池知事は、「持続可能性のバトンを(後の大会に)つなげたい」と語る。
計画ではほかに、ゴミを減らし、再利用やリサイクルを進めるほか、長時間労働の禁止や人権保護なども盛りこむ。
五輪では初めて、使い終わった携帯電話などの部品から取り出した金属を再生してすべてのメダルをつくる試みも、昨年から始まった。
課題もある。
組織委が(CO2)の排出量取引制度を利用する際に必要な資金のめどが立っていない。
「選手村で使う食器は再利用できるものにすべきだ」という声も出ている。
だが、洗浄力や乾燥力の高い機械を備えるには費用がかかる。
検討すべき点が多く、計画の第2版策定は、当初予定の3月から6月にずれ込んだ。
【視点 次代に伝えるビジョンを】
最近、紙やパーム油の調達基準を考える大会組織委員会のワーキンググループ(WG)で、環境NGOの関係者がこんな指摘をした。
「グリーンウォッシュになってしまう」。
うわべだけ環境に良いと装い、中身が伴っていないという意味だ。
東京大会の持続可能性に関するWGなどは、報道陣に原則、すべて公開されている。
環境、人権分野のNGO関係者や弁護士、大学教授らのメンバーが、厳しい指摘を投げかける。
組織委の担当者が答えに窮する場面もあり、議論はなかなか前に進まない。
「グリーンウォッシュ」には、そんないらだちが混ざっている。
組織委側にも事情がある。
持続可能性への認識が乏しい日本で、現実とかけ離れた理想で目標を作っても、計画倒れになる。
1兆3500億円の総経費もさらなる削減が求められ、資金にも限界がある。
一方で、何を発信したいのか、ビジョンが見えない。
組織委の答えは「ロンドン大会では」など、過去の例が目立つ。
「経済効果の話は盛んだけど、持続可能性はIOCから言われて受け身なのではないか」と指摘する関係者もいる。
東京大会は、地球や人間が持続できる社会を作るきっかけになる。
2020年以降の道しるべになるような計画を作り、未来を担う子どもたちへ伝えたい。
出典
『新国立の建設、熱帯林の木材使用に批判 東京五輪に課題』
https://digital.asahi.com/articles/ASL147CYVL14ULZU00Q.html?rm=488
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。