2018年10月3日1時17分に北海道新聞電子版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2日午後3時45分ごろ、函館市港町の津軽海峡フェリーターミナルに停泊している高速船「ナッチャンWorld(ワールド)」の船底清掃作業をしていた小樽市の潜水士・薬師さん(男性、38歳)が作業終了時刻が過ぎたのに海中から浮上してこないと、作業の関係者が119番した。
薬師さんは間もなく、船尾付近の海中から意識不明の重体で救助されたが、死亡が確認された。
函館海保によると、薬師さんは2日朝からボンベを装着して、同僚の潜水士と船底の貝殻などの除去作業を行っていた。
作業が終了しても薬師さんが戻ってこないため、同僚らが捜索していた。
同船は2016年に防衛省が船を所有する会社から借り上げて、自衛隊の訓練の輸送などに使っている。
出典
『作業中に潜水士死亡 函館』
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/234237/
10月6日1時0分に北海道新聞電子版からは、船体の一部に体が挟まれていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
死因について函館海保は、5日までに司法解剖の結果、外傷性ショック死と特定した。
同海保は、薬師さんが潜水中に何らかの原因で外傷を負ったとみて、業務上過失致死の疑いで捜査を始めた。
同海保によると、薬師さんは船底の清掃をしていた高速船「ナッチャンWorld(ワールド)」の船体の一部に体が挟まった状態で見つかった、という同僚潜水士の証言があり、関連を調べている。
出典
『船底清掃中の潜水士 外傷性ショック死因』
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/235477/
10月5日19時20分にUHBからも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
函館海保では、当初、水死の可能性などで薬師さんの死因を調べていたが、司法解剖の結果、体に複数の傷があり、外傷性ショックだったことがわかった。
出典
『函館港でフェリー船底清掃中 潜水士の男性 外傷性ショックで死亡 業務上過失致死で捜査 北海道』
https://www.youtube.com/watch?v=6hPkZie-GZs
(2019年11月12日 修正1 ;追記)
2019年11月11日17時5分にNHK北海道からは、係留ロープ巻き取り機を作動させたところ連動して船の揺れを抑える板が動き挟まれたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
去年10月、函館港のフェリーターミナルに停泊していた高速船で船底の清掃をしていた潜水士の薬師さん(当時38)が、「トリムタブ」と呼ばれる走行中の船の揺れを抑える金属製の板に挟まれ死亡しました。
函館海上保安部が調べた結果、1等航海士が係留ロープが緩んでいたため、ロープを巻き取る装置を作動させたところ、船底の「トリムタブ」が連動して動き、体を挟まれたことがわかりました。
このため函館海上保安部は、関係する装置の電源を切るなど事故を防ぐ対策が不十分だったとして、▼田邉船長(男性、59歳)と▼永井1等航海士(男性、34歳)ら3人を、11日、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。
函館海上保安部は認否を明らかにしていませんが、3人のうち1等航海士は「係留ロープを巻き取る作業が船底の清掃に影響するとは思わなかった」と供述しているということです。
また、書類送検された船長らが所属する高速船の運航会社は、「今回の事故を真摯に受け止めて再発防止に取り組んでいきます」とコメントしています。
【専門家「船ごとに危険想定必要」】
事故があった船は、胴体が2つ並ぶ「双胴船」と呼ばれる構造が特徴で、オーストラリアの造船会社が建造しました。
スクリューの代わりに、吸い込んだ海水を噴き出す筒状のウォータージェットを搭載していて、付近で作業していた潜水士は、ウォータージェットのすぐ下に取り付けられた「トリムタブ」との間に体を挟まれました。
船の構造に詳しい長崎総合科学大学工学部の古野弘志准教授は、「最近は新しい技術が導入され、外国で建造された船も多く、仕様が多様化している。船それぞれに違った形の事故の危険が潜んでいる」と指摘しています。
その上で、「マニュアルなどを読み込み操縦や整備のしかたを熟知し、船ごとに事故の危険を想定して対策をとっていくことが求められる」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20191111/7000015217.html
(ブログ者コメント)
以下は、NHK映像の3コマ。
(2020年2月28日 修正2 ;追記)
2020年2月27日11時30分に北海道新聞から、船の揺れを抑える装置のスイッチを適切に切り替えなかったことが原因とする報告書が公表されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
国土交通省運輸安全委員会函館事務所は27日、同船の乗組員が船の揺れを抑える装置を誤って作動させたことが事故原因とする調査報告書を公表した。
報告書によると、同船の1等航海士らが船を岸壁に係留するロープの緩みを直そうと油圧ポンプを動かした結果、船尾下にある同装置が上方向に作動。
潜水士は船の推進器と装置の間に挟まれ、外傷性ショックで死亡した。
装置のスイッチを適切に切り替えていれば作動しなかったが、乗組員はその認識がなく、切り替えをしなかった。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/397089/
(ブログ者コメント)
以下は、事故報告書主要部分の抜粋。
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4.原因
本事故は、本船が、函館港第4区のB社専用桟橋に右舷着けで係留中、トリムタブ装置の翼が自重で下降した状態で、右舷船尾船底部で潜水士Aにより本件作業が行われていた状況下、航海士A及び甲板部の乗組員が、船尾部の係船索の緩みを取る作業を行うに当たり、本件制御装置のスナップスイッチがノーマルの位置でNo.2後部 電動油圧ポンプを始動すると、トリムタブ装置の翼が上昇することが周知されていなかったため、同装置の翼が上昇することを知らずに同電動油圧ポンプを始動し、潜水士Aが上昇した同装置の翼と右舷側のウォータージェット推進器との間に挟まれたことにより発生したものと考えられる。
・・・・・
5 再発防止策
・・・・・
係船索の緩みを取る作業は、本件作業を行っている潜水士を陸上に退避させた上で安全を確認して行うことにより、本事故の発生を防止できたものと推定される。
したがって、同種事故の再発防止を図るため、次の措置を講じる必要がある。
(1) 船長は、本件制御装置のスナップスイッチの取扱いについて、ノーマルの位置としたとき、トリムタブ装置の作動用油圧シリンダに油圧が働いた際に同装置の翼が上昇することを記載した手順書を作成すること。
(2) 船長は、本件制御装置のスナップスイッチが、ノーマル及びバックアップの位置にある時のそれぞれの位置でのトリムタブ装置の制御状態及び同装置の作動用油圧シリンダに油圧が働かないようにする手順について、取り扱う場所に掲示した上、航海士A及び甲板部の乗組員に周知徹底すること。
(3) 係船索の調整作業に当たる者は、事前に通信手段を確認した上で、潜水作業者に連絡するなどして船底等に潜水士がいないことを確認してから係船索の調整作業を行うこと。
5.1 A社によって講じられた措置
A社は、本事故後、事故防止委員会を立ち上げて検討し、再発防止として、次の措置を講じ、安全統括管理者等が訪船指導した。
(1) 潜水作業を行っている時は、油圧を使用する作業及び関連する作業を実施しない。
また、本船で関連する作業を実施する際には潜水作業に従事する作業者に連絡し、潜水士を陸上に退避させる。
(2) 係船状態に入る際は、本件制御装置のスナップスイッチをノーマルからバッ クアップの位置に切り替える。
http://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2020/MA2020-2-4_2018hd0057.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。