2016年2月10日5時6分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
学校の運動会で組み体操による事故が多発していることを受け、文部科学省は、対策に乗り出す方針を決めた。
春の運動会シーズンに間に合うよう、3月末までに、各地の教育委員会などに安全確保策を求める考え。
「人間ピラミッド」などでの負傷件数が年8千件を超える現状の改善をめざす。
馳浩文科相は、9日の記者会見で、「組み体操は危険な状況になる可能性のある教育活動」と指摘。
四つんばいになった人の背中に人が乗り、段を重ねてつくる「ピラミッド」について「、(崩れた時に)十分に体のできあがっていない中学生が圧迫を受けたらどうなるのかは、想像すれば分かる。(文科省として)一つの考えを示す必要がある」と話した。
同省は、今後、過去の事故の分析などを進め、安全確保策をまとめて教委などに対策を求める考えだ。
日本スポーツ振興センター(JSC)によると、2014年度に災害共済給付を支給した小中高校の組み体操の事故は8592件で、記録のある11年度から毎年度8千件を超す。
14年度の事故の校種別の内訳は、小学校6289件、中学1885件、高校418件。
負傷の種類別では、2095件(24.4%)が骨折だった。
JSCの記録をもとに,松戸市立病院(千葉県)の庄古知久医師がまとめた資料によると、14年度は頸髄(けいずい)損傷も3件あった。
国会でも、組み体操問題に関する超党派の議員連盟が近くでき、文科省に対策の提言などをする予定だ。
■「今に大事故起こる」「達成感味わえる」 教師や保護者に賛否
「生徒の身体能力が以前と変わった。教師の指導で補えるレベルではない」。
東京都北区立稲付中の武田校長(55)は、そう話す。
14年に、前年まで続けていた組み体操を中止した。
受け身を取れず顔を打ちつける生徒らを見て、「今に大事故が起こる」と判断。
保護者らから、「大けがを負ったわけでもないのに、やめてほしくない」との声も出たが、理解を求めた。
代わりの種目は、空手の演武など。
「危険を冒さなくても、感動や達成感は得られる」と武田校長は話す。
都内の女性(49)は、「国が禁止する勇気を持たないと事故はなくならない」と言う。
14年に小6の長女が4段タワーの最下段で下敷きになり、左ひじを骨折した。
昨年4月に人間ピラミッドを取り上げた本紙「フォーラム面」で、長男が中学時代に組み体操で骨折した経験を投稿した熊本市の女性も、「組み体操に感動するという人がいるが、そのために子どもを危険にさらしてはいけない」と言う。
一方、都内の公立小に勤める男性教員は、「組み体操は盛り上がる種目。学校の判断ではやめづらい」。
小学生の娘2人を持つ愛知県の会社員男性(44)は、「皆で力をあわせて達成感を味わえる貴重な経験。けがを心配して甘やかしすぎじゃないか」と話した。
都内の小中学校でPTA会長を務めた男性(72)は、こう語る。「体育にけがはつきもの。安全な範囲で続ける努力が要るのでは」
■大阪市はピラミッド禁止、愛知県は上限通知
国に先駆け、独自の対策に乗り出す教育委員会も出てきている。
大阪市教委は、9日、市立の小中高校での組み体操のうち、ピラミッドと、立った人の肩の上にさらに人が立つ「タワー」を禁じることを決めた。
文科省によると、全国初の試みとみられるという。
市教委は、昨年9月、相次ぐ事故を重くみて、ピラミッドは5段、タワーは3段までとする上限を決定。
しかし、以後も小中学校で、ピラミッドなどの事故で7人が骨折したため、禁止に踏み切った。
市教委の大森委員長は、「これは人権問題。達成感や一体感を味わう子もいるが、強制になっている子もいる」と話す。
愛知県教委も、昨年末、県内の公立学校に、ピラミッド5段、タワー3段との上限を通知。
事故防止のため、教職員ら補助員の配置やマットの使用も求めた。
13~15年度に県内の小中学校で、組み体操で骨折をした子どもは396人おり、事態を重視して対策に踏み切った。
東京都教委も、1月、学校向けのガイドラインの作成を始めた。
騎馬戦や棒倒しなど、危険を伴うほかの種目も含め、指導時に配慮すべきことなどをまとめる。
大学教授らによる検討委の初会合では、「若手の教員が多く、安全な指導の要点が広まっていない」などが指摘された。
「組み体操をやるかどうかは学校などの判断だが、種目を選ぶ際の参考情報を提供したい」と担当者は話している。
千葉県松戸市教委は、ピラミッドなどについて、禁止も視野に入れて対策を検討中だ。
本郷谷市長が、昨年12月、「安全性が確保されるガイドラインができるまでは、組み体操をやらないように」と市教委に要請したのがきっかけ。
今年度、組み体操で負傷した市内の小中学生は64人で、うち10人は骨折だった。
■子どもの安全が最優先
名古屋大の内田良准教授(教育社会学)の話
組み体操は、運動が得意な子もそうでない子も全員参加を強いられる取り組みなのに、あまりに危険だ。
最優先するべきは、子どもの安全だ。
大阪市教委の決定は高く評価できる。高さ制限しても事故が多発したという実際のデータに基づく判断は、何より尊重されるべきだ。
漫然と問題を放置してきた行政・学校の責任は重い。
大阪市教委の動きは、全国の教育現場に影響するのではないか。
本来は、学校が自主的にやめなければならなかった。
各校は真摯に、組み体操の危険性に向き合うべきだ。
■あまりに管理主義
関西大の赤尾勝己教授(教育学)の話
大阪市教委の決定は、けがを回避するという観点から、一定の理解はしたい。
しかし、子どもの達成感や保護者の期待と安全性を勘案して、学校が決めるのが筋ではないか。
各校ごとに安全への取り組みは異なるはずだ。
教育委員会で画一的に決めてしまうのは、あまりに管理主義が過ぎる。
市教委の委員は、「運動が得意な子、苦手な子がいるのに全員参加が強制されている」と指摘した。
やりたい子どもには段数を制限した上で有志でやれるようにしたり、教員の補助を増やしたりして続ける選択肢があってもいいのではないか。
出典URL
http://www.asahi.com/articles/ASJ294SV3J29UTIL01Y.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。