2020年12月13日11時1分にYAHOOニュース(Number Web)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
登山の際、気をつけるべきヒグマに関する記事の前編です。
雪山の現場には多量の血痕が残されており、その下方には握りの部分が折れた銃や、カバン、帽子、水筒が散乱し、さらに下方にハンターAさんの遺体があった。
死因は出血多量による失血死とされ、その受傷の状況は、右腕、右足を骨折、左腕や頚部などにも裂創があったが、とりわけ額骨、鼻骨、上下顎骨などを複雑骨折するなど、顔面に原形をとどめないほどのダメージを受けていた。
ヒグマによる顔面への執拗な攻撃は、とくに猟者に対する反撃の場合にみられる特徴だという──。
◆◆◆◆◆
札幌市郊外にある住宅地の一角に、墨痕鮮やかな木の看板が掲げられた家がある。
「北海道野生動物研究所」。
野生動物、とくにヒグマに関しては、50年以上をかけてその生態からアイヌ民族との関わりまで明らかにした第一人者、門崎允昭博士(82)の“研究拠点”である。
今春、門崎氏が上梓した『ヒグマ大全』(北海道新聞社)は、ヒグマについて氏が50年以上にわたり蓄積したあらゆる知見が惜しみなく書き込まれた白眉の1冊で、ヒグマに興味を持つ筆者にとっては、ぜひ会ってみたい人物だった。
「なぜヒグマは人を襲うのでしょうか?」
「いらっしゃい」と筆者を迎え入れてくれた門崎氏は、銀髪を短く刈り込み、ピンと伸びた背筋は年齢を感じさせない。
通された一室には、ヒグマによる事件を報じた明治期の新聞のスクラップや野生動物の行動観察記録、国内外の科学論文など、貴重な資料が堆く積まれている。
口元に柔和な笑みを浮かべながら、門崎氏は言った。
「さて、何でも聞いてください」
聞きたいことは山ほどあったが、突き詰めると、こんな質問になった。
「なぜヒグマは人を襲うのでしょうか?」
【「排除」「食害」「戯れ、苛立ち」】
この質問に対する門崎氏の回答は、実に明快だ。
「動物の行動には、必ず目的(原因)と理由があります。
これは人間も同じ。
過去の事件を検証することで、ヒグマの人に対する行動規範
を理解することが重要です」(門崎氏)
門崎氏によると、1970年から2016年までの間でヒグマによる人身事故は94件起きており、33名が死亡している。
それぞれの事件を検証すると、ヒグマが人を襲う原因は、次の3つに大別されるという。
「『排除』、『食害』、『戯れ、苛立ち』です。
『排除』は、何らかの理由でヒグマにとって脅威となった人間を排除するために襲う。
『食害』は、空腹だったり、動物性の食物を渇望しているヒグマが、人を食べる目的で襲う。
『戯れ、苛立ち』は、人を戯れの対象とみたり、気が立っているときに狂気的に襲う。
このうち、もっとも多いのは、『排除』のために襲うケースです」
【自分を撃ったハンターの顔を決して忘れない】
94件の人身事故のうち、「食害」のための襲撃は11件、「戯れ、苛立ち」は4件、「排除」は実に37件がこれに該当し、うち10件が死亡事故に至っている。
「排除」のための攻撃は、例えば以下のような場面で起こりうるという。
(1)不意に人間に遭遇したヒグマが先制攻撃をしてくる。特に子を連れた母熊が子を保護するために行う。
(2)人が所持している食物や作物、家畜などを入手するため、もしくはすでに入手したそれらを保持し続けるために邪魔な人間を攻撃する。
(3)ハンターなど猟者に攻撃されたり、脅威にさらされたとき、反撃に出ることがある。
興味深いのは、(3)のハンターに反撃したケースだ。
というのも、ヒグマとハンターをめぐっては、「ヒグマは自分を撃ったハンターの顔を決して忘れない。手負いになったヒグマは、そのハンターを特定して反撃する。とくにその顔面を執拗に攻撃する」という話を聞いたことがあったからだ。
果たしてヒグマは本当にハンターの顔を認識できるのだろうか。
【一瞬で人の顔を識別・記憶する能力がある】
「できます」と門崎氏は断言する。
識者のなかには、「ヒグマは比較的視力が弱く、おもに嗅覚を使って状況を認識する」という向きもあるが、それは間違いだという。
「ヒグマには昼夜を問わず活動できる視力があり、闇夜に川岸から飛び込んで水中の魚を捕まえることもできる。
また一瞬で人の顔を識別・記憶する能力もあります」
その一例として、門崎氏が挙げたのが、1974年(昭和49年)に北海道オホーツク管内斜里町で起きた人身事故である。
冒頭に記した凄惨な現場は、この事件のものだ。
当時、現地調査を行った門崎氏によると、事件の経緯は以下のようなものだったという。
【12日に家族が捜索願を出し、13日午前、遺体が発見された】
現場となったのは、斜里町郊外を流れる幾品川沿いの丘陵地。
一帯はジャガイモやてんさいなどの畑地で、例年ヒグマが出没する地帯だった。
畑地に接する樹林は、起伏にとみ、林床には人を寄せ付けないほどのクマイザサが密生していた。
「この地域では、この年の9月ごろからヒグマが出没していたたため、猟師による駆除が求められていました」
そんな折、11月10日夜から早朝にかけて降雪があった。
雪上の足跡を辿れば、追跡は容易になるため、猟師のAさんは11日の朝、「山に入る」と単身バスに乗り、ヒグマ撃ちに出かけたが、その後、行方不明となる。
12日に家族が捜索願を出し、13日午前、遺体が発見された。
門崎氏によると、Aさんは幾品川右岸の畑を下流に向かって探索する過程で、ビート集積場付近で足跡とともにヒグマを発見したと思われる。
Aさんに気づいたヒグマは川を渡って対岸へ逃走。
Aさんは足跡を追い、ヒグマはササが茂った斜面を逃げ、周囲を見渡せる場所に出た。
「そこでAさんがヒグマに近づき、一発撃ったようでした」
【後の力を振り絞って上方から不意にAさんを襲った】
周辺に少量の血痕が残されていたが、急所は外れたらしく、ヒグマはさらに山側へ逃げる。
Aさんが後を追うが、周辺はササが茂り、見通しは悪い。
150メートルほど進んだところで、Aさんは杖にしていた棒を放棄し、さらに追う。
ヒグマは今度は斜面を横断するように逃げたが、出血が激しくなったようで、350メートルほど進んだところに大量の血痕があり、しばらくこの場所にうずくまっていたと考えられる。
「Aさんは、おそらくこのあたりでヒグマを見失い、残された血痕をみて周囲を探したものの、発見できなかったのでしょう」
後の門崎氏による検証では、ヒグマはそこから50メートルほど下った地点の木立付近に潜んでいた可能性が高いという。
Aさんはそれに気づかず、その下を通りすぎ、Aさんをやり過ごしたヒグマは、最後の力を振り絞って上方から不意に襲ったと見られる。
加害ヒグマは、Aさんの遺体の下方、40メートルの場所で仰向けになって死んでいた。
Aさんの撃った弾はクマの内胸壁に沿って貫通、心肺には銃創がなかったため、徐々に出血し、胸腔内出血による呼吸麻痺で死んだと見られる。
【顔を狙う理由をヒグマ博士が解説】
Aさんもとくに顔面の損傷が酷かったが、なぜヒグマは、猟師の顔を狙うのか。
「ヒグマは、自分に向けて銃を撃った猟師の顔面を、銃とみなしているからだと考えられます。刃物などで反撃しない限り、ヒグマは猟師が落命するまで、その顔面を集中的に攻撃する。銃という脅威を『排除』するわけです。
また、撃たれた一瞬で、猟師の顔を識別記憶する知力がヒグマにはある。
だから、手負いにしたヒグマを後日、数人の猟師で撃ち取りにいく場合でも、ヒグマは自分を撃った猟師の顔を覚えていて、潜んでいる場所から飛び出して、他の猟師には目もくれず、その猟師を選択的に襲う事例が多いのです」
「動物の行動には必ず目的と理由がある」――
インタビュー中、何度も繰り返されたこの言葉に、動物学者としての門崎氏の哲理と信念が宿っている。
(後編に続く)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea729db85beea3cfb0e3243da4b9d7cce24a7058
(前編から続く)
2001年5月6日午前、札幌市の会社員Bさん(53・当時)は、定山渓の豊羽鉱山付近に「アイヌネギ(ギョウジャニンニク)を採りにいく」と行って出かけたまま、行方不明となった。
(Bさんの車は、その日の夕方、Bさんの家族によって発見され
た)
翌日、地元の警察や消防、猟師などからなる捜索隊がBさんの車があった付近を中心に捜索したところ、山中でヒグマ1頭を発見し、射殺。
その近くでBさんの遺体を発見した。
遺体はうつぶせの状態で、腰から下が土で覆われ、頭部と上体部は裸出し、両手は胸の前に交差するように組まれていた。
腹部、臀部、上下肢などを中心に食害された痕があった。
【“札幌の奥座敷”で起きた特異な事件】
「このケースは典型的な食害目的、つまりヒグマが人間を食べるために襲ったケースです。これを最後に札幌圏内で人身事故は起きていません」
そう語るのは、ヒグマ研究の第一人者・門崎允昭氏(82)だ。
いったいBさんの身に何が起こったのか。
事故直後に実際に現場を調査した門崎氏とともに、“札幌の奥座敷”で起きた特異な事件を再検証する。
現場の状況から推測される当日の経緯は以下の通りだ。
Bさんは、まだところどころ雪の残る中、豊羽鉱山の約2キロ東よりの地点にある沢に入り、幅2~4メートルの沢を遡行。
沢の入り口から200メートル、沢が二股に分かれる場所でヒグマに遭遇し、いきなり襲われたと見られる。
捜索隊は、この場所でBさんの長靴の片方が落ちているのを発見した。
「クマは立ち上がった状態で被害者を真正面から爪で引っ掻いたようです。
被害者は反射的に頭部を振って避けようとして、頚部に爪が当たり受傷しています。
倒れた被害者は、さらなる攻撃から逃れるべく、地面を這って逃げようとしたものの、現場の状況から判断すると、恐らく最初の襲撃から数秒で絶命したものと見られます」
【“獲物”を自分が安心できる場所に】
その後、クマは被害者をひきずって斜面を30メートルほど移動。
倒木に沿うように遺体を置き、その上に付近の土をかき集めて、かけた跡が残っていたという。
その後、ヒグマはさらに約60メートルほど急斜面を引きずり上げ、トドマツの疎林地へと遺体を移動させている。
この執拗な移動は何を意味しているのか。
「クマは“獲物”を自分が安心できる場所まで引きずっていく習性があります。
いったんは最初の場所に遺体を遺留したものの、不安になって、さらに安心できる場所を求めて移動したものと考えられます」
その“安心できる場所”がBさんの遺体の発見現場であり、捜索隊に発見された際にヒグマが潜んでいた場所でもある。
【“内臓から食べる”という俗説は誤りです】
「その場所にはクマイザサが密生しましたが、下方斜面は視界が開けていて、クマが好む環境でした。
要するに、外側からは潜んでいるクマは見難いが、クマの方からは、周辺をよく見渡せて警戒するのに適している。
クマはこの場所に終始潜んで、遺体を食害していたのです」
引きずられている最中に衣服や長靴は脱げたため、Bさんの遺体は靴下だけを履いた状態で、顔面や頚部には爪による創傷(2~12センチ)が14本、背部にはやはり爪による刺創が66カ所も残され、腹部、臀部、上下肢などが大きく食害されていた。
「頭と四肢下部を食い残すのは、ヒグマが牛馬やシカを食べるときに共通する習性です。
“内臓から食べる”という俗説もありますが、これは誤りです」
前編のインタビューで門崎氏が指摘した通り、ヒグマが人間を襲う理由は、「(1)排除(2)食害(3)戯れ、苛立ち」の3つに大別されるが、このケースが食害目的であると門崎氏が考える根拠はどこにあるのか。
【Bさんに助かる道はあったのか?】
「主な根拠は、この加害グマはBさんを倒した後、すぐに己が安心できる場所へと執拗に移動している点です。
さらに、短時間のうちに被害者の身体の筋肉部を食べていること、また遺体を土や自らが噛み切ったクマイザサなどで覆い隠そうとしたこと。
これらはすべて、ヒグマが自らの食料と見做した獲物に行う行為です」
この加害グマは当初から被害者を食害する目的で積極的に襲ってきた可能性が非常に強く、こうした場合、熊鈴など人の接近を知らせるための鳴り物は効力がないという。
Bさんに助かる道はあったのだろうか。
「被害者は、鉈など武器になるものは携帯していませんでしたが、もし鉈があれば、結果は違っていたかもしれません。
ヒグマに刃物は効かないという人もいますが、ヒグマの痛覚は全身にありますから、鉈で反撃することができれば、ヒグマは怯みます」
実際に1970年から2016年までに起きたヒグマによる人身事故94件のうち、一般人が生還したケースは35件あるが、うち12件において、生還者は武器を携帯していた。
逆に、死亡事故に至った18件のうち、武器を携帯していたのは、わずか3件にとどまっている。
「武器の携行が生還の確率を上げることは、データからも明らかなのです」
悲惨な事故が浮き彫りにした「教訓」を決して無駄にしてはならない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/87cdde9ff3cf9cded1a7bef36c127620abb8f23d?page=1
2020年10月20日8時0分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が複数枚の写真付きでネット配信されていた。
7月11日夜、岐阜県瑞浪市にある大杉が倒れた。
同日は大雨だったため、風雨が理由と考えられていたが、根の強度不足が倒木の原因だったことが、神戸大学大学院教授らの研究チームの調査で判明した。
倒木の原因を科学的に調査するケースはほとんどなく、チームは倒木の危険性や巨樹の管理方法を考える上で大きな成果があったとしている。
大杉は瑞浪市大湫町の神社の境内に立っていた岐阜県天然記念物。
高さ約40メートルで樹齢約1300年とされ、旧中山道・大湫宿のシンボルだった。
その大杉が大雨が降った7月11日の夜に突然、北西側にある社殿と反対側に倒れた。
これまで「大雨による自然災害」とされていた。
なぜ大杉が倒れたのか、科学的に原因を究明しようと、神戸大学大学院の黒田慶子教授(森林保護学)と樹木医ら5人が研究チームを結成した。
7月28日、大杉の樹木や根の状態について現地で調べた。
調査によると、大杉が倒れたとき、幹を支える太い根はほぼ破断していた。
大杉には太い根が少なく、根は枯死や、木を分解する腐朽が進んでいた。
大杉の北西側は、社殿を建てた際に切断されたのか、太い根が少なかったこともわかった。
また、大杉の西側と南側には池が二つあり、根は常に水に漬かった状況で腐っていた。
幹の傷みも見つかった。
大杉は最近では2004年5月に落雷の被害を受けている。
いつの落雷の影響かわからないが、割れたり腐ったりしていた。
黒田教授は「大杉は倒れる前からやや南側に傾いていた。幹は少なくとも100トン以上あり、根が支えきれずに切れた」と推測する。
一般的に、大木が倒れても大雨や台風が原因とされ、原因を解明する調査はほぼされていないという。
黒田教授は「今回の倒木の結果がはっきりして、研究上の大きな成果となった。倒木の危険性を予測する方法を見つけるためにも、今後も、倒木があったときには樹体と根を調査し、巨樹を管理するために必要な情報を収集し、公表していきたい」と話した。
今回の研究結果は地元の「神明大杉再生検討会議」に中間報告として伝えられた。
11月28日~12月5日にオンラインで開催される「樹木医学会大会」で発表される。
https://www.asahi.com/articles/ASNBM64ZYNBJOHGB014.html
(2021年9月28日 修正1 ;追記)
2021年9月27日10時35分に毎日新聞からは、樹齢は約670年だった、幹の体積に比べ根の体積が少なかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
「令和2年7月豪雨」の際に倒れた岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町の「大湫神明神社」の樹齢約670年のスギ(高さ40メートル超、幹回り約11メートル)の倒木原因を、名古屋大大学院の平野恭弘准教授(森林科学)らの研究グループが解明した。
当時は、豪雨により地盤が緩んだことが原因とされたが、それだけでなく、根の体積が幹に比べて小さく、豪雨による土壌水分量の増加や経年腐朽などの要因も加わってバランスを崩したとしている。
研究成果は、根研究学会誌「根の研究」に27日、掲載される。
スギは、中山道の宿場町を行き来する人々を見守り続けたご神木として知られてきたが、豪雨発生を受け、2020年7月11日夜に根元から倒れた。
もともと樹齢1200~1300年と推定されていたが、倒木後、名大などの調査で樹齢約670年と修正された。
研究では、レーザースキャナーで樹木全体をデジタル化。
根と幹の体積を推定した結果、幹と枝の体積が158立方メートルだったのに対し、根は43立方メートルだった。
他のスギに比べ、根の体積の割合が小さいことが分かった。
この土地の土壌が硬い特性を持っていた可能性があるという。
また、目視により、根の中心部で経年による腐朽が確認された。
さらに、豪雨期間中の日照時間が短く、スギと土壌が乾きにくい環境で土壌と幹の水分量が増加したと推察。
以前からの厳しい発達状況に気象条件が加わり、根の支持力が低下してバランスを崩して倒れたと考えられると結論づけた。
平野准教授は、「倒木は豪雨のみが要因ではなかった。今後も豪雨などの際に倒木を防ぐためにも、日ごろから地上部の衰退状況だけでなく、根の育成状況を地中レーダーを活用するなどして評価することが求められる」と話している。
https://mainichi.jp/articles/20210926/k00/00m/040/133000c
2020年10月19日18時39分にNHK首都圏から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
去年の台風19号では、多摩川沿いの東京や神奈川の住宅地で雨水を排水しきれなかったり、支流があふれたりするなどして浸水被害が相次ぎましたが、専門家が調べた結果、広い範囲で浸水した地域のほとんどに、かつて川が流れていたことを示す「旧河道」と呼ばれる地形が含まれていたことが分かりました。
わずかな高低差によって水が集まりやすいということで、専門家は、いち早い避難に役立てるため、土地の成り立ちにも注目してほしいと指摘しています。
去年の台風19号で、多摩川では堤防は決壊しませんでしたが、雨水を排水しきれなかったり、支流があふれたりするなどして、浸水被害が相次ぎました。
地理学などが専門で帝京平成大学の小森次郎准教授は、多摩川の下流沿いで広い範囲に浸水被害が確認された川崎市や東京・世田谷区など15の地域で、被害の状況や、土地の成り立ちとの関係について調べました。
その結果、13の地域に、かつて川が流れていたことを示す「旧河道」と呼ばれる地形が含まれていたということです。
小森准教授によりますと、「旧河道」は、周囲より低くなっていることが多いため、水が集まりやすく、いち早く浸水するリスクが高いということです。
このうち、川崎市中原区の住宅地では、特定の地域に浸水被害が集中していましたが、その多くは、「旧河道」の範囲と一致し、周囲より1メートルから2メートル前後低かったということです。
また、雨水が排水しきれずに浸水したJR武蔵小杉駅とその付近にも、「旧河道」が含まれていました。
浸水は、多摩川からおよそ800メートル内陸側の場所でも確認されているということです。
小森准教授は、「都市化が進む地域では、旧河道での地形のわずかな高低差がわかりにくくなっている。浸水の影響がいち早く始まるおそれがあり、避難のルートなども考えておく必要がある。ハザードマップに加えて、今いる場所がどういう地形かも調べてほしい」と話しています。
小森准教授の調査では、旧河道沿いだったことで、浸水の被害がより深刻になったおそれのある場所も見つかりました。
川崎市高津区では、多摩川の支流、平瀬川が水が流れ込めずに逆流する「バックウォーター現象」などによってあふれ、多摩川と合流する一帯が水に浸かりました。
マンションが最大2メートル近く浸水し、1階に住んでいた男性が死亡しました。
小森准教授によりますと、このマンションの一帯は旧河道にあたるほか、建物の背後に土の堤防があったことで、浸水がより深刻になった可能性があるということです。
住宅地の中にあるこの堤防は、かつての川の流れによって土が堆積したものがもとになっていて、今でも多摩川下流の浸水を食い止めるため、「霞堤」として活用されています。
小森准教授は、この堤防が建物の背後にあったため、旧河道の一帯に流れ込んだ水の逃げ場所がなくなり、浸水がより深くなった可能性があると指摘しています。
小森准教授によりますと、多摩川は江戸時代以降、川の流れをまっすぐに変えたり、用水路を作ったりする工事が行われたということで、今回浸水被害があった「旧河道」も、そのころまでは川だったとみられています。
自治体が浸水を想定して作成しているハザードマップは土地の高低差のデータをもとに作られており、旧河道の多くは、浸水が想定されています。
ただ、浸水するおそれのある最大の深さにあわせて色分けされているため、旧河道の正確な位置や、どのくらい低いのかまではわかりません。
旧河道がどこかは、「治水地形分類図」をみればわかります。
国が管理する一級河川を対象に、国土地理院が作っているもので、「地理院地図」というウェブサイトを開いたあと、左上にある「地図」のマークから「土地の成り立ち・土地利用」の中にある「治水地形分類図」を選択すれば、地図上に表示されます。
白地に青色の線が入っているところが「旧河道」です。
この地図では「旧河道」のほかにも、泥が堆積してできた土地のため水分を含みやすく、長期間水につかるおそれがある「後背湿地」や、過去の洪水で上流からの土砂が堆積してできた平野部で、再び浸水するリスクがある「氾濫平野」など、さまざまな災害リスクのある地形が示されています。
また、現在の土地の細かな起伏を知るには、同じ地理院地図から選択できる「陰影起伏図」が参考になります。
土地の起伏を強調して表示しているため、どの程度低くなっているのかを視覚的に把握することができます。
また、治水地形分類図などと重ね合わせて表示することもできます。
国土地理院は、周辺の地形の特性を知り、防災に役立てる足がかりとして、ハザードマップとあわせた利用を呼びかけています。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20201019/1000055151.html
2020年9月14日12時34分に読売新聞から、下記趣旨の記事が写真3枚付きでネット配信されていた。
2011年の紀伊水害など過去の災害を伝える石碑や記念碑が、国土地理院の地図記号「自然災害伝承碑」として登録され、ウェブ上の「地理院地図」に掲載された。
奈良県内では今月までに、五條市や十津川村、野迫川村の計25基が紹介されている。
命を守るために先人が残した伝言を、地図を頼りに巡った。
奈良県十津川村の観光地「谷瀬の吊り橋」が架かる上野地地区。
170人が暮らす集落の中心から熊野川方向に分け入った道端に、高さ95センチの古い石碑が立っている。
周囲にアサガオが茂り、歩いて探しながら2度も見過ごした。
表面にこう刻まれている。
明治廿二年八月十九日洪水氾濫及于此所即立石以為後之警戒
(明治22年8月19日、洪水の氾濫がこの場所まで及んだ。
石を立てて後世の警戒とする)
熊野川からは200メートル以上離れ、水面よりも25メートル高い。
かつて、ここまで洪水にのまれたとは、にわかに信じられない。
「石があるなあ、ぐらいの認識。洪水がここに来たって書いてあるの?」。
近くに住む男性(42)も驚く。
紀伊水害では集落の高い場所にある診療所に避難したといい、「やっぱり早めの避難を心がけないと」とうなずいた。
1889年(明治22年)8月に起きた十津川大水害では、村内で168人が死亡した。
土地は荒れ、被災者ら2600人以上が北海道へ移住を余儀なくされた。
当時、村内の浸水箇所を示す警戒碑が60基建てられたとされる。
しかし、現存しているのは、上野地地区を含めて5基しかない。
石碑を調査した村総務課の防災担当・山香係長も、明治の大水害の碑の多くを知らず、聞いて回るなど探すのに苦労したという。
「明治の大水害は文献でしかわからない。現地を巡って『本当にここも被災したんだ』と規模を実感した」と振り返った。
村内の自然災害伝承碑は16基。
うち十津川大水害の警戒碑や記念碑などは9基あり、残る7基は紀伊水害で土砂崩れや洪水が起きた現場に建てられている。
野尻地区にある「紀伊半島大水害警戒碑」は、村営住宅2棟が流され、8人が犠牲になった場所に立つ。
裏面には、土石流に塞がれた河川が流れを変えて住宅をのみ込んだと刻まれている。
石碑の根元に、線香と飲み物が供えられていた。
避難の教訓を伝える石碑もある。
五條市西吉野町屋那瀬の「禍害復旧之碑」が立つ場所は、1982年8月の台風で2度にわたり崩落したが、早期避難で全員が無事で、「幸い人身事故には至らず」と刻まれている。
水害を記憶する人がいなくなっても、災害の危険は常にある。
碑に刻まれた文字に触れると、「生き延びてくれ」と先人が訴えかける声のように思えた。
【国土地理院「防災役立てて」】
地図記号「自然災害伝承碑」は国土地理院が新設し、昨年6月からウェブ上の地理院地図で公開を始めた。
きっかけは2018年7月の西日本豪雨だった。
大勢が犠牲になった広島県坂町では、1907年に40人以上が死亡した水害を伝える石碑があっても、知らない住民が多かったという。
国土地理院は、「貴重なメッセージが十分に生かされていない」として、自治体に災害を伝える石碑や記念碑の情報提供を求め、地理院地図で位置と写真、内容を広く知らせることにした。
今月1日時点で全都道府県の179市区町村から申請された593基を紹介している。
新たに印刷する2万5千分の1地図にも記号を順次掲載していく。
近畿地方測量部の千葉次長は、「スマートフォンでも手軽に地図や内容が見られる。防災教育に役立ててほしい」と話している。
◇
ウェブ上の「地理院地図」で「地図」を選択後、「災害伝承・避難場所」「自然災害伝承碑」とクリックすれば、地図記号が表示され、写真や説明もついている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200913-OYT1T50133/
2020年2月11日に掲載した元記事がブログサイト運営会社の字数制限に抵触しましたので、ここに新情報を第2報修正4として掲載します。
第1報(2/2)は下記参照。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10441/
(2020年7月5日 修正4 ;追記)
2020年6月28日2時0分に毎日新聞からは、遺族がマンション管理会社の代表とマンションの区分所有者を告訴した、区分所有者には賠償も求めているという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
遺族がマンション管理会社の代表を業務上過失致死の疑いで県警逗子署に刑事告訴した。
マンションの区分所有者の住民らも過失致死の疑いで告訴し、いずれも受理された。
捜査関係者への取材で判明した。
告訴は23日付。
捜査関係者によると、事故前日、マンションの管理人が斜面に数メートルのひび割れがあるのを発見し、管理会社に伝えていた。
遺族側は、管理会社は適切な措置を講じなかった責任があり、住民らも安全管理を怠ったとしているという。
現場は民有地で、県は2011年に、この斜面一帯を土砂災害警戒区域に指定していた。
事故後、国土交通省国土技術政策総合研究所は「風化を主因とした崩落」と指摘している。
関係者によると、遺族は区分所有者に対し、内容証明郵便(25日付)で総額1億1800万円の損害賠償を求めている。
https://mainichi.jp/articles/20200627/k00/00m/040/180000c
6月27日5時0分に神奈川新聞からは、損害賠償請求に関するやや詳しい記事が下記趣旨でネット配信されていた。
遺族側が同マンションの区分所有者に対し、安全対策を怠っていたとして、総額約1億1800万円の損害賠償を請求したことが26日、関係者への取材で分かった。
同マンションの区分所有者は約40世帯いるが、遺族側の請求への対応を今後協議し、判断するとみられる。
今回の事故の崩落原因については、現地調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所が3月に最終報告を発表。
「水による流動・崩壊ではない」と指摘し、直接的な引き金は不明としつつ、「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」などと結論付けている。
関係者によると、遺族側は同研究所の調査結果を踏まえ、崩落が発生しないように安全性を確保するための斜面の管理がなかった結果、事故が起きたなどと訴えている。
亡くなった女子生徒が将来就労することを想定した逸失利益や慰謝料などとして、総額約1億1800万円を請求している。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-392885.html
(ブログ者コメント)
〇2011年の県指定に関し、第1報(1/2)では、以下の報道内容も紹介している。
県は、この斜面を「急傾斜地の崩壊」の恐れがあるとして、2011年に土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定している。
〇責任問題については、少し前になるが、以下のような解説報道もあった。
(2020年2月21日 週間ダイヤモンド)
・・・・・
「台風や地震で崩落したわけではないのでマンションの所有者全員か管理組合に責任がある」
現地調査を行った国土交通省は2月14日、報告書(速報)を公表。
「日当たりの悪い斜面のため(地盤を固める)植生が弱く、風化により崩落した」などと結論付けた。
国交省の示した事故原因は、同じような斜面を持つマンションならば他でも起こり得ることを示している。
実際、土砂災害警戒区域に所在する物件は少なくなく、大手デベロッパーや管理会社はこの前代未聞の事故に度肝を抜かれて、自社物件の総点検をこっそり行っている。
だが、最終的に事故の責任はマンションの所有者にある。
「台風や地震によって斜面が崩落したわけではないので、マンションの所有者全員か管理組合が占有者として責任を負うことになるだろう」と話すのは、不動産に詳しい「麹町パートナーズ法律事務所」の神戸靖一郎弁護士だ。
そのうえで、「賠償額は被害者の年齢から7000万~8000万円。遅延損害金や弁護士費用も含めれば、総額1億円を超える可能性もある。もし賠償責任保険が出なければ、所有者全員で自己負担することになるだろう」(神戸弁護士)という。
マンション所有者の負担はそれだけにとどまらない。
不動産関係者は、「人命を失うような事故が起きたことで、物件の資産価値の大幅な低下は避けられない」と、口をそろえる。
・・・・・
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28827
(2月7日6時0分 日刊ゲンダイ DIGITAL)
(神戸靖一郎弁護士のコラム?)
・・・・・
道路脇にある擁壁上の土ののり面は、あるマンションの敷地となっており、区分所有者が共有している。
傾斜地にあるマンションは少なくないので、自分のマンションで同じ事が起きるのではないかと心配になる人も多いだろう。
こうした事故で被害者に対する損害賠償責任を誰がいくら負担するのか、簡単に解説したい。
民法には「土地工作物責任」という制度がある。
土地の工作物の設置または保存の瑕疵によって損害を生じた場合、占有者(二次的に所有者)が責任を負うというものだ。
「土地の工作物」というのは建物などが典型的だ。
のり面下の石積みの擁壁は工作物に当たるが、土ののり面自体が「工作物」なのか若干疑問はあるものの、宅地造成で作られたものであれば、該当する可能性が高い。
設置または保存の瑕疵は、判例的には「工作物が通常有すべき安全性を欠く」ことをいう。
要するに、土ののり面に欠陥があったり、崩れそうなのに放置したりすることである。
地震や台風の後に事故が起きたわけではないので、土ののり面に瑕疵があったことは十分に考えられるだろう。
いずれの要件もクリアになると、土砂崩れの原因箇所の占有者が「土地工作物責任」を負う。
のり面が原因箇所である場合は、マンションの管理組合または区分所有者全員が占有者となる。
なお、のり面が工作物に当たらない場合も、その管理に過失があれば、管理組合は不法行為責任を負うことになる。
もちろん、のり面に全く瑕疵がない場合は、マンション側は土地工作物責任を負わない。
この場合、被害者側は市道を管理する逗子市に賠償責任の追及を検討することになるが、マンション側に対する請求よりも格段に難易度が高くなる。
さて、仮にマンション側が損害賠償責任を負うとして、その損害額はいくらになるか。
人身事故の損害額は大体の基準が定まっている。
18歳未成年者の死亡事故による損害額は7000万円~8000万円が相場だ。
多くの事案では、訴訟ではなく示談交渉で解決するが、訴訟となった場合は、遅延損害金や護士費用によって、賠償額が1億円を超えることもある。
賠償責任保険が使用できず、管理組合にカネもないということであれば、区分所有者が全員で支払うしかない。
1億円を区分所有者で負担すると、単純計算で、50戸のマンションであれば1戸当たり200万円。100戸だと100万円になる。
徴収に応じない人がいれば、他の区分所有者でその分を立て替えることになる。
それでも支払いができなければ、被害者側は各区分所有者の部屋を強制執行することも、給料を差し押さえることもできる。
【管理組合にお金がなければ区分所有者が負担】
こうした事態を想像すると、事故後、すぐにマンションを売って出て行きたいという区分所有者もいるだろうが、それで責任を免れるかは難しい問題である。
責任を免れるケースもあり得るが、その場合、買主が責任を負担することになる。
マンション側で損害賠償金を支払うとなると、必ず、管理会社に責任を転嫁できないかという声が出てくる。
実際に敷地の管理をしているのは管理会社なので、管理契約の内容や管理実態によっては、一定の損害を負担させることも不可能ではない。
ただし、明らかな落ち度がない限り、素直に支払いに応じる管理会社があるとは思えないので、多くの事案で訴訟提起が必要になるだろう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/268737
2020年6月12日5時45分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
地震で大量の本が崩れ、命を落とす――。
12日は宮城県沖地震(1978年6月)を受けて制定された「みやぎ県民防災の日」。
これまで県内外で発生した地震では、本や本棚の下敷きになる被害が相次いでおり、各地域の消防は家具の固定などの対策を呼びかけている。
14日で発生から12年を迎える2008年の岩手・宮城内陸地震は、山間部の土砂災害で多くの犠牲者を出したが、比較的揺れが小さかった仙台市の中心部でも、本の下敷きになり亡くなった人がいた。
同市青葉区のアパート2階に住む男性会社員(当時37歳)の死因は窒息死だった。
その日の夜、出勤しなかったことを不審に思った同僚らが自宅を訪ねて、大量の本に埋もれていた男性を発見。
男性の部屋には天井近くまで1000冊以上の本が積まれ、重さは数百キロあったという。
同区は震度5弱だった。
同様の事例は他の地震でも確認されている。
09年8月に静岡市で、11年6月に長野県松本市で、それぞれ震度5強の地震が発生し、いずれも集合住宅の住民が本の下敷きになり死亡。
震度6弱を観測した18年6月の大阪北部地震では、読書が趣味だったという茨木市の男性が亡くなった。
本や本棚に限らず、家具の転倒で命を落とす例は多い。
各自治体は、家具の転倒防止器具や落下防止器具の取り付けを呼びかけている。
東京消防庁は「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」をウェブで公開し、本の落下防止器具として、本棚に取り付ける棒や滑り止めのテープを紹介している。
仙台市消防局では、家具の転倒防止器具の取り付けを代行する事業を実施。
高齢者や視覚障害者が住む世帯を主な対象として、器具の購入費用以外は、原則、無料で行っている。
同局予防課の佐藤課長は、「自分の体を守るための基本的な対策なので、家具の転倒防止に関心を持ってほしい」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20200611/k00/00m/040/335000c
(ブログ者コメント)
〇本棚の危険性については、本ブログで過去に、札幌市の本屋での死亡事例を紹介している。
また、茨木市の事例についても簡単に触れた報道を紹介している。
〇本棚の危険性について改めて調べたところ、茨木市の事例については、以下の詳しい報道が見つかった。
(2018年6月18日 22時33分 朝日新聞)
大阪府茨木市小川町のマンションでは、6階に住む後藤さん(85)が就寝中に倒れてきた本棚の下敷きになり亡くなった。
「助けてください!」。
後藤さんと同じ6階に住む自営業の和田さん(65)は、地震発生直後に女性の声を聞いた。
助けに後藤さんの部屋に入ると、幅約1メートル、高さ約1・8メートルの木製の本棚が倒れ、本が散乱していた。
別の若い男性と2人で本棚を起こしたが、下にいた後藤さんの意識はすでになかったという。
茨木署によると、後藤さんは妻と2人暮らし。
妻は別の部屋で就寝中で無事だった。
近所の人たちは、後藤さんが道を歩きながら本を読む姿を覚えている。
同じ6階に住む女性(83)は、「読書家だったから、本棚に囲まれて暮らしていたのだと思う」。
和田さんは「本好きで、『やさしいおじいちゃん』という印象の人だった。ショックです」とうつむいた。
後藤さんと40年来の付き合いがあるという2階に住む女性(82)は、妻と仲良く買い物に行く姿もよく見かけたという。
6階に住む田中さん(47)は、あいさつすると、いつも笑顔で返してくれたことを思い出すという。
「おとなしくて優しい人だった。信じられない」と肩を落とした。
https://www.asahi.com/articles/ASL6L56MZL6LPTIL05B.html
2020年6月10日6時45分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が大きな落下痕の写真付きでネット配信されていた。
鹿児島地方気象台は8日夜、桜島(鹿児島市)の南岳で4日午前3時ごろに発生した爆発的噴火で出たとみられる大きな噴石が、火口から約3キロ離れた地点で確認されたと発表した。
噴石の破片は、人家の100~150メートル近くまで届いていた。
人的被害は確認されていないという。
約20~30センチ以上の大きな噴石が火口から3キロを超えた地点で確認されたのは、1986年11月23日以来。
ただ、山体の隆起や膨張といった火山活動がさらに活発化する兆候は認められないとして、気象庁は噴火警戒レベルは3(入山規制)を維持している。
同気象台によると、「噴石が落ちている」との連絡を受け、8日午後に市職員や専門家らと現地を調査した。
その結果、火口から南南西約3キロの同市東桜島町で、直径約6メートル、深さ約2メートルの落下痕を確認し、近くで最大約30センチの複数の噴石の破片を見つけた。
4日の爆発による噴石とみられ、元の大きさは、直径50~70センチの可能性があるという。
桜島の噴火警戒レベルの判定基準では、大きな噴石が火口から2・5キロ以上に飛散した場合はレベル5(避難)に引きあげるとされるが、同気象台は「監視カメラで十分確認できるような(大きさや量の)噴石の飛散ではなかった」と、レベルを維持した理由を説明している。
火口から約2キロの範囲については引き続き、大きな噴石や火砕流への警戒を呼びかけている。
https://www.asahi.com/articles/ASN696251N69TLTB003.html
6月10日10時30分に南日本新聞からは、記者が現地に行ってのレポート記事が、下記趣旨でネット配信されていた。
4日未明に桜島の南岳山頂火口が爆発し、大きな噴石が火口から南南西の民家の約150メートル近くまで飛散した鹿児島市東桜島町を9日、歩いた。
住民は「家を直撃したらひとたまりもなかった」と恐怖心を語り、「備えを徹底したい」と気を引き締めた。
飛散場所は同町湯之地区の住宅街のはずれ。
腰の高さほどある雑草がうっそうと生えたやぶを進むと、直径6メートル、深さ2メートルにえぐれた穴(落下痕)がぽっかりと開いているのが見えた。
周囲の木々の枝は円を描くように折れ、爆弾が落ちたかのようだ。
推定1メートルの噴石が直撃した破壊力に圧倒された。
近くの建設作業員山下さん(男性、63歳)は4日午前3時ごろ、「ヒューッ」という耳慣れない大きな音で目が覚めた。
「何の音か分からず、車の事故だと思った。噴石が上空から飛んできた音とは」と驚いた。
現場から150メートルほどの家に住む男性(83)は、9日のテレビで落石があったことを初めて知った。
「気がつかなかっただけに怖い」と心配そうな様子だった。
噴石の第1発見者で、同町の建設会社代表の松元さん(男性、44歳)は4日午前、やぶの隣にある倉庫の天井に、約20センチ四方の穴が開いているのを見つけた。
翌日、付近を見回り、やぶの中の穴を発見した。
「噴石から焦げたにおいがした。山火事にならず運がよかった」と胸をなで下ろす一方、「火山の動向に日頃から気を配りたい」と話した。
噴石の破片は市職員が回収。
近くの役場支所に保管されている。
一方、4日の爆発では多数の小さい噴石が風下の火口東側4~5キロの同市黒神町に降った。
住民の川添さん(男性、83歳)宅では、物置の天井に2~3センチの穴が20カ所以上開いていた。
川添さんは「けがをしなくてよかった。修理が大変そう」とため息。
「火山の恵みを受けて生活をしている。多少の不自由は仕方ない」と話した。
https://373news.com/_news/?storyid=120786
2020年5月5日13時35分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が写真付きでネット配信されていた。
大分県警中津署は3日夜、中津市耶馬渓町金吉の県道で落石が発生したと発表した。
人的な被害はないという。
同午後9時50分ごろ、「約30分前に大きな音がして道路の片側が土砂で塞がれている」などと110番があり、落石が確認された。
県中津土木事務所によると、石は約4メートル×約3メートル×約3メートル。
山側にある金網の落石防護柵を壊し、幅6メートルの道路で2回バウンドしたとみられ、向かい側の土地に乗り上げ、「後藤又兵衛の墓」の手前で止まった。
道路には長径約2メートル、短径約1メートル、深さ20センチなど、穴が二つあいていたという。
同事務所は斜面の状況を調査するなどし、今後の対応を検討する。
県道は現場付近で通行止めとなっている。
https://mainichi.jp/articles/20200505/k00/00m/040/040000c
5月4日19時59分にFNN PRIME(テレビ大分)からは下記趣旨の記事が、毎日新聞とはアングルの異なる写真付きでネット配信されていた。
落石当時は雨が降っていたということで、県では地盤が緩んでいる可能性もあるとみて原因を調べています。
https://www.fnn.jp/articles/-/39218
5月4日21時39分にOBSからは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場は、山崩れによりおととし住民6人が犠牲になった場所から、およそ5キロの距離にあります。
http://www.e-obs.com/news/detail.php?id=05040048783&day=20200504
5月4日付で中津市のHPには、市長が落石のあった山のほうを視察している写真が掲載されていた。
https://www.city-nakatsu.jp/mayor-docs/2020050400030/
2020年4月27日16時33分にNHK NEWS WEBから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
新型コロナウイルスに対応する全国の感染症指定医療機関のうち4分の1以上が、100年から200年に1回の頻度で発生する洪水で浸水するおそれがあることが分かりました。
調査を行った京都大学の研究グループは、「浸水リスクを把握したうえで、洪水時の初動対応に生かしてもらいたい」としています。
京都大学防災研究所の角哲也教授らのグループは、大雨が多くなる出水期を前に、国土地理院や自治体のハザードマップを使って、全国に372か所ある感染症指定医療機関の浸水想定状況を調べました。
その結果、100年から200年に1回の頻度で発生する洪水が起きた場合、少なくとも全体の26%、4分の1を超える95か所の医療機関で浸水するおそれがあり、このうち50か所は1階が水没するほどの高さまで浸水することが分かりました。
また、1000年に1回の頻度で起きると想定される最大規模の洪水では、全体の34%にあたる125の医療機関が浸水するおそれがあり、このうち36か所は2階が水没するほどの高さまで浸水するということです。
研究グループは、止水板の設置や非常用電源の確保、水害対応計画の確認などを早急に行うとともに、将来的には立地の見直しなども検討すべきだと指摘しています。
角教授は、「浸水リスクを関係者で共有するだけでも、初動対応を改善できる。医療機関の負担が増えないよう、行政が出水期に向けて治水対策や避難所の確保などを支援してほしい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200427/k10012407391000.html
2020年3月17日9時0分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
9年前の東日本大震災は津波の脅威を見せつけました。
ただ、大津波の前に必ず大地震が起きるとは限りません。
火山の噴火や崩落、海底の地滑りでも津波が起きます。
こうした津波は警報が出ない恐れもあり、独自に訓練を始めた地域もあります。
2018年12月22日、インドネシア・ジャワ島の人気バンドのライブ会場に突然、巨大な津波が押し寄せました。
火山噴火と山体崩壊に伴う津波で、前触れとなる大地震や津波警報はなく、演奏者や観客が次々にのみ込まれる映像に世界が衝撃を受けました。
鹿児島県姶良市に住む石堂さん(男性、68歳)もその一人。
「避難訓練をしておいてよかった。やっぱり他人事じゃない」
石堂さんの住む地区では、この2週間前、鹿児島湾を挟んだ対岸にそびえる桜島の噴火に伴う津波を想定して、避難訓練を初めて実施しました。
桜島の活動が激しかった江戸時代の「安永噴火」では、海底噴火で津波が繰り返し発生。
最大で高さ十数メートルに及び、約20人が犠牲になった歴史が残ります。
鹿児島県は、今後も同じような津波が起きうるとして、14年に津波想定を公表。
石堂さんの地区には7メートルの津波が海底噴火から最短4分で到達する想定です。
しかし、訓練参加者の半数近くが、小学校までの避難に5分以上かかりました。
「桜島の噴火に慣れきって、津波は十分に意識できていません。何度も訓練をしなければ」と不安を明かします。
火山津波に詳しい山梨県富士山科学研究所の石峯康浩・主任研究員によると、詳しい記録が残る16世紀以降の国内の火山災害の犠牲者2万3千人のうち、8割は津波が原因といいます。
最大は1792年の「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる災害です。
長崎県の雲仙火山の一部が崩壊し、有明海に土砂が流れ込んで津波が発生。
対岸の熊本も合わせて、約1万5千人が亡くなりました。
1741年の北海道沖・渡島大島の山体崩壊でも、津波で約1500人が亡くなっています。
石峯さんは、「海に近い火山や海底火山の多い日本は火山津波のリスクが高く、陸上でも火口湖は津波の危険があります。噴火や山体崩壊は大きな地震を伴うとは限らず、火山で何か起きれば『津波が来るかも』と想定するしかありません。近くの火山で津波が起きた歴史がないか、調べておいたほうがよいでしょう」と話します。
海底の地滑りでも大きな津波が発生します。
沖縄県の石垣島などでは1771年、八重山津波(明和の大津波)によって、約1万2千人の犠牲者が出ました。
石垣島では住民の約半数が亡くなる惨事でした。
直前に起きたマグニチュード7級の地震は、直接の被害は出ない程度の揺れだったにもかかわらず、巨大な津波が起きたのはなぜか。
産業技術総合研究所などは2018年、太平洋の海底で東京都の面積に匹敵する巨大な地滑りが起きたと考えられると発表しました。
産総研の岡村行信・特命上席研究員によると、この海底には地滑りを起こす地形が今も残り、今後も同様の大津波が起きうるといいます。
「もし津波が来ればどう逃げるか、事前に考えておく必要がある」と話します。
こうした津波について、気象庁の津波警報は出るのでしょうか。
福岡管区気象台によると、現在の津波警報は、地震で海底の地盤が上下に動くことを想定し、事前に作成した津波予報データベースをもとに、実際に発生した地震と照合して、津波の高さや沿岸への到達時間を発表しています。
一方、海底噴火や山体崩壊、海底地滑りによる津波の予測は研究途上のため、事前の予測に基づいてすぐに警報を出すのは難しいと言います。
その代わり、火山の監視映像や、潮位の変動などで津波の発生を確認でき次第、警報を出すことを想定しているそうです。
担当者は、「沿岸部で揺れなど異常を感じたら津波を想定し、高い所に逃げてください」と話しています。
【これから】
山体崩壊や海底地滑りによる津波が起きる頻度は高くなく、事例も多くないため、予測は簡単でないようです。
とはいえ、いつ起きるかわかりません。
避難訓練を手がける石堂さんは、「夜間なら、誰も気づかないまま、大津波にのみ込まれるかもしれない。なんとか警報システムを作ってほしい」と訴えています。
https://digital.asahi.com/articles/ASN3C3VTSN2PTIPE014.html?pn=5
(ブログ者コメント)
インドネシアで起きた山体崩壊津波事例については、本ブログでも紹介スミ。
2020年2月14日7時0分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が写真と地図付きでネット配信されていた。
南海トラフの巨大地震が起きると、揺れだけでなく、津波によって東海地方の沿岸に大きな被害が出ると考えられている。
その津波の威力を抑える要は、「海」での対策だ。
2月初旬、愛知県弥富市の南端の海岸を訪れた。
コンテナ置き場などを通り過ぎ、伊勢湾に突き出す岸壁に着いた。
海の中には「高潮防波堤」が立ち、まっすぐ沖に続いている。
防波堤の上部は、かさ上げされた岸壁とほぼ同じ高さだ。
この防波堤は、1959(昭和34)年9月に名古屋港で3・89メートルの高潮を観測した伊勢湾台風を受け、その5年後につくられた。
全長約7・6キロメートル。
船の出入りのため2カ所で途切れているが、人工島を挟んで、弥富市と対岸の同県知多市を直線状に結ぶ。
完成当時、防波堤は最も高いところで海面から6・5メートル。
この壁で高潮によって押し寄せる波を弱め、港内の潮位を約3割低くできると期待された。
高潮だけでなく、津波にも対応できるというが、港の防災設備を管理する名古屋港管理組合の担当者は、「やっかいなのは地震の揺れ」と言う。
防波堤は海底の砂の上に立つ。
巨大地震の揺れで液状化が起これば海底に沈み込み、津波を阻むことができない恐れがある。
2009年からの国の調査では、最大で3・4メートル沈むことが判明。
劣化により、建設時よりも約1メートル沈んでいた部分もあったという。
13年から実施された補修工事では、液状化現象で高潮防波堤がある程度沈んでも津波を阻めるよう、かさ上げをした。
110億円の費用をかけ、海面からの高さを8メートルにした。
備えは湾内の設備だけではない。
陸との境界線には防潮壁がある。
防潮壁の高さは海面から6~6・5メートル。
伊勢湾台風の直後から工事が始まり、名古屋港を囲むように庄内川河口の東側から天白川河口の北側までと、湾内の人工島、ポートアイランドの周囲など、計26・4キロメートルにわたる。
こちらも弱点は同じだ。
防潮壁が立つ海沿いは埋め立て地が多く、液状化する危険性が高い。
海岸保全基本計画などでは、9・6キロメートル分の補修工事が必要とされている。
液状化が起きても役目を果たせるよう、壁のかさ上げをする方法や、地中に鉄鋼製の板を通して固定した壁を新設する方法などがある。
工事は19年3月末時点で1・1キロメートル分しか進んでいない。
「防潮壁のすぐ裏に建物などがある場合も多く、工事スペースの確保が難しい」(名古屋港管理組合)ためという。
ただ、「海抜ゼロメートル地帯」などでは、地盤沈下や堤防の損壊によって、津波が来る前に浸水が始まる恐れがある。
名古屋港管理組合は、「日ごろから避難場所を防災マップなどで確認し、命を守る行動をとってほしい」と話す。
【水族館で地震、どうすれば?】
名古屋港を守る防潮壁だが、その外にも工場や倉庫、レジャー施設がある。
名古屋市の想定では、地震発生から津波が港に到達するまで最短で96分。
防潮壁の外側にいる時、どう避難すればよいのだろうか。
ガーデンふ頭の一角にある名古屋港水族館(名古屋市港区)は、「まず屋上に避難を」としている。
北館と南館があり、北館3階は屋外だ。
イルカショーを見るための階段席があり、2500人が座れる広さがある。
同水族館では2009~15年、2千人の観客を招いて津波を想定した避難訓練を実施した。
館内にいる観客たちを20分以内で誘導したという。
土日などの休日は館内に2500~3千人がいるといい、同水族館は、「想定以上の津波が来る場合や、来場客の混乱が大きい場合も考えられる。何があっても避難場所に安全に誘導できるよう、誘導の質の維持に努めたい」としている。
https://digital.asahi.com/articles/ASN2D42WVN1YOIPE001.html?pn=5
(ブログ者コメント)
本件、名古屋港だけの話しではないと拝察する。
ネットで調べたところ、沿岸防波堤以外、河川の堤防でも液状化が問題になっている。
2020年2月5日19時57分にNHK神奈川から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
5日午前8時ごろ、神奈川県逗子市池子で道路脇の斜面が崩れ、歩道を歩いていた市内に住む18歳の女子高校生が土砂に巻き込まれました。
警察によりますと、女子生徒は救助されて病院に運ばれましたが、死亡しました。
ほかに巻き込まれた人はいませんでした。
逗子市によりますと、この斜面では5メートルほどの高さまで補強がしてありましたが、その上の斜面が崩れ落ち、土砂が下を通る歩道を幅およそ10メートルにわたって覆ったということです。
これまでの調べで当時、現場を通りかかったバスのドライブレコーダーに、女子生徒が南から北に向かって1人で歩く姿が映っていたということです。
現場は、マンションの土台部分となっている急傾斜地で、「土砂災害警戒区域」に指定されていたということで、警察は関係者から話を聞くなどして、斜面が崩れた原因などを詳しく調べています。
神奈川県や逗子市によりますと、崩れた斜面は、斜面の上に建つマンションの管理組合が所有する土地とみられるということです。
神奈川県によりますと、県内では、去年の年末の時点で「土砂災害警戒区域」として1万0466カ所が指定されていて、現場は9年前の平成23年11月に県が「土砂災害警戒区域」に指定した地域ということです。
県によりますと、現場の斜面は高さが16メートルで、崩れた部分の傾斜は最大で60度あったということです。
また市によりますと、このうち、崩落した斜面は、長さ13メートル、幅2.5メートルにわたっていたということです。
土砂が崩れ落ちた場所は市が管理する市道にあたりますが、斜面の安全管理については所有者が行う場所だということで、これまでに斜面が崩れるなどの危険性についての情報は市では把握していませんでした。
市は安全の確認が出来ていないとして、市道を通行止めとし、斜面の所有者や事故の状況などの確認を進めています。
目の前で土砂崩れが起きた瞬間を目撃した53歳の男性は、当時の状況について、「後ろから女性が私を早足で追い抜いていき、その瞬間、頭に砂がぱらぱら落ちてきた。『おやっ』と思った瞬間、土砂崩れが起き、女性は巻き込まれていた。気が動転してしまって通報できなかったが、人が出てきたので通報を依頼した」と話しました。
男性によりますと、崩れた土砂は乾いた質感で、大きな石と砂粒が混じっていたように見えたということで、「土砂崩れが起きた場所はむき出しの斜面だったが、危険な場所だという認識はなかった」と話していました。
そのうえで、女性が亡くなったことについて、「痛恨の極みで、気の毒としか言いようがない。自分と女性の距離は1メートルほどしか離れておらず、生死の境目は紙一重なんだと改めて感じています」と、話していました。
神奈川県によりますと、崖などの近くに建物を建設する場合は、国の建築基準法に基づく県の建築基準条例で、斜面の防災対策をとるよう定めています。
神奈川県の建築基準条例では、近くに勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地があり、崖の端からの水平距離が崖の高さの2倍以内の場所に建物を建設する場合、斜面に擁壁を設けるなど、防災対策をとるよう定めているということです。
今回の逗子市のケースも、建物の場所を考えると、対策をとるべき対象になるということですが、基礎のくいの打ち方を工夫するなど、建物の重みががけに影響を及ぼさないような方法をとっている場合などは適用されないということです。
さらに、この条例のもとになっている建築基準法は、建物の安全性を守ることを目的としているため、建物に被害がない場合、今の段階では条例違反にはあたらないとしています。
逗子市によりますと、市が消防署に設置している雨量計では、先月28日に20ミリ、29日に10ミリの雨量が観測されましたが、先月30日以降、降水は観測されていません。
また横浜地方気象台によりますと、レーダーによる解析雨量でも、逗子市では今月1日以降、観測されていません。
斜面災害が専門の京都大学防災研究所の釜井俊孝教授は、NHKの取材に対し、「今回の土砂崩れは、過去の雨や地震などをきっかけにして斜面全体にひずみが徐々に蓄積され、それがきょう限界になったのではないかと見ている」と分析しています。
そのうえで釜井教授は、「こういった斜面で土砂が崩れるという現象自体は珍しいものではないが、大雨や地震などがないときに土砂崩れが起きるという例は、数が少ない」と指摘しました。
また、釜井教授は現場の状況について、「現場は下の部分に石積みの擁壁があり、上の部分はむきだしになっているようだが、この場合、上の部分が相対的に緩くなるのは確かで、同じような場所は多くある。頂上付近にひび割れが起こっていた可能性はあるが、緑に覆われていると気づくのは難しいと思う」と話していました。
そのうえで、「現場の斜面が民有地であれば、斜面が崩れる可能性や対策をとる必要性などに関するリスクを住民が把握していないことが多い。自分が住む土地の斜面のリスクを正確に把握し、行政と連携して対策を進めることが重要だ」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20200205/1050008929.html
2月5日20時34分に朝日新聞からは、石積み上部の土ののり面が崩れたなど、下記趣旨の補足的記事がネット配信されていた。
逗子署などによると、現場はマンション下の市道に面した斜面。
市道から高さ約10メートルの石積みの部分があり、上部には鉄製フェンスを設けていたが、その上の土ののり面が高さ7~8メートルにわたって崩れた。
建物への被害はないという。
現場はJR逗子駅の北東約2キロの住宅街。
市によると、現場は民有地で土砂災害警戒区域に指定されていた。
近所に住む男性(76)の話では、市道は近くの中学、高校の通学路になっており、特に斜面側の歩道を歩いて通う中学生が多いという。
https://www.asahi.com/articles/ASN253GV2N25UTIL00G.html
2月6日16時26分にNHK神奈川からは、過去に崩れたことはなく崩落の前触れもなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
逗子市によりますと、補強のための石積みの上の斜面が崩れ、土砂が下を通る歩道を幅およそ10メートルにわたって覆い、土砂の総量はおよそ68トンと推定されるということです。
また、現場はマンションの土台部分となっている急傾斜地で、崖崩れなどによって災害が起きるおそれがあるとして「土砂災害警戒区域」に指定されていますが、これまでに大雨などで崩れた記録はなく、今回の崩落の前触れのような情報も寄せられていなかったことが、市への取材でわかりました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20200206/1050008949.html
2月6日付けで毎日新聞からは、民有地のため市は地権者らに危険性を知らせるぐらいしか対応できなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
崩れた斜面の上部にはマンションが建ち、斜面の下の部分は土砂の流出を防ぐため補強されていた。
しかし、その上部の斜面が幅13メートル前後にわたって崩れ落ち、幅約8メートルの市道を土砂が覆った。
県は、この斜面を「急傾斜地の崩壊」の恐れがあるとして、2011年に土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定している。
イエローゾーンとは「土砂災害が発生した場合、住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれのあると認められた土地の区域」を指し、市町村は警戒避難体制の整備を義務付けられている。
逗子市都市整備課によると、地権者らに危険性を知らせるなどの対応を取ってきたが、民有地のため、斜面の管理に市が直接携わることはないという。
https://mainichi.jp/articles/20200206/ddm/041/040/065000c
2020年2月7日17時40分にNHK神奈川からは、数10㎝の深さにある岩の層が激しく風化していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この事故について神奈川県から依頼を受けた土砂災害を研究している専門家2人が7日現場を訪れ、崩れた原因などを調査しました。
その結果、崩れた斜面には水分がほとんど含まれていなかった一方で、数十センチの深さにある岩の層が激しく風化していたことがわかったということです。
調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所の中谷室長は、「現場の斜面は風の影響も受けやすいなど、岩の風化が進みやすい悪条件が重なって崩壊した可能性がある」と指摘していました。
また、専門家はこのあと逗子市役所を訪れ、市に調査結果を報告し、現場で2次災害を起こさないために、不安定な状態で残る土砂を撤去して、表面をコンクリートで覆うなどの対策をとるよう提案したということです。
事故を受けて逗子市は、市内の土砂災害警戒区域にある斜面のうち、人通りが多い市道に面した場所について、危険性がないか今月13日に目視による一斉点検を行うことを決めました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20200207/1050008968.html
(2/2へ続く)
(1/2から続く)
2020年2月8日12時53分に毎日新聞からは、風化したのは凝灰岩だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
中谷氏は現場調査終了後、「斜面を覆う凝灰岩が強く風化していた。これにより崩落が起きたとみられる」と述べた。
風化現象は、気温の変動や強風にさらされることなどで進みやすい。
中谷氏は、「なぜここが、このタイミングで崩落したかは絞り込めていない」と話した。
中谷氏によると、現場は草が生え、その下は薄い土壌と凝灰岩で覆われていた。
凝灰岩は亀裂が入るなどして、もろくなっていたという。
風化が進んで不安定になる恐れがあり、中谷氏は県に対し、斜面の表面を覆うなど対策を講じるよう助言したと説明した。
https://mainichi.jp/articles/20200208/k00/00m/040/066000c
2月7日22時28分に産経新聞からは、露出した凝灰岩は手で崩せるほど風化していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
中谷室長によると、現場は凝灰岩の上を厚さ30センチほどの土壌が覆い、植物が生えた斜面。
土砂が崩れて露出した凝灰岩を調べると、手で触ると崩せるほどの「強い風化」だったという。
調査には神奈川県や逗子市の職員計12人が参加。
メジャーで崩落幅を計測し、土砂の水分含有状況も調べた。
https://www.sankei.com/affairs/news/200207/afr2002070025-n1.html
(2020年2月14日 修正1 ;追記)
2月13日付で日経クロステックからは、擁壁の水抜きパイプは乾燥していた、マンション建設以前は企業の社員寮だったが造成記録は見当たらないなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・・・
現地を調査した国交省国土技術政策総合研究所の中谷洋明・土砂災害研究室長は、「擁壁に設置されていた水抜きパイプは乾燥していた。斜面崩壊の要因が水によるとは考えにくい」と説明する。
実際、現場から最も近い辻堂の観測所では、2月1日から0.5mm以上の降水は記録されていない。
京都大学防災研究所斜面災害研究センター長の釜井俊孝教授は、土砂崩落が発生したメカニズムについて、「この斜面は池子層(240万~400万年前)から成っており、比較的若い深海の堆積物が急速に隆起した丘陵だ。固結度が低いため、風化部分はもろくなり、崩れやすかったのではないか」と推測する。
土地造成の履歴について、神奈川県横須賀土木事務所まちづくり・建築指導課の佐藤氏は、「時期が古過ぎて記録が残っていない」と話す。
マンション完成は04年7月だが、それ以前は企業の社員寮が建っていた。
「社員寮の建築確認は1969年に下りているが、宅地造成の記録が見当たらない。切り土や盛り土については分からない」(佐藤氏)
・・・・・
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00645/
2月13日22時0分に神奈川新聞からは、市は管理組合との合意を待たず応急工事に着手するという下記趣旨の記事がネット配信されていた。
同市の桐ケ谷覚市長は13日、市が事故現場斜面の応急工事に着手する方針を明らかにした。
事故発生以来、通行止めが続く市道を再開し、多くの市民が通勤・通学などで利用する生活道路の安全を確保するためで、費用負担などは今後、所有者のマンション管理組合と交渉する。
桐ケ谷市長は、「私有地の対策は所有者が行うべきだが、手をこまねいてはいられない。速やかに工事し、安全を図りたい」としている。
市は、管理組合が合意形成して工事に着手するには時間を要すると見込み、先行して応急工事を行うことを決めた。
工法は今後検討するが、7日に現地調査した国土交通省の専門家の助言を踏まえ、モルタルの吹き付けや防護柵設置などを検討している。
今月中にも設計に着手したい考え。
費用は数千万円を見込むという。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-270239.html
(2020年3月4日 修正2 ;追記)
2020年3月3日5時0分に神奈川新聞からは、最終報告が公表されたという下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現地調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所は2日、「崩落箇所は表土が両脇の斜面より薄く、風化防止の作用が不十分だった」などとする最終報告を公表した。
事故現場では同日、市の応急復旧工事が始まった。
同研究所によると、崩落斜面の表土厚は20~30センチほど。
70センチ以上あった周囲と比べて薄いため、地表付近が乾燥、風化しやすい状況だったとみられる。
2月5日の事故直前にまとまった雨はなく、「水による流動・崩壊ではない」と指摘。
「崩落の直接的な引き金は不明」としつつ、「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」などと結論付けた。
この日始まった市の応急工事では、崩落部分にモルタルを吹き付け、通行止めが続いている斜面下の市道の防護柵を設置する。
工期は4月10日までの予定で、市は完了後に市道の歩行者の通行を再開したい考えだ。
本格工事の着工時期などは未定という。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-286905.html
(2020年5月7日 修正3 ;追記)
2020年5月6日17時13分にNHK神奈川から、逗子市が類似斜面を調査した結果、4割で崩落危険があった、県が調査した県道沿いは崩落の前兆はなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
逗子市は、主要な市道が走っている41の土砂災害警戒区域を対象に、同じような斜面がないか調査しました。
その結果、およそ4割にあたる17の区域で斜面にひび割れや部分的に崩れたあとなどが確認され、風化が進めば将来的に崩落につながるおそれがあることがわかったということです。
逗子市は、現段階では差し迫った危険性はないとしていますが、市と国の所有地については来年4月以降にモルタルの吹きつけなどの対策工事を行い、私有地については所有者に対し対策などについて市に相談するよう求めるということです。
一方、神奈川県は事故後のことし3月、県道沿いの斜面820か所を緊急点検しましたが、甚大な被害が発生するような崩落の前兆はなかったということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20200506/1050010133.html
以下は、映像の2コマ。
2020年2月1日11時56分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
台風19号で堤防決壊が相次いだ那珂川(栃木、茨城)と久慈川(茨城)の洪水対策として、国土交通省関東地方整備局は1月31日、三つの柱からなる対策の組み合わせで、被害の最小化を目指すと発表した。
伝統的な治水方法「霞堤(かすみてい)」を活用するほか、増水時でも川が流れやすいように整備する。
2024年度末までに完了させる方針。
対策の一つ目は、堤防をあえて途切れさせることで川の水を逃がす「霞堤」を増やすことだ。
増水した川の水を近くの遊水池などへ逃がし、下流の流量を減らす。
霞堤の原型は、戦国時代に武田信玄が考案したとされる。
那珂川と久慈川には、この機能を有する堤防があるが、久慈川が流れる茨城県常陸大宮市で2カ所、那珂市で1カ所、那珂川が流れる栃木県那須烏山市で1カ所新設する。
常陸大宮市の那珂川沿岸には、約130ヘクタールの遊水池も整備する。
二つ目は、増水時の川の水を下流に流れやすくし、水位の上昇を遅らせる対策。
川の底にたまった土砂を掘削し、川岸の樹木を伐採することで流れやすくする。
あわせて堤防を補強する。
三つ目は、沿岸の住民への被害を減らすため、浸水が想定される地域の住宅のかさ上げや高台への移転を進める。
一部では居住の制限も検討する。
対象の地域や住宅数など、詳細は今後詰める。
この他に、越水や堤防の決壊を速やかに検知する機器の開発や整備、増水した川の水位や予測される水位を住民に分かりやすく伝える仕組みの導入も進める。
地方整備局はこれらの対策を「多重防御治水」として推進。
19年度補正予算で那珂川への対応に約521億円、久慈川に約334億円を計上した。
対策は、国交省と気象庁、両河川が流れる県や水戸、ひたちなかなど11市町村、栃木県と同県大田原、那須烏山など5市町の合同で実施する。
同整備局常陸河川国道事務所の担当者は、「台風19号では想定を超える雨が降った。流域で一体となった治水対策に取り組んでいきたい」と述べた。
https://mainichi.jp/articles/20200201/k00/00m/040/064000c アカスミ
2020年1月30日11時43分にNHK宮崎から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
県内に3つある1級河川の水系の31のダムで、大雨が降る前に事前に放流し、ダムに流れ込む水を受け止めて河川の氾濫を抑えようという検討が始まりました。
去年10月の台風19号で関東や東北などの多くの河川が氾濫したことを教訓に、国土交通省は、大雨が予想された場合に事前放流を行うダムを増やそうとしています。
具体的には、洪水調節の機能があるダムだけでなく、発電や農業に用いられ、本来はこうした機能を持たない「利水ダム」でも、事前放流を進めることにしています。
こうしたなか、29日大淀川、小丸川、五ヶ瀬川の3つの1級河川の水系にある、31のダムの管理者などが宮崎市に集まり、協議会が開かれました。
そして国土交通省の方針をもとに、「利水ダム」を含め事前放流を進めていくことが確認され、事前の放流で水量が少なくなり損害が出た場合、国が補償などを行うことが説明されたということです。
今後は、ダムを管理する県や九州電力、それに県内の自治体などが事前放流について、実施が物理的に可能か、どれくらいの水量が放流できるのかなどの調査を行います。
さらに、事前放流をしたあとに水量が戻らなかった場合などを想定して、流域の水の利用者とも調整するということです。
宮崎河川国道事務所は、「1つでも多くのダムについて、ことし3月までに管理者と関係者の間で、事前放流などについての協定が結ばれるよう理解を求め、出水期に備えたい」としています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/miyazaki/20200130/5060005245.html
1月30日20時44分に同じNHK宮崎からは、下記趣旨の補足解説的記事がネット配信されていた。
「事前放流」は、大雨の前にあらかじめ水を放流してダムに流れ込む水を受け止め、河川の氾濫を抑えようというものです。
ただ、本来水道や発電、農業などに使う水で、もし大雨が降らず、放流分の水が戻らなければ、水の利用者に大きな影響が出てしまいます。
一方、緊急放流は大雨で流入量が多くなり、ダムの貯水量が限界に近づくと行われます。
流入してくる水と同じ程度の量を放流しますが、下流で氾濫が起きるおそれもあり、国は1つの回避策として事前放流が有効としています。
今回、どうしてふだんから洪水調節をする治水ダムではなく、利水ダムに「白羽の矢」がたったのか。
宮崎県内で、今回検討の対象となる31のダムのうち、治水ダムなど洪水調節機能を持つダムが11、残りの20が利水ダムです。
利水ダムのほうが倍近く多く、これらで事前放流などを行えば防災の効果が期待できるということです。
現在、日本にあるおよそ1460のダムは180億立方メートルほどの貯水が可能ですが、洪水調節に使えるのは、このうちのおよそ54億立方メートル、割合にして3分の1ほどしかないということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/miyazaki/20200130/5060005253.html
(ブログ者コメント)
〇本件、佐賀県での同様な動きについて、下記趣旨の記事がネット
配信されていた。
の九州地方整備局が音頭をとっているのかもしれない。
(1月31日12時14分 NHK佐賀)
去年の台風19号を教訓に、ダムの水量を調節して川の氾濫や堤防の決壊を防ぐ新たな取り組みを進めようと、嘉瀬川や六角川などのダム管理者などが31日初会合を開きました。
去年10月の台風19号では全国各地で川の氾濫が相次いだことから、国土交通省は飲み水や農業用水など「利水」を目的にしたダムでも、大雨に備えて事前に水を放流しダムの水量を調節する新たな取り組みを行うことにしています。
31日は国土交通省武雄河川事務所で初会合が開かれ、嘉瀬川や六角川、それに松浦川にある15のダムの管理団体や利水者などが出席しました。
会合では、武雄河川事務所の担当者が「事前放流」を行ったあと雨が降らずに水が不足し、発電や農業用の水が確保出来ないなどの影響が出た場合、損失を穴埋めする制度を検討していることなどを説明しました。
国や県など河川管理者とダムの管理者などは、今後、「事前放流」を行うタイミングなどを具体的に協議し、ことし5月までに協定を結ぶことにしています。
武雄河川事務所の的場副所長は、「激甚な雨に対して河川の整備だけでは十分ではない。関係機関と協力しながら既存のダムを洪水の調節機能として活用していきたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20200131/5080004934.html
〇利水ダムからの事前放流については、昨年11月に本ブログで紹介
スミ。
当該記事中、事前放流のルールができているのは全国で1割だけとあったが、残りのダムでもルール作りが進められているようだ。
その一例として紹介する。
2020年1月30日6時46分にNHK首都圏から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
去年10月の台風で多摩川沿いの浸水被害が相次いだ東京・世田谷区で、当時、川沿いの水門を閉める作業にあたっていた職員が、途中でぬれた服を着替えに事務所に戻り、作業を一時中断していたことがわかりました。
その後、1か所の水門を閉められず、水が住宅地側に流れ込んだということで、区では水門の開け閉めのタイミングが浸水被害にどう影響したか検証しています。
去年10月の台風19号で、世田谷区内では多摩川沿いを中心に住宅が相次いで水につかり、およそ580棟が全半壊や一部損壊する被害が出ました。
当時、区の職員が多摩川沿いの水門を一斉に閉める作業にあたっていましたが、このうち車で移動しながら作業にあたっていた職員が、浸水した場所に立ち入って服がずぶぬれになったとして、途中で事務所に着替えに戻り、作業を中断していたことがわかりました。
区によりますと、残った水門を閉めるため再び出発したものの、渋滞や道路の冠水などでたどりつけず、水門1つを閉めることができなかったということです。
この水門から多摩川の水が住宅地側に流れ、浸水被害の原因の1つになった可能性が指摘されていますが、区の担当者は「着替えに戻ったことでの時間のロスは15分程度で、水門を閉められなかったことに影響はなかったと思う」と話しています。
区では、水門の開け閉めのタイミングが浸水被害にどう影響したか、先月始まった委員会で検証を進めています。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200130/1000043246.html
※昨年2019年12月22日17時30分に読売新聞からは、住民説明会では交通規制のため当該
水門に行けなかったと説明されたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
台風19号で多摩川沿いの東京都世田谷区などの住宅が広範囲で浸水した問題を巡り、同区は21日、台風への対応に関する住民説明会を開き、約430人が出席した。
区が管理する水門「等々力排水樋門(ひもん)」(同区玉堤)が閉められなかったことについて、「交通規制で車両が通れず(職員の現場到着を)断念した」と説明し、理解を求めた。
この問題では、大田区は、同樋門が閉められなかった結果、多摩川の水が逆流し、土地の低い大田区側に流入したと説明している。
世田谷区や都は、内水氾濫など複合的な要因があるとの見方を示している。
世田谷区の説明によると、区管理の水門6か所のうち5か所は、10月12日午後8時頃までに閉めた。
等々力排水樋門にも区職員が向かったが、交通規制で車両が通れず、強風や道路の冠水もあり、現場にたどり着けなかったという。
対策として同区は、水門を所有する国や都に、より安全な場所で操作できるようにすることを求めている。
また水門閉鎖後も排水できるように、大型ポンプ車の購入を検討していることも明らかにした。
詳細な浸水原因は検証委員会で調べる。
同区内で床上・床下浸水などの被害を受けた住宅については再調査が進められ、これまでに全壊1件、半壊319件、一部損壊241件となった。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191222-OYT1T50092/
(ブログ者コメント)
以下は、NHK映像の1コマ。
世田谷区が複合的な要因の一つとみている内水氾濫については、過去に本ブログで紹介スミ。
『2019年10月16日報道 東京都世田谷区で台風19号時、多摩川氾濫の6時間前に内水氾濫で野毛地区が浸水、都市部で内水氾濫は台風時に限らず起きる可能性がある』
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10108/
2020年1月25日9時30分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が地図や写真付きでネット配信されていた。
南海トラフ地震の津波が今後30年以内に沿岸を襲う確率が24日、発表された。
被害が想定される自治体では、津波リスクを踏まえたまちづくりが進む。
そんな中、新しい役場庁舎を中心部の津波浸水域に造る動きもある。
防災拠点の役割を意識しつつ、市街地の活性化を図る狙いだが、疑問視する声もある。
静岡市は2023年にも、老朽化した清水区の清水庁舎を、現在地の約1キロ北で海から約200メートルのJR清水駅東口に移す計画だ。
7~8階建てで、総事業費は約94億円を見込む。
市は選定理由として、人口流出や経済の低迷が続く地元の再活性化を挙げる。
当初は内陸への移転も検討したが、田辺信宏市長は「コンパクトでにぎわいのあるまちづくりなどをトータルに考えた」と話す。
国の発表では、清水区の一部は、3メートル以上の津波が「6~26%」の高い確率で来るとされた。
市は新庁舎の津波対策として、1階を柱だけのピロティ構造にして津波が通り抜けるようにする計画だ。
庁舎内や、庁舎2階と駅をつなぐ通路などには約1万2800人が避難可能で、市は「攻めの防災拠点をめざす」と理解を求める。
だが、計画の再考を求める住民団体もあり、移転の是非を問う住民投票の実施を求めて、23日から署名活動を始めた。
有権者の50分の1(約1万2千人)以上の署名を集めて直接請求をめざす。
神戸孝夫共同代表は、「新庁舎は津波が起きると孤立し、機能が果たせなくなる。にぎわいづくりに市役所が必要なのか」と指摘する。
同県焼津市では昨年7月、港から約400メートルにある築50年の現庁舎の隣で、8階建ての新庁舎建設を始めた。
焼津市の一部も、3メートル以上の津波が来る確率は「6~26%」とされた。
新庁舎の1階は会議室と市民スペースのみにして、津波が通り抜けるようにするという。
災害対策本部は内陸約2キロにある消防本部に置き、災害時は市庁舎と両輪で指揮にあたる。
パブリックコメントでは「日本一危険な市役所」との意見も寄せられたが、市は利便性や防災などの観点から「総合的に評価した」と説明する。
周辺商店街からも、にぎわいづくりを期待する声が多かったという。
だが、同市の男性(72)は「勤務時間外に地震があった時に、津波が来るとわかっていて沿岸部に参集する職員がいるだろうか」と疑問を呈する。
3メートル以上の津波が「26%以上」の非常に高い確率で来るとされた和歌山県御坊市は18年12月、現庁舎の駐車場に新庁舎を造る基本計画をまとめた。
内陸の市有地への移転も検討したが、造成が必要で、築約50年の現庁舎が地震被害に遭う前に現地建て替えを選んだ。
1階は会議室とホールのみにし、執務室は2階以上に置く。
県内は印南町、湯浅町など高台移転した自治体が多い。
市民アンケートでも利便性より高台移転の安心感を求める声が多かったが、市は「津波対策を詳しく説明し、理解を得たい」とする。
大分県津久見市は18年11月7日、市総合計画に新庁舎の基本構想を明記した。
移転先は、3・5メートルの津波が想定される港湾埋め立て地。
17年の台風18号被災などで人口減が進む中、市の中心地の活性化が欠かせないと選定した。
香川県土庄町は、21年完成予定の新庁舎の建設地を、河口に近い沿岸部の病院跡に決めた。
津波は3メートルを想定。
駐車場も含め敷地を3・1メートルかさ上げし、被害を回避する考えだ。
現庁舎に近く、住民の利便性を損なわない場所を選んだという。
【専門家の考えは】
国は東日本大震災後、庁舎建設費の7割を国が負担する緊急防災・減災事業債を設け、高台移転を推し進めてきた。
一方、津波浸水域に庁舎を建てる自治体は、2016年の熊本地震後に設けられた市町村役場機能緊急保全事業などの活用で事業費を捻出する。
静岡大の岩田孝仁(たかよし)教授(防災学)は、「庁舎の1階部分を津波が走り抜けるから大丈夫というのは米ハワイの砂浜での話。日本では船や自動車などが津波とともに押し寄せ、1階部分にたまるだけ」と指摘。
東日本大震災では重油の流出で沿岸部で火災が起きたことを挙げ、「同じようなことが起きうると考えて庁舎の立地を決めるべきだ」と話す。
京大防災研究所の牧紀男教授(防災学)は、東日本大震災時に1階が水没して水が引かず、職員と市民が15時間以上庁舎内に閉じ込められた岩手県宮古市を例に、「庁舎が無事でも、人が出入りできないのでは意味がない」とする。
一方、静岡市の新清水庁舎建設検討委員会委員を務めた東大生産技術研究所の加藤孝明教授(地域安全システム学)は、「災害リスクを完全にゼロにはできない」と話す。
「まちづくりを含む様々な要素を考え、一長一短の選択肢の中でどれを選び、どうリスクを軽減し、地域を持続させていくかが重要」と指摘する。
【「南海トラフ地震地震」とは】
静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く海底のくぼみ「南海トラフ」沿いで起きる。
岩板が海側から陸側へ沈み込むプレート境界にあたり、100~200年おきにマグニチュード(M)8級の地震を繰り返してきた。
30年以内にM8~9級が起きる確率は70~80%とされ、国は2012年に地震と津波で最大約32万人が死亡、建物約238万棟が全壊・焼失し、経済被害は約220兆円に達するとの被害想定をまとめた。
https://www.asahi.com/articles/ASN1S74K8N1SUTIL02K.html
2020年1月24日17時0分に日本経済新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
政府の地震調査委員会は24日、将来の発生が懸念される南海トラフ地震で西日本から東日本の各地を襲う津波の確率を公表した。
太平洋側や瀬戸内の352市区町村のそれぞれについて、3~10メートル以上の津波が押し寄せる確率を「30年以内に26%以上」などと計算した。
これまでは最も高い津波への警戒を呼びかけており、高さごとに地域別の確率を示すのは初めて。
行政や企業、個人の備えを強く促す狙いだ。
津波の高さを「3メートル以上」「5メートル以上」「10メートル以上」の3つに分け、30年以内に押し寄せる確率を求めた。
確率は「6%未満」「6%以上26%未満」「26%以上」の3段階で示した。
全体の2割にあたる約70の自治体で、3メートル以上の津波に見舞われる確率が26%以上だった。
静岡県御前崎市や愛知県豊橋市などが入る。
30年以内に交通事故でけがをする確率が15%とされ、それよりも高い確率だ。
このうち5メートル以上が26%以上の確率となった自治体は、高知市や三重県大紀町など約30。
10メートル以上でも、6%以上26%未満の確率が高知県黒潮町や静岡県沼津市など約20あった。
南海トラフ地震については、マグニチュード(M)9.1クラスの最大級の地震で最大約34メートルの津波がくると、内閣府が2012年に推計している。
今回は最大級の地震は除き、30年以内に70~80%の確率で起きるとされるM8~9クラスを想定した。
最大想定だけでなく、3メートル以上など高い確率で起こるリスクを明らかにした点で、これまでの津波評価とは異なる。
地震調査委の平田直委員長は、「最大想定への対処で自治体が苦慮するケースもみられる。できることから着実に備えをしてほしい」と話す。
津波の高さや確率といった「現実的な想定」を示し、最大想定の津波への備えが追いつかない自治体に、まずは最低限の対策から始めるよう促す狙いがあるとみられる。
対象となる津波は最大想定よりも低いが、発生すれば大きな被害をもたらす。
3メートル以上の津波では木造家屋の全壊や流出が相次ぎ、5~6メートルの高さを超えると被害が急増する。
防潮堤の整備や避難体制の構築などで、各自治体の迅速な対応を迫る。
最大想定を踏まえた防災対策に比べ、今回の評価は現実の危機を強調している。
実際に南海トラフの震源域で起きると推定されている全てのタイプの津波を考慮した。
検討した地震は79通り、津波は35万通りに上る。
50メートル間隔で全国の海岸線に到達する津波の高さを求め、各地に達する津波の高さと確率を一覧で示した。
従来の津波評価は、被害の大きい10通り程度の地震に絞って計算した。
津波の高さは高知県や三重県などを中心に最大で20~30メートルに達すると試算され、この想定に対処する対策が各自治体に求められてきた。
最大の被害を明らかにするのが目的で、確率は計算されていなかった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54789170U0A120C2I00000/?n_cid=NMAIL007_20200125_K
2020年1月24日19時12分に産経新聞からも、同趣旨の解説的記事がネット配信されていた。
南海トラフ地震は、広大な震源域のうち東西の片方だけ断層が動くタイプや、両方が同時に動くケースなど、地震の場所や規模は多様だ。
津波の高さはそれぞれ異なり、次にどのような地震が起きるか分からないため、予測できない。
今回の発表は、津波の高さごとに確率を求めることで地域別のリスクを示したもので、防災対策の新たな指針として果たす役割は大きい。
平成24年に政府が公表した津波の想定は、歴史上は確認されていないが理論的には起きる可能性がある最大級の巨大地震を試算した。
これに対し今回は、実際に起きた過去の地震をもとに計算した点が特徴だ。
これから起きる可能性が高い典型的な津波が示され、より現実的な内容となった。
背景には、従来の想定が防災上の逆効果を招いた反省がある。
前年に起きた東日本大震災が「想定外」だった教訓から、震源域全体が一気に動く極端なケースを想定し、場所によっては最大で高さ30メートル以上の巨大津波が襲う形となった。
実際に起きる可能性は極めて低いにもかかわらず、名指しされた地域では、津波対策そのものを諦める声まで出てしまった。
限られた予算や時間の中で防潮堤などの対策を進める自治体にとって、今回の評価は、備えるべき津波の高さや地域などの優先順位付けに使えるだろう。
前回の想定づくりにも関わった東北大の今村文彦教授(津波工学)は、「当時は最大級が必ず起きるのではないかとの誤解が独り歩きして、思考停止につながることもあった。今回の評価を段階的な対策につなげてほしい」と話す。
https://www.sankei.com/affairs/news/200124/afr2001240036-n1.html
2020年1月20日18時31分にNHK佐賀から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
発達した雨雲が線状に連なって局地的な大雨をもたらす線状降水帯の発生を予測する実証実験が、ことし夏から九州で始まることになりました。
早期に避難や被害の軽減につながるか、注目されます。
線状降水帯は、水蒸気を含んだ空気が海から流れ込み、急速に発達した積乱雲が連なることで発生します。
3年前の九州北部豪雨や去年8月の佐賀県の豪雨で大きな被害をもたらしましたが、現在の技術では、いつ・どこで発生するのか、正確な予測は難しいとされています。
この線状降水帯について、茨城県つくば市の防災科学技術研究所や福岡大学などの研究チームは、大気中の水蒸気の量を計測して発生を予測する実証実験を、ことし夏から九州で始めることになりました。
実験には、高出力のレーザー光を空に照射し反射してきた光から水蒸気の量を観測する福岡大学が開発した特殊な機器を使って、線状降水帯が発生する可能性が高い地域を予測します。
発生の2時間前に1キロメートル四方で予測して関係する自治体に情報を配信する計画で、東シナ海から水蒸気が流れ込みやすい長崎県と鹿児島県に機器を設置する予定です。
実験には、北九州市や熊本市などの人口が多い都市部のほか、九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市など九州の9つの自治体が協力し、避難を呼びかる時に情報をどう生かすかなどを検討するということです。
防災科学技術研究所の清水慎吾研究統括は、「高精度の予測技術を開発して情報を提供していくことで、早期の避難活動を促し、被害の軽減につなげたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20200120/5080004851.html
(ブログ者コメント)
以下は、映像の3コマ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。