2022年1月15日15時7分に毎日新聞から下記趣旨の記事が、山倉ダム太陽光パネル放水消火状況の写真付きでネット配信されていた。
太陽光発電システムのパネルの火災について、「水での消火が不可能」と主張するツイッターの投稿が拡散している。
しかし、総務省消防庁によると、感電に注意をしなければならないものの、他の火災と同様に放水で消火しており、この投稿は誤りだ。
このツイートは、匿名アカウントが2021年10月2日に投稿した。
小池百合子東京都知事が都内で新築する住宅に太陽光発電設備の設置義務づけを検討することを伝える新聞記事を、別の、あるアカウントが批判したツイートを引用し、以下のようにツイートした。
非住宅用の大型太陽光パネルが黒煙を上げながら燃える動画も添付している。
「何度も言ってますが、ソーラーパネル火災は水での消火が不可能です。東京みたいな密集地で火を出したら、一体どうなるのか。 誰でも想像が付くと思いますね。 #メガソーラー建設反対」
※ブログ者注;リツイート文も紹介されているが、それらは転載省略。
この投稿は14日午後8時現在、7650件リツイートされ、約1万件の「いいね」がついている。
アカウントのプロフィルには「【良ければ一緒にメガソーラー反対メール!】」などと記されている。
投稿への返信では、「初めて知った」、「どう消火すればいいの?」との不安の声や、太陽光パネル導入に反対する意見が目立った。
【消防庁「普通に放水で消火」】
果たして、放水では消火できないのか。
総務省消防庁消防・救急課は、毎日新聞の取材に「他の火災と同様に放水で消火している。太陽光パネルだから水を使えないという事実はない」と、投稿を否定した。
正確な件数は数えていないが、太陽光パネルを設置した住宅火災の放水消火は「各消防本部で普通に実施している」という。
他の火災と違うのは、消火活動の際に、感電のリスクがあることだ。
通常、火災が発生すれば電力会社に送電を止めてもらうが、太陽光発電の場合、たとえ送電システムが働いていなくても、屋根などに設置された「モジュール」で発電が続く恐れがあるためだ。
日中はもちろん、夜間でも火災の炎の光で発電する可能性があり、現場の消防隊員は感電に警戒する必要がある。
消防庁は14年3月、「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」という報告書をまとめている。
それによると、消火時の感電防止対策として、
▽高い絶縁性能のある手袋及び靴を着用する
▽放水は噴霧注水を用い、棒状注水は極力避ける
▽棒状注水を行う場合は太陽光発電システムから少なくとも6メートル以上(可能ならば10メートル以上)の距離をあける
などの注意事項を挙げている。
一方で、放水での消火自体を禁止する記載はない。
【過去の大規模火災も「障害」にならず】
この投稿に対する返信には、埼玉県三芳町の事務用品通販会社「アスクル」の物流倉庫で17年2月に起きた大規模火災と関連付けるものもあった。
この火災は、出火から鎮火まで12日間もかかり、消火が難航したことで知られる。
鉄筋3階建て倉庫延べ約7万2000平方メートルのうち、約4万5000平方メートルを焼き、2人が重軽傷を負う被害が出た。
ツイートの返信は、この物流倉庫が屋根に太陽光パネルを設置しており、それが原因で放水できなかった――との趣旨だった。
しかし、消防庁がこの火災について17年6月にまとめた報告書によると、消火作業が難航したのは、窓などの開口部が少なく、倉庫内への放水のため外壁を壊すのが難しかったためなどと指摘しており、太陽光パネルが消火活動の障害になった、との記載はない。
消火活動で放水できないのは、水をかけると逆に炎の勢いが強まる化学薬品工場など、特殊なケースに限られる。
住宅火災でも泡状の消火剤を用いることがあるが、これは「酸素遮断などの効果で早く消火させる狙いがある」(消防庁消防・救急課)。
ただ、コストが高いなどの理由で、放水での消火が多いという。
毎日新聞は投稿した匿名アカウントに取材を申し込んでいるが、14日現在、返答はない。
https://mainichi.jp/articles/20220113/k00/00m/040/080000c
(ブログ者コメント)
〇山倉ダムでの放水消火については本ブログでも、2019年の台風15号災害記事にブログ者撮影写真を掲載している。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/9995/
〇アスクル倉庫火災についても本ブログで紹介しているが、その中で太陽光パネルについては以下の報道があった。
消火活動が長期化している理由について、消防は、2階と3階に窓がほとんどないこと以外、・・屋上にはソーラーパネルがあり、水をかけると消防隊員が感電するおそれがあるため、直接放水することができない。・・・としている。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6801/
〇一方、本ブログでは、災害で損傷した太陽光パネルの取り扱い上の注意点などの情報も、何件か紹介している。
〇今回の情報は、誤った情報がごくわずかな発信元から大規模拡散する、その一例としても掲載した。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。