2018年1月14日付で伊勢新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三重県の鈴鹿市消防本部で13日、同本部提案の独自避難法「平泳ぎ避難」の検証を実施。
5つの方法による計24パターンで、所要時間や安全性について確認した。
消防職員110人が参加。
所要時間の測定や避難の様子を撮影しながら、参加者らは「多目的室からの避難」、「飽和状態からの避難」など5項目で、消灯時の状態や扉の数を減少させた状態など、細かい設定を加えながら、通常避難と平泳ぎ避難を実践しながら違いを比較した。
中でも、対面に分かれ、廊下に見立てた直線空間を互いが前方に進む「交差による避難」では、通常避難で1分50秒、平泳ぎ避難で1分13秒と、約40秒の差を実証した。
また、全ての項目で平泳ぎ避難の安全性を認識した。
参加者の1人、中央消防署西分署の消防司令補・兼丸さん(41)は、「通常避難では押しくらまんじゅう状態で危険を感じたが、平泳ぎの動作により、前との空間ができ、心理的にも恐怖感がなくなり、より安全な避難法であることを身をもって感じた。日常業務の中で市民にも広く広報していきたい」と話していた。
中西消防長は講評で、「詳細な分析としては今後になるが、条件が悪くなるほど一定の効果を実感した。データ分析とともに論文にまとめ、全国に発信していきたい」と語った。
平泳ぎ避難は、渋滞学に基づき、従来の避難行動で扉やドアなど狭くなる部分での渋滞や停滞を防止する方策として考案し、先月発表されたばかり。
平泳ぎの手の動きをすることで空間をつくり出し、混雑を緩和させながら避難する仕組み。
同本部では、検証を続けながら推奨に取り組んでいる。
出典
『鈴鹿消防 安全性高く時間短縮 「平泳ぎ避難」の効果検証 三重』
http://www.isenp.co.jp/2018/01/14/12821/
1月8日付で伊勢新聞からは、発案のきっかけなどに関する下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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平泳ぎ避難は、東京大学先端科学技術研究センター・西成活裕教授の渋滞学に関する理論からヒントを得て、従来の避難行動で扉やドアなど狭くなる部分での渋滞や停滞を防止するために考えられた。
渋滞学による人の混雑の定義では、「1m2の空間に、人が1.8人以上入ると混雑する」とされており、その数値を超えないように平泳ぎの手の動きをすることで空間をつくり出して、混雑を緩和しながら避難するという仕組み。
同本部によると、11月29~30日に東京都で開催した「全国消防技術者会議」の特別講演で、西成教授が「群衆運動のメカニズムと対策」について渋滞学の視点から講義。
講義を受けた市消防職員による署内での報告会で「混雑を緩和させる手段として『平泳ぎ』はどうか」との意見が出たことが、発案のきっかけという。
中西消防長は、「簡単な方法なので前例を調べたが該当するものがなく、全国でも初めての避難法になるようだ」と話す。
訓練では、避難時に両側の避難口のうち、片方で消防職員5人が事前に統一した「安全に早く避難するために、平泳ぎ避難をしましょう」と呼び掛けながら、両手を空中に広げてかき進む動作を繰り返した。
訓練後、初めての人への声掛けがどの程度理解されたかを検証し、「平泳ぎの動作は年齢を問わず理解でき、ほとんどの人が呼び掛けで平泳ぎ避難を実施した」ことから、「有効性が確認できた」という。
退出時間だけをみると、通常避難の方が約10秒早い結果となったが、その点については「通常避難側も落ち着いて行動していたことから渋滞が発生せず、スムーズな避難につながった」と分析する。
同本部から報告を受けた西成教授は、結果を踏まえ、「この方法は人口密度がかなり高い時に効いてくるので、通常の実験環境では検証は難しいかもしれないが、前方混雑で何度か止まる状況があると効果が目に見えると考える」とメールで返信。
さらに、「斬新なアイデアなので注目している」と期待を込めた。
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出典
『<まる見えリポート>鈴鹿消防考案の避難法 「平泳ぎ避難」周知進める』
http://www.isenp.co.jp/2018/01/08/12509/
(ブログ者コメント)
渋滞学についてはいろいろな情報があるが、交通渋滞ばかりでなく製造現場の改善にもつながる学問だという記事があったので紹介する。
(2012年2月29日 日経Bizアカデミー)
『仕事の流れをつくる』 東京大学 先端科学技術研究センター教授 西成活裕さん
「イン」と「アウト」を調整すれば仕事の渋滞は解消する
「渋滞学」という新しい学問を独自に打ち立て、車、人、物資などの「流れ」の改善に果敢に取り組んでいる西成活裕さん。
この渋滞学を仕事にどのように応用できるのだろうか。
渋滞学の考え方を用いて、日々の仕事の停滞を改善する方法を伺った。
新しい案件が入ったら古い案件を減らす
Q 「渋滞学」とは、どのような学問なのですか。
一般に「渋滞」といえば車の渋滞のことを意味しますが、私が提唱している渋滞学では、「それまで流れていたものが詰まってしまう現象」全般を渋滞ととらえています。
車、人、物資にせよ、「流れ」があるところには「詰まり」が発生しがちです。
その原因を探り、詰まりを解消していこうというのが、渋滞学の根本にある考え方です。
Q どのような分野で生かされていますか。
高速道路の渋滞解消のほか、サービスエリアやトイレの混雑解消などでも大きな成果を出しています。
最近では、空港の物流ターミナルに渋滞学の理論を適用して、物資の流れをスムーズにすることに成功しました。
また、数多くの企業の業務を、流れという観点で改善してきました。
例えば、製造用資材の保管期間を短縮することで倉庫代などを大幅に下げ、約8億円に上るコストを削減したケースもあります。
Q 渋滞学は、仕事にはどのように応用できるのですか。
全ての仕事を流れとしてとらえ、流れが滞らないようにする。それが全てです。
では、流れを停滞させないためにはどうすればいいか。
「イン」と「アウト」のバランスを考えればよいのです。
仕事が忙しいということは、入ってくる案件と、終了して手を離れる案件のバランスが崩れているということです。
新たに案件が入ってきたのに、古い案件がなかなか終わらない。そんなときに渋滞が発生します。
それを解消するには、案件が1つ入る前に、必ず古い案件を1つ減らすというルールを作ればよいのです。
そのためには、新案件の発生を見込んで、古い案件をいつまでに終わらせればよいかを自分で決めることが必要です。
また、省ける仕事を極力省くことも大切です。
もう1つお薦めしたいのが、「慣性」の力を利用して流れをスムーズにすることです。
普通、1日の仕事は切りのよいところで終わりたいと思うものですが、あえて、何かをやり残した状態で終えるのです。
そうすると、次の日の仕事は、前日のやり残しを片付けるところからスタートします。
やることが決まっていて、しかも比較的簡単に終えることができる仕事から1日が始まるので、そこに慣性の力が生じ、以後の仕事が円滑に流れるというわけです。
「利他」の行動が自分の利益につながる
Q 1カ月、1年、数年といった単位で仕事の流れをつくるポイントは何でしょ
うか。
最初に考えなければならないのは、最も長い単位です。
例えば、20年後に何を達成したいかという目標を定め、そこから10年、5年、1年と、より短い期間の目標を決めます。
それによって、全ての仕事を20年後の目標に向かう1つの流れにすることができるのです。
私自身、大学の定年を迎える22年後にどうありたいかをイメージしながら、日々の仕事の流れを組み立てています。
遠くにある目標について考えるのは、とても楽しいことです。
それは自分の夢に思いを巡らしているからです。
Q これからの時代に生き生きと働くためのアドバイスをいただけますか。
「利他」の精神を大切にすることだと考えています。
自分の成果だけを求めるのではなく、同僚や部下、上司などに手柄を譲ることを考える。
他の人に任せられる仕事は、積極的に任せていく。
そうして周囲の人たちが利益を得られるような環境をつくることが、結局は自分の利益にもつながるのです。
倫理的な話をしているのではありません。
利他行動の実践が全体最適につながることは、数学的に証明されています。「進化ゲーム理論」というのがそれで、その原則は極めて単純です。
一度得をした人は、次に得をする機会を他人に譲る。勝った人は勝ち続けようと考えずに、次の勝利のチャンスを他の人に譲る。皆がこれをし合えば、全体の幸福度は最大になるのです。
逆に「自分だけ」となると、その人を含めた社会全体が駄目になってしまいます。
http://bizacademy.nikkei.co.jp/career/interview/article.aspx?id=MMACc2000027022012
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。