(1/2から続く)
9月11日17時10分に福井新聞からは、火災は想定を超える規模で自衛消防隊の手には負えなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
同社の初期消火活動が機能しなかった状況が浮かび上がってきた。
同社には、初動対応のマニュアルや自衛消防組織があったが、可燃物に引火し一気に強まった火の勢いに対応できなかった。
同社は、「これほどまで燃え広がる想定はなかった。結果として、備えが十分ではなかった」としている。
同社によると、火元の敦賀機能材工場A工場は4日、台風21号の影響で一時停電し、製造作業を中断。
5日は操業を休み、6日の出火当時は、7人の従業員が再開に向けて機械の試運転を行っていた。
午後1時10分ごろ、従業員1人が機械から煙が上がっているのに気付き、5人が消火器による初期消火を実施。
火の勢いが収まらなかったため、同20分ごろ119番通報し、避難した。
火を使用する工程はなかったという。
同事業所では、火災発生時の対応手順を示す「自動火災報知機(自火報)作動時の初動対応」のマニュアルを定め、消火器を使った初期消火や避難などの訓練を、勤務体系ごとに年1回実施している。
協力会社を含む約200人態勢の自衛組織「東洋紡敦賀地区事業所自衛防災団第二事業所分団」も消防法に基づき設置しているが、火災現場を確認した工場長らの「手に負えない」との判断で従業員全員が避難。
ポンプ車1台を所持していたが、初期消火では使用せず、自衛組織の活動は消防隊員の現場案内にとどまった。
敦賀美方消防組合消防本部によると、同社の自衛消防組織の規模は適正だったとし、同社総務部の近藤・地域広報課長も、「対応に不備はなかったと考えている」と説明。
ただ、工場内に大量にあった原料のナイロンやろうなどの油類、梱包用段ボールなどに引火し一気に燃え広がる事態までは想定していなかったとも明かし、「結果的に不備を指摘されても仕方がない」と話した。
出典
『東洋紡火災、自衛消防団手に負えず 初期消火も一気に燃え広がる』
http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/697849
(ブログ者コメント)
建物内にあった大量の可燃物が火災になり、建物の構造などもネックになって消火が難しかったという点で、去年2月に三芳町で起きたアスクル倉庫火災(本ブログ掲載スミ)を思い出した。
あちらは倉庫、こちらは工場ということだが、アスクル倉庫火災時、この事例は他山の石かもと少しでも思った人は、この会社に何人いたのだろうか?
(2018年10月8日 修正1)
2018年10月6日付で中日新聞から、延伸機のモーター付近が火元だった、火災後の地元とのコミュニケーションがうまくとれなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
警察と消防は、ナイロン原糸を引き延ばしながら加熱する「延伸機」のモーター付近が火元と特定した。
一方、同社と市は、早い段階から「安全」と判断して公表。
けが人はいなかったものの、住民からは情報提供のあり方などに対して、疑問の声が消えていない。
経緯を検証した。
火災発生直後、風下の中央町などに黒煙が漂った。
市は、同日午後2時すぎから防災メールなどで、屋内に退避して窓を閉めるよう、市内全域の住民に求めた。
一方で市は、「煙に有害物質は含まれていない」と判断し、午後3時すぎには、校内待機させていた近くの小学校の児童の下校を認めた。
東洋紡側も、「火災で発生した煙に危険性はないとみている」と、6日の会見で説明した。
ただ、住民からは、その後、のどや目の痛みを訴える声が上がった。
「安全」の根拠の一つとなったのは、県が観測したデータだった。
県は、市内の常時監視測定局のほか、派遣した移動式測定車で、事業所の敷地内で二酸化硫黄と浮遊粒子状物質、一酸化炭素など5項目をモニタリング。
いずれも基準値以下だった。
福井大工学部の吉見泰治准教授(生物有機化学)によると、ナイロン原糸などは、燃え方によっては5項目以外の汚染物質を発生させるが、空気より重いといった理由で、拡散する可能性は低い。
ただ、住民がのどや目の痛みを訴えたことについては、「少量の煙に含まれる燃焼で発生した物質は、『有毒』とまではいかなくても、『有害』である可能性がある」とし、住民への伝え方が不十分だったと指摘する。
消火活動が長引いたにもかかわらず、新たな情報が伝えられなかったことも、住民を不安にさせた。
6日夜には敷地内の隣の工場に延焼し、再び爆発音が響いた。
就寝時間帯に火が勢いを増し、不安のため眠れなかったという住民もいた。
7日未明に自主避難所が設置されたが、一時利用したのは3人だった。
東洋紡は7日の会見で、敷地内には液化天然ガス(LNG)タンクが保管されているが、安全規定の倍以上の100mほど間隔があるため引火はないと説明。
実際に大惨事は避けられたが、敦賀市議の一人は、「自主避難をするのに必要な判断材料がなかった」と注文を付ける。
東洋紡が開設した電話相談窓口には、これまでに44件の問い合わせがあったという。
工場に近い同市昭和町区長の中村さん(男性、77歳)は、「火災の原因や環境の問題について問い合わせても、不安だけが残ったと話す住民がいた」と明かし、「住民説明会があってもいいのでは」と訴える。
出典
『「安全」判断、説明足らず 敦賀・東洋紡火災1カ月』
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20181006/CK2018100602000020.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。