2018年11月14日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
横浜市で10月、9階建てビルの屋上から金属パネルが落下し、直撃した歩行者の男性(当時65歳)が死亡した。
パネルの劣化が一因とみられるが、一定規模のビルで必要な定期検査や行政への報告を所有者が怠っていた。
高度成長期やバブル経済期に建設されたビルの老朽化が進む中で、同種の事故が繰り返されているが、問題のビルと同時期に検査が必要で、行政に未報告の全国のビル数は、全体の3割近い2万6332棟に上っている。
10月1日、横浜市中区尾上町の「KIT関内ビル」の屋上に取り付けられたパネル3枚が落下した。
ビルの隣の店舗の男性(28)は、「交通事故かと思うほどの大きな音がした。頻繁に通る道なので怖い」と振り返った。
パネルは地上約32mにあり、大きいもので縦約1.5m、横約3m。
警察が業務上過失致死容疑で調べているが、ビルは完成から30年ほどが経過し、パネルは一部のネジが外れ、錆びて腐食が進んでいたという。
国交省によると、2017年度までの8年間、ビルの看板や壁などの落下事故が全国で77件あり、41人がけがをした。
こうした事故を防ぐため、建築基準法は一定の用途と規模を持つビルの所有者側に、定期的に安全検査し、建築確認ができる職員のいる都道府県や市などに報告するよう求めている。
しかし、今回事故のあったビルは、直近では16年度に検査し横浜市に報告すべきだったが、実施していない。
ビルの所有会社は、「定期検査が必要とは知らなかった」と市に答えたという。
同省によると、同様に16年度に定期検査が必要だったビル9万4206棟のうち、検査未報告は2万6332棟に上った。
検査時期が16年度以外のビルは他に約19万3700棟あり、未報告の棟数はさらにふくらむ。
検査を担う行政関係者は、制度の周知が進んでいない点が一番の問題と口をそろえる。
老朽化の進んだビルでは、所有者が変わると管理水準が落ち、検査の必要性が引き継がれないこともある。
検査項目が約130もあり、建築士らによる目視だけでなく、場合によっては高所での確認作業も必要になる。
1990年以前に建てられた鉄筋や鉄骨のビルは約40万棟あるとされ、危機感から、一定の大きさ以上の看板に独自の許可や届け出を求める自治体もある。
福岡市は10~11年度、業者に委託し、360°カメラ搭載車両で看板の設置状況を調べた結果、看板約1万2000のうち、約65%の約8000が無許可で、所有者に安全管理を促した。
京都市も、一定以上の大きさの看板は設置時の届け出義務があり、更新手続きの際に腐食などを点検し、報告書の提出を求めている。
担当者は、「ビル側は、安全管理にもっと危機感を持つべきだ」と話している。
出典
『看板老朽 ビル増す危機 8年で落下事故77件 定期検査や報告怠り』
https://mainichi.jp/articles/20181114/ddm/041/040/056000c
同じ11月14日付で同紙からは、下記趣旨の識者の話もネット配信されていた。
【設置状況把握を 東京理科大の兼松学教授(建築材料学)の話】
看板や外壁は、落下すると人命にかかわり、目視だけでは不十分。
ただ、検査費用の面で、民間にも限界がある。
まずは、自治体が看板の設置状況を把握すべきだ。
その上で、車検のように、ビル全体を詳細にチェックできる仕組みの検討が必要だろう。
出典
『看板老朽 ビル増す危機 8年で落下事故77件 定期検査や報告怠り 東京理科大の兼松学教授の話』
https://mainichi.jp/articles/20181114/ddm/041/040/064000c
(ブログ者コメント)
今年10月の横浜市事例は、本ブログでも紹介している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。