(1/3から続く)
「減らないマンション高層階からの落下事故」
家庭内事故で3番目に多いのが「転倒・転落」です。
室内で何かにつまずく、またはよろめくことで転倒したり、階段からの転落、ベランダや窓から落下したりする例が含まれます。
最近では、高層マンションの上階ベランダや窓から幼児が転落したという痛ましいニュースをよく耳にするようになりました。
2016年5月、京都府の6階建てマンションで、6階の出窓から1歳の男の子が落下して死亡する事故がありました。
出窓のそばにあったベッドで母親と添い寝しており、母親が目覚めたときには子どもの姿がありませんでした。
網戸の一部が壊れていたとのことです。
「窓ガラスがあると勘違い?」
岩手県に住むCさんの3歳と2歳の姉妹が1階の居間で遊んでいたときのことです。
2人でふざけているうちに、3歳の長女が掃き出し窓の網戸に体当たりしてしまいました。
網戸はその衝撃に耐えられず、長女は網戸を突き破って庭まで転がり落ちてしまいました。
網戸の向こうに窓ガラスがあると思っていたようです。
もし、突き破った網戸が高層階の窓だったら、大惨事になるところでした。
窓ふきなどの掃除にもリスクが伴います。
横浜市のマンションの3階に住む中学生のD君は、年末の大掃除の手伝いをしていました。
デスクに上って自室の窓を拭いていたところ、バランスを崩してしまいました。
窓から外へ転落、大けがをしてしまいました。
窓から落下する事故は、子どもに限った話ではなく、大人でも十分可能性があります。
窓際に落下防止の手すりがついていれば、未然に防げたかもしれない事故です。
「こんなところで転倒?」
高齢者が、自宅内の居間や居室など、床が平らで何もない部分なのに転倒する事故も報告されています。
段差もないところで、なぜ転倒するのでしょうか。
高齢になると足があまり上がらず、すり足になります。
そこで、床に敷いていたホットカーペットの端っこや敷居など、「まさかこんな所でつまずくの?」と思うような、わずか1cm足らずの段差でも引っかかってしまうことがあります。
また、床に置きっ放しにしていた新聞紙を踏んで滑ってしまったケースも報告されています。
「動けない赤ちゃんが落下」
大人なら何の危険もない部屋が、幼い子どもにとっては危険な場所になることもあります。
東京・調布市に住むお母さんのEさんから聞いた話です。
保育園から生後8か月の長男を抱っこして帰宅したときのことです。
Eさんは、お座りができるようになった長男をベッドの上に座らせて、自分のコートを脱ぎ始めました。
そのわずかなスキに長男はバランスを崩して頭から落下。激しい声で泣き始めました。
突然の出来事に、Eさんは「どこか強く打ったのかしら?」「救急車を呼んだ方がいいかしら?」とオロオロしてしまいました。
このように、まだ自分で動けない赤ちゃんがベッドやソファから落ちそうになってヒヤリとした経験は、子育て中の家庭ならあるでしょう。
1歳未満の赤ちゃんなら、「動けないから、少しくらい大丈夫だろう」と目を離してしまうことがあるかもしれません。
しかし、寝返りが打てないはずの赤ちゃんがベビーベッドから落ちたという事例もあります。
数10cmの高さでも、乳児が落下すれば命の危険につながる恐れもあります。
ベッドやソファから「落ちないだろう」という過信は禁物です。
「性能が向上する裏で発生する事故」
千葉県内に住むFさんには、歩き出して間もない1歳になった女の子がいます。
ある時、廊下にいたFさんがリビングのドアを開けた時に、ちょうどそこに立っていた女の子の足の先が、ドアと床の1cm程度の隙間に挟まってしまいました。
足の爪が変色する大けがです。
もし、ドアを開ける勢いがもう少し強かったら、爪がはがれていたかもしれません。
この、ドアと床の間にある隙間は「アンダーカット」と呼ばれています。
2003年に施行された改正建築基準法で住宅に義務付けられた、24時間換気システムのために必要となったもので、家の中の空気を循環させるために設けられています。
このように、住まいの環境をより良くするために新たにできた決まりによって、昔では考えられない新しいタイプの事故が発生することもあります。
親の世代は経験していないわけですから、事故を予測することはなかなか難しいと思います。
「デザイン重視の階段に潜むリスク」
階段も、危険な場所の一つです。
40代の主婦のGさんは、6歳の子どもと一緒に栃木県の祖父母の家に遊びに来ていました。
子どもが階段を上っているときにつまずいて前歯をぶつけ、歯が抜けてしまいました。
ちょうど乳歯が生え変わる時期で、グラグラしていた歯だったからまだ良かったものの、大きな衝撃で子どもは大泣きしてしまいました。
この祖父母の家の階段には、手すりがついていませんでした。
その理由として、住宅の階段の手すりの設置については、建築基準法で定められていないことがあります。
「狭いから」「デザインを優先して」などという理由で階段に手すりを設置しない家は、実はとても多いのです。
(3/3へ続く)
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。