2019年11月5日5時3分にNHK NEWS WEBから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
工業製品の製造や研究開発などの際に幅広く使われている「ヘリウム」の供給量が減少して、一部の研究が行えなくなるなどの影響が出ていて、関係する学会は緊急の声明を出して、ヘリウムの安定供給に国をあげて取り組むよう訴えることにしています。
ヘリウムは燃えることがなく安定していて、冷却のためなどに使われます。
半導体などの工業製品の製造や研究開発、それに医療用の機器など幅広く使用され、日本はすべて輸入に頼っています。
世界の生産量のおよそ6割を占めるアメリカが、ヘリウムの輸出を去年から減らしていて、日本のヘリウムの輸入価格は10年前のおよそ3倍になっています。
ヘリウムの輸入会社は、医療機関や工業製品のメーカーには優先的に供給していますが、研究開発用はすで不足していて、一部の研究が行えなくなるなど影響が出ています。
このため、日本物理学会などの関係する学会は、このままでは研究開発が進まなくなるだけではなく、製造現場や医療にも大きな影響を与えるとして、緊急声明を出してヘリウムの安定供給に国をあげて取り組むよう訴えることにしています。
この中では、ヘリウムをリサイクルする設備や環境を早急に整えることを求めるほか、国内にヘリウムを備蓄する拠点を設けることなどを求める方針です。
日本物理学会の勝本副会長は「対策を打たないと危機的な状態になる。当面は供給量が増える見込みはなく、リサイクルなどに真剣に取り組む必要がある」と話していました。
【販売企業「危機的な状況」】
ヘリウムは半導体や光ファイバーの製造になくてはならないなど、工業製品の製造現場では幅広く使われているほか、MRIなどの医療用の機器などでも必要になっています。
ヘリウムの不足が深刻になると、身近な医療で一部の検査ができなくなるなど、さまざまな分野で影響がでるおそれが指摘されています。
ヘリウムガスの輸入と販売で国内の最大手の岩谷産業の宮垣執行役員は「『ヘリウム危機』と呼ばれるものは、過去にプラントのトラブルによって1度か2度あったが、今回は構造的な問題で起きているところが違う。この状況は少なくとも数年は続くと見ていて、危機的な状況と言える」と話しています。
【「ヘリウム危機」の背景】
「ヘリウム危機」の背景にあるのは、世界的なヘリウム生産の減少と需要の拡大です。
このうち、世界のヘリウム生産量のおよそ6割を占めるアメリカでは政府の管理下にある、南部テキサス州の世界最大のヘリウム貯蔵施設が、再来年の9月末までに民営化されることが決まっています。
現地メディアなどによりますと施設の民営化を前に、現在貯蔵されているヘリウムが民間に払い出されることになり、去年行われた入札で、アメリカのガス販売企業1社が買い占めたため、それまで日本がこの貯蔵施設から輸入していたヘリウムの輸入が難しくなったということです。
また、アメリカでシェールガスの開発が進んでいることも影響しています。
専門家によりますとヘリウムは通常、天然ガスと一緒に産出されますが、シェールガスにはヘリウムはほとんど含まれていないため、シェールガスの開発が進むほど、アメリカでヘリウムの生産は減っていくということです。
一方、アメリカに次ぐヘリウム産出国である中東カタールの情勢悪化も、ヘリウム不足の大きな要因となっています。
おととし、サウジアラビアとUAE=アラブ首長国連邦は、「テロ組織を支援している」として、カタールとの国交を断絶しました。
それまでカタール産のヘリウムは、隣国サウジアラビアを経由し、UAEの港から海外に輸出されていましたが、国交断絶により別のルートをたどらなければならなくなり、輸送に余分な時間とコストがかかるようになって安定供給に影響が出ているのです。
こうしたヘリウム不足にさらに拍車をかけているのが、世界的なヘリウム需要の拡大です。
特に近年、半導体や光ファイバーの生産に力を入れる中国で、ヘリウム需要が急速に増えています。
こうした複数の要因が重なり、世界のへリウム需要に対して生産が追いつかず、価格が高騰する事態がここ数年、深刻化しています。
【世界のヘリウム生産の見通し】
世界的なヘリウム不足が深刻化する中、新たなヘリウム生産の計画が各国で進んでいます。
ロシア最大の政府系ガス会社「ガスプロム」はロシアの東シベリアで産出されるヘリウムを極東の工場で精製して、輸出する計画を進めていて、再来年の稼働を目指しています。
また、中東のカタールと北アフリカのアルジェリアでも新たなヘリウム工場の稼働が来年以降、見込まれています。
各国で新たなヘリウム生産が始まると見込まれることから、専門家の間では、世界的なヘリウム不足は来年以降、改善に向かうという見方が出ています。
一方、世界最大のヘリウム産出国のアメリカでは、今後、ヘリウムがほとんど含まれないシェールガスの開発が進むものとみられ、ヘリウムの生産量は縮小していく見込みです。
現在、世界のヘリウム生産は、アメリカがおよそ60%、カタールがおよそ30%と、2か国でおよそ90%を占めていますが、世界のヘリウム市場の動向について調査しているアメリカのコンサルティング会社「コーンブルース・ヘリウム・コンサルティング」によりますと、2025年にはアメリカの割合はカタールと同じ30%ほどに縮小し、一方でロシアが25%近くまで拡大する可能性が見込まれているということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191105/k10012164001000.html
11月2日2時0分に日本経済新聞電子版からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
近づくクリスマス。
ホームパーティーなどで子供や若い女性に人気のバルーン(風船)の値上げが相次いでいる。
充填するヘリウムの需要が世界的に増加、日本の輸入量が減り仕入れ価格が高騰しているためだ。
ヘリウムは半導体製造など産業や医療、最先端研究にも欠かせない希少なガス。
日本は全量を輸入に依存しており、国際情勢がおもちゃの世界も揺さぶっている。
【供給制限、仕入れ値上昇】
日本初のバルーン専門店「タキシードベア西麻布店」(東京・港)。
店頭にはカラフルなバルーン約2000種が所狭しと並ぶ。
このうち約800種はヘリウムで空中にふわふわと浮く商品だ。
取材に訪れたのが10月31日のハロウィーン目前とあって、平日にもかかわらず若い女性や家族連れがひっきりなしに来店する。
店のスタッフは手慣れた様子で専用の注入機でヘリウムガスを手早く注入、客に次々とバルーンを手渡していた。
同社に衝撃が走ったのは、今年2月。
ガス供給会社からのヘリウム供給が大幅に制限され、仕入れ価格も引き上げられた。
このため同月、ヘリウムを使ったバルーンの1~3割値上げに踏み切った。
ヘリウムで浮かぶゴム風船では310円から16%引き上げ360円とした。
品薄を受け、店の装飾用に使うヘリウム使用量も1割程度削減した。
9月ごろまで続いた入荷制限は解消したが、専門店にとっては「仕入れ価格の高騰よりも、仕入れが少なくなる方がインパクトが大きい」と、頭を抱える。
バルーンの店頭価格のうち、ヘリウムガスの価格は2割程度を占めるという店もある。
ヘリウム高騰による値上げは全国に広がっている。
ネットショップなどで全国販売するS.A.KBalloon(浜松市)は2月、バルーン製品の販売価格を全体で約3割引き上げた。
ヘリウムの仕入れ値がそれまでの2倍に高騰し、入荷量も5分の1に減少したためだ。
品薄は10月に解消したが「一時は30個以上風船を使うブライダル用の注文は断らざるを得なかったほど」(担当者)という。
バルーン値上げの背景には、世界的なヘリウムの需給逼迫がある。
ヘリウムは、天然ガスを採取する際の副産物として生産され、需要増に合わせて採取量を増やしにくい。
現在、採算に合うコストで効率的に生産できるガス田があるのは、米国、カタール、アルジェリア、オーストラリア、ロシア、ポーランドの6カ国のみ。
世界生産量は約1億6000万立方メートル(2018年)とされる。
最大の産出国は米国でシェアは5割を超える。
2位カタールは約3割を占める。
生産国や企業が限られ、価格は国際情勢の影響を受けやすい。
【全量輸入、世界で需給逼迫】
日本は全量を輸入している。
産業、医療、研究用途を中心に需要が拡大する一方、日本の輸入量は1653トン(2018年)と、ここ10年で4割減るなど、ヘリウム不足が繰り返されている。
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51519260Z21C19A0XQD000/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。