2017年12月9日に掲載した元記事が、修正2として記事を追記中、プロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正2(続)として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/7833/
(2018年11月27日 修正2の続き ;追記)
2018年11月20日付で荒川化学のHPに事故報告書が掲載されていた。
以下はポイント部の抜粋だが、着火源はフレコン内部のコーン放電と推測されている。
(新情報に基づき、第1報ともどもタイトルも修正した)
【要旨】
今回の爆発・火災事故は,印刷インキ用樹脂製造棟1階のロジン変性フェノール樹脂の製品包装作業中,FIBC(=フレキシブルコンテナ)内でコーン放電が起こり,ロジン変性フェノール樹脂の粉じんに着火したことから始まったと推測される。
そして粉じん爆発が起こり,発生した火炎が製造棟内の危険物,可燃物に引火,類焼し,製造棟全体の火災に至る重大事故に発展したものと考えられる。
【2.2.3プロセス概要 (18/101p)
⑥粗砕・解砕工程(作業:協力会社社員)】
2階固化室でスコップを使用してロジン変性フェノール樹脂をスクリューコンベアに入れる。
ロジン変性フェノール樹脂はスクリューコンベア内で解砕されながら,1 階のホッパーへ移送さ れる。
⑦包装工程(作業:協力会社社員)
1階にて包装に必要な洗浄済みのFIBCを準備する。
・・・・・
【3.3.1 発災前の状況(当日)】 (36/101P)
発災時 社員 b,c は FIBC への包装作業 全 20 個中,13 個目が終了,14 個目の包装を開始
・・・・・
【ロジン変性フェノール樹脂の包装作業】 (44/101P)
包装作業は FIBC を台秤に載せ,FIBC の充填口をホッパー排出口の直近まで伸ばし,回転型スライド弁を全開にして一気に約 400kg まで充填する。
この際,FIBC の充填口の端を回転型スライ ド弁とホッパー排出口の間に挟みこんで固定する。
さらに FIBC の充填口の反対側の端を集じんダクトに近づける。
回転型スライド弁を全開にした状態で約 400kg まで一気に充填した後(所要時間約 30 秒),回転型スライド弁の開閉操作にて調整し,所定量の 470kg まで充填する。
約 400kg から 470kg まで の充填操作中は,正確に計量するために FIBC はホッパー排出口から離し,自立させている。
充填開始から完了までの所要時間は約 1 分である。
充填後は FIBC の充填口を閉じ,フォークリフ トにて屋外へ搬出する。
【5.1粉じん爆発およびそれに伴う火災に至った経緯】 (94/101p)
(1)FIBC内に粉じん爆発下限濃度以上となる粉じんがあった。
(2)FIBC内で静電気のコーン放電により,粉じんに着火した。
(3)FIBC内で着火した粉じんが,ダクトを経由して集じん機まで伝播した。
(4)伝播した火炎により集じん機内で粉じん爆発(一次爆発)が発生した。
(5)集じん機内の一次爆発により,爆発放散口から集じん機内の未燃の粉じんを伴って火炎・爆風が噴出し,製造棟1階周辺の堆積粉じんを巻き上げ二次爆発が発生した。
(6)当該製造棟内にあった消防法危険物,可燃物のほか,爆風の影響により破断した配管から漏えいしたキシレン溶液や熱媒油に引火・類焼し,火災が当該製造棟全体に拡大した。
【5.2事故原因の整理】 (94/101p)
5.2.2人
荒川化学は長年にわたり粉じんにかかる大きな事故もなく操業し,ロジン変性フェノール樹脂が粉じんになることにより,粉じん爆発をもたらす危険性があることを認識できていなかった。
このことから,粉じんに対する安全意識が低下し,静電気や粉じん爆発に関する理解が不足していたため,危険性評価が充分できていなかった。
【6.再発防止策】 (97/101p)
6.1.2人(荒川化学および協力会社従業員)に対する対策
① 荒川化学は従業員に対し,専門家による静電気および粉じん爆発防止に関するセミナーを定期的に行い,理解させる。
②静電気および粉じん爆発防止に関するセミナーを受講して,常に新しい情報,知識を習得する。
③ 保安に関する荒川化学の社内会議にて,静電気および粉じん爆発防止の討論の場を設け,静電気および粉じん爆発防止の理解を深める。
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
(ブログ者コメント)
〇コーン放電が原因と推測された爆発事例は、過去にはサイロであったものの、フレコン事例はブログ者にとって初耳だ。
今回、着火源がコーン放電だと推察した大きな理由は、ブラシ放電での着火可能性を排除したことだが、その論拠は、報告書56/101pの
『事故発生時に充填していたロジン変性フェノール樹脂の体積抵抗率は 1014Ω・m であった。
体積抵抗率が高い樹脂からの放電はブラシ放電であり,粉じんへの着火性はない。(IEC 60079-32-1, p.126 参照)』
ということらしい。
ここで、表9(55/101p)では、今回事例の粉じんの最小着火エネルギーは、最も高い測定値でも『1mjを超え3mj未満』と記されている。
一方、静電気安全指針(2007)では、ブラシ放電の着火エネルギーは『3mj程度まで』と記されている。
そういった点から考えると、今回事例の粉じんにはブラシ放電でも着火し得たのではないだろうか?
報告書の結論の根拠となったIEC 60079-32-1, p.126の記述を確認しようとしたが、ネットでは検索の壁が厚く、確認できなかった。
〇一方、ブログ者にも経験があることだが、これまでは何ら不安も抱かず取り扱ってきた物質が、爆発が起きて初めて、非常に粉じん爆発しやすい物質だったことを知る・・・そういったことも、今回事例の教訓の一つだ。
〇ちなみに、産経新聞からは「同社は粉塵爆発の危険性を認識しておらず、帯電や粉塵の発生を抑えるなどの対策を取っていなかった。」と報じられているが、報告書を読むと、静電靴や静電服着用といった静電気対策(p43)や集塵機設置(p36)といった粉じん抑制対策がとられていた。
ただ、機器の上に堆積していた粉を、当分の間、清掃していなかったなど、管理面で不十分な点はあった。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。