







2017年2月26日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正2として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6814/
(2017年3月27日 修正2 ;追記)
2017年3月19日11時10分に毎日新聞から、コンクリートの鉄筋が露出している場所もあったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
免震ゴムの交換後、コンクリート外壁に多数のひびが見つかった長野市役所第1庁舎・芸術館で、鉄筋が露出するほどの破損もあったことが新たに分かった。
市民からは、市がこの破損を公表しなかったことを疑問視する声が聞かれる。
免震ゴムの交換後、コンクリート外壁に細かいひびが686カ所見つかった長野市役所第1庁舎・芸術館で、外壁の複数箇所で破損などがあったことが毎日新聞の取材で分かった。
市は公表しておらず、「補修済みで安全上の問題はない」と説明しているが、専門家は「通常では起こりえない」と指摘している。
建物では、東洋ゴム工業の免震ゴムの性能データ偽装問題を受け、2015年8月から16年3月まで免震ゴム90基を交換した。
毎日新聞が情報公開請求で入手した資料によると、交換後に、建物中央にある地下1階の壁周辺の複数箇所で、コンクリートが破損したり、2~3mmのひびが発生したりするなどの「不具合」が見つかり、業者が16年4~5月に補修した。
うち3カ所は「欠損大(鉄筋露出あり)」と、写真付きでの記述があった。
発生原因については、コンクリートを打った時期が遅かった壁が乾燥収縮し、引っ張られるような形でひびが発生したと推定されるとする一方、「免震装置の交換により、想定外の強制変形が作用した影響も排除できない」とした。
市庁舎の建設事務局は、破損の非公表について「施工不良という認識で、逐一報告するものではない。隠していたわけではない」と説明している。
福岡大の高山峯夫教授(建築構造学)は、「これほどの不具合は通常では起こりえないはず。免震装置の交換方法と建物の施工方法の検証が必要では」と指摘する。
免震ゴム交換は、構造解析の専門家の計算に基づいて実施された。
毎日新聞が情報公開請求で入手した免震ゴム交換の施工計画書によると、交換工事では、建物全体をジャッキアップする方法ではなく、「工程・コスト・(機材の)調達の面から部分的にジャッキアップする方法を採用する」と書かれていた。
市によると、建物全体を同時に持ち上げるために必要なジャッキは約1000基。
計画書では、計592基のジャッキが交換工事で使われるとされた。
また、部分ジャッキアップは「(建物を)強制的に変形させることになる」ため、「影響の少ない範囲で交換工事を行うことを想定」し、8グループに分けて交換を実施する、としていた。
出典
『長野市庁舎 免震ゴム交換後に「鉄筋露出」も非公表』
http://mainichi.jp/articles/20170319/k00/00e/040/175000c
2017年3月9日14時20分に産経新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
3月8日18時25分にテレビ山梨からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
8日午前7時35分ごろ、山梨県身延町帯金の中部横断自動車道の建設現場で、会社員のOさん(男性、48歳)のダンプカーが、工事用の仮設道路から約35m下の沢に転落した。
Oさんは頭など全身を強く打ち、意識不明の状態で救出され、県防災ヘリで町内の病院に搬送されたが、死亡が確認された。
警察などによると、仮設道路は幅約6m。
当時、6台のダンプカーが現場から出た土砂の運搬作業をしていた。
Oさんはダンプカーに1人で乗車。
道路脇の転落防止用の鉄柵を突き破り、転落した。
現場は、新設予定の下部温泉早川インターチェンジ(IC)~身延山IC間。
警察が、詳しい原因を調べている。
国交省甲府河川国道事務所は、同日、「原因は調査中だが、各工事現場の緊急点検を実施し、再発防止を徹底したい」とするコメントを発表した。
ダンプカーが転落したのは、県道から工事現場に向かうため、鉄骨をやぐらのように組んだ幅6mの仮設道路を登りきった険しい傾斜地だ。
同事務所によると、ダンプカーは、工事で発生した約4.5m3の土砂を積載。
仮設道路の手前でブレーキテストをした後、左カーブを経て、12%の下り坂を制限時速10kmで下りていく。
警察によると、仮設道路を下り始めて数mの場所で転落したという。
土砂の重さは、ダンプの積載満量の10トン弱だという。
同事務所や工事関係者によると、事故当時、Oさんのダンプカーが出発直後に激しい音が響き渡り、転落に気づいたという。
「少し速度が速かった」という証言もある。
ダンプカーは運転台がぺしゃんこになり、荷台も形を失った状態。傾斜に、外れた車輪が横たわる。
鉄柵は、法令の85cmを満たした1mの高さだが、工事関係者は「土砂満量のダンプが衝突したら支えられないだろう」と話した。
Oさんは「経験20年のベテランで、運転は慎重だった」(工事関係者)という。
同事務所によると、県内の中部横断道の調査・工事現場で、関係者の死亡は4人目となった。
平成26年6月に身延町で伐採中の木材が直撃し、30代男性が死亡。
27年9月には、身延町の山中を調査中の50代男性が、尾根から転落死した。
28年2月にも南部町で、清掃中の管から吹き出したコンクリートに直撃され、40代男性が死亡している。
出典
『中部横断道建設現場でダンプカー35メートル転落、運転手死亡 山梨 3年間で死者4人』
http://www.sankei.com/affairs/news/170309/afr1703090024-n1.html
『中部横断道工事、ダンプカーが35m転落』
http://www.uty.co.jp/news/20170308/2296/
(ブログ者コメント)
写真を見ると、ジェットコースターかと思うほどの高さにやぐらが組まれ、その上に設置された仮設道路。
いくら幅が6mあるといっても、平均台の上を走る感じではないだろうか?
山間部での工事の苦労の一端が垣間見えた。
2017年2月20日19時29分に南日本放送から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2月20日20時39分に日テレNEWS24からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
20日午後1時半ごろ、鹿児島市東谷山の道路の下を流れる水路の補修作業をしていた20代から60代の男性作業員4人が、増水した雨水に足をとられ、流された。
4人は、およそ15分間、距離にしておよそ500m、地下水路を流されたとみられている。
そして、水路の出口となっている鹿児島市谷山中央の永田川まで流され、このうち1人が助けを求めているところを近くの高校の職員が発見し、生徒と協力し、ハシゴやロープを使って4人を救助した。
4人にけがはなかったが、60代の男性ひとりが病院に搬送された。
作業員らは、「初め深さ5cmくらいだった水が、短い時間に腰のあたりまで増水した」と話しているという。
鹿児島地方気象台によると、鹿児島市では午後1時26分までの1時間に最大7ミリの雨を観測しており、事故当時、鹿児島市では局地的に強い雨が降っていた。
※上記の文字情報以外、画面では、救出した職員の方が以下のように話していた。
「白いヘルメットを被った人が流されていたので、『大丈夫ですか』と声をかけたら、『ロープがほしい』ということで、急いでロープを取りにいった」
出典
『地下水路で作業の4人 増水した雨水に流される』
http://www.mbc.co.jp/news/mbc_news.php?ibocd=2017022000021787
『増水で作業員4人が川に流される 全員救助 (鹿児島県)』
http://www.news24.jp/nnn/news890144293.html
2月20日18時8分にNHK鹿児島からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
20日午後1時すぎ、鹿児島市東谷山の地下に埋められた水路で男性4人が補修作業をしていたところ、突然、水に流された。
4人は水路の中を500mほど流されて永田川まで流れ着き、近くにいた高校の生徒や職員などに助け上げられたという。
4人のうち3人にけがはなかったが、60代の男性1人が軽い低体温症で病院で手当てを受けた。
4人が行っていたのは鹿児島県が発注した水路の補修作業で、水路は幅が3m、高さが1m50cmほどだという。
※上記の文字情報以外、画面では、救助した職員の方が以下のように話していた。
「1人は力が入らない感じで、自力では登ってこれないぐらい疲れていたので、一刻も早く上に上げてあげなければ、という状況だった」
また、救助した高校生は、以下のように話していた。
「1人といっても、川の流れとかがあるので、10人とかでも結構大変だった。早く助けないと、という感じで強く引っ張った。」
出典
『水路作業中4人流されるも救助』
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/5054078381.html?t=1487622474758
2月21日19時27分に南日本放送からは、急な増水理由に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
なぜ、短時間で増水したのか。
原因のひとつが、短時間に降った強い雨だ。
また、県や鹿児島市によると、水路がある場所は、元々、川だったが、およそ40年前、土地区画整理事業で、地下水路として整備された。
住民らは、都市開発が急な水位上昇の原因ではないかと指摘する。
気象台は、地下水路での作業は外の天候を確認しづらく、急な大雨などに気づきにくいとも話す。
また、今回水路の補修工事を発注した県は、土木会社側に対し、安全対策を検討するよう指示している。
出典
『作業員4人なぜ流された? 水路の状況 原因は?』
http://www.mbc.co.jp/news/mbc_news.php?ibocd=2017022100021801
2月25日10時34分にNHK鹿児島からは、再発防止の動きに関する、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
今回の事故では、工事を発注していた鹿児島県と請負業者との間で、1時間に10ミリ以上の雨が降った場合には工事を中断すると、取り決めていた。
しかし、県では、対策が不十分だったとして、業者との間で、雨が降った場合にはすぐに作業を中断することや、作業員が流される事故を防ぐため、下流側の全面をふさぐ形でネットを貼った上で作業を行うことなどを取り決めた。
また、県は、県の工事を受注し、水路での作業を行うほかの業者に対しても、安全対策を徹底するよう求める通達を出した。
鹿児島県道路維持課では、「同じような事故が2度と起きないように、安全対策に万全を期したい」としている。
出典
『水路事故で県が安全対策を通達』
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/5054211821.html?t=1488054394217
(ブログ者コメント)
水路で作業中に急に水かさが増してのトラブル。
ブログ者は、那覇市の排水路ガーブ川での事例を思い出した。
内容は下記記事参照。
2010年12月17日 旧ブログ掲載
2011年4月13日 新ブログ掲載
[昔の事例の顛末] 2009年8月19日 沖縄県那覇市のガーブ川で鉄砲水により4人が死亡した事故で現場責任者らが書類送検されたが不起訴になった (修正1)
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/96/
2017年2月18日9時38分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東洋ゴム工業による免震ゴムの性能データ改ざん問題を受け、免震装置を交換した長野市役所第1庁舎・市芸術館で、外壁に計数100カ所の細かなひびが発生していたことが、市などへの取材で分かった。
市によると、交換工事が影響したとみられ、安全性に問題はないが、専門家は「数が多すぎる。免震装置の大規模な交換は前例がほぼない。今後も交換は各地で続くため、詳しい検証が必要だ」と指摘する。
問題の建物は、鉄筋コンクリート造り地上8階、地下2階建て。
2015年11月の完成前にデータ改ざんが発覚したため、いったん設置した90基の免震装置を同年8月~16年3月にすべて交換した。
その後、コンクリート打ちっ放しの外壁に、幅0.1~0.3mm程度の「ヘアクラック」と呼ばれるひびが次々に見つかった。
市は、「交換の影響が多分にあった」とみているが、詳しい原因は不明で、「ひびの数も確認中」としている。
補修中の芸術館の壁面では「181」と箇所数を示すシールが確認でき、関係者によれば、総数は数100に及ぶという。
市によると、鉄筋など直接安全に関わる部分に破損はないが、影響拡大を防ぐため、16年9月から薬剤を注入してひびを埋めるなど、補修を続けている。
工事は3月までかかる見込みだ。
免震装置の交換は東洋ゴム工業の費用負担で、別の業者が請け負った。
補修費用も東洋ゴム工業が負担するが、同社広報担当者は取材に、「個別の案件には答えられない」としている。
国交省によると、データ改ざんなどのあった製品が使われた免震装置は154棟で使用され、順次、交換が行われている。
このうち、公的施設26棟について毎日新聞が自治体などに取材したところ、長野市を除き、交換作業が終わった6棟について、ひびなどの発生はなかった。
国交省の担当者は、「全体は把握していないが、一部の現場でヘアクラックができたとの情報はある」としている。
福岡大の高山峯夫教授(建築構造学)は、「一般論では、ひびを発生させずに交換することは可能。長野の建物の構造を見ると、技術的に難しかったと思うが、数100カ所は多すぎる印象だ」と語る。
免震ゴムは耐用年数があることなどから、データ改ざんがあった建物以外でも今後交換するケースがある可能性があり、高山教授は、「(適切な)交換や建物の設計に生かすためにも、市による原因解明が重要だ」と指摘する。
出典
『東洋ゴム不正 長野市役所、免震装置交換後ひび数百カ所』
http://mainichi.jp/articles/20170218/k00/00m/040/141000c
2月18日19時32分に朝日新聞からは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
偽装問題は庁舎建設中の2015年3月に発覚し、15年8月から16年3月にかけて免震ゴムを交換。費用は東洋ゴム工業が出し、別の業者が工事をした。
この工事の後にひびが見つかり、16年9月からひびに補修材を注入して埋める作業を進めてきた。
今年3月に終了する予定だ。
交換工事では油圧ジャッキを使用。
市では、建造物を持ち上げた際にコンクリートにかかった圧力がひびの原因とみている。
出典
『長野市庁舎外壁にひび多数 性能偽装の免震ゴム交換直後』
http://www.asahi.com/articles/ASK2L42S8K2LUOOB007.html
(ブログ者コメント)
免振ゴムのデータ偽装問題は、本ブログでは記事化していない。
ただ、その後に子会社で発覚した防振ゴムのデータ偽装問題については、2件ほど記事化している。
(2017年3月3日 修正1 ;追記)
2017年3月2日付で毎日新聞長野版から、ヒビはコンクリートの乾燥収縮によるものなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
1日、市議会3月定例会があり、小川総務部長がひびの発生状況について答えた。
小川総務部長は、幅0.2mm以上0.3mm未満のひびが674カ所あり、0.3mmのひびが12カ所あったと説明。
市の担当者によると0.1mm程度のひびも見つかっているが、数は明らかにせず、ひびの総数はさらに多いとみられる。
コンクリートは水分を含んでおり、乾燥して水分が蒸発すると、コンクリートが収縮するなどしてひびが発生することは、一般的によくある。
小川総務部長は、建築構造の専門家の見解として、ひびの発生原因は、分布や幅から「乾燥収縮によるもの」と説明。
さらに施工者の見解として、免震ゴム交換時にジャッキアップを繰り返したことで「発生が助長された可能性が否定できない」とした。
免震ゴムの交換でひびの発生が助長されたとすれば、交換前から乾燥収縮によるひびが発生していた可能性が高いが、交換前と交換後のひびの箇所数については、明らかにされなかった。
小川総務部長は、免震ゴムの交換との因果関係について調査を進めているとし、「乾燥収縮が収まりつつあり、今後は経過を観察し、建物を健全に維持するための保全に努めたい」と語った。
日大の中田善久教授(コンクリート工学)は、「今後も乾燥収縮によるひびが入れば、建物が耐久性を失う可能性もある。コンクリートの素材やひび割れ防止対策が適切だったかも調査すべきだ」と指摘する。
通常、建物のコンクリート外壁には、ひびを誘発する目地がある。
外壁の一部をへこませ、その部分に狙ってひびを発生させることで、他の部分に入るひびを減らす仕組みだ。
中田教授は、こうした目地が適切に配置されているかなども含め「原因調査が必要」と話した。
出典
『長野市庁舎 「素材、対策調査を」 専門家指摘 ひび686カ所判明で』
http://mainichi.jp/articles/20170302/ddl/k20/040/069000c
2017年1月31日に掲載し2月10日に修正した第4報がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第5報修正5として掲載します。
第4報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6719/
(2017年2月16日 修正5 ;追記)
2017年2月10日6時0分に西日本新聞から、陥没の兆候を示す数値を、レベル1になった以降、確認していなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
陥没の兆候を示す数値に関し、現場では、事故前日の夕方に最初の異常値を計測、陥没直前には工事停止が必要なレベルにまで達したが、JV側はこの間の数値の推移を確認しておらず、状況を把握しないまま工事が行われていたことが分かった。
市は、「事故を未然に防止できる機会を逸した可能性がある」としている。
事故原因は国の第三者委員会が調査中で、JV代表の大成建設は西日本新聞の取材に「原因究明に関する回答は差し控える」と話した。
JVは当時、トンネルを支える鋼材にかかる圧力を1時間ごとに自動計測し、朝夕の2回確認していた。
事故前日の昨年11月7日午後5時ごろ、現場点検と市への報告が義務付けられた管理値レベル1を超過。
JV側は午後7時半ごろに確認した。
市に報告しなかったことについて、JV側は「他の計測値を総合的に評価し、予想の範囲内と考えた」と述べた。
計測値はその後、8日午前1時ごろに軽度の対策工事を要するレベル2、午前2時ごろに工事停止が必要なレベル3へ上昇したが、JV側は数値を確認していなかった。
また、トンネル周辺の吹き付けコンクリートへの圧力も、8日未明にレベル1を超えていたという。
これらの圧力計測は、地表面の沈下などの測定に追加する補助的な位置付け。
鋼材の圧力計測について、JV側は聞き取りに対し「通常1週間分まとめて報告する。これまでも適宜報告し、対応していた」と説明した。
一方、市は「注意しながら掘削を進めるべきだとの助言・指導に、JV側が対応できていなかった」としている。
出典
『異常値、推移確認せず JV工事中、停止レベルに 博多道路陥没』
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/307119
(2017年4月29日 修正6;追記)
3月30日6時0分に西日本新聞から、報告書(案)に関する下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。(新情報に基づき、過去記事ともどもタイトルも修正した)
西日本新聞が入手した報告書案によると、現場の上部には地下水を含むまとまった砂質層があり、その真下の風化した岩盤層には亀裂などがあった。
こうした岩盤を掘削したため、水圧が作用して亀裂や緩みが「水みち」(地下水の通り道)となり、連続的な剥落と漏水が起きて大規模な陥没につながったと推定している。
具体的には
(1)岩盤層の潜在的な亀裂や弱い部分を適正に評価できなかった
(2)亀裂や弱い層が水みちとなり、局所的に水圧が掘削面にかかった
(3)岩盤の遮水性や水圧に対する耐力の限界について、工学的判断が不足していた
(4)止水のため地上からの薬液注入(地盤改良)を実施しなかった
可能性を列挙した。
市とJV側は、落盤対策として、地上からではなく、トンネル内部から斜め上に打ち込んだ鋼管を通じて薬液を注入する補助工法を選んでいた。
報告書は、また、副次的な要因として、
▽トンネルの天井を約1m低く設計変更し、扁平な断面にしたことで、天井の強度が低下した
▽補助工法の一部鋼管を切断したことで、鋼管が上下に重なる部分が短くなった
可能性も指摘した。
出典
『弱い岩盤対策不十分 博多駅前陥没第三者委 最終報告案、責任所在示さず』
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/318056
2017年1月28日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6708/
(2017年2月12日 修正1 ;追記)
2017年2月3日付で朝日新聞福井全県版(聞蔵)から、局所的に最大瞬間風速50mだった可能性ありというシミュレーション結果が報じられていた。
当時、現場では局所的に瞬間風速約50mの風が吹いていた可能性があることが、九州大学応用力学研究所の内田孝紀准教授(風工学)の解析で分かった。
内田准教授は、今回、複雑な地形で生じる風の動きをシミュレーションするソフト(リアムコンパクト)を活用。
国土地理院の標高データと気象庁、関電の風速データを使い、当時のクレーン周辺の風の流れと風速を算出した。
その結果、クレーンの高さ約105mのアーム先端付近の風速は51.1mと試算された。
本体がある地面(標高32m)付近でも、同程度の風が吹いていたとの結果も出た。
高浜原発は内浦半島の付け根に、南北を山に挟まれる形で立地している。
内田准教授によると、地形的には、北西の風が吹くと海からの風が山へ回り込み、谷間に風が集まって風速が増幅される効果があるという。
関電が設置している風速計では、事故当時の瞬間風速は、原発構内の北西側(標高13.5m)で15m、南東側(標高8m)で14mを記録。
シミュレーション結果から、局所的に強風が吹いた可能性もあるという。
シミュレーションでは建物の影響は考慮されておらず、内田准教授は、「建物があると風が回り込んで、さらに複雑に変化する。クレーンを揺さぶるような形に風が変化した可能性は否定できない」と話している。
一方、2017年2月8日22時38分に毎日新聞からは、元請けが暴風警報に気付かなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2月8日18時36分に朝日新聞から、2月5日2時9分に共同通信からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
(新情報に基づき、第1報ともどもタイトルも修正した)
関電は、8日、元請けの大成建設が暴風警報に気づかず、同社とクレーンメーカーが定める強風対策マニュアルを守らなかったことなどが原因だったと発表した。
関電は大成建設に、建屋修復費用などの賠償を求める。
関電は、事故当時の最大瞬間風速を40~48mと推定。
事故30分前に風が強まってクレーンのアームが揺れ、アームと台車をつなぐ支柱が変形して倒壊したとの見方を示した。
事故後、関電は、風速42mまで耐えられるようワイヤと重りで固定していたと説明したが、当日の方法では、支柱自体が風速38.6mまでしか耐えられなかったことが判明したという。
福井地方気象台は事故の約5時間前に暴風警報を発令し、最大瞬間風速を35mと予報。
大成建設のマニュアルでは、風速30m超と予想される場合はアームを地上に下ろすよう定めていたが、大成建設は警報を把握していなかった。
大成建設は、「天気予報に注意を払わず、重大事故を起こした。深くおわびします」とコメントした。
大成建設は、作業を終えた午後4時半ごろ、瞬間風速が7mだったため、アームは伸ばしたままにしていたという。
関電は、事故4時間前に警報を把握していたが、社内で対応を協議せず、大成建設にも連絡していなかった。
関電は「請負会社との情報共有や意思疎通が十分でなかった」とし、今後は風速にかかわらず、作業後はアームをたたむ安全対策をとることを福井県と高浜町に報告した。
出典
『高浜原発 クレーン転倒時、暴風警報把握せず』
http://mainichi.jp/articles/20170209/k00/00m/040/138000c
『高浜クレーン事故「暴風の情報共有不足原因」 関電発表』
http://www.asahi.com/articles/ASK284DVFK28PGJB00D.html
『クレーン転倒、暴風警報認識せず 高浜原発、関電から伝達なく』
https://this.kiji.is/200657690205193716
また2月8日20時43分に時事ドットコムからは、対策の解説図付きで、同趣旨の記事がネット配信されていた。
アームは2段構造で、下側が「ブーム」、上側が「ジブ」と呼ばれており、くの字型に折り畳むことが可能。
今後は作業終了時、風速に関係なくアームを畳み、瞬間風速30m超と予想される場合は畳んだ状態でアームを地面に降ろす対応に改める。
出典
『折り畳まず、強風で転倒=高浜原発クレーン倒壊-関電』
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017020801218&g=eqa
(2/2へ続く)
(1/2から続く)
(ブログ者コメント)
〇2月8日付の関電プレスリリース内容の骨子は下記。
・元請け会社は、事故前に、強風時のクレーン待機姿勢を評価し、瞬間風速約42m/秒の風に耐えられるとの評価結果を当社へ報告していました。
・元請け会社は、当日の作業時や作業終了時に風が弱かったため、その後の風速変化に注意を払うことなく、暴風警報発令に気付かず、必要な対応をとりませんでした。
・当社は、暴風警報発令を認識していましたが、瞬間風速約42m/秒の風に耐えられるとの評価に頼り、元請会社がクレーンの転倒を防止する対応をとっているかを確認しませんでした。
また、暴風が予想される状況において、機材の転倒や落下等による、安全上重要な設備等に対する影響について議論していませんでした。
・当日21時20分頃、発電所構内の風が急に強まり、ブームが前後に揺れ始め、21時49分頃、クレーンへ瞬間的に強風が吹きつけ(瞬間風速40m/秒以上と想定)、ブームを支えていたバックストップが変形し、バックストップの支えを失ったブームがクレーン後方へ倒れたものと推定しました。
出典
『高浜発電所2号機クレーン倒壊の原因と対策について』
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/0208_1j.html
〇これまでの情報を整理すると、事故に至る経緯は下記のようになるだろうか。
16時半頃 クレーン作業終了(瞬間風速7mにつきアームたたまず)
17時頃 暴風警報発令(事故の約5時間前)
18時頃 関電が暴風警報発令を知る(事故4時間前)
21時20分頃 風が急に強まる(事故30分前)
21時50分頃 クレーン倒壊
(2017年4月9日 修正2 ;追記)
2017年4月7日19時6分にNHK福井から、関電による福井県内3原発の総点検結果が報告されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故を受け、関西電力は高浜、大飯、美浜の各原発で行われている工事の安全対策を点検し、その結果を豊松副社長が県庁に藤田副知事を訪ね、報告した。
それによると、改善すべき工事の作業は3つの原発で合計約300件に上り、クレーンの転倒防止のほか、吊り荷が安全上重要な機器の上を通らないようにする安全対策が図られているかなどを確認したという。
その上で関西電力は、今後、工事の元請け会社と、気象警報など事故につながる恐れがある情報の共有を徹底するとしている。
これに対し藤田副知事は、報告書の内容を妥当だとした上で、「継続して安全性を厳しくチェックしてもらいたい」と求めていた。
高浜原発をめぐっては、3号機と4号機の運転をしてはならないとする裁判所の仮処分が覆ったが、関西電力は再稼働を前に県や高浜町の理解を得たいとしており、再稼働は早くて1か月後になると見られる。
高浜原発3号機と4号機の再稼働について、関西電力の豊松副社長は、「再稼働に向けた準備は行うが、県に報告するステップが残されているので、安全性をきちんと確認した上でどこかの時点で再稼働について報告したい」と話していた。
出典
『クレーン事故総点検で報告書』
http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/3055391721.html
2017年1月23日に掲載した第3報がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第4報修正3として掲載します。
第3報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6687/
(2017年1月31日 修正3 ;追記)
2017年1月24日5時35分に朝日新聞から、陥没兆候を示すデータが計測されていたのに市に伝えていなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
陥没の兆候を示す数値が事故前日からトンネル内部で計測されていながら、市に報告がないまま、施工業者が地下鉄工事を続けていたことがわかった。
業者の対応と大規模な崩落との因果関係が、今後の原因究明の焦点となる。
事故原因を調べる国の第三者委員会で示された内部資料によると、工事を施工する大成建設JVは、トンネルを支える鋼材にトンネル上部の岩盤からどれくらいの圧力が掛かっているかをセンサーで計測していた。
計測値は、事故前日の11月7日から上昇を始めた。
同日午後6時ごろに土木学会の指針に基づいた3段階の基準値のうち、現場点検などが求められる「レベル1(注意体制)」の値を超えた。
市と大成JVとの契約では、この時点で市に連絡する取り決めだったが、大成JVは連絡していなかった。
その後、計測値は上昇を続け、8日午前1時ごろ、軽微な対策工事の実施を求める「レベル2(要注意体制)」になった。
その30分後には、工事の停止を求める「レベル3(厳重注意体制)」に到達した。
それでも、大成JVは市に報告をしないまま、工事を続けていた。
大成JVが市に連絡したのは、陥没が始まって4分後の午前5時24分だった。
これまで、市や大成JVは、事故の兆候があった時期について、陥没直前の8日午前4時25分に岩の表面がはがれる「肌落ち」が連続発生した時点と説明していた。
第三者委は、今月21日の会合で、事故の要因となった可能性がある10項目を提示。
その中で、陥没当日より前にトンネル内部を支える鋼材にかかる力に変化があったと説明していたが、具体的な数値や実際の対応は明らかにしていなかった。
3月の次回会合で、こうした点も含めて事故原因を絞り込み、再発防止策と合わせて公表する。
大成建設広報室は朝日新聞の取材に、「第三者委で引き続き調査が継続されることから、原因などに関する質問については、回答を控える」と答えた。
出典
『博多陥没、市に異常伝えず 業者が前日に計測、工事続行』
http://www.asahi.com/articles/ASK1R625ZK1RTIPE039.html
(2017年2月10日 修正4)
2017年2月8日23時32分に朝日新聞から、岩盤の厚さが市の想定未満だった可能性があるという下記趣旨の記事が、模式図付きでネット配信されていた。
崩落したトンネル上部近くの岩盤の厚さが、市の想定する「2m以上」に満たなかった可能性があることが分かった。
市側は「ただちに危険な数値ではない」としているが、設計や施工に問題がなかったかを国の第三者委員会が調べている。
市は当初、トンネル上部の岩盤層を厚さ2m以上になるように設計。
だが、施工前に一部で岩盤層が薄いことが判明し、昨年8月にトンネル上部を1m下げる設計変更を行った。
これにより、2.66m以上の厚さが確保できるとしていた。
関係者によると、今年1月の国の第三者委の会合で、施工業者の大成建設JV(共同企業体)が、陥没事故後に行った現場周辺のボーリング調査の状況を報告。
崩落したトンネル上部にごく近い歩道下の3カ所の解析値として、岩盤の厚さは1.81~2.03mだったといい、一部で市の想定を下回っていた。
陥没地点でも、2mに満たなかった可能性がある。
陥没地点のボーリング調査は、地中のトンネルを破壊する恐れがあるため、実施していないという。
市幹部は、「たとえ2mを下回っても、即座に問題があるとは考えていない。第三者委の判断を待ちたい」としている。
第三者委の西村委員長は、1月の会合後の会見で、この調査結果について「(岩盤は)2m前後の厚さだった」と説明。
事故原因の可能性として挙げた10項目中の一つとして、「岩盤層の位置や厚さの把握不足」を指摘していた。
出典
『岩盤の厚さ、市の想定未満だった可能性 博多の陥没事故』
http://www.asahi.com/articles/ASK284GRQK28TIPE01G.html
2017年2月9日6時0分に西日本新聞からは、事故現場周辺の岩盤補強用鋼管が数本切断されていたという下記趣旨の記事が、解説図付きでネット配信されていた。
トンネル天井部の岩盤を補強する鋼管の一部を、工事をしていた共同企業体(JV)が事故前に切断していたことが、8日、分かった。
原因を究明している国の第三者委員会は「事故要因の一つに当たる可能性がある」とみて、慎重に議論している。
工事の設計資料などによると、鋼管は直径11.4cm、長さ9.5m。
トンネルの縁から岩盤へ斜めに打ち込み、掘削を進めながら、鋼管の半分が必ず重なるように設計していた。
岩盤を強化するため、鋼管に注入した薬液が周囲に浸透する仕組みになっている。
事故現場周辺は、約30本の鋼管が45cm間隔で打ち込まれていた。
だが、陥没直前にJV職員が撮影した写真には、少なくとも数本が切断され、鋼管が重なっていない状態が記録されていた。
関係者によると、JV側は第三者委員会に「トンネル施工の支障になったため切断した」との趣旨の説明をしているという。
昨年8月、市とJVは事故現場付近の岩盤の厚さを2m程度確保するため、トンネル天井部の位置を1m下げるように設計を変更。
これに伴い、鋼管が重なる長さを伸ばし、薬液の密度を高めて、岩盤を一層強化するように見直していた。
1月の第三者委員会後の記者会見で西村委員長は、鋼管が重なっていた長さを原因究明の「大きなポイント」と指摘。
事故現場の鋼管が設計通りに施工されていたかを分析する意向を示している。
第三者委員会は、3月に最終報告をまとめる予定。
鋼管の切断で岩盤の補強効果が弱まり、トンネルの天井部が地下水の圧力などに耐えられずに陥没した可能性があるが、専門家の中には「いったんは鋼管を二重に打ち込んでおり、岩盤の補強効果は十分だった」とする見方もある。
出典
『トンネル補強の鋼管切断 JVが事故直前に 博多道路陥没一因の可能性も』
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/306863
2017年1月21日11時8分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
1月22日付で毎日新聞東京版から、1月22日付で朝日新聞(聞蔵)から、1月22日7時0分に福井新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
関西電力高浜原発(福井県高浜町)の構内で、20日午後9時50分ごろ、大きな音がしたため社員が現場を点検したところ、工事用の大型クレーンのアーム(全長約113m)が倒れ、2号機の原子炉補助建屋と使用済核燃料を保管する燃料取り扱い建屋に直撃しているのが見つかった。
アームは強風で倒れたとみられる。
2つの建物の屋上の壁の一部が変形していた。
燃料取り扱い建屋には使用済み核燃料を保管するプールがあるが、落下物はなかった。
関電によると、周辺の放射線量に影響はなく、けが人もいない。
事故当時、作業はしていなかったが、クレーンのアームは建屋とは反対方向の斜め上に伸びている状態で、クレーンの先端は地面にある約5トンの重りとワイヤでつなぎ、固定していた。
それが事故後、クレーンは重りと反対側に折れ曲がって建屋に倒れていた。
重りは数m移動しており、ワイヤは切れていなかった。
関電によると、周辺では当時、秒速15mほどの風が吹いていたが、工事の元請け会社「大成建設」(東京)の事前評価では、今回の設置方法だと秒速42mまで耐えられることになっていた。
高浜原発の高島・運営統括部長は、「風力による影響を計算したうえで、大丈夫と判断した。ただ、風向きは検討していなかった」と述べていた。
関電によると、日中の作業を終えたクレーンは、通常、アーム先端から垂らしたワイヤに重りを付けて接地させ、安定した状態にする。
強風で倒れる恐れがある場合や年末年始などの長期休業時は、アームを折りたたんだり一部解体したりして、より安全な策を取るという。
当時、福井県内には暴風警報が出ていた。
関電は、原因が究明されるまで、クレーンでの作業は中断する。
運転開始から40年を超える高浜原発1、2号機は、昨年6月、原子力規制委員会から、国内で初めて、20年間の運転延長が認められた。
現在は停止中。
2020年の再稼働をめざすが、「影響は見通せない」としている。
関電は、今回、運転延長に必要な安全対策工事の一環として、原子炉格納容器の上部にドーム状のコンクリート製の屋根の設置を計画。
昨年12月に大型クレーン4台を設置し、2月からの本格工事に向けて準備を進めているところだった。
そのうちの1台が倒れた。
原子力規制庁の検査官は、21日、安全上重要な設備に影響がないことを確認。
今後、クレーンを安全に撤去できるかなどを調べる。
県も職員2人を派遣し、関電から状況の説明を受けた。
高浜原発の高島・運営統括長は、「みなさまにご心配をおかけして誠に申し訳なく、深くおわびを申し上げます」と述べた。
出典
『原子炉補助建屋にアームぐにゃり 高浜原発の屋根変形』
http://www.asahi.com/articles/ASK1P2PKZK1PPGJB002.html
『福井・高浜原発 クレーン事故 重り効かず倒壊か』
http://mainichi.jp/articles/20170122/ddm/041/040/125000c
『関電、クレーン倒壊原因特定できず 高浜原発、強風では?』
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/113570.html
1月27日1時10分に毎日新聞からは、クレーンメーカーのマニュアルどおりに対応されていなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
1月26日13時5分に朝日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
クレーンメーカーが定めたマニュアルに、瞬間風速が30mを超えると予想される場合はアームを地上に下ろすよう、記載されていたことがわかった。
事故当日、福井地方気象台は暴風警報を発令し、最大瞬間風速が35mになると予想していたが、関電側は、アームを地上に下ろす対策を取っていなかった。
メーカーのマニュアルでは、風速10~16mで作業を中止し、バランスをとるため、重心があるクレーンの後部を風上に向けるよう、定めている。
さらに、瞬間風速30mを超えると予想される場合は、クレーンを地上に下ろしておくことも求めていた。
しかし、関電は元請けの大成建設などと協議の上、強風対策としてクレーン先端にワイヤと約5トンの重りをつけて固定する方法を採用し、風速42mまで耐えられるとしていた。
風向きについては、事故前の作業終了時はマニュアル通りに、クレーンが背面から風を受けるよう設置していたが、その後、風向きが変わり、事故時は正面から受ける形になっていた。
マニュアル記載の対策を取っていなかったことについて、関電は「事故原因を調査中で、答えられない」としている。
出典
『高浜原発 強風マニュアル守らず…クレーン事故で関電』
http://mainichi.jp/articles/20170127/k00/00m/040/140000c
『高浜原発クレーン倒壊、強風対策怠る 当日は暴風警報』
http://www.asahi.com/articles/ASK1V3FXLK1VPGJB007.html
同じ毎日新聞でも1月26日13時36分には、若干ニュアンスの異なる下記趣旨の記事がネット配信されていた。
クレーンは2本のアームが接続した構造で、メーカーによると、マニュアルでは風速10~16mの場合には風の影響を受けにくいよう、アームの角度を設定するよう定めている。
しかし16m以上の風は想定外で、マニュアルにも定めておらず、担当者は「クレーンを下ろすのが安全な対応だ」と説明している。
クレーンの角度は、台車に対して根元アームを垂直に立て、先端アームは50°にするマニュアルだったが、実際には根元アームを80°先端を60°にしていた。
出典
『高浜原発 「クレーン下ろすべき」想定外強風にメーカー側』
http://mainichi.jp/articles/20170126/k00/00e/040/266000c
(ブログ者コメント)
暴風対策を協議する際、関電と元請け以外、クレーン操作会社も参加していたと思うのだが、どのような見解だったのだろうか?
2016年11月30日に掲載した第2報がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第3報修正2として掲載します。
第2報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6521/
(2017年1月23日 修正2 ;追記)
2017年1月17日6時0分に西日本新聞から、陥没時の詳しい状況が、下記趣旨でネット配信されていた。
「水混じりの砂が津波のように押し寄せてきた」。
昨年11月の福岡市営地下鉄七隈線延伸工事に伴うJR博多駅前の道路陥没事故で、発生前後のトンネル内部の緊迫した状況が、西日本新聞が入手した事故報告書で、16日、明らかになった。
トンネル上部の土砂がパラパラと崩れる「肌落ち」が連続的に発生し、作業員がコンクリート吹き付けによる補強を試みたが食い止められず、急きょ全員退避するなど、作業員の生々しい証言が記されている。
報告書は、当時現場にいた大成建設を代表とする共同企業体(JV)の職員1人と、成豊建設の作業員8人から聞き取った内容で、大成JVが作成した。
11月8日午前0時40分、トンネル掘削を開始。
同4時ごろ、作業員(55)が天井付近の岩盤がもろいことを確認し、「地山が不良」と周囲に声を掛け、掘削作業を中断した。
コンクリートを吹き付ける補強作業に切り替えるための準備を始めたが、その間にも、それまでとは異なる連続的な肌落ちが見られた。
同4時30分に補強作業を始めたが、20分後には天井から異常出水があった。
濁った水が噴きだし、0.25m3の黒い石の塊も落下してきた。
安全衛生責任者(46)は、急きょ、全員退避を指示した。
同5時に退避完了後、作業員たちがトンネルの真上の通行規制を実施。
同20分に道路陥没が始まった。
時刻不明だが、退避後に現場につながる立て坑(深さ28m)に再び下り、水が迫ってきているのを確認した作業員(39)もいた。
報告書は、事故原因究明のための国の第三者検討委員会に提出されている。
出典
『博多陥没「砂、津波のよう」 JV報告書 作業員証言生々しく』
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/301780
1月17日12時51分に毎日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
証言を総合すると、7日午後8時15分にトンネル内で作業を始め、8日午前0時40分に掘削に着手。
午前4時に作業員が天井付近の地層の異常を確認した。
掘削を中断し、コンクリートの吹き付け準備を始めたが、地盤がはがれ落ちる「肌落ち」が起き、出水し、午前5時に全員退避した。
50代の作業員はこの時の様子を、「最初ににごり水が、続いて約0.25m3ほどの黒色の塊が(天井から)落下。その後、砂や水。全員退避の指示を受け、坑内から退避開始。天井から水混じりの砂が津波のように押し寄せてきた」と証言。
別の作業員は、「(地上への出入り口の)立て坑から(現場につながる)連絡坑を見ると、奥から水が来始めたので地上に退避した」と語っている。
元九州大助教で佐賀大低平地海岸海域研究センターの下山正一・客員研究員(66)は、「地下水を多く含んだ層を掘削してしまったことで、水や砂が一気に押し寄せたのだろう。対策が十分だったか、証言も参考にして検証すべきだ」と指摘した。
作業員の証言に基づく陥没事故の経緯
<7日午後>
8時15分 坑内作業開始。周辺の補強など実施
<8日午前>
0時40分 掘削開始
4時 天井部地層の弱さを確認し掘削中断
25分 天井部から土が連続して落下
30分 コンクリートの吹き付けを開始
50分 天井から異常な出水を確認
5時 作業員全員が地上に退避
5分 地下からの流水音を確認
15分 地表に亀裂。作業員が通行規制措置
20分 道路南側が陥没
28分 JV職員が110番
30分 道路北側も陥没
50分 福岡県警が交通規制開始
6時 JRや電力会社などに連絡
出典
『博多陥没 「水と砂が津波のように」…JVが証言報告書』
http://mainichi.jp/articles/20170117/k00/00e/040/161000c
2016年12月24日1時44分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
12月23日21時19分に朝日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
23日午後3時頃、名古屋市中村区平池町で、建設中の高層ビル「グローバルゲート」の周囲に設置された足場(高さ約10m)が強風にあおられ、幅約20mにわたって倒壊した。
施工する竹中工務店(大阪市)によると、倒壊した箇所はウエストタワー(地上36階、高さ約170m)の南面。
道路側に向かって倒れたが、工事現場の敷地内で、作業員は倒壊に気づいて逃げ、巻き込まれた人はいなかった。
名古屋地方気象台によると、名古屋市内にはこの日、強風注意報が出され、同市では午前9時過ぎ、最大瞬間風速15.4mを観測した。
現場の工事関係者は、「風が強く、ガラガラと大きな音がして、気付いたら倒れていた」と話した。
近くにいたという女子大生(21)は、「帽子がとばされるほど強い風が吹いたと思ったら、『ガラガラ』と大きな音をたてて足場が崩れた」と話した。
グローバルゲートは、名古屋駅南側の再開発地区「ささしまライブ24」にあり、豊田通商など5社が事業主となっている。
オフィスやホテルなどが入居し、来年4月から順次開業する。
出典
『高層ビル建設現場、強風で高さ10mの足場倒壊』
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161223-OYT1T50092.htm
『建設中の高層ビルで足場崩れる 強風か、けが人なし』
http://www.asahi.com/articles/ASJDR66MJJDROIPE019.html
2016年12月3日10時40分に日テレNEWS24から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
12月3日21時14分に毎日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
岐阜県高山市のトンネル工事現場で、3日未明、岩盤を取り除く作業中、作業員1人が崩れてきた岩の下敷きになり、死亡した。
警察は、業務上過失致死の疑いも視野に、捜査を進める方針。
事故があったのは、高山市一之宮町の宮峠トンネルの工事現場。
警察によると、3日午前3時半ごろ、入り口から約200m掘り進んだ地点で、作業員5人がダイナマイトで岩盤を発破したあと、岩を取り除こうとしたところ、岩盤の一部が崩れ、高山市の会社員Yさん(男性、34歳)が下敷きになった。
Yさんは病院に運ばれたが、頭部損傷などで、約1時間後に死亡が確認されたという。
他の4人にけがはなかった。
宮峠トンネルは、急カーブ・急こう配が多い国道を回避する幹線道路として整備中の石浦バイパスにあり、全長約1.9km、高さ約7m、幅約11m。
今年6月から掘削工事が始まり、2020年度に開通予定だった。
警察は、安全対策は適切に行われていたかなど、業務上過失致死の疑いも視野に捜査を進める方針。
出典
『トンネル工事で落盤、1人死亡 高山市』
http://www.news24.jp/articles/2016/12/03/07348121.html
『トンネル掘削工事 落石で作業員死亡…岐阜・高山』
http://mainichi.jp/articles/20161204/k00/00m/040/058000c
(2017年1月14日 修正1 ;追記)
2016年12月4日付の岐阜新聞紙面に、事故時のやや詳しい状況が、下記趣旨で掲載されていた。(この情報のほうが正確なような感じがしたため、タイトルも若干変更した)
崩落した岩は直径2mほどとみられる。
当時、Yさんは、ほかの作業員と5人でダイナマイトによる発破で崩れなかった岩を機械で取り除く作業をしていた。
機械で取り除いた後の状況を確認していたところ、岩盤が崩落したという。
2016年11月14日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正1として掲載します。
第1報は下記参照
(1/3)
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6468/
(2/3)
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6467/
(3/3)
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/6466/
(2016年11月30日 修正1 ;追記)
2016年11月19日19時5分にNHK福岡NEWS WEBから、陥没の前後で沈下データに大きな変化はみられなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場近くには、地下鉄工事に伴って陥没などの兆候を察知するため、レーザー光線を使って地盤が沈下していないか計測するセンサーが設置されていた。
ところが、現場から博多駅側に約30mの地点のデータを確認したところ、事故当時の変動は、計測していた5つの地点でいずれも5mm以内にとどまり、陥没の前と後で大きな変化が見られなかったことがわかった。
このため、福岡市や建設会社は、トンネルを掘り進めていた固い地層のなかのごく限られた場所で地盤がもろくなるなどの異変があり、陥没につながった可能性を指摘している。
出典
『陥没前後で地盤に変化見られず』
http://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20161119/4506601.html
11月23日7時11分にNHK福岡NEWS WEBからは、工事前の検討会で複雑な地形であることが討議されていたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場付近のトンネル工事に着手する直前、専門家から、陥没のおそれがある地層のため油断せず掘削を進めるよう指摘を受けていたことが、当時の議事録からわかった。
今回の工事区間に着手する直前の去年2月、福岡市交通局で専門家による委員会が開かれ、技術的な課題について検討が行われた。
当時の議事録によると、この会合で専門家のひとりが、今回の現場の岩盤はもろい部分もある複雑な地層だとしたうえで、陥没のおそれがあるため、地下水の水位に注意すべきだと指摘している。
これに対し、福岡市側が、過去の工事の実績をもとに、付近の地質や地下水に特異な状況はみられないと説明した。
しかし、別の専門家が、亀裂が入ることもあるため、油断せず掘削を進めるよう指摘している。
その後の工事では、トンネルが地下水を含む軟らかい地層にかからないよう、トンネル上部の深さを当初よりおよそ90cm下げる設計変更が行われるなどの対策がとられた。
しかし今回、陥没が起きたことから、今後、国の研究所に設置される調査委員会のなかで、工事の進め方に問題はなかったか、検証が行われるものとみられる。
出典
『陥没のおそれある地層指摘』
http://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20161123/4636341.html
11月26日13時9分に毎日新聞から、また11月26日付で毎日新聞東京版夕刊からは、埋め戻し土の重みで現場が7cm沈下、想定内だが市民には知らされていなかったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
26日午前1時40分ごろ、大規模陥没事故があったJR博多駅前の市道が沈下したと現場作業員から警察に連絡があり、警察が現場を全面通行止めにした。
警察や福岡市が確認したところ、陥没事故後に埋め戻された場所(縦横約30m)が最大で約7cm沈下していたが、安全が確認されたため、午前5時半ごろに通行規制が解除された。
けが人はなく、電気やガスなどのライフラインにも影響はないという。
福岡市などによると、埋め戻し後も沈下の可能性があるとして、自動計測器や目視で定期的なモニタリング調査を実施していた。
26日午前0時半ごろ、調査中に道路面が約1.5cm沈下したことが確認され、その後、拡大したため、作業員が通報。
午前2時40分ごろには最大約7cmに達したが、その後は変化はないという。
陥没した穴をセメントなどを混ぜた「流動化処理土」で埋め戻した部分の重みで、陥没で緩んだ下の土が圧縮されたことが原因とみられる。
福岡市と陥没事故現場の地下鉄工事を請け負う共同企業体は、現場のボーリング調査で最大8cmの沈下は想定されていたとし、安全性に問題はないとの見方を示した。
沈下自体が起こりうることは、「陥没の埋め戻し後に安全性を確認した専門家委員会の会議で話が出ていた」としたが、市民向けに取りたてて説明はしていなかった。
こうした対応に、市民から不満も聞かれた。
現場近くのコーヒーショップの店長(32)は、「沈下が想定されていたなら、最初から説明してほしかった。売り上げは陥没事故前の水準に戻りつつあるが、また陥没のイメージが広がり、通りの活気がなくなってしまうのではないか」とこぼした。
出典
『福岡・博多陥没 博多駅前、再び沈下 最大7センチ 一時通行規制』
http://mainichi.jp/articles/20161126/dde/001/040/050000c
『博多陥没 コーヒー店長「沈下想定なら、最初から説明を」』
http://mainichi.jp/articles/20161126/k00/00e/040/252000c
2016年11月9日付で毎日新聞東京版朝刊から、発災時の状況に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
地下約25mの作業現場に、土砂混じりの水が勢いよく噴き出した。
「ここから離れろ!」「ドーン」。
8日早朝、福岡市の博多駅前で起きた道路陥没事故。
大規模な崩落は、何らかの理由で粘土層を突き抜けた地下水が招いたとみられ、脱出はわずか15分前だった。
工事関係者によると、午前5時ごろ、市地下鉄七隈線の延伸工事に当たっていた作業員9人に緊張が走った。
崩落の兆候を示す水漏れが、現場のトンネル上部から始まったからだ。
線路を敷く空間をつくるために、硬い岩盤層を削っては、崩落を防ぐためにコンクリートを吹き付ける作業の最中。
トンネルの上には水がたまりやすい砂の層があり、トンネルにしみ出すことはあったが、噴き出すことはなかったという。
やがて、水に土砂が混じり出す。
作業員は間もなく現場から離れ、地上へつながる階段やエレベーターがある100m以上離れた「立て坑」を目指した。
その直後、「ドーン」のごう音。
工事に携わる男性(23)は、崩落の様子を「隕石が落ちたようだった」と振り返る。
9人は、間一髪で難を逃れた。
しかし、地上の駅前通りの崩落はやまない。
破断した下水管から飛び出す水が周囲を浸食。当初2カ所だった穴は午前7時25分ごろにつながり、通りを断絶、歩道や信号機ものみ込まれた。
注ぎ込む下水、基礎をむき出しにしたビル……。
午前8時40分ごろには、長さ約30m、幅約27m、深さ約15mの巨大な穴が出現した。
ガス漏れもあり、現場には汚物をまき散らしたような臭いが立ち込めた。
[事故の経過]
4:25ごろ JR博多駅前の市道交差点付近で、掘削作業中のトンネル天井部から土砂が剥げ落ちる
5:00ごろ トンネルに水が流入。作業員が避難
5:10ごろ 工事関係者がフェンスを置き、周辺道路を封鎖
5:14 工事関係者から110番
5:15ごろ 地表の道路2カ所が陥没
5:16 約800戸が停電
5:20 県警が周辺の通行規制を開始
7:25ごろ 陥没箇所がつながり、大きな穴に
8:40ごろ 陥没が長さ約30m、幅約27m、深さ約15mに拡大
9:45 市が、博多区の一部に避難勧告
10:10 周辺の商業ビルなど8棟19戸へのガス供給を停止
11:20 市長が記者会見し、市営地下鉄の延伸工事が原因になった可能性を指摘、「管理責任は市にある」と陳謝
13:30ごろ 市が埋め戻し作業を開始
出典
『博多陥没 脱出15分後「ドーン」 地下鉄作業員、間一髪』
http://mainichi.jp/articles/20161109/ddm/041/040/040000c
11月8日23時44分に朝日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
市などの説明では、陥没現場は地下水を含む砂や泥などの堆積層の下に硬い岩盤があり、地下約25mの岩盤層にトンネルを掘り進んでいた。
まず幅9m、高さ5mの半円状のトンネルを掘り、幅15m、高さ7mまで徐々に広げていた。
ところが、8日午前4時25分ごろ、岩の表面がぽろぽろとはがれる「肌落ち」と呼ばれる異状に作業員が気づいた。
コンクリートを吹きつけて対応したが、落ちる勢いに追いつかず、午前5時ごろには、トンネル上部の岩盤層で遮られるはずの地下水も漏れ出した。
止めきれないと判断した作業員9人が地上に退避して、すぐに陥没が始まった。
市交通局は、「何らかの原因で、想定よりもろかった岩盤が突き破られ、地下水がトンネルに流れ込んだ可能性がある」と説明した。
出典
『地下鉄延伸工事で大規模陥没、岩盤見込み違いか 博多』
http://www.asahi.com/articles/ASJC85KNXJC8TIPE04B.html
11月9日3時56分に朝日新聞からは、トンネル掘削工法に関する、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
トンネルの掘削法には主に、周囲を補強しながら硬い岩盤を掘り進む「ナトム工法」、軟らかい地層に円筒形の掘削機を押し込んで壁面を固めながら掘り進む「シールド工法」、地表から直接掘り進める「開削工法」がある。
ナトム工法の費用は、シールド工法の半分以下とされる。
現場では、深さ約25mの岩盤層を、ナトム工法で掘り進んでいた。
市交通局によると、岩盤層の上には粘土層や地下水を含む砂の層があることがわかっており、トンネルの上に岩盤層が厚さ2mほど残るようにして掘削する計画だった。
ところが、掘り進めるうちに、岩盤層の上部の「福岡層群」という地層が大きく上下に波打ち、計画通りでは、一部で岩盤層が1mほどになることが判明。
地下水が漏れないよう、トンネルの天井部を1m下げるよう、今年8月に設計を変更していた。
それでも、事故は起きた。
七隈線の建設技術専門委員会のメンバーの三谷泰浩・九州大教授(岩盤工学)は、「福岡層群には、触るとぼろぼろになるような軟らかい石炭のような層が含まれる。これが陥没の引き金になった可能性がある」と指摘する。
ナトム工法では、トンネルの周囲に鉄筋のボルトを挿し、壁面にコンクリートを吹き付けて補強しながら岩盤を掘り進む。
その作業中に石炭のような層を傷つけ、崩れ始めたのでは、とみる。
これが「アリの一穴」のようになり、岩盤の上にある堆積層が順に崩れ、最終的に地表近くの地下水がトンネルまで流れて、大規模崩落につながった可能性があるという。
一方、谷本親伯・大阪大名誉教授(トンネル工学)は、「あれほど大きな陥没をしたということは、ナトム工法が向いていなかったのではないか」と指摘する。
一般に、軟らかい地盤や地下水の多いところでは、シールド工法が使われるという。
出典
『軟弱な地層、市の対応甘く 博多陥没、過去2度同様事故』
http://www.asahi.com/articles/ASJC85T1VJC8TIPE04R.html
(2/3に続く)
(1/3から続く)
11月8日21時23分に産経新聞westからは、ナトム工法を採用した理由に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
福岡市によると、掘削前に現場で実施したボーリング調査で、地下18m付近に硬い岩盤が見つかった。
掘削の方法には、円筒状のシールドマシンで一気に掘り進める工法もあるが、岩盤が硬い箇所でトンネルの断面を一定に保ちながら掘るのは難しい。
そこで市は、今回、ナトム工法を採用した。
この工法では、掘削したトンネルが崩れるのを防ぐため、約1m掘るごとにコンクリートで固める作業を繰り返す。
地層に応じて断面の形や大きさを変えることができ、シールド工法よりもコストが安いとされる。
出典
『地下18メートルに硬い岩盤、ナトム工法採用 1メートル掘るたびコンクリ吹き付け シールドマシンより低コスト』
http://www.sankei.com/west/news/161108/wst1611080087-n1.html
11月9日21時33分に産経新聞westからは、地質の特異性に関する、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
福岡市が、事故原因となった市営地下鉄七隈線の延伸工事の入札前、地中の急激な地質変化に対する懸念を入札参加業者に伝えていたことが、9日、分かった。
市は、粘土状になった岩盤に何らかの原因で穴が開き、土砂がトンネル内に流れ込んだとみており、地質変化と事故との関連を調べ、施工状況の詳細を検証している。
市によると、陥没現場の工事区間は、ボーリング調査で確認した岩盤層を掘り進めながら内壁にコンクリートを吹き付ける「ナトム工法」を採用。
市は、平成25年12月に総合評価方式による入札を実施する前、入札参加業者に地中を掘削する際に急激な地質の変化への懸念を伝えた上で、技術提案を求めていた。
入札は、大成建設などの共同企業体(JV)が落札。
市の担当者は、JVから受けた技術提案の内容は明らかにできないとした上で、「高評価の内容だった。業者への聴き取りを進め、事故との関連を調べたい」と話している。
市は、9日、掘削していた岩盤層と砂などの層の間にあるとしていた「粘土層」を、「風化で粘土状になった岩盤」と説明を修正した。
粘土状でも水を遮るが、強度は弱まる。
強度を確認したり、補強したりしながら、掘り進めていたという。
総合評価方式による入札は、発注側が入札額を比較するだけでなく、技術力なども点数化して落札業者を決める。
出典
『「地質変化の懸念」伝達 地下鉄工事入札前に福岡市』
http://www.sankei.com/west/news/161109/wst1611090097-n1.html
11月13日付で毎日新聞東京版からも、上記に関連する記事が、下記趣旨でネット配信されていた。
現場の地下鉄工事のトンネル天井部分が、他より約1m高く掘られていたことが、市への取材で分かった。
上下線のトンネルが合流する地点のため、広い空間を確保する必要から、設計段階では2m高く掘る予定だったが、掘削前に上部の岩盤が薄いことが判明した後も、1m低くする変更にとどめていた。
専門家は、「岩盤が薄い中で天井を高く掘ったことが陥没の一因ではないか」と指摘している。
市によると、事故現場は、市地下鉄七隈線を天神南駅から博多駅まで延伸する工事区間の中間駅(仮称)付近。
博多駅に向かって上下線のトンネルが合流する地点にあたり、それぞれのトンネルを円筒状の掘削機を使った「シールド工法」で掘り進んで、Uターンする折り返し点でもあった。
このため、広い空間が必要となり、空間を少しずつ掘り広げる「ナトム工法」を採用して、博多駅から中間駅に向かって掘削していた。
当初は、博多駅側のトンネルよりも天井部を約2m高く設計していたが、昨年10月に施工業者がボーリング調査をしたところ、トンネル上部の岩盤が掘削方向に向かって左側へ低くなるように傾斜していることが判明。
下降している部分の岩盤が当初の想定より最大約1m薄いため、専門家で作る委員会に諮った上で、今年8月に天井高を約1m低くする設計に変更していた。
事故は、天井を高くする場所を掘り始めて約5m進んだ場所で起きた。
市は、「事前に地質のデータなどを入念に確認しながら掘削したが、岩盤にもろいところがあったのかもしれない」としている。
谷本親伯(ちかおさ)・大阪大名誉教授(トンネル工学)は、「典型的なトンネル事故と言えるが、岩盤層が薄いのに天井を高く掘っており、設計や施工技術を過信していたのではないか」と話した。
出典
『福岡・博多陥没 地下鉄天井、高く掘削 薄い岩盤、陥没一因か』
http://mainichi.jp/articles/20161113/ddm/041/040/144000c
11月8日14時30分に西日本新聞からは、過去にも近くで陥没事故があったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
地下鉄建設工事現場の周辺道路では、過去にも陥没事故が頻発。
七隈線延伸工事を巡っては、2014年10月、今回の事故現場から約350m離れた博多区祇園町の市道で発生。
車道が長さ約5m、幅約4m、深さ約4mにわたって陥没した。
延伸工事に伴う雨水管の移設作業中、作業員が坑内に土砂が流入していることに気付いた。
道路地下に空洞が発生したことが原因で、けが人はなかった。
現在運行中の七隈線の建設工事でも、2000年6月、現場付近の中央区薬院3丁目の市道が、長さ約10m、幅約5m、深さ約8mにわたって陥没した。
土砂流入を防ぐ防壁に穴が開いたことが原因で、土砂が流入したとみられる。
市交通局は、防壁の鋼材が設計よりも傾斜して埋め込まれる施工不良などの影響で穴が開いたと結論づけた。
市は事故防止検討委員会をつくり、再発防止に努めてきたが、結果的に前回よりも大規模な事故が発生した。
出典
『陥没現場、岩盤上に地下水多く 福岡市長「復旧に全力」』
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_toshiken/article/287653
(3/3に続く)
(2/3から続く)
11月11日5時30分に産経新聞からは、過去事例の原因を特定していなかったという情報が、下記趣旨でネット配信されていた。
2年前に同じ市営地下鉄七隈線の工事で起きた陥没事故で、市が事故原因を特定していなかったことが、10日、関係者への取材で分かった。
今回の事故と同じく、早期の復旧を優先した結果、詳細な調査ができなかったとしているが、きちんと原因を究明していれば、今回の陥没は起きなかった可能性もある。
市は、当時、陥没を埋め戻すなど道路の復旧を急いだが、後日、改めて現場を掘り返すなどしての原因調査はしなかった。
市は、原因について「地下に空洞ができており、緩い岩盤を固める作業が不十分だったとみられる」などと、国交省九州運輸局に報告していた。
市交通局は、「できる限りの調査はしたが、解明できない部分もあった。原因がはっきりと特定できたとは言えない」と釈明している。
出典
『2年前の地下鉄工事陥没事故の原因、特定せず…福岡市、調査甘く再発か 防げた可能性も』
http://www.sankei.com/west/news/161111/wst1611110015-n1.html
11月10日23時45分に産経新聞からは、早期復旧に向け目立たないところで奮闘している業者があるという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
JR博多駅前で発生した大規模陥没事故は、地表近くまでの埋め戻し作業がほぼ終わったことで、10日朝から通信ケーブルやガス管などの復旧に向けた作業が始まった。
作業の裏では、資材を集め、搬送した業者の奮闘があった。
「道路が陥没し、大変なことになってしまった。流動化処理土での埋め戻しを検討している。いつまでに、どれぐらい用意できるか教えてほしい」
陥没発生から約4時間後の8日午前9時半ごろ、処理土の生産プラントを持つ建設業「環境施設」(福岡県筑紫野市)の営業課長に電話がかかってきた。
相手は、事故現場の地下鉄延伸工事を施工した工事共同企業体(JV)の担当者だった。
処理土はセメントや粘土を含んだ特殊な土で、ビル建設などで地質改良に使われる。
コンクリートのように固まりやすい性質を持ち、そのため、作り置きはできない。
必要に応じて生産するしかない。
穴すべてを埋めるには7000m3の、地表近くまで埋めるだけで4000m3の処理土が必要となる。
「緊急事態だ。新しい仕事は受けるな!」
社内に号令が飛んだ。
・・・・・・・・
実は、福岡に多い炭鉱跡地では、陥没事故が度々起きている。
同社などは、事故処理を通じ、緊急時のノウハウを蓄積した。
・・・・・・・
出典
『「新たな仕事は受けるな!」穴埋め処理土 9時間後に用意 事故処理ノウハウ蓄積』
http://www.sankei.com/affairs/news/161110/afr1611100024-n1.html
(2016年11月17日 修正1 ;追記)
2016年11月14日22時40分に産経新聞westからも、予想を超える速さで復旧した裏話的な記事が、下記趣旨でネット配信されていた。
九州の玄関口である福岡市のJR博多駅前で起きた道路陥没事故の復旧工事は、通常なら数カ月を要するところ、市はわずか1週間足らずで道路の通行再開のめどをつけた。
特殊な工法を用いて作業の効率化を図り、市内外のミキサー車や作業員を総動員。
異例の「スピード突貫工事」を実現させた。
その背景に何があったのか。
「1分1秒でも早く安全に復旧させたい」。
事故翌日の9日、報道陣の質問に市トップの高島市長は、早期復旧を強調した。
陥没事故は、8日早朝に発生した。
穴は、道路いっぱいにわたる30m四方で、深さは15m。
すぐ下を通る地下鉄工事のトンネル天井の一部に空いた穴から、砂時計の砂が落ちるように流出した土砂は、3000m3に及んだ。
強固に埋め戻すには、ミキサー車約1750台分の約7000m3の土砂が必要と試算された。
ただ、通常は数カ月の工期を要するといわれていたが、高島市長は強気の姿勢を崩さなかった。
「道路を一刻も早く通行可能にする。目指すは14日だ」。
9日朝に開かれた会議でそう明言。
集まった職員や工事関係者は息をのんだ。
・・・・・
出典
『九州の玄関の誇り…強気1週間工事200人 大成建設も“汚名返上”フル稼働』
http://www.sankei.com/west/news/161114/wst1611140052-n1.html
11月16日10時57分に読売新聞からも、復旧の速さが海外で称賛されているという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
英米のメディアでは、わずか1週間で通行が再開されたことに、驚嘆と称賛の反応が広がっている。
英BBC(電子版)は、陥没直後と通行再開後の写真を並べて、「日本は巨大な穴を1週間で修復した」と伝えた。
米CNN(同)は、「日本の技術力の高さが証明された」と指摘。
英紙テレグラフ(同)は、「オリンピックプールの半分ほどもある巨大な穴を徹夜作業で修復した」とたたえた。
英ニュースサイトのメール・オンラインは、英中部マンチェスターで昨年起きた道路陥没事故では修復に10か月かかったことを説明した上で、「日本に学ぶべきだ」と指摘した。
ツイッター上では、「感動した」、「道路工事は日本人にやってもらうべきだ」といった声があふれている。
出典
『「巨大な穴を1週間で修復」…英米メディア驚嘆』
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161116-OYT1T50041.html?from=ysns_ycont
2016年10月26日3時23分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10月26日2時2分に共同通信からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
2013~15年度に耐震補強工事をした全国200以上の橋について会計検査院が調べたところ、9都県にある複数の橋が一定の基準を満たしておらず、十分な耐震性を備えていなかった。
問題のある橋は10以上にのぼるといい、工事にかかった費用は計1億数千万円。
設計ミスが主な原因で、検査院は国交省に改善を求めた。
検査院は、日本道路協会の基準などを満たし、震度7クラスの地震でも橋桁が落ちないような補強になっているかを調査した。
すると、東京都や高知県などにある十数の橋で、問題が見つかった。
事業主体の国や自治体から設計を委託されたコンサルタントの設計ミスや検討不足などが主な原因という。
これらの橋の多くは、災害時に使われる緊急輸送道路が通り、緊急車両が通行できる状態を保つ必要もある。
交通量が多いなど重要度が高く、国が直接管理する「直轄国道」に整備された橋4カ所も含まれている。
昨年、東京都と神奈川県にある直轄国道の橋2カ所に同様の問題を指摘した会計検査院が調査範囲を広げ、群馬県板倉町にある「新大橋」など10数カ所の橋が浮上した。
検査を受け、国交省は、「設計の確認をしっかりするなど、整備局などに再発防止を文書で呼びかけた」としている。
国交省は、緊急輸送道路が通る橋の耐震補強工事を優先的に進めており、全国で対象となっている約6万の橋のうち、76%は耐震化が済んでいるとしている。
出典
『9都県の橋、耐震性不十分 検査院指摘、設計ミスが主因』
http://www.asahi.com/articles/ASJBT56B4JBTUTIL02F.html
『一般道路の橋十数カ所で耐震不足 設計誤ったまま補強工事』
http://this.kiji.is/163693893427758582?c=39546741839462401
(ブログ者コメント)
関連情報を調査したところ、会計検査院の検査の視点などに関する、以下の情報が見つかった。
今回の「昨年指摘の調査範囲を広げ、10数ケ所が浮上した」という報道と軌を一にするもののように感じたので、紹介する。
この検査の視点は、社内などで安全管理状態をチェックする場合にも、同じことが言えるかもしれない。
(2010年3月3日 日経コンストラクション)
「調査官が “狙い撃ち”しているせいもあるのだろうが、毎年のように同種の設計ミスが指摘されている」。
ある会計検査院OBは、この数年間の会計検査の報告書の内容を踏まえて、こう話す。
公共事業に関して調査官が調査の対象としているのは、構造物の設計や施工のミスだけではない。
最近では、事業の効果を問うものなど、以前に比べて範囲が広がっている。
調査では、1日に十数件もの案件に目を通すので、一つひとつを丹念に見ている時間はない。
そうした条件のなかで効率よくミスを指摘するために、調査官はポイントを絞って調査に当たっているのだ。
「前年度に指摘のあった案件と同じような事例は詳しくチェックするので、ミスを発見しやすい」。
「基準類が改訂された直後は、発注者によって理解が不十分な場合があり、設計の問題点を指摘しやすい」。
「基準類などについての理解が広まると、指摘の件数は減ってくる。すると調査官は、また別の指摘事例をもとにチェックをしてミスを発見する。この繰り返しだ」。
現役の調査官やOBたちからは、こんな話を聞いた。
調査官らが話すこれらのチェックポイントは、重箱の隅をつつくようなレベルのものではない。
指摘の根拠は、オープンになっている情報だ。
ところが、会計検査の報告書を見ていると、過去の指摘事例と同じ間違いを繰り返している例がある。
この数年では、落橋防止装置に関するミスの指摘が多い。
「設計者や発注者の技術力は低下しているし、会計検査に対するある種の警戒心のようなものも薄れてきた」。
OBのひとりは、こう言って嘆く。
2008年度の報告書では、構造物の安全性に問題ありという指摘が目に付いた。
せっかく人々の生活を支えるために造ったインフラストラクチャーが、安全を脅かすようなものであってはならない。
設計ミスを防ぐために、基本に立ち返ることが必要だ。
指摘事例を対岸の火災視せず、まずは自身の業務に生かしたい。
出典
『会計検査院が毎年同じように設計ミスを指摘できるわけ』
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/knp/column/20100223/539524/
2016年4月30日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正1として掲載します。
第1報(1/3~3/3)は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5863/
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5864/
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5865/
(2016年6月27日 修正1 ;追記)
近くの場所の地盤調査結果を転用したため支柱が不等沈下で傾いた、傾きに気付いたが数値上は問題なしとして工事を続行したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
(新情報に基づき、第1報ともども、タイトルも修正した)
『支柱傾き「不等沈下」現象…事故6時間前「傾き」気付くも作業続行、検討委が最終見解』
(2016年6月19日22時42分 産経新聞west)
『弱い地盤で支柱が傾斜 新名神の橋桁落下、原因特定』
(6月20日0時59分 朝日新聞)
『神戸・橋桁落下 東側クレーンの支柱傾きが原因』
(6月19日23時45分 毎日新聞;図解付き)
工事を発注した西日本高速道路が設置した有識者による技術検討委員会は、19日、落下した西側の橋桁とは反対側の、東側の橋桁を支えていた門型クレーンの支柱が西側に傾き、橋桁全体のバランスが崩れた結果、西側の橋桁がジャッキから滑り落ちたとする、最終見解をまとめた。
東側門型クレーン支柱の上辺は、西方向に18.5cmずれていた。
不等沈下は、西日本高速の地盤調査の結果をもとに、地盤の一部が軟らかかったために起きたと結論づけた。
現場の作業員らは、事故発生の約6時間半前、支柱の傾きに気づいていたが、バランスや荷重を示す数値に変動が少ないとして、作業を続行していた。
しかし、委員会は報告で、「傾きを認識したまま作業を進めた現場の判断は適切とはいえず、調査を行うべきだった」と指摘した。
委員会は事故原因の調査や再発防止を目的に設置され、この日は第3回会合が開催された。
支柱の傾きについては、5月の前回会合で「事故原因の一つの可能性がある」とする見方が示され、西日本高速が地盤調査を実施していた。
http://www.sankei.com/west/news/160619/wst1606190053-n1.html
http://www.asahi.com/articles/ASJ6M61W8J6MPTIL00G.html
http://mainichi.jp/articles/20160620/k00/00m/040/061000c
『橋桁落下 支柱の傾きが原因』
(6月19日19時17分 NHK神戸)
委員会のこれまでの調査では、橋桁を支える2つの支柱のうち、東側の支柱が上下方向で4cm沈下し、水平方向で18.5cm傾いていたことが分かっている。
現場では、支柱を設置する前に、地盤を締め固める改良工事が行われていたが、委員会は、支柱を設置していた地盤が当初の想定よりも弱く、作業中に支柱の傾きが大きくなり事故に結びついた可能性があるとしている。
委員会は、事前の地盤の調査だけでなく、工事中に支柱の傾きを把握するための計測や監視などが不十分だと指摘したうえで、今後は作業段階ごとに安全管理の基準を作り、事前に計画に盛り込むよう提言している。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/2023250801.html?t=1466370568165
『新名神橋桁事故中間報告 原因は「不等沈下」』
(6月19日23時19分 神戸新聞)
橋桁の東側を支える専用設備下の地盤は、宅地造成による盛り土など、改良地盤の下に強度が低い層があった。
橋梁や橋脚部分の地盤調査は同社側が実施するが、沈下していた場所は工事を請け負った業者側が現場の判断で行うといい、今回は、同じ工区内の離れた場所のデータを参考にしていたという。
支柱の沈下が前日より進んでいたにもかかわらず作業を進めたことについて、同委の山口栄輝委員長(九州工業大副学長)は、「もう少し調査すべきだった」と指摘。
仮設構造物の変化や傾きなどの計測や監視が十分ではなかったとした。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201606/0009203971.shtml
『横河ブリッジ、傾き把握後も工事続行 新名神の橋桁落下』
(6月20日1時8分 日本経済新聞)
工事を請け負っていた横河ブリッジは、事故当日の4月22日午前、支柱の傾きを把握したが、橋桁をつっていた設備に変形がなく、工事に影響がないと判断し続行した。
委員会によると、東側の地盤が弱かったのに、西日本高速道路の調査が不十分だったため、土台が不均等に沈み、橋桁のバランスが崩れたという。
同社は、支柱の設置場所の地盤調査をせず、近くの別の工事場所の調査結果で代替していた。
橋桁の西側はジャッキで2カ所を支えていただけで、不安定な状態だった。
東側で支柱が傾いた影響で橋桁に回転する力が加わり、落下事故が起きたと結論付けた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19H4F_Z10C16A6CC1000/?n_cid=NMAIL001
2016年5月26日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正1として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5964/
(2016年6月21日 修正1 ;追記)
2016年6月15日0時34分に毎日新聞から、調整部材が重心からずれていたところに気温上昇で橋桁がたわみ、荷重のかかり方が偏って安定性を失ったことが原因だったという、下記趣旨の記事が掲載されていた。
(新情報に基づき、第1報ともども、タイトルも修正した)
大阪府箕面市の新名神高速道路の建設現場で、先月、橋桁を支える仮受け台が倒壊した事故で、工事を発注した西日本高速道路の技術検討委員会は、14日、橋桁と仮受け台の間を調整する部材が仮受け台の重心よりずれて設置されたことが原因と発表した。
気温の上昇に伴う橋桁の変形を考慮せずに設計したことも、影響した。
安定性が十分確保されていなかったため、倒壊につながったという。
同社によると、倒れたのは、鋼材を組み合わせた仮受け台(高さ12m、重さ21トン)。
平らな鉄板を敷いた上に仮受け台を積み上げ、鋼材を重ねた2基の調整部材(高さ1m)を載せて橋桁を支えていたが、根元から倒れ、一部が、下を通る箕面有料道路を塞いだ。
検討委は、工事を担当した橋りょう施工会社「IHIインフラシステム」(堺市堺区)から聞き取り調査。
その結果、調整部材が仮受け台の重心から1mほどずれて配置されていたことが判明した。
事故当日の早朝に、重さ33トン、長さ17mの橋桁を調整部材の上に載せてから、事故発生時までの約6時間で、現場付近の気温が8.6℃上昇。
この影響で橋桁が伸びてたわみ、仮受け台への荷重のかかり方が片寄ったため、安定性を失ったという。
検討委は、再発防止策として、原則として調整部材を重心からずらして置かないこととし、仮受け台の安定性が確保されない時は、基礎部分に重しとなるコンクリートを設置するなどの強化策を講じるよう提言した。
西日本高速道路は、4月に神戸市北区の新名神建設現場で起きた橋桁落下事故でも、技術検討委を設置。
今回の箕面市の事故でも検討委を設け、同じ橋りょうの専門家4人が務めた。
出典
『橋桁台倒壊 原因は安定性確保の不十分 新名神高速』
http://mainichi.jp/articles/20160615/k00/00m/040/131000c
6月15日6時32分にNHK関西NEWS WEBからは、調整部材の設置位置は当初の計画通りだったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故を受けて西日本高速道路会社が設置した専門家による委員会の初会合が、14日、大阪市で開かれ、事故の主な要因として、橋桁と仮の支柱をつなぐ部品が、支柱の中心から大きくずれた位置に設置されていたため、不安定になっていたことが挙げられた。
また、この部品を設置する位置は当初の計画どおりだったことから、委員会は「計画段階での安全性の確認が不十分だった」と指摘した。
その上で委員会は、再発防止策として、支柱の中心部分からずれた位置に部品を設置しないことや、ワイヤーで支柱を固定するなどの対策をとるよう求めている。
委員会の指摘を受け、西日本高速道路会社は、仮の支柱が使われているすべての工事現場の計画を見直すことにしている。
出典
『部品ずれ 安全性確認不十分』
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20160615/3130591.html


















その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。