2019年11月12日付で中日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
台風19号の上陸から十二日で一カ月。
千曲川の堤防が決壊した長野市穂保や周辺地区では被災当時、急激な増水や氾濫を認識していながら、自宅にとどまる住民も少なくなかった。
「今回も大丈夫だろう」、「ここまでは絶対に水が来ない」。
多くが大災害の情報を過小評価してしまう心理状態にあった可能性を専門家は指摘し、緊急時に近隣住民同士で声を掛け合う必要性を訴える。
台風19号が最接近した十二日午後十時ごろ、堤防決壊現場の近くに住む六十代男性は、車で千曲川沿いの道路を通って帰宅していた。
堤防下一メートルほどまで水が来ていたが、「うちは大丈夫だろう」と思ったという。
数十年前の増水時には下流の堤防だけが決壊し、直接の浸水被害を受けなかったからだ。
八十代の母親も「寒いのは嫌」と避難所に向かうのを拒んだため、家族で自宅にとどまった。
千曲川が氾濫し始めたのは翌十三日午前一時ごろ。
男性によると、午前三時ごろには「ゴオー」という滝のような音とともに濁流が自宅に押し寄せた。
すぐに二階に避難したが、外の様子をうかがうと、周りは既に湖のようになっていた。
「家ごと流されるのでは」と恐怖に震えたという。
穂保やその周辺の地域は、江戸時代から大洪水に襲われてきた記録も残る。
近くの寺に、その痕跡があるのを男性も認識していたはずだった。
家族は十三日の午前八時ごろ、屋根から一人ずつヘリで救助されたが、男性は「ここは大丈夫と思い、最悪のことは考えなかった」と肩を落とした。
一方、穂保に隣接する同市津野の六十代女性は十三日未明、千曲川が穂保で氾濫したことをラジオで聴いて認識していた。
だが、「ここまでは来ないだろう」と自宅にとどまった。
「今回みたいな浸水はこれまでなかったから」という。
穂保、津野を含む長沼地区で堤防が強化されていたことも判断を鈍らせた。
国は二〇〇二~一六年、桜を植えるために堤防の幅をそれまでの三倍の約二十メートルに広げていた。
女性の夫は「桜堤は百年平気と聞いていたから、安心していた」と打ち明けた。
その認識が一変したのは十三日午前二時すぎ。
加藤久雄市長の名前で「ただちに逃げて」と防災メールが来ると、ようやく「本当に大変かも」との不安が頭をよぎった。
道路は既に足首の高さまで水に漬かっていた。
車での避難をあきらめ、自宅で一夜を明かし、ヘリで救助される事態になった。
こうした心理状態を、首都大学東京の中林一樹(いつき)名誉教授(都市防災学)は「正常性バイアス(偏見)」と解説する。
「『被害が起きてほしくない』という願望が『起きないだろう』との思い込みに変わり、災害を過小評価してしまう」と指摘。
誰もが陥る可能性があることに言及し、「過去に災害の経験があっても前回以上の被害にはならないと安心してしまうケースもある。避難を促すために近所の人からの声掛けや行政の強い呼び掛けが重要だ」と話した。
https://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20191112/CK2019111202000007.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。