2022年4月26日17時56分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
神戸市内で飼育されていたメスのキリンが今月中旬、トラックでの移送中に死んだ。
オスのいる岩手サファリパーク(岩手県一関市)に、約22時間をかけて運ばれる途中だった。
同パークには、「動物の長距離移動は人間の身勝手」といった批判も寄せられている。
繁殖に欠かせないとして、日本動物園水族館協会は「引っ越し」に理解を求めているが、移送中の死は過去にも起きているという。
死んだキリンは1歳8か月の「ひまわり」。
9歳の「コウタ」との繁殖を目指し、神戸市立王子動物園から同パークに移される予定だった。
移送を担当した同パークによると、ひまわりは頭までの高さが約3メートルあった。
しかし、荷台に積まれた箱形の鉄製おりは、高さ2メートル65。
道路交通法施行令で、トラックの車高を含めた高さは最大3メートル80に制限されており、おりを低くせざるを得なかったという。
移送のため、背丈より低いおりに入れられた「ひまわり」
ひまわりは脚を広げ、首を前方に伸ばした姿勢で収容された。
トラックは12日朝、神戸を出発。
飼育員が1~2時間おきに様子を確認するなどした。
出発から約10時間後、新潟県内のパーキングエリアで、ひまわりは倒れた状態で見つかった。
姿勢を変えようとして転び、狭いおりの中で首が折れ曲がったままになったとみられる。
死因は呼吸不全と循環器不全と診断された。
同パークには、SNSなどで300件以上の意見が寄せられた。
「命を無駄にしないで」。9割は苦言を呈する内容だったという。
上野動物園(東京)の園長を務めた小宮さん(男性、74歳)は、「動物園が動物を交換・移動させるケースは増えている」と指摘する。
繁殖のためだという。
ただ、移送方法に統一基準はない。
那須どうぶつ王国(栃木県)の園長で動物の移送に詳しい佐藤さん(男性、65歳)は、「個々の動物の性格などを考慮し、各動物園が独自に移送計画を立てている」と説明する。
山口県内の動物園では2012年、キリンがおりの中で転倒して死んだ。
広島県に移送する準備の最中だったという。
佐藤さんは、「動物が移送中に死ぬ事例は、全国で2、3年に1件のペースで起きている。神経質な動物もいるため、トラブルを完全に防ぎきれない」と語る。
日本動物園水族館協会の成島専務理事は、「動物園には種を保存する役割もある。動物の長距離移動はやむを得ない」と強調する。
そのうえで、ひまわりの死で批判が高まったことを踏まえ、「動物園の役割を丁寧に説明し、移送の必要性に理解を得る必要がある」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220426-OYT1T50080/
4月16日20時50分にYAHOOニュース(神戸新聞)からも同趣旨の記事が、移送前のオリに入れられたキリンの写真付きでネット配信されていた。
神戸市立王子動物園(同市灘区)から岩手サファリパーク(岩手県一関市)へ移送中に死んだキリンの雌「ひまわり」(1歳)の死因について、同パークは16日までに、「呼吸不全および循環器不全と考える」と発表した。
輸送箱内で体勢を変えようとして転倒し、首を折り曲げた状態から元に戻せなかったとみられるという。
同パークホームページによると、解剖の結果、特段の基礎疾患は見つからなかった。
熱中症については「可能性は低い」とした。
キリンを搬送するときは、箱の中で四肢を伸ばし、首も前方に伸ばした状態が理想姿勢だといい、「今回の搬送時の体勢もその状態だった。
(箱は)ひまわりの体格に的確なものだったと考えられる」とした。
その上で、「皆さまに悲しい思いをさせてしまいおわび申し上げます。何よりひまわりの冥福を心からお祈り申し上げます」と記した。
王子動物園もホームページで「今回の件を教訓として、動物の安全な移送に努める」とした。
ひまわりは2020年7月、同園で19年ぶりのキリンの赤ちゃんとして誕生。
繁殖のために12日朝、同パークに向け出発したが、同日夜、新潟県のパーキングエリアで止まった際、箱の中で倒れているのが見つかった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9ecc55a52d935cb2f27e18dacd6344a9cd2714bf
(2022年5月11日 修正1 ;追記)
2022年5月10日10時0分に毎日新聞からは、移送中は1~2時間おきにトラックを止めて様子を確認していた、10年前にキリン移送死亡事故報告書が協会に提出されていたが、今回移送を担当した施設はその後に協会に加盟したため当該事故を知らなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
入念に準備を重ね、安全を最優先にしたはずなのに、なぜ事故は起きたのか。
取材を進めると、10年前にも別の園で似た事故が起き、人気者のキリンが命を落としていた。
2頭が残した教訓を伝えたい。
【移送中に異変】
2020年7月、神戸市灘区の王子動物園で父ヒメイチ(8歳)と母マリン(5歳)に雌の第1子が生まれた。
同園にとって19年ぶりとなるキリンの誕生で、来園者の投票から「ひまわり」と名付けられた。
人なつっこい性格で園の人気者となったひまわりは1歳8カ月となり、体長3メートルに成長。
22年4月、繁殖のため岩手サファリパーク(岩手県一関市)に「嫁入り」することになった。
車での移送では道路交通法で積載物の高さが3・8メートル以下に制限されているため、ひまわりの体格に合わせた移送用ケージ(高さ2・6メートル、幅1・5メートル、奥行き4・1メートル)を用意。
特殊な加工で外部からの熱を遮断し、通風口を設けて換気ができる構造にして、負担の軽減も考慮した。
ひまわりはケージに入る練習を出発日の3週間前から始めた。
嫌がることなく、ケージと寝室を行き来した。
基礎疾患はなく、体調にも問題はなかった。
移動中はトラックを1~2時間おきにとめて、同乗した飼育員が様子を確認することにした。
4月12日。午前9時に出発し、22時間後には新たなすみかに到着する予定だった。
午後7時半ごろ、新潟県のパーキングエリアで停車中、飼育員が異変に気付いた。
ケージの中でひまわりが倒れていた。
息をしていなかった。
【「ハル」の死 浮かぶ共通点】
日本動物園水族館協会(JAZA)によると、全国の動物園で飼育されているキリンは187頭(21年)。
近親交配を避けるために同じ動物園での繁殖は難しく、動物園間の移送は16~20年で計51頭にのぼる。
国内での移送方法に明確なルールはなく、各動物園に委ねられている。
不幸な事故は10年前にも起きた。
12年5月21日、山口県周南市の徳山動物園で飼育するキリン「ハル」が死んだ。
1歳の雌だった。
その日の朝、ハルは広島県の福山市立動物園に向かうため、鉄製のケージ(高さ2・7メートル、幅2メートル、奥行き3・6メートル)に入った。
扉を閉めた10分後、飼育員は大きな音を聞き、体長3メートルのハルが横たわっているのを見つけた。
炎症を抑える薬を注射するなどしたが、3時間半後に息を引き取った。
「嫁入り」当日の事故は、ケージ内で転倒し、首を打って脊椎(せきつい)を損傷したことが原因だった。
ひまわりとハルの死には共通点が多い。
体長3メートルで、移送用のケージで転倒。
いずれも転倒を防ぐ目的で、ケージの床に干し草やわらを敷いていた。
【生かされぬ教訓】
徳山動物園は12年6月、報告書をJAZAに提出していた。
ただ、17年にJAZAへ加盟した岩手サファリパークは、ハルの事故を知らなかった。
徳山動物園は再発防止策として、ケージの大きさはキリンがむやみに動けないよう必要最小限にとどめ、ケージの床にクッション製の突起物を置くことを決めた。
この情報も共有されていなかった。
開園から71年で計47頭のキリンが出入りした王子動物園も、移送中の事故が過去にあったことは知っていたものの、事故の詳細や再発防止策は把握していなかったという。
JAZAは安全対策委員会を設け、飼育員が動物に襲われるなどの人身事故については、メールで加盟園に一斉送信していた。
しかし、移送事故はホームページに掲載するだけだった。
JAZAの担当者はひまわりの事故を受け、「移送事故の事例についても加盟園で情報を共有するように改善したい」としている。
王子動物園は取材に対し、ひまわりの事故について「動物の輸送には危険が伴うことを実感した。再発防止に努めたい」、岩手サファリパークは「今回の事故を教訓とし、動物の安全な輸送作業に生かしたい」としている。
2頭の運命をたどると、不思議な縁があるように思えてならない。
ハルの死から2週間後、周南市では地元の園児ら約160人が参加するお別れの会が開かれた。
園児たちは「短い間でしたが、私たちを楽しませてくれてありがとう。天国の動物園でもたくさんお客さんを笑顔にさせてあげてね」と声をそろえた。
遺影に手向けられたのは、夏の太陽に負けず力強く咲く花、ヒマワリだった。
https://mainichi.jp/articles/20220509/k00/00m/040/148000c
(ブログ者コメント)
滅多にないキリンの長距離移送。
移送方法とか移送上の注意点などを、移送を担当した施設は協会に問い合わせしていなかったのだろうか?
2022年6月25日15時58分に読売新聞からは、死因ならびに再発防止策が下記趣旨でネット配信されていた。
同パークは、死因は頚椎部を極度に折り曲げたことによる肺うっ血だったと発表した。
外部の獣医師による病理検査の結果、判明した。
ひまわりは、王子動物園からトラックで移送中、鉄製の輸送箱の中で死んだが、移送中に転倒したことなどにより、首が曲がった状態になったことが影響したとみられるという。
同パークは再発防止策として「走行距離や時間を吟味し、動物の負荷軽減を最優先とする」「輸送箱には動物の状態を確認するカメラや温度計を設置する」ことなどを挙げている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220625-OYT1T50108/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。