2015年10月25日10時34分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が写真付きでネット配信されていた。
大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出された有害物質を含む鉄鋼スラグを巡り、新たな問題が浮上した。
群馬県の宅地の盛り土に使われたスラグが雨水などで膨張し、家が傾く被害が起きている。
国が同県長野原町で建設を進める八ッ場ダムの住民移転代替地にもスラグは無許可で使われており、専門家は、「スラグの宅地利用は危険が伴う」と警鐘を鳴らしている。
スラグを宅地に利用したのは、同県榛東村山子田の建設会社社長(56)の木造2階建て住宅で、先代の父親(故人)が30年前に新築した。
社長によると、父親の友人で渋川工場に勤める男性の紹介で、敷地を高くする盛り土材としてスラグを譲り受けた。
約2000m2の土地に3〜5mほど盛ったという。
ところが、10年ほど過ぎると外壁にひびが入り、戸口の建て付けが悪くなり始めた。
さらに、床が数カ所で数cm隆起し、基礎のコンクリートにも大きな亀裂が生じ、母屋とコンクリート製縁側の間には10数cmの隙間ができた。
隆起やひび割れは、今も進行しているという。
鉄鋼スラグのうち、特殊鋼の精製で排出されるものは「製鋼スラグ」と呼ばれ、これは水と反応して膨張する性質がある。
道路で利用するスラグには、日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1.5%以下)が設けられ、JIS策定委員を務めた長岡技術科学大の丸山暉彦名誉教授(道路工学)によると、スラグに機械で蒸気を掛けるなど膨張を抑える処置をしなければ、最大で10%以上膨張することがある。
社長宅を視察した丸山氏は、スラグが原因とみて間違いないとしている。
毎日新聞は、社長宅のスラグを採取して、国指定の専門機関に鑑定を依頼。
環境基準の7倍を超える有害物質「フッ素」が検出された。
また、東京農工大の渡辺泉准教授(環境毒性学)の研究チームが別途採取した周辺土壌からは、微量の発がん性物質「六価クロム」も検出された。
渡辺氏は、「六価クロムは自然界になく、スラグによる土壌汚染が起きている」と指摘した。
渋川工場のスラグは、八ッ場ダムの住民移転代替地などに無許可で使われ、国交省の調査で、有害性も確認された。
スラグが見つかった代替地の近くには、既に住宅が建っているが、国交省は「民有地」を理由に宅地の調査をほとんどしておらず、宅地の真下に使われている可能性もある。
丸山氏は、「JISで認められたスラグはそもそも宅地での利用を想定してなく、使うのはリスクを伴う。宅地で使われた可能性があるなら、国は異常の有無を継続的に監視すべきだ」と指摘。
国交省関東地方整備局は、「移転代替地の今後の調査について住民の要望や宅地の状況などを考慮して判断したい」としている。
大同特殊鋼総務部は、「(社長宅の)スラグが当社製のものかは確認できていない。要望を詳しく聞いた上で対応を検討したい」とコメントした。
渋川工場のスラグを巡っては、建設資材の取引きを装った廃棄物処理法違反容疑で、群馬県警が先月、強制捜査に乗り出している。
出典URL
http://mainichi.jp/select/news/20151025k0000m040099000c.html
(ブログ者コメント)
大同特殊鋼のスラグ問題は、これまでに数多く報道されている。
以下は、割とまとまった報道例。
(2015年9月18日 環境ビジネスオンライン)
『再利用する鉄鋼スラグは「廃棄物」 群馬県、廃棄物処理法違反で告発』
群馬県は、大同特殊鋼渋川工場の製鋼過程で副産物として排出された鉄鋼スラグが建設資材として出荷されていた件で、総合的に勘案し、この鉄鋼スラグを廃棄物と認定した。
同社の鉄鋼スラグは、2002年4月から2014年1月までの間、関係者の間で逆有償取引が行われていた。
逆有償取引とは、販売代金より多い費用を管理費・処理費等の名目で支払うものである。
(以下、転載省略)
http://www.kankyo-business.jp/news/011353.php
(2016年12月23日 修正1 ;追記)
2016年12月23日7時9分に産経新聞群馬版から、書類送検されていた3社などが不起訴処分になったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
大同特殊鋼の渋川工場から出た有害物質を含む廃棄物「鉄鋼スラグ」が県内の公共工事などで使われた問題で、前橋地検は、22日、同社など3社と各社役員ら5人を不起訴処分とした。
残る2社は、大同特殊鋼の子会社のⅮ社(愛知県東海市)、S社(渋川市)。
前橋地検は判断のポイントとして
(1)スラグは廃棄物と認められるのか否か
(2)仮に廃棄物だとして、関係者が廃棄物であると、それぞれ認識していたのか否か
を挙げた上で、いずれの点も、刑事事件として裁判において十分な証拠をあげて立証していくことは困難であり、「嫌疑不十分」とした。
昨年9月、県が刑事告発し、県警が廃棄物処理法違反の疑いで捜査。
その結果、大同特殊鋼は、平成23年3月1日から翌年3月31日まで、廃棄物処理の許可を受けていない2社に約300回計約2万8300トンのスラグの処分を委託。
Ⅾ社は無許可のまま処理し、S社も同様に約1万8500トンを収集したとして、今年4月、同法違反の疑いで3社と役員ら5人を書類送検していた。
不起訴処分について、県廃棄物・リサイクル課では、「不起訴処分は意外だ。今後よく理由を確認したい」とした。
また、大沢知事は、「今後とも、鉄鋼スラグの使用箇所や環境への影響について調査を進め、県民の安全・安心をしっかりと確保していきたい」とコメントした。
県は、渋川工場などへの立ち入り検査で、同工場から出た鉄鋼スラグを廃棄物と認定。
県によると、9月末現在で、県内の公共工事337カ所、民間70カ所の計407カ所で、道路の舗装などに同社のスラグが使われている。
うち318カ所の環境調査の結果、スラグ134カ所、土壌86カ所から基準値を上回る有害物質が検出されたが、人体に影響するレベルではないという。
出典
『「鉄鋼スラグ」問題嫌疑不十分で大同特殊鋼など不起訴』
http://www.sankei.com/region/news/161223/rgn1612230012-n1.html
12月22日20時33分に毎日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
スラグは鉄を精製する際に発生する副産物で、有害物質が含まれていなければ、再生利用できる。
群馬県は関係先を調査した結果、大同がスラグに環境基準を超えるフッ素が含まれていることを把握していたことや取引形態から、再生資材を装った廃棄物処理だったと判断。
処理に必要な許可を受けていない会社に処理を委託したなどとして、昨年9月に3社を刑事告発し、県警が今年4月に書類送検した。
一方、大同は「再生資材だ」と主張していた。
出典
『鉄鋼スラグ問題 大同特殊鋼など5人不起訴処分 前橋地検』
http://mainichi.jp/articles/20161223/k00/00m/040/054000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。