2017年3月10日8時27分にNHK福岡NEWS WEBから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
九州大学の研究グループは、ドイツで開発されたものの、まだ広く普及していない鉄鋼材料が、動物の骨に似たしなやかな構造を持ち、金属疲労に強いことを発見したと発表した。
九州大学大学院の津崎兼彰教授や小山元道助教らのグループは、ドイツの研究所が2008年に発表したものの、まだ広く普及していない鉄鋼材料に注目し、金属疲労の進み具合について実験を繰り返した。
一般的な鉄鋼と比較したところ、比較的弱い負荷をかけた場合は大きな差がなかったのに、強い負荷をかけると、ドイツの鉄鋼材料は10倍以上の強さを示したという。
このため電子顕微鏡で調べたところ、動物の骨に似たしなやかな構造を持ち、金属疲労に特有の亀裂が生じても拡大しない特徴があることがわかったという。
津崎教授は会見で、「この鉄鋼を使えば金属疲労を防ぐことができ、より安全な飛行機や車を開発することが可能だ」と話している。
この研究成果は、アメリカの科学雑誌「サイエンス」に掲載されたという。
出典
『金属疲労に強い鉄鋼材料を発見』
http://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20170310/4543481.html
(ブログ者コメント)
九州大学HPに3月10日付で、以下の記事が掲載されていた。
「サイエンス」に金属疲労関係の記事が掲載されるのは珍しいとのこと。
『骨のような壊れ方で、金属疲労に強いミクロ構造を、鉄鋼材料で発見 -安全安心に貢献する金属疲労研究の新展開-』
輸送機器や機械類の破壊事故の約8割は金属疲労が原因とされています。
このため、金属材料と金属部品の疲労特性を正しく理解し評価すること、また疲労特性に優れた金属材料を地道に開発し製造することは、地味な営みではありますが、安全安心な社会基盤の実現にとって重要です。
金属疲労破壊では、一度に加える力は小さくても何度も繰り返して加えることで、材料表面に微小なき裂が発生しそれが拡大伝ぱして次第に大きく広がり最終的な破壊に至ります。
九州大学大学院工学研究院機械工学部門の小山元道助教、野口博司教授、津﨑兼彰教授の研究グループは、この疲労き裂の発生と伝ぱを抑えるために、き裂先端部分での局所的な力学状態と金属ミクロ構造の関係に注目した研究を行いました。
き裂発生の抑制の為にき裂周囲の金属が膨張や硬化する構造、き裂伝ぱ抑制の為にき裂面同士の摩擦が起こる構造に着目して、画期的な疲労特性を示す鉄鋼を見出しました。
特に「層状形態を要素に含む階層性原子集団の金属ミクロ構造」によって、鉄鋼が動物の骨のような粘りのある壊れ方をするため、き裂伝ぱが抑えられて疲労寿命が格段に延びることを明らかにしました。
本成果は、応用面実用面への貢献はもちろん、疲労などの力学特性に優れた金属材料の開発に貢献する金属物理学、また鋭いき裂先端という特殊な力学状態を解析する破壊力学の両学問分野にとっても新展開をもたらすものとして期待されます。
本研究は米国・マサチューセッツ工科大学およびドイツ・マックスプランク鉄鋼研究所と連携して九州大学伊都キャンパスで実施され、その成果は平成29年3月9日(木)午後2時(米国東部時間)に米国科学誌ScienceにREPORT(筆頭著者:小山助教)として掲載されました。
また、本研究は日本学術振興会科学研究費補助金若手研究(B)(15K18235)および基盤研究(S)(16H06365)の支援により遂行されました。
[研究者からひとこと]
構造金属材料の疲労に関する論文がScience誌に掲載されたことは長い間ありませんでした。
本成果はそれほどに金属疲労研究として画期的であり、機械工学と材料科学の研究者がスクラムを組むことで初めて達成できました。
これを安全安心な社会基盤の構築にとって重要な金属疲労研究の活性化と新たな展開に繋げるために、今後も教育研究を続けます。
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/97
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。